景色が暗転したらそこは電子空間とでも言うべきか、そんなサイバーな所に俺は居る。体を見て見ようと視線を降ろすがそこに足や体はなくあるのは手だけだった。
「なんか昔なんかで見たVRみたいだな……」
するとどこからか音声が聞こえだす
『ワールド・エタニティへようこそ、これから貴方の分身を創造します』
合成音声の様な声がそんなことを言うと目の前に光の粒子が集まり俺そっくりの分身が現れ、手の近くには半透明のウィンドウが現れる。
『これから貴方の基本となる身体を作ってもらいます、ウィンドウに従い自由に操作してください』
「なるほどな、ならいっそかっこよく……」
と遊び半分で一気に鼻を高くしようとしてみたが1㎝も動かずに止まってしまった。
「あれ?」
頭に? を浮かべながら口、目、眉と色々動かしてみたがどれも1㎝以上は動かず形も変えられなかったし身長や体格も背伸び程度しか変わらなかった
『現在幾つかの操作は制限を受けています、世界のどこかにある「幻想の仮面」を入手する事で制限を解放できます』
「なんでそんな事を……」
と考えてみたが例えば180㎝の奴が最初から100㎝にしたらまともに体を動かせないから装備として簡単に変更できるようにすれば大丈夫……? という事なのだろうか。
「まぁいいか、なら髪をちょっと弄ろう」
髪型はかなり自由だったので少し髪を伸ばして黒髪のまま銀髪のエクステを一房つける。
「……うん、悪くないだろ!」
ノリノリで決定すると光の粒子が集まって手だけだった俺に体、顔、足が作られていく。
光が収まるころには今作った通りの俺がいた。
「ちょっと華奢になったか……? でもいい感じだから続行!」
次に進むとステータスの設定に入った。
ここでステータスについて説明しよう。
このゲームはジョブステータスと基礎ステータスがある。
ジョブステータスは各職業に就くことでその職業に応じたステータスが伸びる、例えば定番の戦士なんかはSTRの値が伸びやすく逆にINTなんかは伸びない。
そして基礎ステータスだがこれは職業とは関係なしに伸びる能力だ、こちらはこのキャラ育成の時点で才能、つまりステータスの伸びの良さを決める。今は
カサナシ
Str : 0 Dex : 0 Vit : 0 Agl : 0 Int : 0 Luk : 0 Min :0
でこれにそれぞれ割り振る事でジョブと同じように伸びていく、例えば振り方によってはジョブが戦士で基礎をINTやMINに振ればMPも多くて魔法耐性もある魔法戦士ができるのだ。もっとも基礎をSTRやVITに振った戦士の方が活躍するしそもそも戦士は魔法を覚えない、スキルにもまぁMPは使うがINTの無駄遣いだろう。
最初に与えられたポイントは40、これを割り振っていくのだが俺のステ振りはこれだ!!
カサナシ
Str : 5 Dex : 5 Vit : 5 Agl : 5 Int : 5 Luk : 10 Min :5
うん、正直どのジョブになりたいとか考えてないしこれが現状一番いいと思う。LUKはまぁ高いほどいい事あるだろ、それにどこかの街で基礎ステータスを振り直すことが出来るらしいし。
「最後はどの街に降りるかだな」
ウィンドウに表示されるのは空に浮かぶライヤーを除いた四つの国、俺は迷わずジアを選ぶ。
『お疲れ様でした、まもなく転移が始まります』
その声と共にウィンドウが消滅し俺の視界も白く染まっていく。
……次に目を開けると馬車の中にいた、自分の体を見て見るとまんま中世ファンタジーのような布の服に布のズボンを履いた俺がいた、武器らしきものは何もない。
「……すげぇ、本物かよ」
外に視線を移すとそこは草原が広がる広大な土地があった、所々にモンスターや動物が歩いていてまるで異世界に来てしまったかのような錯覚を覚える。思わず身を乗り出すと馬車が強く揺れ
「ぐえっ!?」
落ちてしまった。
「ちょ、待ってくれよ!?」
