ロックマンエグゼ:実績『見損なったぞカーネル!』『負けないアイ』開放ルートRTA   作:ヌオー来訪者

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・Eメール
from:プライド
to:星方九十九
subject:先日の事件について

 先日の事件について本当にありがとうございました。貴方がいなければこうして国に戻る事は叶わなかったでしょう。
 残念ながら今回はあまりデンサン埋立地の観光は出来ませんでしたが、差し支えなければ、またいつか案内してくださいね。

 それともう一つ。
 コブン人形のお礼も兼ねて。これをどうぞ


添付データ:
名称:キングダムクラッシャー【K】
種別:バトルチップ(メガクラス)
テキスト:前方に目掛けて敵の守りを砕く鉄球攻撃!
性質:ブレイク性能、貫通。ヒット時のけぞり無敵
威力:100〜(攻撃力変動)


Part18+ ERROR

『大規模マリンハーバーテロから数日。ベイブリッジの爆発など騒動の傷跡が生々しく残る中、復興の程はどのようになっているのでしょうか? ただいまスタジオと中継がリンクしています。現場の緑川さーん!?』

 

『はーい! こちら緑川ですっ! 安全確認が完了してから当時のベイブリッジ建設業者指揮による修復作業が始まっており……』

 

 

 

 あれから──。

 マリンハーバーやデンサン埋立地はてんやわんやの後処理に見舞われていた。

 

 

 何せ、爆破されたベイブリッジの修復、お縄にされた輩への尋問、ネオゴスペルについての情報収集。

 人手不足のオフィシャルも猫の手も借りたい状態で、九十九も慣れない事務処理からマリンハーバー周辺のエリアの巡回とメンテナンス用プログラムくんの護衛と九十九の睡眠時間をこれでもかというぐらいに削り倒した。

 体力は減り、増えるのは体重と空のカップ麺の容器くらいだ。

 

 オフィシャルセンターのいつものデスクでテレビを見ながら漫然とカップ麺を啜っていると久々にバレルの姿を見かけた。

 

「事件以来っすね、バレルさん……」

 

「随分と憔悴しているな」

 

 そう他人事のように漏らすバレルも目元が仄かに黒くなっており、かのクラフトとの因縁が彼を悩ませていたのだろうことは想像に難しくない。

 

「ここしばらくは休めそうにはないですわ。あのオフィシャルの裏切り者も出た訳ですしね」

 

「……VAVAとかいうナビのことか」

 

「そうです。何故か俺を9番目とか言ってた訳のわからん奴です」

 

「お互い裏切り者には苦労させられるらしいな」

 

 あのクラフトというナビもあまり詳細は知らないが元アメロッパ軍のナビであることは確かだ。あのライデンを配置できたのもそれが理由だろう。九十九もバレルも裏切り者に悩まされているという裏切り者ラッシュのせいで他人が信用できなくなりそうだ。

 九十九は海よりも深くため息を吐いた。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「何処から話そう」

 

「じゃあ、クラフトとウェルナーとやらが何処から来てるのかについて」

 

 場所を移し、オフィシャルセンター屋上。屋上なら人の数はほとんどなく落ち着いて話ができる気がしたのだ。

 クラフトとウェルナーについて概ね想像はついているものの、バレルの口からの説明が欲しかった。

 何の説明もなく勝手に話を進められても困惑してしまうだけだし、それに次に自分たちが取るべき行動も定かにならない状態であんな危険な相手とやり合わねばならないのは些か怖いものがある。

 

「オレがアメロッパ軍に籍を置いていたのは覚えているな? その時同じくウェルナーという男もまたアメロッパ軍の同期だった」

 

 だからライデンを配置できるだけのツテはあったということか。

 

「……優秀な男だった」

 

「だった?」

 

「あぁ。奴はオレが除隊するよりも先に除隊してしまっている。あぁして奴に会うのも数年ぶりだ」

 

