気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
「二つの計画がある」
俺は例のごとく『職』を持っているものと、狩りが得意な面々を集めて話し合いをしていた。
相手は巨大なマンモスである。作戦もなしに突っ込んで勝てる相手ではない。
俺は一本指を立てた。
「一つが落とし穴。みんな知ってると思うけど、相手が来たら穴に落とす仕組みね。あのデカブツを落として這い上がらせないようにするには、大人の身長くらいは最低でも欲しい」
落とし穴ほど効果的な罠はないだろう。有蹄類の登坂力は目を見張るものがあるが、長鼻目はとにかく体重が重く一度掛かれば這い上がれないだろう。
「かかってくれれば、それで勝負は決まりだ。落とし穴に追い込むんじゃなくて、追いかけさせて引っ掛けたい」
うんうんとみんなが頷いた。次に俺は二本目の指を立てた。
「次が持久戦だ。罠にかからないということもありうるから」
『ジキュウセン?』
一同の声が重なった。
ここは人間の知恵を徹底的に使うしかない。
「攻撃に出る班を二つに分ける。片方が朝から夕方。片方が夕方から朝まで。一日通してひたすらマンモスに嫌がらせをする。遠くから石を投げたり、毒矢を放ったり、マンモスから離れたところから攻撃をして、夜は絶対に眠らせない。食事もとらせないくらいに攻撃する」
いくら強かろうと、昼夜を問わず
「ソーマ、それは………えげつないことを考えるな……」
まあ、アキラスがドン引きしてるんだけどね。仕方ないね。
「倍返しだよ。あのヤロウにやられっぱなしじゃ神様の名が廃るわ。で、みんなにはいくつか仕事をお願いしたい。狩りが得意なエアセナ一族は、人手を二つに分けて朝夜交代で出撃ね」
「おう」
エアセナがこくんと頷いた。
エアセナ君一族は狩りが特に上手い。流浪の民がことごとく飢えていたのに、エアセナ一族は食事をきちんと取れていたらしく健康なくらいだったからな。
「アスレイ君には、矢と弓の増産をお願いしたい。アキセイカ君も手伝ってあげて欲しい。鏃は、これと同じものにして欲しい。あとは槍かな。完成度は高くなくていいから、とにかく本数が欲しい」
弓は重要な武器だ。遠距離からダメージを与えられるからな。俺は『ギザギザ』のついた鏃を二人の前に置いた。
二人がうんと返事をしてくる。
「ゾイさん。毒って知ってるよね」
「もちろんですじゃ、神様」
そして今まで使ってこなかった手を使おうと思う。そう、毒だ。ゾイさんは長生きしているだけあって、どの植物に毒があるかを熟知している。もちろん俺だって知ってるつもりなんだけど、知識量じゃ及ばない。
「矢に毒を仕込みたい。即効性があって、火にかけると消える毒が最高なんだけど。紫色の花の毒って知ってる?」
一番いい毒というとおかしな表現になるが、トリカブトは毒矢にうってつけだ。よく目立ち、よく効き、加熱すると毒性が極小になるのだ。
「知っておりますとも。じゃが、この辺りじゃ見かけませんですなぁ……他の毒草ならば見つかるかと」
「お願い」
ゾイさんは頷いた。
「それから―――服装も工夫したい。アンセイカさん、狩りに行くみんなの服に葉っぱを縫い付けてほしい。全身草まみれになる感じ。草むらに隠れるのに役立つと思う」
俺は次にアンセイカさんにお願いをした。アンセイカさんは裁縫が得意なので、女衆を集めて服を作っているのだ。ようはギリースーツだ。象は視力が余りよくないので、ギリースーツを着てしまえばごまかしが利くだろう。聴覚と嗅覚が鋭いので、完全とまではいかないまでも。
「それから――――」
「ふんふふんふん♪」
俺は川に来ていた。村人たちに仕事の指示をして、自分も武器を作っていた。もちろん俺も出撃するつもりである。死なない特性を生かして矢面に立たねばなと。
で、俺がなぜ鼻歌を歌っているかと言うと、風呂に入れるからだ。
今まで風呂に入ってこなかったわけじゃないんだが、風呂って実はものすごく贅沢なんだぜ。大量の水を沸かして人間が入るって、人力でやることを想像してみて欲しい。
まあ、川にいる時点で水の問題は解決されたようなもんだけどな! 水を引いてきて岩で囲むだけさ。
どうやって風呂にするかって? 石を焚き火でカンカンに熱してからブチ込むだけだぜ!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛ん゛……生き返るわぁぁぁぁ!」
最高だね。
で、なんで風呂なのかと言うと、体臭対策だ。これから挑むマンモスは嗅覚がいい。風呂に入って体臭を落としていこう、そういうことだ。
もう気にならないんだけど、この時代の人間の体臭はすごいぞ。獣臭というのかね、濡れた犬みたいな体臭なんだよね。水浴びをたまにする程度だからな。これでも衛生状態は上がってるんだぜ。定期的に水浴びをせよと俺が習慣付けさせたんだから。
マンモス対策といいつつ早速入ってるのは、まあ、役得だよ、役得。これくらいの贅沢は許して欲しい。
俺は当然のことながら全裸だった。胸が浮いてきて若干邪魔である。
「お湯に入るのか……」
後ろから水音を立ててアキラスが入ってくる。当然全裸である。
男同士の裸の付き合いだな! いや体は女なんだけど。背中を見られたところで問題は無い。何も問題は無い。
「うっ、はぁぁ………なるほど、これは気持ちがいい。汚れもよく落ちそうだな」
「風呂に入る習慣をつけさせたいねぇ。人口が増えてきたら衛生状態も改善せんと」
「汚れは病のもとだったか。しかし、この風呂というものはなかなか準備が大変なんじゃないのか」
「そらそうよ。石を熱して入れてるだけだけど、まず火を熾さないといけないしな。温泉があればよかったんだけど、少なくとも調べた範囲じゃないみたいだしなぁ」
「温泉?」
俺は湯を掬って肩にかけながら説明をする。誰も見てないけど指を立てて。
「お湯が地面から吹き出してるところがあるんだよね。火山活動の活発なところでは良く見られるんだけど」
「お湯が!? そ、それは大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃない温度だったり、毒が入ってるのもあるから、全部が全部大丈夫じゃないけど、大丈夫なヤツも多いから、あれば入ってみたいよねぇ」
日本人並みに毎日入るようにとは言わないが、せめて数日に一回は風呂に入るようにしたいよなぁ。
「ソーマも狩りに行くんだろ。俺も同行する」
「おう、わかった」
アキラスを危険な目には遭わせたくないが、ついてくるなと言ってもついてくるだろう。だから一緒に行くことにしたのだ。
アキラスが背中合わせになるように腰を下ろした。
「準備が整ったらいこうな。狩りによ」
「ああ。狼煙を追っていけばいいんだな」
「そうそう、くれぐれも無茶はせず一発当てたらすぐ逃げるを徹底だぞ。いいところを見せようなんて思うなよ」
「承知してる。ソーマは死なないかもしれないが、俺は死ぬからな」
狩りの手順を話し合う。準備が出来次第開始なわけだが、数日あれば十分だと思う。穴掘りに時間が掛かるかもしれないが、そこは人口100人の力である。
「死なないように、おまじないをしてあげようか」
「おまじない?」
俺はくるりと振り返ると、たくましい胸板にしなだれかかると、唇を奪った。
「そ。無事に帰ってこられるようにって」
「……これはどんな意味が……」
「教えてあげないよーだ!」
俺はアキラスの顔面にお湯をぶっ掛けてやった。