気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
「クッソ! 殺意が高すぎるだろ!!」
村への帰路、俺たちはマンモスの襲撃を受けていた。なんてしつこいマンモスなんだ。どうやら俺たちのことを尾行してきたらしく、村すぐのところで襲撃を受けたのだ。
「やはり、こいつ、人間に攻撃されたことがあるんじゃないか!?」
俺と並んで走るアキラスが推理を述べる。
「それか子供を殺されたことがあるとかかもな!」
マンモスがいくらでかいとはいえ子供は小さくか弱い。分断するなり夜襲するなりすれば、子供ならば容易に殺せることだろう。人間を目の敵にしている理由を本人に問いかけても言葉が通じるわけが無いのでわからないが、相当な恨みがあることは明白だった。
このままでは追いつかれる。俺は砂鉄の入った籠を下ろすと、腰のナイフを抜いた。
「俺が時間稼ぎをするからみんなを呼んできてくれ!」
村に直接攻め込ませるわけにはいかない。
「だったら俺も!」
「わかった、俺が引き付けるから攻撃は任せた!」
男の一人―――弓を持っている―――が手を上げる。他のメンバーは大急ぎで村へと逃げていく。子供や老人を避難させないといけないからだ。
「俺もやる!」
アキラスが槍を構えて声を張り上げる。行けと行っても聞かないだろう。俺は頷くと、迫りくる脅威を睨み付けた。
「俺は死なないから! 神様だから! 俺が囮になるからさ!!」
説明している時間も無いので大声を張り上げると、ナイフを握って突撃する。
怖い。トラックのように巨大な生物相手にちんけなナイフ一本で戦うとは正気の沙汰ではない。けれど、逃げれば俺が心血注いできた村が蹂躙されてしまう。
「うおおおおおお!!」
全力でダッシュしながら右方向をすり抜ける! スライディングですれ違いながら斬りつけた!
が、だめ。マンモスからすれば薄皮を切られたに等しく、疼痛すら感じていないだろう。振り返りながら放たれる鼻によって俺は面白いくらいに宙を舞った。
「いっでぇぇっ………」
痛い。木じゃなくて草むらに落ちたお陰でダメージは比較的少なかったが……。
姿勢を起こすと怒れるマンモスが鼻を伸ばしてきていた。抵抗する間も無く掴まれ、おもちゃのように放り投げられる。木の枝に腹を打ち付けて、地面に落ちる。
「ぐ、ごののおおおお!!」
また鼻が伸びてきたので、ナイフを振り回す。鼻の皮を切った手ごたえがあった。
「おぇぇぇぇっ!?」
掴まれて投げられる。胃液が逆流していくのがわかった。
意識が遠のいていく。
「ぐっ」
踏まれるのが分かる。メキメキと骨が砕けていく音を聞いた。
あ、これ死ぬわ。
不老不死といっても、本当にそうかは………。
…………。
………………。
「しっかりしろ」
………。
「息はしてる………死なないといっていたのは本当だったのか」
……。
「傷が治っていく………ソーマ?」
「ああ……」
覚醒した。俺が意識を取り戻したのは自宅でだった。
知ってる天井。嗅ぎなれた焚き火。ぶら下がったコンブと干し肉。ずらり並んだ薬壷。
「死なないというのは本当だったんだな……」
視界にアキラスが入り込んできた。不安そうな顔をしている。
姿勢を起こそうとしたんだが、起き上がれない。下半身の感覚が無い。これは、あれか。背骨が逝ってるんじゃないか。
「下半身の感覚が無い」
「ああ、何せ踏み潰されて放り投げられた時に体が半分に折れていたからな。背中側に」
想像するだけで面白い光景なんだが笑ってる場合じゃない。不老不死と言えど回復には時間が掛かるらしい。ステータスを開いてみるか。
『脊椎破損』
『内臓破裂』
………うん! これ以上は見ないでおこう。
感覚が無いだけマシというか、頭がぼーっとするし心臓もバクバクいってるのでアドレナリンが流れすぎて痛さを感じないのだろうと思う。
「ヤツは………?」
「ソーマをボコボコにして俺たちにも襲い掛かってきたんだが、村まで逃げてみんなで囲んで戦ったら逃げ出したよ。怪我人は出たけど死人は出てない」
「よかった………」
ほっとため息をつく。目的は達した。骨折り損にはならなかったわけだ。骨は折ったが。
「あれがうろついている限り、俺たちの村は危険に晒され続けるだろうな」
「………」
悪いことに村の位置を知られてしまったわけだしな。人間に恨みがあるあのマンモスがうろついている限り、砂鉄を取りに行くことも厳しい。
