気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
得られた情報はこうだ。
まず方角は分からない。太陽がどっちから沈んで昇っているのかはわかるが、方角はわからん。暫定的に昇ってきた方角を東、沈んでいく方角を西にしておく。北と南は……どうやって知ればいいのかな?
近くに海があるらしい。ゴツゴツとして岩場が広がっていて、砂浜もあるらしい。貝の採取、漁が期待できる。
川はここから山の方角に行った先にあるらしい。水の確保は容易だろう。
あとは、ドングリの実をたくさんつけている森。ベリーの木。
………十分すぎるな。海が近く川も近いというのがでかい。海は貴重な塩分供給源になるし、タンパク源として優秀な貝が穫れる。川が近いのも助かる。定住するにはうってつけの場所に思える。
川に近すぎると氾濫したときに巻き込まれるし、海に近ければ津波が怖い。そうなると、両方から程ほど距離をとりつつ、高台である山にも近いここはまさにうってつけだろう。火山かもしれない? 休火山であることを祈ろう。おあつらえ向きに木がないのもいい。岩が適度に転がっているのもいい。動かせないような大きさの岩もあるけど、あれは加工すれば何かに使えるかもしれない。
俺は群れのメンバーから聞いた情報を地図に描き込むと、横でその作業を見ていたアキラスに声をかけた。
「ここに住もう」
「ここに? ずっといたら、獲物が無くなってしまうのでは………」
「大目標を話していいか?」
「ああ」
俺は地図に四角を書き込んで、そこにVの字を書いた。
「農業をしたい」
「農業と言うと…………?」
あ、わかってない顔だ。
確か縄文時代にも栗やら柿の栽培は行われていたらしいし、なんなら米の栽培も始まっていたという。とはいえ現状の彼らの水準は農耕なんてまったく思いついていない段階なんだろうな。この星が地球だとすると歴史が変わるんじゃないか?
俺は草を摘んで見せた。
「草にしろ、木にしろ、生えてくるだろ。で、木の実をつける。その木の実を大地にたくさんまいて、木の実をとれたらどうだろうか?」
「……そんなことが可能なのか?」
信じられないといった様子でアキラスが俺のことを見つめてくる。可能なんだなぁこれが。
俺は草を捨てると、腕を組んだ。
「できる。そうすれば安定的に食料を得られるようになるぞ。やってみないか? いまだかつて誰も挑戦したことが無い取り組みになるけど………見返りは大きい」
「わかった。やろう。まず、なにをすればいい?」
「うーん、農業ってのは案外難しくて、一日二日でできるもんじゃないんだよなぁ……」
「一日? 二日?」
「つまり日が昇って落ちてくるまでのことを一日、それがふたつ合わさって二日な。まず俺が考えているのが家を作ることだ」
「家?」
あーもう。ありとあらゆる概念が未開発なせいで話がなかなか進まないぞ。
俺はアキラスが持ってきてくれたベリーを一つ摘むと口に放り込んだ。甘酸っぱくておいしい。いつになるかはわからないが、ベリーのお酒を作ってみたいね。
「そ。これ、この木で作った囲いがあるじゃない? これをもっと大きくして、風と雨を防げるようにしたもの。その中央に焚き火ができる場所を作って、みんなで寝泊りをしよう。そのためにこれを作ってみた」
俺は万を辞して自作の斧を掲げて見せた。刃のから少し外れたところに重りの石をくくりつけたもので、素手での伐採作業と比べたら圧倒的に早くできるぞ。
「斧っていうんだ。これを木に叩きつければ、斬ることができる。それで柱を作って、葉っぱで屋根を作ろう」
「………考えたことも無かった………今までは枯れて倒れた木を使っていたから……でもそんなに大きいものを作ると持ち運びが……定住か、定住だった」
移動生活の癖が抜けないらしいな。
アキラスがガシガシと頭を掻いた。
「神様。俺はとても信じられないが……でも信じるよ。その為に俺を使ってくれ」
「こき使ってやるからな、覚悟しろよ」
俺とアキラスは笑った。
翌日。
俺は早速群れの男衆を集めて、斧作りに取り掛かり始めた。
最初はみんな半信半疑だったが、俺が手ごろな木で斧の性能を実践してみせると、納得してくれた。やっぱり手が器用なやつというのはどんな集団にもいるもので、俺なんかよりもテキパキと斧を作れる人もいた。
