気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
「かみさまーはちのすがあったー」
ある日子供が俺にそんなことを言ってきた。
「蜂蜜酒を作ろう!」
季節で言うと秋だ。幸いと言うか、この辺りは恵みが豊富なので、食べ物には困らない。少し歩ければ木の実があるし、ドングリはゴロゴロ転がっているし、海に行けば貝が岩場にひっついてるし、川に行けば魚が取れる。
そんな中で、やはり物足りなさを覚えてしまうのは『酒』がないからであろう。
酒の起源は不明だが、蜂蜜酒はその起源にもっとも近い酒の一つであろう。木の洞にあった蜂蜜に雨水が入り込み、自然に発酵して酒になったものを人が飲んで発見されたという説もあるくらいである。
作り方はシンプルで、蜂蜜を採取し、水を入れ、待つだけである。
そんなことで酒ができるのかよと思うのだが実際にそうだから仕方ない。酵母を入れられたら、成功率が高まるんだが。
「ううむ、俺が行くしかないか」
当然防護服などというものはない。というかまともな服も無い。
ミツバチの毒は弱いため、死ぬことはまず無い。が、治療方法がない原始時代である。ここは不死身の俺が身を張るしかないだろう。
生身で行くのも怖いので、自分なりに防護服を作ってみる。頭から被れる藁の帽子。顔を藁で隠して、体も藁でグルグルにして、腰は葉っぱのスカートを……。
「…………………なにをやってるんだ……? 蓑虫かなにかか……?」
服を作り終わったところでアキラスが家に戻ってきて、怪訝そうな声をかけてくれた。
「ちょっと蜂の巣襲ってくるから」
「そうか………なら俺が行った方が」
俺の不老不死設定を知らなかったっけ。というか説明しても絶対信じてくれないだろうな。
ちなみに、試しに指を石のナイフで傷つけてみたことがあるんだが、数分でかさぶたも無く治った。ということから察するに治るには治るが痛いってことだな。
とはいっても、アキラスに行かして顔面ボッコボコにさせるわけにもいかん。せっかくのイケメンが台無しになってしまうからな。それは人類にとっての損失に他ならない。
「んー、いや俺のほうがいいって。松明をこしらえてっと」
俺は松明を持ち、火をつけると外に出た。
「こっちこっち」
「行く行く。案内よろしくなー」
俺は子供の案内で蜂の巣がある場所に急行した。
森を歩く。最初この世界で目が覚めたときは足が痛くて仕方が無かったんだけど、今じゃ素足で森をダッシュできる。皮が分厚くなってるお陰なんだ。皮なめしの方法判明したらサンダル作るけどな!!
子供が立ち止まって前方を指差している。大きな木の洞のところに、ぶんぶんとミツバチが飛び交っているのが見えた。
俺は早速、松明を用意してきた別の松明に火を移した。獣の糞を乾燥させたもので、濃い煙が出るのだ。この煙で蜂の巣をいぶして、動きが鈍くなったところで巣を頂く。現代の人工の巣は。遠心分離機にかけられるようになっているが、天然の蜂の巣にそんなものはない。全部引っこ抜くと蜂へのダメージが大きいので、ある程度は残さないとな。
「離れておいてね。よいしょっと」
俺は子供を手で制すると、松明を落とさないようにしながら四つんばいで進み始めた。かっこ悪い? うるせぇ、カッコより確実性だ。
蜂の巣に接近していくと、ゆっくりと、木の洞に松明を近づける。中に空気を吹き込むのは危ないので、その姿勢でじっと待つ。
「そろそろいいかな………?」
程度がわからん。本当に煙で蜂の動きが鈍ってるのかもわからん。
松明を子供のほうに放り投げる。地面の上に転がった松明を拾い上げるのを合図に、一気に姿勢を起こした。
「蜂蜜頂いていくぜぇぇぇぇぇっ!!」
気合だ!
俺はがばっと洞の中に手を突っ込むと、ねばねばする蜂の巣を、ミシリミシリ言わせながら壊していく。
「いでででで! 痛い! 痛い! 痛い!! ハチがなんぼのもんじゃぁぁぁぁぁ! 死にさらせぇぇぇぇ!!」
刺されまくったけどな! 全然煙効いてないじゃないですかヤダー!
ど、どんくらいとっていいのかな? 全部取ったらまずいけどいだだだ!
ばきっ、みしっ、と巣を割って引っこ抜いて頭上に掲げて、逃げるんだよぉおおお!
「とったどぉぉぉぉっ!! 逃げるぞおらぁぁぁぁ!!」
俺はドン引きしている子供の横を全力ダッシュで駆け抜けた。
「前が見えねェ」
「神様だから蜂には刺されないと期待していたことは否定しないが………あえて言わせて欲しい。言わんこっちゃない………」
刺されまくりましたとさ。おもに顔を。
顔が腫れて目が開けられないくらいにボッコボコになって帰ってきた俺を見て、アキラスは笑うでもなく看病してくれた。
蜂の巣はゲットできたよ。
「その、サケってのはどうやったらできるんだ?」
「痛い!」
アキラスが容赦なく俺の顔を水で拭ってくる。
「手加減してくれよなー、まったくー。蜂蜜に関して言うと水を入れるじゃろ。あとは待つだけでいい。微生物の働きで………えーっと、目には見えない小さい生物の働きでアルコール、つまり酒が勝手に出来るんだよ」
「……………」
「あ、信じてないだろ。ほんとなんだって、ほんとじゃなかったら顔面ぼっこぼこになって帰ってこないでしょ」
「いや信じてるんだが、果たして、これだけの被害をこうむっても釣り合うものなのかと…………」
アキラスがあきれ返った様子で言う。
せやな。単純に酒を得るためにこんなことやってるだけならな。
でもな、俺は酒が欲しいだけでこんなことをやってるわけじゃないんだぜ。
「酒を作ることに成功したなら―――アルコールを蒸留して傷口の消毒が出来るようになるし、医療を大幅に向上させられるんだぜ!!」
ま、まあ、蜂蜜酒を作ってみて、アルコールが発生していることを確認した上で、ベリーとか穀物にちょっとだけ混ぜてみて―――みたいな工程が発生することは否めないんだがな!
アルコールの製造に成功したならば、医療は飛躍的に向上する。まさか傷口を熱湯消毒するわけにはいかんからな。アルコールさえあれば、今構想中の傷口の縫合も安全にできる。感染症対策にはうってつけだ。
アルコールの蒸留に関してだが、古代メソポタミアで既に行われていたらしい。理屈から言えば簡単で、酒を熱すると沸点の低いアルコールが水よりも先に気化するので、気化したアルコールを別の容器に冷却して液体に戻してやるという仕組みである。アキセイカ君に蒸留器を作ってもらおうと思っている。
「ショウドク? イリョウ?」
「つまり、死人を救えるようになるんだぜ!!」
「なるほど………ん? 傷が………ソーマ、傷が治ってきてないか……」
「ああ」
なんか前が見えるようになってきたなと思ったら、もうハチに刺された傷口が治ってきているらしい。不老不死様様である。
「治りやすいんだ。あんま気にするな」
「で、この蜂蜜をどうすれば酒になる」
「やってみるか」
俺は早速、蜂蜜酒作りに取り掛かることにしたのだった。