 思わぬ再会、と言ったところか。

 何故除隊されたのか気になるところだったが今は訊く必要はあるまい。おそらくアッフリク内戦のことのような、そんな気がしたのだ。

 九十九はバレルと屋上に上がる道中適当に買った缶ジュースを呷る。──なぜか薬品というか、杏仁豆腐のような味がした。

 

 ──ドクペじゃんこれ

 

「クラフトというナビはカーネルを参考にして作られた当初のアメロッパ軍でも屈指の性能を持つナビだった。事実、ナビ200体を単騎で破壊せしめたという実績もある」

 

 そう、バレルは淡々と語るが200体はおかしいだろうと心の中で突っ込んだ。

 しかしそれだけの力があるのならあの妙な威圧感も納得できる。ブルースとカーネルの乱入が無ければ連戦で疲弊した九十九とゼロは消されていてもおかしくはない。

 

「奴が去ったのは数年前。……アッフリクの内戦があったのは知っているか?」

 

「……アメロッパ軍が介入したというアレ、ですか」

 

 実の所九十九もあまり詳細は知らなかった。

 単純にマスコミの関心が薄かったのだろう。当時はアメロッパもしょっちゅう諸外国の内戦に介入しまくっていたという背景もあって報道もほぼされておらず、アメロッパがアッフリク内での民族対立に対して介入した以上の情報は出回っていない。

 一応マイナーなフリーの記者がレポートをまとめている程度で自分から調べない限りは知りそうにないものだ。

 

「そうだ。そこにいたのはオレと奴の部隊だった。当初は双方の矛を収めさせる為にアメロッパ軍は圧倒的な軍事力と、電脳制御された兵器でアッフリク側の2軍を圧倒していた。だが……」

 

 それは長く続かなかった。ということか。

 

「これが単なるメンテナンスミスなのか、外部からの妨害なのか。今となっては分からない。……保有していた電脳制御の歩行戦車が暴走。兵士たち数名が死亡、野戦病院も襲撃し後方諸共味方に甚大な被害を齎した。その時に部隊を戦線で指揮していたウェルナーは現行の兵器体制に異を唱えたが黙殺され、職を辞した」

 

「……あぁして賊になったのは何もしてくれなかった恨み、ですかね?」

 

 今のネットワーク社会の隆盛に関して切り捨てられたものは少なくはない。

 劇的な利便化に伴う社会構造の変化と当初未熟な技術は数々の犠牲者を生み出していた。結果的にこの先起こり得る悲劇を未然に防ぐことが出来ているのが救いではあるが、犠牲になった側としてはたまったものじゃないのだろう。

 無論、復讐として巻き添えを喰らう側もたまったものでもないが。

 

「あくまで推論だ。真に受けるな。……で」

 

 俺は話したぞ。と言わんばかりに無言の促しが九十九に飛んでくる。

 そっちもそっちで知りたい情報があるのだろう。とはいえ──

 

「次は俺ですか。……偉い人から訊けなかったんですか?」

 

「結果から言えば渋られた。なにせ俺は外様だ、それに向こう側としてはあまり話したくないらしい」

 

「あぁ、そういう」

 

 メンツもあるのだろう。

 まさか裏切り者が出たことで自国のスクエアに大打撃を与えてしまったなんてこと誰が好き好んでやるものか。

 とはいえ現在進行形でマリンハーバーに牙を剥いている以上、黙っているわけにはいかなかった。

 

「VAVA……オレがオフィシャルに入った辺りの時期に導入されたネットナビです。オペレーターは丈下という男……彼らは非常に高いオペレーティングスキルを持っており、当時のオフィシャルネットバトラーとしては5本の指に入ると言われているほどだった」

 

「だった、か」

 

「そう。『だった』……ただその分問題も無いわけではなかった。犯人を倒す為に一つの集団を丸ごと焼土へと変える。それが彼。丈下とVAVAというナビだった」

 

 仮に一つの船があったとしよう。

 そこに一人犯人が紛れ込んでいるとしたら、その船を犯人も同乗者諸共沈めるのが彼らだ。

 事実、とある小さなスクエアに違法プログラムの販売を行なっている大規模な犯罪組織の住処があった際はその場に居合わせた商人や来客を無差別破壊してしまった。当然組織は壊滅と大金星だったが、そのスクエアは再起不能となった。

