気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※   作:キサラギ職員

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サクナヒメはいいぞ


24.収穫よりもめんどくさいこと

 数日後。俺はレイ家を訪れていた。

 

「おおー扱き箸だ……」

 

 長男のアスレイ君にお願いして、前々から作ってもらっていた道具を見に来たのだ。脱穀、すなわちエノコログサの穂先から実を落とすための道具である。千歯扱きが欲しかったんだが、ろくな工作具もないのに作れるかと言うと謎なので、まずは初歩的な道具から始めさせたんだ。

 それが扱き箸だ。仕組みは簡単で二つの棒の箸を蔓でつなぎ合わせ、穂を挟み込んで扱くことで実を落とすというものだ。一粒一粒もぎ取るなんてことはしないぞ。気が狂うだろ。

 扱き箸が十個。少ないと思うかもしれないが人口が50人であることを考えると、多いと思う。大量に作ったところで従事できる人間がいなけりゃ意味が無い。

 俺が道具を確かめていると、アスレイ君が不安そうに見てきた。

 

「どうかな神様……言われたとおり作ってみたんだけど」

「うん! いいよこれ。よく出来てると思う! 偉い偉い!」

 

 俺はアスレイ君の頭を撫でた。

 

「やっぱりアスレイ君は木の道具を作るのがうまいねぇ。これからも頑張ってね」

「うん!」

 

 ということで俺は十人の人手を村を回って確保すると、倉庫までやってきた。エノコログサはすっかり乾いたので中にしまってあるぞ。

 

「じゃあこれから脱穀という作業をやってもらうから。これが扱き箸という道具ね。これを、こうして……」

 

 集まった十人の前で俺は胡坐をかくと、エノコログサを何本か纏めて手に取り、大きい受け皿の上で扱き箸を使い実を落として見せた。米であれば(むしろ)の上でやるんだろうが、何しろエノコログサは実が小さいので受け皿に落とすべきと考えたんだ。後でいちいち拾わないでいいしね。

 俺の作業を見ていた面々が感嘆の声を上げた。

 

『おおーっ』

「一粒残さずとは言わないけど、とれるだけ取りたいから頑張って実を取ってほしい」

 

 正直、全ての粒が回収できるとは思えないんだよなぁ。粒が小さすぎるからな。回収できなかった分はお茶にでもするかね。それか我が愛しいカモ達に食べてもらうか。

 次に俺は同じ倉庫内部で麻を裂いているメンバーの様子を見に行った。とにかく麻の茎を裂いて繊維を取り出さないことには話にならない。使わせている道具は海岸で拾ってきた貝殻(研いである)である。貝殻を使い、茎から引き剥がした皮から繊維を分離させるのだ。

 

「あっ。切っちゃった……」

「そう、強くやりすぎると千切れるから気をつけて」

 

 力加減にも熟練が必要だ。強くやりすぎると繊維が切れてしまう。

 俺は作業している面々の間を歩きながら様子を見た。思ったよりも繊維は細く、いちいち手で細かくしなくても糸として使えそうだ。

 裂いたあとは繊維と繊維をより合わせて糸にして、糸を編んで布にして、布を仕立てて服にして、あーもう作業量が多すぎるだろ。冬に間に合うのか?

 

紡錘(スピンドル)の製作は間に合いそうだけどな……服がな……」

 

 アキセイカ君に土器の紡錘を作るように依頼している。紡錘は簡単に言えば糸を()る道具で、繊維を手でつなぎ合わせるのではなく、棒と円盤を回転させることによって(比較的)簡単に糸にできるものだ。

 麻にしろ、毛皮にしろ、服というものはとにかく時間が掛かる。冬までに洋服というのは難しいかもしれない。

 わいわいと外が賑やかになってきたので出てみると、狩りに出ていたエアセナ達が戻ってきていた。

 農業が成功したとは言っても、まだ狩猟に頼っている部分は大きい。タンパク質の補給源としても肉は効率的な食料だ。骨は強固なので縫い針にうってつけだし、皮は服にすることができる。油も使いどころがある。まだ試してないがゼラチン質を加工すれば接着剤にもできる。

 

「ソーマァァァァ!」

 

 このうるさい声はエアセナだな。槍を担いで手を振りつつニコニコ顔で駆け寄ってくる。エアセナ一族は大きいシカを木の枝にぶら下げていた。

 

「でかいシカが取れたぞ! 嫁になれ!」

「ぶふっ! 求愛給餌か?」

 

 典型的というか原始的過ぎる求愛の仕方に噴出してしまった。

 俺はエアセナの頭を撫でた。

 

「俺を嫁にしたいならもっといい男になってからな」

「俺はもういい男だぞ!」

「その割には槍に血がついてないみたいだけど」

「ぐぬぅぅぅ!!」

 

 地団駄を踏むエアセナくん。

 エアセナの槍は、綺麗なもんだ。絶対お前が獲った獲物じゃないだろ。せめて血くらい付けてこい。

 

「流石というか、エアセナの一族は狩りが得意なのか」

「その通りだ。父は石投げの名手だった! どうだ! 恐れ入ったか!」

「ちなみにお父さんは……」

「死んでるぞ?」

「そっかぁお母さんは」

「死んでるぞ?」

「ううむ」

 

 命が軽い原始時代。エアセナ君は気にした様子無くあっさりした口調で答えてくる。

 この世界というか、この時代というべきなのか、死でくよくよする人がいないんだよね。もちろん悲しむことには悲しむんだけど、後に引きずらないんだよね。泣いて、お墓を作って、すぐに持ち直す。四十九日だ何回忌だ年単位で引っ張る現代人とは違うんだなと思う。

 

「狩りまくって欲しいと言いたいところなんだけど、獲りすぎ注意だね」

 

 俺が言うとエアセナ君はぽかんとした顔をした。

 動物は無限に沸いてくると思っていても、不思議ではない。

 

「? なんでだ?」

「獲りすぎると、いなくなっちゃうでしょ。もし若くて、お腹が大きいのとか、小さい子供を連れていたら見逃してやって欲しい」

 

 定住して狩りをしていくことで、その土地の動物がいなくなってしまう懸念がある。これが移動しながらの狩猟なら別にいくらとってもいいんだけど、定住生活なのでその土地の動物には限りがある。とりすぎると人間恐るべしの認識が広がって村から離れていってしまうかもしれないし。

 

「そうなのか…………わかった。そうするように皆には伝える」

 

 

 そういうとエアセナ君は一族の元に戻っていった。

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