気がついたらオリキャラ(女)になって原始時代にいたけどメス堕ちはしない主人公君 ※ 作:キサラギ職員
どこがこの話のゴールなんだという
自室にて、俺は胡坐をかいて座っていた。
ゴリゴリゴリゴリゴリ………。
俺は薬を作っていた。
ステータスが見える能力(能力といえるのかわからないが)のお陰で、草を食べるだけでどんな効果があるのかがわかるので、早速薬の製造に着手していた。漢方薬のそれに近い。
雪がちらつき始めた今日この頃。村では、せっせと冬の支度に入っていた。あるだけのベリーを毟って、ドングリをかき集めてクッキーにして、獲物のジャーキーを作り、魚を釣っては塩漬けにしてと。
俺の提案で、出来る限り冬の間は外にでないようにということにしたのだ。食料が足りなくて狩りをするのはやむをえないが。
動物の骨を使って針を作って、腱を使って簡単だが裁縫ができるようになったが、肝心の毛皮がね………どんどん腐っていくのだ。なんとかくさらないように『皮なめし』処理ができるようにならないといけないが………なんだったかなー、なにかで煮込んでたと思うんだよなー。
とにかく、ろくな服も無いのに冬うろつくのは危険性が高いとして、食料と燃料の備蓄を急がせているのだ。
俺は力仕事が余り出来る体ではないことがわかったので、能力を利用して薬を作っている。ということなのだった。
「下剤に整腸剤に熱さましっと」
草なんだが、とにかくまずい! 俺がヤギだったらおいしいのだろうけど、人間(ハーフだけど)なので、まずい。苦いのもあるし、ピリピリくるのもあるし、というか当然の如く嘔吐してしまうこともあるので。非常に辛いお仕事である。
「とにかく子供、子供なんだ。絶対にこの村で死人は出させないぞ。絶対だ」
今のところ死人は一人もでていないが、この先間違いなく死人が出る。寿命ならいいけれど、病や事故、あるいは戦いになるかもしれない。そんなときに薬があれば、救えるかもしれないのだ。特に死にやすい子供をなんとか守りたいのだ。
そんなこともあり、俺の部屋は今判明している薬を粉状にしたものが詰められた壷が並んでいる。
将来を見据えて、傷口の縫合ができるように細い針も作るつもりだ。糸? 髪の毛だよ。
「手軽に魔術かなにかでさらっと治療できればいいんだけどなー……」
ファンタジー世界だと謎の治療魔術やら奇跡やらがあるけど、使えればいいなって思う。
使えればどれだけ便利なことか。火をつけられるだけでだいぶ違うぞ。この世界の火熾しは往復摩擦式なんだぞ。そうだ、回転摩擦式も研究しないと………。
「やることが多い……やることが多い……!」
幸いというか、薪と食料はなんとかなりそうなので、冬は研究開発に時間をかけるべしだな。やることは山積みである。蜂蜜酒の世話もしないといけないしな!
村人の中でも、役割分担は出来てきている。男衆は狩りや力仕事。女衆は収集と家事。子供たちは道具作り。まあ全員駆り出すわけにはいかないんだけどな。火を守らないといけないので。あ、火と言えば火打ち石があれば……?
「うーん、うーん、うーん……」
「ソーマ。少し休め。神様が体調を崩すとは思わないが、神様にだって休息は必要だと思う」
「アキラスか。休んでる場合じゃないんだわこれが」
俺の対面に腰掛けていたアキラスがお茶を注いでくれた。
お茶。お茶といってもネコジャラシ?(エノコログサという名前だったはず)を焙じたものだ。本当にそうかはしらん。見た目はすごく似ているのでそう呼んでいる。
なぜこの草かと言えば―――。
「ふふふっ………春が待ち遠しいなあ」
この草を、栽培してみようと思うのだ!! そのために腰が痛くなるまで毎日毎日毟って来たのだ。
確かネコジャラシはアワの原種だったはず。生命力もたくましく、村の傍というか村の中にも群生している程だったので、大量に取ってきて種を取り撒けば、穀物が得られるかもしれないのだ。一粒一粒が小さいので、とにかく大量に取って一気に脱穀してみようと思う。粒を解体してみたけど、籾殻を外す必要はないと思う。脱穀の道具は今考え中だ。
いかんいかん。何を見ても研究が思い浮かんできてしまう。
俺はアキラスから受け取ったネコジャラシ茶を啜った。玄米茶みたいで美味しいぞ。
「それを育てて………育ててどうするんだ?」
「ここに粒粒がついてるでしょ。これを取って粉にして水を加えて焼けば食べられるぞ。まあそのまま食ってもいいけど、どうせ食べるなら美味しいほうがいいでしょ」
アキラスが乾燥させたネコジャラシを壷からとってまじまじと見ている。栽培という概念がないので、栽培させたところでどうするんだよと思ってるんだろう。
「信じるよ。うまくいくといいな」
「春だね。とにかく春になればたくさん生えてくるから、片っ端とって……ああああっ!」
そこで気がつく。
大声を上げた俺のアキラスがぎょっとする。
「どうしたんだ?」
「畑を耕さなきゃ……」
「ハタケ?」
「木とかをどかして石とかも取った土しかないところ!」
「そんなの………この近くにあったか? なかったと思うが……」
ううむ。根本的なことを見落としていたようだ。ネコジャラシを栽培するための場所が無い。確かに村は木のない開けたところにあるが、農業を始められるほどに場所があるわけじゃない。村の外側に向かって森を開拓する必要がある。
どこか違う場所を探してもいいけど、やはり畑は近い場所に限る。川も近いしね。
「森を切り開くしかない…………いや、ううん」
「うん?」
「焼くか」
「はぁ!?」
俺が唐突に不穏なことを言うと、アキラスが身を仰け反らせた。
そうだ、ちまちまやらんでも森ごと焼いてしまえばいいんだわ。焼き畑農業だ。もっとも、無秩序的に燃やすと俺たちの村まで燃えてしまうので、計画的に燃やさないといけないわけだが。
「森を燃やしてそこに畑をつくろう」
「そ、そんなことしたら俺たちの家も燃えてしまうのでは……!? 手元から離れた火は恐ろしいんだぞ」
「大丈夫。一定区画以外には燃え広がらないように木とか草を取り除いてからやれば」
「燃え方は制御できるのか………知らなかった……」
原始人にとって火災はまさに天災そのものだったに違い。情け容赦なく全てを焼き尽くしていく熱の壁。触れるものの命を奪い、恵みを灰に変えていくものだ。それが制御可能なものであると知り驚愕を隠せない様子だった。
「簡単に言うとね。でも俺も実践してみたことがないんだわ。燃えるものを取り除けば、火は広がらないことを利用して一定区画のみを焼く。灰がいい栄養になって作物も育ちやすくなる」
「エイヨウ?」
「なんて説明すりゃいいのかなぁ………」
ちなみに翻訳できない単語は日本語でしゃべっている。概念自体存在しない単語ばかりなので、村の面々からすれば俺は神の言葉をしゃべっているように聞こえていることだろうな。
アキラスがことあるごとに疑問系になるのは、俺が未知の単語を喋るせいなんだろうなと思う。
俺は手をパンと打ち合わせた。
「とにかく、やってみような」
「春が待ち遠しい。ソーマは俺たちの知らないことをたくさん知っているから、春になったら、もっと色々なことをやってくれると信じられるから」
「まだまだこき使ってやるから覚悟しておけよな」
俺とアキラスは顔を合わせて笑った。