気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
俺は子供たちと粘土をこねていた。
ぺちぺち、こねこね……。
そういえば、この時代にしては子供の数が少ないと思ってアキラスに聞いてみたんだ。
ぺちぺち、こねこね……。
『もっといたけどほかは全員病で死んだ』
とのことだった。かなしいなぁ。
病についてだが、何故か今いるメンバーはかからなかったそうな。病気に強いのか、かかったけど発症しなかったのかは謎だけど。
で、俺は家の建設を男衆に任せて子供たちと土器を作っていた。
川の傍にたんまりと粘土があったので、それをこねている真っ最中。
「うーん、うーん」
男衆は建設、女衆は火守と収集、俺と子供は土器作り。
なんだかだんだん技術力が上がってきた気がするな。
ぺちぺ……もういいよ十分だよ。
「かみさまー、かみさまつくったー」
男の子……アキセイカ君が泥人形を見せてくる。セイカ一族の長男である。もちろん何も身に着けていないので全裸だぞ。
俺はその物体を手にとってまじまじと見つめてしまった。
「こ、これは……」
人類初の土偶なのではないか? いやもしかするとこの星にいるほかの人類が作ってる可能性はあるんだけどな。
丸い頭に、突き出たおっぱい。くびれたお腹。
うーん、世界初の土偶がまさか俺になるとはな………面白そうだし、この土偶も乾燥させてみるか。
確か……一週間だか三日だか乾燥させればよかったはずだ。
ちなみに形状だが、凝った形状のものはナシにしている。とにかく器、器だ。模様もつけないことにする。下手につけてひび割れたら困るのでな。実用品なんだから。
「アキ君。うまいね、それはじめて作ったの?」
「うん」
「そっかぁ」
粘土遊びは子供の十八番である。粘土はいくらでもあるので、好きに作らせておこうか。この子供たちの中から陶芸家が生まれるかもしれん。
器の作り方としては、まず底辺を作る。次に、ひも状にこねた粘土を積み上げていき、つなげる。と言ったものだ。
「こういう器を作ってみようね」
俺は出来上がったそれを子供たちに見せてみる。ようはコップである。
「こういうのも作ってみようね」
俺は今度は鍋を掲げて見せた。煮炊きするにはやはり鍋である。
ふむふむ。やはりというか、不得意が明白に見られる。アキ君が作る器は、均一な厚さでそれどころか持ち手まで付いた鍋だったりする。この子は土器担当でいいんじゃないかなと思う。
「そうそう。よく揉んで、強く押して空気を押し出してねー」
子供たちの間を歩きながら指導する。
まるで先生になった気分だ。事実上この群れの指導者になったんだから当たり前なんだけどな。
「ん………?」
俺が言わないでも男衆は勝手に作業を進めていた。まあといっても各家族の父親とアキラス合わせて4人しかいないんだけどな。
何も言っていないのに分業が始まっていた。一人が穴を掘り、一人が木を切り、一人が藁やら葉っぱやらを集め、一人が組み立てる。
よく見てみると、三軒の竪穴式住居を作ろうとしていた。おかしいな。あと二軒あれば足りるんだが。
俺が何か言いたそうな顔をしているのを見たアキラスが寄ってきた。
「なにか?」
「あ、いや家の数が多くないかな」
「ああ。神様のためにもう一軒余分に作ろうかと」
「………!」
なるほど、見れば小さい竪穴式住居が出来上がろうとしていた。あれが俺の家か……。
ちょっとうるっと来たのでそっぽを向いた。
「その、土器っていうのはどう?」
「子供たちにやらせてるよ。何日か乾かしたら焼いてみよう」
「焼くと水を入れられるようになるんだな?」
アキラスの疑いの視線に俺はウィンクで返してやった。
「もちろん」
「その片目を瞑る仕草はどんな意味が……」
好奇心旺盛っていいよな。
数日後。乾燥した土器と土偶を野焼きしてみた。
