気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
「これでヨシと……」
俺は村の真ん中にあるでかい岩に正の字を刻んでいた。
この世界にやってきて何日目という印だ。何しろ暦が無いので、なにもしていないと今日が何日なのかもわからなくなってしまう。とりあえず、一日の長さはあくまで体感になるが、地球と大差ないようだ。一年の周期も同じなのかもしれない。
今日やることは狩猟の道具の改良である。今までの石から、槍と弓に進歩させていこうと思う。石器作りができているのだから、槍は作れることだろう。
「さんきゅーなー」
子供たちが槍先を作っていた。石片を石で研磨して鋭く尖らせるように依頼していたんだけど、おお、結構出来上がっているじゃないの。
俺は子供の一人から受け取った先端を確認すると、あらかじめ用意していた木の棒にくくりつけ始めた。グルグルと巻きつけてしっかりと結んでみる。
「できたっ!」
「かみさまー、これ、どうやってつかうの?」
「これはね、獲物の体に突き刺したり投げつけたりするんだよ。先が鋭くなってるから、押し付けると刺さるってこと」
子供はあっと納得した顔をしてくれた。
俺は早速なので、これから狩りに出かけるであろう男衆の元に向かった。
男三人と、アキラスが話し合いをしている。どこにいくのか、取れたらどうするのかを話し合っている様子だった。
「よす。新しい道具を作ってみたから、試してもらっていい?」
「神様。その道具は……?」
ソス家、家長のザンソスさんが俺の姿を認めると、指差してきた。
俺は得意げに槍を構えて見せた。
「槍って言うんだ。これを投げつければ相手に刺さるぞ。直接刺してもいいけど。石を投げるよりも確実だと思うんだけど、使って感想を教えてくれるかい?」
「わかった。みんな行くぞ」
槍を持ったザンソスが男を引き連れて森の中に行く。
さてと、俺は村の中に戻って、各家庭を尋ねていく。頼んでいたことがあったのだ。何かと言うと、塩を作るということだ。塩は重要だ。塩を摂取しないと死んでしまうなどということは、この時代知られていない。基本的にこの時代は火は付けっぱなしである。というのも一度消してしまうともう一度つけるのに非常に労力がいるからだ。摩擦力で火種を作って木に着火するのは大仕事なのである。付けっぱなしなのであれば、いっそのこと海水でも沸かしていればいいのではないかと思ったのだ。
塩は料理にとって重要だ。海水をそのまま入れてもいいが、やはり塩の状態であるほうが使い勝手がいい。
塩田で海水を乾かして塩を得る方法と、海水を煮詰める方法があるが、気温がそこまで高くならないらしいこの辺りでは後者を採用した。
「あら神様。塩つくりは順調よ」
セイカのお宅にお邪魔すると、母のアンセイカさんが塩を作っていた。器の中の海水を煮詰めては、蒸発してきたら汲んできた海水をまた加えるを繰り返すだけの単純作業だ。
「ありがとう。塩があれば、もっと料理をおいしく出来るから、じゃんじゃん作ってくれよな」
「わかったわ。その料理っていうのも、時間あったらみんなに教えてね」
「いーよー」
セイカ、レイ、ソスの家を見て回ったが、作業がわからなくなっているということもなさそうだった。これで、料理や肉に手軽に塩を使えるようになるだろう。
俺は次に、海に向かった。岩の並ぶ海岸には無数の海藻類が漂着している。
そう、うまみである……ッ!!
人間は甘味、酸味、塩味、苦味、うま味を感じることが出来る。辛味? あれは痛さだよ。手軽に作れて、料理の質を向上させる方法は、やはり海藻類からうま味をとることだろう。難しいことはない。要するに干していつでも使えるようにして、料理するときに混ぜればいいのだ。
「よいしょー!」
コンブ(ぽい)海藻を掴んで川にもって行き、適当にブチ込む。
「ひえー! 冷たい!」
寒いので駆け足で海岸に生えている木の枝に乗せる! 以上だ。
え、それだけ? って思うかもしれないけど、本当にこれだけである。更に大量に質のいい乾燥させた海藻を作ろうと思うと、ずらっと木製の乾燥板を並べる必要がある。そんなものに手間をかけている時間は無いので、木にぶら下げるだけで十分なのだ。
あとは、待つ!
「ふんふんふーん」
海岸をぶらぶらと探索する。貝殻がたくさん散らばっている。何かに使えないかな?
………! カルシウム……! 焼けば良質なカルシウムが得られるのでは!? 石灰?と同じように土に混ぜれば……!?
