気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
「そろそろかな」
俺はタンポポコーヒーを嗜みつつ、村人達が働いている様子を見ていた。
今年は豊作だ。地面を埋め尽くすエノコログサの海。風に波打ち揺れる様。草の絨毯の合間には、ところどころ空白がある。そこには、森を探索中に発見した『イモ』が植えられている。サトイモの仲間なんだと思うけど粘り気が無く、淡白な味なんだ。他にも、勝手に生えてきたアブラナもある。来年の春には花をつけてくれることだろう。
主食の畑の横にはようやく実をつけるようになったベリー畑と、いまだ成長途中のブドウの木。ブドウはもう数年かかりそうだ。
「おっ帰ってきたか」
村人達が帰ってきた。籠一杯のドングリやらブドウやらを抱えて。ウサギやらリスを矢で仕留めたものもいる。ドングリの実がとれるように周辺を整備したことのいい点は、小動物が寄ってくるようになったことだろう。入れ食いとまではいかないがドングリの木の周囲に罠を張るとポロポロと掛かってくれるようになった。
あれから一年――――俺の村は急成長した。俺がこの世界にきてから二年と少しということになるな。人口にして100人ちょい。もう病から逃れてきた民なんて言わせない。
要因として、一つ目は狼煙だ。人がいるということを知った流浪の民が流れ着いてきたのだ。もう一つはベビーブームである。生活が安定してきたことで、子供をたくさん作ろうという人が増えたのだ。新しいカップルも誕生して、子供をどんどんと作り始めた。
原始時代に人口100人を超え、かつ、そのいずれもが服を着ている。ふふふ。苦労した甲斐があったというものだなぁ。まあ全員が麻の服を着てるかというと、そんなことはないけどな! 半分半分くらいかな。
あれから一年。俺は、食料の安定供給に心血を注いだ。とにかく食べるものが無ければ人は生きていけないからな。食べるものさえあれば、あとはなんとかなるもんだ。焼畑も積極的に推し進めて、農地の拡張もしたさ。木をくり貫いて作った船で、漁ができるようにもなった。
エノコログサ様様だな。今年の収穫量があれば、一年は毎日パンが食える。あとはイモ様か。味が淡白過ぎて正直まずいので調理方法を考えねば。
機は熟した。今こそ、温めていたプロジェクトを実行に移すべき時だ。
俺は村で、『職』についているメンバーを呼び集めた。
職とは、例えば土器作りとか、木工とか、大工とか、裁縫とか、そういった専業についている状態を指している。アキラスは俺の補佐みたいなもんなので、会議をするときは絶対にいるぞ。
「鉄器を作る」
俺は結論から述べた。
『鉄器………?』
いるメンバー全員の頭にクエスチョンマークが浮かんでいる。石器すらなかった時代生まれからしたらテッキとか急に言われてもわからんよな。
なんでいきなり鉄器なんだって? 銅と錫が見つかってないからだよ! あれば先にやってるとも! 割と簡単に溶かせるからな!
俺は自宅で使っている隕石をみんなの前に置いた。
「これね。ツルツルしていて、ピカピカしていて、重い。これが鉄。これを使って、道具を作ろうと思う」
「ソーマ、ちょっと待てよ。そんな硬いものを加工できるわけがないだろう」
エアセナ君が突っ込みを入れてくる。力自慢が揃っているエアセナ一族には、鉄つくりをやってもらいたいものだと思ってたりする。
「もちろん、このままじゃ無理だ。しかし高温で熱すると柔らかくなって、形を変えることができるようになる。更に熱すると、水のようになる」
「水のように!?」
「最終的にはね。でも、今の俺たちじゃそこまではいけないよ」
鉄の融点は1500度程だ。現在どれだけ頑張っても、1500度にはいかないだろう。だが、柔らかくすることはできる。柔らかくなれば、あとは叩いて形を整えればいいのだ。
俺は説明をしつつ、あらかじめ作っておいた粘土の模型を地面に置いた。塔型の炉と、それに接続する
「叩きまくって刃を作る。鉄製の道具があれば、木を自在に加工することもできる。鉄の鏃なら、獣の肉を一撃で破れるし、槍なら言うまでもないな」
『おおーっ!』
イメージが沸いてきたのか一同が声を上げた。
木を自在に加工できるってのが重要だ。綺麗な木材を作れるって偉大なことなんだぞ。
「でも、手順を踏まないといけない。材料はこの隕石でいい。高温を保つためには、木炭が欲しい」
材料に関しては隕石以外にも砂鉄があるが、それはおいておく。
俺は次に炭を地面に置いた。プロトタイプとして作っておいたものだ。
「これ、作ってみたやつ。作り方としては空気を遮断する必要があって、木をこんな感じに組んで……」
模型を作るか。小枝をキャンプファイアーでもやるような山形に組んでいく。
「土を被せていって……」
枝の周りに土を被せてこんもりとした山にする。頂上と下部に穴を開けてある。
「この状態で内部に着火する。下から入った空気が上に向かっていく。火が回ってきたら穴を塞ぐ」
「火が消えちゃうんじゃない?」
アンセイカさんのツッコミが入った。普段家で火を守ってるだけあって、火の性質を理解してくれてるみたいだ。
「消えてもいいんだ。熱を加え続けるとどうなるかというと、木の炭素―――ようは木の燃えるところと言ったらいいのかな、そこだけが残る。だからほら」
俺は言いつつ長い木炭を持つと、囲炉裏に突っ込んで着火した。火から離すと、赤く光り輝きながら燃えているのがわかる。煙は微かである。
「煙がほとんど出てないでしょ。すごく便利なんだよ。煙くないし、長時間持つしね。この木炭が、鉄を作るときの火の温度を上げる為に必要になってくる。次に、その火をどこで燃やすかと言うと、こんな感じ」
炉の模型の中に小枝を突っ込む。そして、鞴を指差す。
「火をつけたらこの鞴という道具で炉の中の温度をどんどんと上げていく。鞴の作成に関してはアスレイ君にお願いすると思う」
「どんな道具なの?」
アスレイ君が手を上げた。
「詳しくは後で説明するけど、空気を送り込むための道具。どんどん温度を上げていって、隕石を入れる」
本当なら鉄鉱石とか砂鉄を鉄にする作業なんだけど、隕石が対象でも理屈として同じはずだ。何度も何度も加熱しては叩いてを繰り返すことになるだろうから、炉から出し入れできる仕組みを考えないといけないな。
「そして隕石が柔らかくなってきたら取り出して、叩く! 叩いて、形を整えていって、冷やす。冷えてきたら柄をつけて、ハンマーのできあがりだ!」
『おおおおおおおおおっ!!』
喝采。拍手をする文化はないけどな!
「鉄作りはこの村にとっての挑戦になると思う。みんなの力が必要になる。協力して欲しい」
俺が言うとみんなはうんうんと頷いてくれたのだった。