「まずは火の熱で全体をまんべんなくあたためよう」
俺の指示の下、円形にまとめられた焚き火の周囲に土器を並べる。
いきなり火にブチ込むと温度変化で割れたりするので、まずは温める。次に、燃え尽きて下火になったところへ土器を移動させて、燃料を追加して再び燃やしてやれば……。
「できたぁぁぁぁぁぁっ!!」
『おおおおおおおおっ!!』
俺は冷ました鍋を天高く掲げてみんなに見せ付けてやった。
飾りこそ無いけれど、正真正銘の鍋の完成である! 俺は早速川にみんなを連れて行くと水を汲んで見せた。
「す、すごい……いままで手で汲んだり木の実に入れたりしていたのに……」
土器は人数分用意できている。みんな思い思いに水を汲んでは感動に打ちひしがれている。
やべーな。石器時代から一気に縄文時代にランクアップだぜ。
「じゃあ早速これで湯を沸かしてみようぜ!」
俺が言うと一同キョトンである。
「ユというのは……?」
例のごとくアキラスが聞いてくる。
俺は一同を連れて村に戻りながら説明する。
「空気にもあたたかい冷たいがあるように、水にも温かい冷たいがあるのはわかると思う。水を土器の中に入れて火にかけると、温かい水ができるッ!! そして、その中にお肉なんかを入れたりすると、おいしくなるっ!!」
人類の歴史はおいしいの追及であるとも言える。おいしくて、安全で、安いものを追い求めて地球の果てまで探求を続けてきたようなもんだ。
まずは湯を沸かしてみせよう。
湯。湯はいいぞ。人類のエネルギーの歴史は湯を沸かすことにあるようなもんだからな。
村(と呼ぶべきだろうな)に戻ってきた俺は、早速焚き火に石を置いて鍋を設置できるようにして、加熱を始めた。
数分後。ぷくぷくと小さい泡が登り始める。
「空気が生まれている!?」
「こ、これは一体……!?」
驚きを隠せないみんなを尻目に俺は徐々に温度が上がっていくお湯を見つめていた。
やがて泡がぶくぶくと立ち上るようになってきた。沸騰である。たぶん人類史上初の人工的に水を沸騰させた記念日である。
「この状態を沸騰といって、これ以上は熱くならない。っとぉ触ったらメッだよ?」
子供の一人が手を伸ばそうとしたので、俺はその手をすばやく掴んだ。
やけどは洒落にならんからな。
「触ると火傷といって、皮膚が溶けてしまう。触るときは、十分冷えてから。鍋を持つときは、例えば木の葉を間に挟むようにして、絶対に触れないように。わかったかーい」
『はーい』
仲のいいことだな。
一通り土器の使い方をレクチャーした後は、スープ作りである。
いわゆる縄文スープは魚やら木の実やらをそのままブチ込んで煮込むだけである。とはいっても何の味付けもしないのももったいないので……海水を汲んできて貰った。海水を適量混ぜてっと。
「魚は穫ったらすぐに内臓を取ったほうがいい。こうして、んん……」
俺はみんなに魚の捌き方を簡単にレクチャーしてみせた。内臓は食べられないことも無いけど寄生虫はもちろんのこと、魚が何を食ってるのかわからないので捨てるに限るな。死体とか食ってる可能性あるんだぜ?
しかし、ナイフが石器なので悪戦苦闘する。ようやく処理が終わった。あとは、魚とナッツ類を鍋に放り込むだけでいい。
ちなみに鍋といってもみんなで使えるようなでかいやつだぞ。
「縄文風ソーマのスープ、召し上がれ!!」
完成である。スープっていいよな、ブチ込んで煮るだけなんだもんだ。
早速俺は器にスープをよそってみんなに配った。ううむ、お玉が欲しいな。お箸も欲しいし。スプーンも………。誰か手先の器用な人に、木を加工させるか。塩も欲しいし……。
「あたたかい! おいしい!」
「この水? お湯、味が出てる!!」
ちなみにアキラスだが、
「………」
無言でスープを啜ってるけど表情は柔らかかった。
そういや海辺にコンブらしき海草流れ着いていたよな……。
ああもうっ! やりたいことが多すぎるぞ!!