「男衆は木を切ってもらって………で、女衆は採集……木の実を集めさせて欲しい。子供たちはどうすっかなぁ……アキラス、お前に任せてもいいかい」
「わかった。火の熾しかたを教えておく。ソーマは?」
アキラスは俺のことを神様扱いをしてくれるけれど、ほとんど対等な立場で接してくれる。非常にありがたいね。
「最初は斧、ナイフ、あとハンマーつくりかなぁ……」
「ナイフはわかった。ハンマーってのは……?」
「うん? 石と棒を合わせて叩けるようにした道具のことだよ。ものを砕いたりできるぞ」
「なるほど」
勘違いしちゃいけないのは、この時代の人は決して頭が悪いから原始人をやっているというわけではないということだ。発想や技術などの積み重ねがないだけで、俺たちと大差ないのだ。よって理屈さえ理解してしまえば、俺よりもうまくやれる人が出てきても不思議ではないのだ。
とりあえず、なんだかわからないままこんな世界だか時代にやってきてしまったわけだけど、なんとか生き延びよう。ほかの事は後で考えればいい。
「神様、どう固定するんですかね?」
「うん。この蔓をこうして………」
結び方がわからないものも多い。そもそも紐を結ぶという発想が無い人もいる。叩いて刃を作って、枝の先に結びつければ……斧の完成である。
人数分とまではいかないまでも数本出来上がればいい。
なぜ家を優先したかと言うと、寒さである。既に寒いのに、例えばこれから更に寒くなり雪でも降り始めたらどうだ。その前になんとか差し掛け式シェルターからの卒業をしておきたかった。
「戻ったよー!」
女衆が戻ってくる頃には、ようやく数本の斧とナイフが完成した。
女衆は大量のドングリを葉っぱに包んで帰ってきた。ふむ、籠があれば便利だな。
「名前教えてくれる?」
「アンセイカ」
「アンセイカ。ドングリってどう食べるの?」
「そのまま割って食べることが多いけど、苦くて食べられないのもあるから……」
アンセイカはドングリの一つをかみ締めて割って中身を取り出すと、俺に見せてくれた。
「砕いて水で混ぜて団子にして食べることが多いのよ」
「ふーむ。焼いたりする?」
「ええ。焼くとサクサクしておいしくなるの。みんなで作るから、できたら神様も食べてね」
こ、これが噂に聞く縄文クッキーか。丸呑みしているのではと危惧していたんだが、それはなかった。まあ肉を焼く発想があるなら団子も焼くよな。楽しみだな。
なんだかんだ言って、この原始時代は食べ物に溢れている。なにしろ人間の数が圧倒的に少ないので、ありとあらゆるところに食べ物がある。今晩は期待ができるな。
「はふっはふっはふっ」
俺は焚き火の前で焼きたてほやほやのクッキーを頂いていた。ナッツだな! 香ばしくサクサクしていて、素朴な味がする。が、苦味が強い。アク抜きをしてないのかもしれない。アクって毒だったような? ま、まあ、大丈夫やろ。……次はアク抜きさせよう。
思ったんだが、発酵させて膨らませて焼けばパンになるのでは……? やってみる価値はあるかもしれん。
「神様、あの斧でなにをするんだ?」
「ごめん名前教えてくれる?」
「アオセイカってんだ」
男性が声をかけてきた。セイカって言うと、クッキーを作ってくれたアンセイカと名前が似てるな。
「アンセイカとはどういう……?」
「妻だな。俺たちは族の名前を自分の名前につけるんだ」
ファミリーネームみたいなもんかね。結婚したら名前も変わるのかもしれん。
俺は、アキラスが隣にやってきたのを見つつ、地面のゴミを払った。
「話を戻すと、まず穴を掘る。掘り出した土を周囲を囲って雨が入らないようにする。斧で木を切り倒す。木を四本立てる。それで、こうして木で骨格を作って………上には穴を開けて…………」
自慢じゃないが俺はそれなりに絵が描ける方だ。教科書で見たとおりの竪穴式住居を簡単に土の上に描いて見せた。
「これを家と呼ぼう。雨風凌げてとっても温かいぞ」
「おぉ……そ、そんなことが……」
アオセイカが口に手を当てて驚いている。
アキラスは驚いた素振りはないが、絵と斧を見比べていた。
今日はもう遅い。眠るとしますかね。
ゆる原始時代で行こうと思う
10万文字くらいで完結できたらいいなと思います