気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
草原にて。
「クソッ! やっぱりここいらはアイツの縄張りなのか!」
俺は10人ほどを連れて黒い砂の海岸を目指していた。みんな蔓で編んだ籠を抱えている。せっかく見に行くのだから、砂鉄があれば砂鉄を、無くとも資源を回収してこようという寸法である。
それで初日にいきなり遭遇してしまったのだ。俺がこの世界にやってきた早々に遭遇した、巨大なマンモスに。
改めてみると絶望的な大きさである。地上最強の動物とも言われる象を二回り大きくしたような体躯の威圧感は凄まじく、連れてきた面々は表情を引き攣らせている。
「でかすぎる………迂回するか?」
「うーん」
アキラスが俺の肩を叩いてくる。
戦ったところで勝てるかと言うと、いくら鉄製の武器があるからといってもマンモスが相手では勝率は限りなく少ないと言えよう。あるいは犠牲を省みず立ち向かえば勝てるかもしれないが……。
マンモスを相手にするならば、落とし穴を掘ったあとで追い込むなり誘導して罠に嵌めたいところだ。罠もないのに戦いを挑むのは無謀にも程がある。
「迂回しよう。戦うなんて……うおっ!?」
急にマンモスが鼻を高く掲げたかと思えば、俺たちの方を睨み、一目散に掛け始めた。目測になるが時速30kmは出ているだろう。遅いと思うかもしれないがオリンピック選手の平均速度が35kmなので、素人の俺たちからすれば途方も無く速い。
「森に逃げろ! 逃げ切れなくなったら木の上に登れ!!」
正面から戦って勝てるはずもない。草原で走ったところで逃げられるはずもない。
森に逃げるしかない。障害物が多いし、いざとなれば木に登れるからだ。
「!!!!!!!!」
マンモスが鳴いた。マンモスもパオーンって鳴くんだなと変な感心をしてしまう。
「何で人間に襲い掛かってくるんだ!?」
「ええっ!?」
俺と一緒に逃げているアキラスがごもっともなことを言い始めた。
確かにマンモスからすれば人間なんて小さい生き物のはずで、積極的に襲う理由が分からない。
「子供がいるんじゃないのか!?」
「どこに!」
俺が考えていたのが子供が近くにいるからだ。子供が近くにいるので外敵となる人間を攻撃しているのではないかということだ。アキラスの言葉に俺は眼を凝らしたが子供らしき姿は無い。俺がこの世界に来たときにも子供はいなかった。
「森だ!!」
考えている場合ではない。森に逃げ込み、木の間を縫うように走る。人間と巨大マンモスでは体の大きさも違う。俺の目論見通りにマンモスは速度を落とした。
「俺たちが狙われてるみたいだ! 登れ! そこの木だ!」
速すぎて森の奥に逃げることができず、緊急的に木登りを強いられる。背負っていた籠を放り投げると、えっちらおっちら登り始める。
「早くいけ!」
「ケツ触ンなよ!」
俺が遅いとアキラスが尻を掴んで持ち上げてきた。非難の声を上げたが、そんなことを言ってる場合じゃない。
「!!!!!!!!!!」
怒り狂ったマンモスが木の下で大騒ぎしている。木に体当たりをしてみたり。その度に木がギシギシと揺れるが、流石のマンモスも木を折れるわけではないらしく、悔しそうに睨みつけてくるだけである。
「行ったか………なんであのマンモス人間を目の敵にするんだろうなあ……」
「子供がいないとなると、以前に人間に襲われたことがあるんじゃないか」
俺はアキラスの言葉に頷くとえっちらおっちら木を降り始めたのだった。
「行きに一日、帰りに一日かねぇ」
目標地点の川に到着した。今は下っている途中だ。
マンモスを除けば危険な生き物には出会わなかった。それはいいニュースではある。
「木が無いな」
「うーん確かに木がないなぁ。現地で鉄を加工するのはどうかと思っていたんだけど、木が無いんじゃ難しそうだなぁ。土も微妙な感じだ」
俺が考えていたのは現地で加工することだ。重くてかさばる砂鉄を運ぶよりも加工したものを運んだほうが楽だからだ。だが、砂鉄があると思われる地点の海岸は木が殆ど生えておらず、土も粘り気がほとんど無く、練って炉を作るには向いていない。
「おお、ここかぁ」
俺は早速海岸に下りてみた。柔らかい砂の上を歩いていくと、黒い砂が堆積している場所がある。白っぽい砂の堆積物の横から見てみると、長い年月をかけて堆積したであろう黒い砂があるのがわかる。
砂鉄かどうかを確かめるには磁石を使うのがいいのだが、そんなものはない。溶かして確かめるまでだ。
「みんなー、ここにある黒い砂を積めるだけ積んで帰ろう!」
『おお!』
俺は来ている全員に声をかけると、早速自分も籠に詰め込んでいく。砂鉄の運搬のために作った目のほとんど無い専用の籠だ。砂が漏れそうなところは葉っぱなんかを詰め込んである。運んでいるうちに多少の漏れはあるだろうが、誤差だ誤差。
「重いな……」
籠一杯に砂鉄を詰め込んで立ち上がろうとしたアキラスが呟いた。そりゃあ重いさ。
「長距離歩くことになるから詰めすぎはまずいぞ」
「確かに」
アキラスが砂の分量を減らす。一日は歩くことになるので積みすぎていると途中でばてることになりかねない。
俺も、歩いて帰れる程度の砂鉄を籠に詰め込んでいく。
「この砂があの鉄になるなんて信じられないな。黒い砂にしか見えないんだが」
「多分そうだろうと言うだけで確定じゃないぞ。溶かしてみないことにはわからない。磁石っていう道具があればわかるんだけど……」
「ジシャク?」
「方角を知ることが出来る道具だよ。いずれは作りたいけど、磁石の元になるものがないと作れないから難しいさ」
磁石が作れるようになったら、どこにいても方角がわかるようになる。磁鉄鉱があればいいんだが、探索不足なのか、そもそもないのか、無い以上は太陽を使うしかない。
「どこにいても方角が分かる………まるで魔法だな」
「科学さ」
などと話しながらも俺たちは砂浜から(おそらく)砂鉄と思われる物資の回収に成功したのだった。