必死に呼びかけるが悲しいことに馬車は遠くに見える街に向かって行ってしまった、途方に暮れるがジアで待っている流星もいるのだ、途中でプレイヤーに会えることを祈りつつ街に向かって歩き始める。
~~~~~
どれくらい経っただろうか、一時間は確実に経っている事だけはわかる。肉体的よりも精神的に疲れた俺は近くの岩場に座ろうと歩みを進めると
「プギュッ!」
「うん?」
なんか踏んだ、思わず足を上げて靴の裏を見ると透明なぷにぷにしたものが張り付いており地面を見ると透明なスライムの様なモンスターが目を回して倒れていた。
そのままスライムは塵のように消えてしまい直後に
『レベルアップしました』
「は?」
と音声が流れ思わずステータスを見ると俺の基礎レベルが5も上がっていて『無職』というジョブもレベルが5まで上がっていた。焦ってログを確認すると
『クリスタルスライムを倒した』
という一文と共に序盤では破格の量の経験値が入っていた。
「明らかに今踏んだ奴だよな……あれで倒れたのか……」
「おーい! そこの君!」
俺に向かって声をかけてきた奴らを見るとこれまたファンタジーな鎧やローブに身を包んだ冒険者二人が現れた。
「はい?」
「君もプレイヤーだよね?」
「あぁ、そうだけど……」
「この辺にこう……透明で小さいスライムがいなかったかい?」
その言葉に俺はぎくりとした、だってさっき踏んじゃったもん。
「そのスライムが何かあったのか?」
「あぁ、なんでもクリスタルスライムというレアモンスターらしくて倒したパーティの各レベルを確定で5上げてくれるという超レアなモンスターなんだ」
「なんだそれ!?」
「最初は恩恵が少ないかもしれないが確定で5も上げるという事は上位になればなるほど貴重な存在なんだ、是非とも捕獲したかったんだけど……」
「あいつレベルに合わせてすばしっこくなるしすぐ逃げるのよ! ギリギリまで追い詰めたのに逃げられちゃったの!」
騎士風の男に続いて魔法使いの少女も答える、どうしよう、今すぐ逃げ出したい。
「所で君はどうしてここに? 見たところまだジョブにもついてなさそうだけど」
「あー、俺さっき馬車から落っこちて……」
「え!? そんなイベントあんの!? 馬車襲撃イベとか!?」
魔法使いの子が食いついてきたので思わずのけぞる。
「いや、身を乗り出したら落っこちただけだよ……」
「なにそれ? ていうかあれ途中下車出来るのね」
「僕も思いつかなかったな、それなら街まで送ろうか?」
「いいのか? クリスタルスライムを捕まえるんじゃなかったのか?」
「流石にもうデスポーンしてるよ、それにこれも縁だと思えばいいしね」
罪悪感が残るがお言葉に甘えて連れて行ってもらう、パーティを組むのは経験値を貰う意味がないからと遠慮しておいて道中二人の話を聞く。
「それじゃあ二人は友人同士なのか」
「うん、ユリとは幼馴染でね。春休みを利用して今回のサービス開始に一番乗りさ」
「ロズってばサービス開始の一時間も前から電話してきてずっと話していたのよ? 電話代が楽しみよ全く」
「仲がいいんだな」
「うん、カサナシも友達と始めたんだよね?」
「あぁ、こんだけ待たせたんだから怒られるかもな」
「まぁまぁ、理由を話せば笑ってくれるよ」
「そうね、サービス開始直後とはいえオープニングの馬車から落ちるなんて初めて聞いたもの」
「許してはくれないのか……」
他愛ない話から二人のジョブ……「ナイト」と「黒魔導士」について教えてもらったりしながらようやくジアに着いた。
「それじゃあ僕たちはこれで」
「あぁ、何から何まで助かった」
「待ち合わせならこの先の広場に行ってみるといいわ、待ち合わせ場所としては最適よ」
「わかった、それじゃあな」
言われた通りに噴水のある大きな広場に着き、流星を探す前にジョブを考えようとステータスを開くとそこに変わったものが表示されていた。
「なんだこれ…?」
カサナシ LV5 無職 LV5
無職スキル 職業体験
ユリとロズは今後も登場するかもしれないししないかもしれません。