こうしてみると、自然界というものは実に多様な資源に満ち溢れているなと思う。
俺は、貝殻でネックレスを作ることにした。綺麗な貝殻をいくつか見繕って家に持ち帰る。
「乾いた蔓を編んで………」
家が出来てから数日しか経っていないが、俺の作ったものがあちこちに置いてある。槍、ナイフ、ハンマー、瓶、お皿、服の代え、などなど。
そのなかから乾かしていた蔓を取って、数本を編みこんで一本にしていく。
それから石器で貝殻に穴を開けていく。ゴリゴリっとな。紐を通せば完成だ!
これが自分用。アキラスにも作ろう。
俺がせっせせっせと作っていると、アキラスが帰ってきた。
「どうだった?」
「よかったよ、ただ、その、取れた」
「ああー。改良が必要だなぁ…………」
「威力はすさまじかった。何本かもって行きたい」
「縛り方を変えて、子供たちにもっと作ってもらうようにするさ」
アキラスが石器が取れてしまった槍を差し出してきた。固定が甘かったらしい。縛り方も研究しないとなあ。
「イノシシが取れたからみんなで食べに行くぞ」
「おう、いくいく」
今日は宴だな!!
俺は槍を地面に置くと、アキラスの後を追いかけたのだった。
この時代の宴というのは、アレだ。アレなんだ。
酒はないけど、獲物をみんなで食べて大騒ぎするんだけど。食べて騒いで、それから、それから………。
「ソーマ?」
「ひふっ」
俺がガチンコチンに固まっているととなりにアキラスが腰掛けてきた。手に持った肉をガツガツと頬張ると、手についた油をピチャピチャと舐めとる。
「宴は初めてか?」
「酒がない宴は初めてだ」
「酒ってのはどんなものなんだろうな……」
「飲める人と飲めない人がいて、飲むと気分がよくなるんだけど、飲みすぎると吐いたりする」
「……毒か?」
「毒も薬も使い方次第よ」
「クスリ?」
「体をよくするもののことかなぁ……」
村の岩の前では、盛大にイノシシが丸焼きにされている。村人たちが肉を囲んで思い思いに時間を過ごしていた。
なんかあのでかい岩が村のシンボルとなりつつある気がする。というのも俺が毎日正の字を刻んでいるのを見た村人たちが何を思ったのか神聖なるものと思っている節がある。日付を書いているのであって、別に特別な儀式をやっているわけじゃないんだがなあ。
「…………」
「…………」
え、なにこの空気。
俺がお湯を飲んでいる一方でアキラスは黙っている。黙らないでくれよ、頼むからなんでもいいからしゃべってくれや。
「あっ、ふーん……」
仲がよさそうに語らっていた夫婦が物陰に消えていく。
察した。
ま、まぁ、今までギリギリの放浪生活だったわけで、気が緩んだんだろうな。群れの人数が増えることは賛成しておくぞ。増えよ満ちよってやつだな!!
「………あれってさぁ」
「………」
アキラスと目が合う。
「子供作ってみるか?」
「ぶべぼっ!? は、はぁっ!?」
おもむろに言われたので俺はお湯を噴出した。気道に入ったのか盛大にむせ返る。
アキラスが背中を擦ってくれる。
「あのね」
俺は説教することにしたが、アキラスのきょとんとした顔で考えを改める。
そもそも、恋愛して仲を深めてから子作りという発想が無いのではないか。そもそも自由恋愛で家族を作るということが一般的になったのは、ごく最近のことなのだ。それまではお見合いだとか、村がそう決めたからだとかで、恋愛のほうが後についてくるということもしばしばだった。原始時代において、いきなり性行為から入るというのも何もおかしなことではないのだ。
いやね、顔はいいと思うよ。性格も決断が早くて素直でいいと思う。けど男なんやぞ、俺男だぞ、あれでも今は体は女か、ってことは性行為したら生まれてしまうのでは……? 神様神様言われてるけど設定上魔族と人間のハーフなので、普通に生まれちゃうよな?
「はぁー…………だめ!!」
「そっか。なんでだめなんだ? 体調が悪いとか?」
「そういうんじゃないんだよ、その、アレだよ! こう………!!」
俺はしょげているアキラスの肩を撫でた。
「そ、そのうちな! そのうち!」
「そのうちがきたら子供を作ってもらえるんだな?」
「………あ、あぁいいともさ!」
言ってしまった………だって世話になってますしぃ? 大丈夫! 性行為したくなったりはせぇへんのや!!