 とはいえ違法プログラムが一時期猛威を振るっていた背景とあり、1週間程度の謹慎程度で済まされた。

 

 が、それでも罰せられたのが不満だったのだろう。始末書の内容も酷いものだったという。

 その後も自身の意に沿わない味方を吹き飛ばし、「テストしてやる」という名目で新人オフィシャル職員のPCに無意味なまでの負荷をかけオーバーワークを強いる。

 

 その結果、事情を知らない上層部から無意味なまでの叱責を受け続けた結果一人が──身を投げた。

 ふざけた話だ。当然上層部が真相に気付いたのは後の話。慌てた上層部が丈下とVAVAを呼び出し丈下はライセンス剥奪。VAVAはナビ刑務所に幽閉。で、組織の入れ替えやらが行われ綺麗さっぱりVAVAたちの痕跡を消しとばした……されたはずだった。

 

 

 今年の夏頃にナビ刑務所から何者かによってVAVAは脱獄。追放済みの丈下は行方知れずという有様だ。

 今になってようやく姿を見せたが、今度は元アメロッパ軍のナビと共に現れマリンハーバーを大惨事に導いた。

 

「奴の狙いは何だ」

 

 バレルとしては背景より直接的な狙いの方が気になるのは当然のことだ。特に現在進行形でテロ行為を行なっている人間がオフィシャルのメンバーだったことを考えると脅威なのだ。とはいえ──

 

「知りませんよ。順当に考えれば自分を認めなかったが故の復讐でしょうけど、更に訳がわからないのが、奴が俺を9番目と呼んでることです」

 

「自分を認めなかったが故……か」

 

 その時のバレルはひどく遠い場所を見ているようだった。屋上から見える海の向こうには何も見えないはずなのに、バレルには何か見えているような気がしてならなかった。

 一体何を見ているのか皆目見当もつかないが。

 そこから何事もなかったかのようにバレルは九十九に向き直った。

 

「その9番目とやらに心当たりはないのか?」

 

「ないですね。俺の名前以外ないです。ホラ、九十九ですし」

 

 と、軽くふざけてみたもののバレルが笑うことはなかった。いやまぁ当然だけれども。ディンゴや日暮ではないのだ。

 話を戻そう。VAVAについては知らないことが多過ぎる。

 訳知り顔でかつて新入りだった九十九にも絡んできていたのは記憶に新しい。

 任務に失敗すれば「失敗作がしゃしゃり出るからだ」と吐き捨てる。俺が何かやったのかと気になりはしたが、奴の性格上と九十九自身が関わりたくないという思いもあり、彼の行動理念はついぞ知ることはなかった。

 

「にしても。ウェルナーとやらにVAVA。そしてこの犯行声明で出てきたっていうコイツ……」

 

 九十九はおもむろにPETの画像データを開くと、ニュースに掲載されていたゴスペルを名乗る謎の男の画像が映し出された。

 浅葱色の長い髪をたなびかせ、先端はピンクや青に光っている。そして白い肌に赤い瞳。首から下を覆う漆黒の外套。大凡人間とは思えないその出立ちはオフィシャルがかつて押収した旧ゴスペル首領が纏っていたサイバースーツと瓜二つだ。

 

 

 

 

 

 中身が誰なのか知れない以上なんとも言えない。

 旧ゴスペル首領についてら監視がついておりアリバイがある以上同一犯ではないのは明らかだ。

 先が思いやられるようなクソみたいな状況。そしてその先に確定で待ち構えるクソみたいな課長が考えたスケジュールを思い九十九は深くため息をついた。

 

「はぁ……」

 

「……顔色が悪いようだが。何かあるのか」

 

「あー、はい。ネオゴスペルだけに専念できるならそれはそれで頑張ろうってなるんすけどね……同時に普通の仕事もやれって言うもんで。小学生の科学省の社会見学の引率をしろってんです」