「選択肢は二つある」
俺は言った。指を一本立てる。
「一つが村を放棄すること。マンモスに見つからない場所に逃げて最初からやり直すことだ。積み重ねてきた道具やら経験があるから、一からというわけにはならないけど」
村を移転すると言ってもゼロからのスタートではない。道具もあるし、種もみもある。しかし、また一から資源の位置を調べる作業があるし、移転先が農業に適しているとは限らない。場合によっては土壌を改良することになるかもしれず、その年は食べるものが無くギリギリの戦いを強いられるかもしれない。違う土地に行けば、未知の病があるかもしれない。容易いことではない。
二つ目の選択肢。ここでの生活を続けるということは、あのマンモスとの対峙を強いられる。勝利すれば大量の資源が入手できるが……。
俺は指を立てた。
「二つ目がマンモスと戦うこと。死人が出るかもしれない」
「戦おう」
即決だった。アキラスは俺のことを見つめながら言った。
「せっかくここに慣れてきたのに、また違う土地に行くなんてまっぴらだ。あのマンモスさえいなければいいんだ」
「わかった。みんなに話してみよう。多数決で決めたい」
「タスウケツ?」
「賛成と反対の数で、多いほうを選ぶ」
こればかりは俺一人の判断じゃ決められん。俺は不死身でも、みんなは不死身じゃないからな。全員不死身なら即決してたけど。
翌日。不死身っていいよな。一日寝たら大体治ってしまったよ。オープンワールドゲーの主人公かよ。まだふらつくし、呼吸が苦しいけど、数日寝たら全回復しそうだ。この調子だとミンチになっても治るんだろうなぁ。普通に痛いので死ぬほど苦しいんだろうけど。
で、俺は例のごとく村の中央にある岩に登っていた。ふらふらするので後ろでアキラスが支えてるけどな。
思えば村人全員を集合させて話をするのは初めてかもしれない。およそ100人が俺のことを見つめている。
「聞いて欲しい。この村が出来てから色々なことがあった。病から逃げてきた一団から全ては始まった」
アキラスとの出会いが思い浮かぶ。何も分からずこの世界? 時代? で目覚めて、導いてくれと言われてここまできた。
「石器を作って、狩りをして、農業をして………最大限努力したけど、人が死んで……」
俺も頑張ったけど、村人の死は避けられなかった。石鹸を作って出産時の死亡を避けようとしたけど、内出血が酷くて母親が死んでしまうこともあった。
「それでも俺たちは生きている。でも、みんなわかってると思うけど問題が起きた。マンモスだ。あのマンモスは人間に襲われたことがあるみたいで、人間を目の敵にしている! 選択肢は二つ。残って戦うか、逃げるかだ! 残って戦えば、死人が出るかもしれない。最悪、村が壊滅するかもしれない。逃げれば戦わなくていいけど、新しい土地で最初からやり直しになる。食べるものがないかもしれない。違う獣に襲われるかもしれない!」
俺は二つの選択肢の利点と欠点について話した。どちらを選んでもいい。だけど、ここはみんなに話しておきたかったのだ。
俺は岩に腰掛けた。ふらつきが限界だったのだ。
「戦いたいという人は手を挙げて欲しい。戦いたくないという人は、手を挙げないで欲しい。多いほうを、村の方針にする。しばらく話し合ってくれ」
俺が言うと、みんなは顔を見合わせてがやがやとああでもないこうでもないと話し合いを始めた。命がかかってるからな。意見がまとまらないだろうなとは思った。
いつまでも時間をかけていても仕方が無い。俺は手を挙げて、それから手でメガホンを造って声を張り上げた。
「はいはーい! それまで! 決められない人も、どっちかに決めること。もしどちらも選べない。村を出て行くと決心しても俺は責めない!」
まさかとは思うが、出て行こうとする人もいるかもしれない。俺はあえてその点を言った。
「挙手してくれ!」
ぽつり、ぽつりと手が挙がっていく。徐々に挙手は波のように広がっていって、全員が手を挙げていた。
「せっかく神様の作ってくれた村だもんね!」
「あんなデカブツにしてやられたなんて、ご先祖様に顔向けできないよな!」
「やってやろうぜ! 鉄の武器を試すいい機会だ!」
村人達が口々に声を上げる。村を去ろうと言う人は一人もいない。みんな決意に満ち溢れている。
「ということさ」
アキラスが俺の肩を叩く。
俺は大きく頷いたのだった。