気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
心停止している人を助けたことはない。だがやらないと、どんどんと生存可能性は下がっていく。5分を過ぎると生存確率ががくっと下がる。すぐに取り掛かろう。
意識があるかどうかを確認する手順は飛ばす。口に耳を近づけて呼吸の有無を確認。なし。胸とお腹を観察する。動いていない。呼吸していないということは、ほぼ確定で心停止状態だろう。
「何をしているのだ!?」
「黙っておいてくれ。弟を助けたいんだろ?」
エアセナ君が戸惑いながらも疑問を投げかけてくるが詳しく説明している暇はない。体験はやったことがあるが、本番はこれが初めてなんだ。
胸骨の下辺りに重ねた手を置いて、胸が5cm沈む強さで押し込む。間隔は脳裏で再生されている歌に合わせて………三十回!!
「ふぅぅぅぅぅ~~~~~」
顎を上げさせて気道確保。鼻を摘み口をつけて息を吹き込む。これはキスにはカウントしないとする。
次。また胸を押して押して、息を吹き込む。
「戻ってこい! 戻って来い! 戻って来い!」
いつの間にか群れの連中が集まってきて、固唾を呑んで見守ってくれている。俺がやっていることの原理はわからなくても、助けようとしているのはわかっているらしい。
「戻れ! はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
息が切れてきた。しかしやめると今度こそ本当に死んでしまうので、続けるしかない。
「戻れ、戻って来い!」
「げほっ、げほっ………!!」
メルセナ君が咳き込んだ。泡交じりの水を吐き出す。息を吹き返した。起き上がろうとするので、手で寝かせる。背中を擦りながら、俺は昔に受けた体験のことを思い出そうとしていた。
「回復体位……回復体位ってどんなだっけ?」
次にやることは回復体位を取らせることだったと思うんだが、思い出せない。なんとなく、横に寝かせて、本人の手を頭と地面の間に差し込んでおく。
「嘘だろ……死人を生き返らせるなんて……!」
「なんなんだこの人……」
驚いているというより畏怖されてる気がするけど、人命救助できたのでその旨を良しとする。
「俺の名前はソーマ。村で神様をやってる」
俺はここぞとばかりにドヤ顔をすると、ピースしてみせたのだった。
俺は合計20名を引き連れて村に戻った。戻って早々、怒り心頭のアキラスが腕を組んで待っていたけどな!
怒りの理由も分かるよ。ちょっと木の実取ってくるからの丸々一晩帰ってきませんだからな。事故にあったのではないかと思って捜索に人を放っているだろうし。
「ソーマ。何があった?」
だがアキラスは冷静だった。俺に対し腕を組んだまま説明を求めてくる。
誘拐されましたとか言うとキレさせそうだが、嘘をつくのもよろしくないな。俺は、俺の横でふんぞり返っているエアセナ君を紹介することにした。
「こちらアイルトンセナ君」
「エアセナだ!!!!」
「エアセナ君。この群れの長をやってるんだ。いやーなんか誘拐されてさー」
「誘拐だと?」
アキラスの頬がぴくりと引き攣る。キレておられる。
「エアセナ君の弟を助けたら俺の村に来てもいいって言ってくれたから連れてきた」
「はー………ソーマ、ちょっといいか」
アキラスが手招きをしてきたのでついていく。少し離れたところで話すことになった。
「誘拐されたとかその辺りに関しては何も言うことはないが、信用できるのか?」
「命を救った借りがあるからな。大丈夫だろ」
「命を救うというのは」
「心肺蘇生法を試してみただけだよ。あ、心肺蘇生法ってのは、心臓が止まった人を生き返らせる方法だよ」
「…………」
アキラスが一生懸命理解しようと腕を組んだまま天を仰ぎ始めた。数十秒程経ってから視線を俺に戻す。
「内容は聞かない。聞いてもわからないだろうから……死人を生き返らせるなんて、やはり神なんだな………恐れ入った。死んだらそれっきりだと思ってた」
「神ねぇ、まぁ、神というなら神なんだろうけどね。正確に言うと死ってのは曖昧で、死んですぐなら蘇生できることもあるってだけの話で、やろうと思えばアキラスにもできるはずだよ」
「ふーむ………わかった、わかったよ。受け入れよう。人手はいくらでも欲しいところだったからな……」
アキラスはやれやれと首を振ると、倉庫に目をやった。収穫した麻とエノコログサがあるところだ。麻を繊維にする作業と、エノコログサの脱穀作業が待っているのだ。20人も人手が増えれば予定よりも早く冬前までには麻の服の生産と、エノコログサのパンを村人全員で食べられるようになるかもしれない。
「おい!」
「おう、エアセナ君なんだ?」
俺たちが話し込んでいるとエアセナ君が好奇心を隠せない様子で辺りを見回しながら寄ってきた。
「お前、名前なんていうんだ?」
「俺か。アキラス。ソーマの夫だ」
エアセナ君が問いかけると、アキラスが堂々と名乗った。
名前か、自己紹介は大切だからねっておおおおおおぉぉい!!
「妻になった覚えはないぞ!」
「よし、じゃあこのエアセナの妻になれ!」
「は? ソーマは俺の妻なんだが? 子供を産んでくれる約束もしてるんだが?」
………そうでしたぁぁぁぁ!
俺が頭を抱えていると、エアセナ君が指を二本立てた。
「よし間を取って二人の妻にしよう。俺の弟も夫にしろ。まだ子供は作れないがそのうちできるようになるぞ」
さらっと精通がまだですとバラされた弟君が哀れでならない。
自然な流れで多夫一妻制が語られているけど、俺が妻になること前提にするのはNGだ。
狩猟採取の時代は多夫多妻制であった可能性が高いと言われている。自分の血筋を残すのが大切というより、群れの存続が重要だったので、誰が誰の子供を産んでも構わない。みんなで育てようという時代だったらしい。
「ちょっと待てや勝手に妻にするな」
『なってくれないのか!?』
「声を被らせるな。ハイ! やめやめ。とにかく、エアセナ君たちには仕事を覚えて貰うぞ。新しい家も必要だしな」
現在の家に分散して住まわしたところで全員は収納できない。今日中にエアセナ一族(便宜上)の住む家を作らねば。無理なら差し掛け式でもいいから作らないとな。
「家! あの大きい木と草の塊のことか!? 中に入れるんだな!」
言うが早いがエアセナ君が走り始め、一族もぞろぞろと続く。
好奇心旺盛だなぁ。お坊ちゃまなところがある一方で、素直な面もあるのね。
「ほわぁぁぁぁぁぁぁ! 暖かい! これ、作れるのか!?」
「人手がいるけどなー。新しく作らないといけないから、エアセナ君、全員で手伝って貰うぞ」
ということで、20名が収容可能な家の建設が始まったのだった。
この時代の家のいいところは作るのに労力が余りかからないところにある。これが石造りとかになると数ヶ月とか掛かるんだろうが、竪穴式住居はそこまで掛からない。もっとも流石に家具やらは無いし、ベッドも作れないので藁を敷いて雑魚寝してもらうしかないが、雨ざらしよりかは遥かにマシである。
かくして俺の村は人口50人を抱えるこの時代からすれば大都市へと躍進を遂げたのである。