 

「い、引率……」

 

 引率と言えば……ホイップもといプライドの件については、()()()()()()()()()()

 何せ、オフィシャル側のやらかしやらプライド側の後ろめたい事情やら、九十九とバレルが一国の王女を巻き添えにしたこともあり双方見なかったことにしておくのが一番平和なのだと落ち着いたらしい。

 

 その当てつけも込みなのか休暇など取らせんと言わんばかりに小学生の引率やら、WWWアジト跡地の調査やら仕事を投げつけられたわけである。

 それと日暮との約束でヒグレヤ開店の手伝いなどなどなどなど。

 

「元々は科学省の人間がやる予定だったんですけど、ウイルスバスティングの実習もやるからって俺も呼び出されて。……この後城金さんと打ち合わせをしないといけないし」

 

「敵は内側にあり。というわけか」

 

 バレルが苦笑し、九十九は白目を剥いた。

 ネオゴスペル滅ぼすより先に、オフィシャルとしての仕事で気が滅入ってしまいそうだ。

 もう昼飯の時間は終わりかけだ。仕事に戻ろうと九十九が踵を返そうとした矢先バレルが呼び止めた。

 

「そういえば、あの少年……いや、王女はどうなった?」

 

「あぁ……それなら。事件後国に無事で戻れたそうです。メールでよこしてくれました」

 

 ──添付データを添えて。

 

 要らないと返信したものの、頑なに押し込められたので取り敢えず受け取ることにした。

 で、それは今の所懐にある。

 ……バトルチップ、【キングダムクラッシャー】

 

 

 確かにこのチップは強力だ。

 それこそメットールのガードを一撃で破壊してしまえるし、今後戦っていく上で強力無比と言えよう。

 そんなものをその辺のオフィシャルに寄越してよかったのかという想いはある。

 そういうのは上層部辺りにでも寄越しておけば覚えは良かっただろうに。

 

 九十九はそのまま歩を進めた。

 今日はやるべきことは腐るほどある。城金との社会見学関係の打ち合わせや、ゼロの戦闘データについての総括。

 取り敢えずオフィシャルの裏切り者や、バレルの言っていた元アメロッパ軍人は心の片隅に置いておくこととする。

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 科学省のいつもの研究室に足を運ぶと、いつものように不機嫌な顔をした城金が待ち構えていた。

 どうやら自分は金髪の女に縁でもあるんだろうか、だなんてしょーもないことを考えながら、これからの仕事についての打ち合わせを行う。

 

 1つは社会見学の引率について。

 1週間後には秋原町秋原小学校の社会見学を行なうのだがメインはウイルス研究室の見学。そしてウイルスバスティングの実習を行うのだが、そのレクチャーは九十九が行う手筈となっている。

 内容はメットールの処理やらネットバトルの基礎的なものでそこまで難しいものではない。城金が用意した事前に対戦するウイルス構成表にざっと目を通しておき、今後の立ち回りを考えておく。

 小学生たちに情けない姿は見せられない。ここは一つ、かっこいいお手本を見せる必要があるというものだ。

 

 

 

 

 2つ目はゼロの戦闘データについて。

 VAVAやカットマンとの交戦によってゼロのまとまった戦闘データが取れたため、新しい技が習得(ラーニング)出来たという。

 

【バーストショット】

 ゼットバスターのチャージショットにヒート性能を持った誘爆性能を与えられるとのこと。

 ブライスティンガーより威力は上と言ったところか。ただ連射が出来ないので使い所が肝心と言えよう。

 

 

 で。

 

 

 

 

「本題に入りましょうか」

 

 小学生の引率とラーニング技の他に重要なことがあったというのか。一頻り話し終えた九十九は、城金に砂糖とミルクの分量を丸投げしてたら出された変に甘ったるいコーヒーをひと呷りしていると、

 城金は机の中から2本のUSBメモリを引っ張り出してからそれを九十九に差し出した。

 

 

「なんすか? コレ」

 

 城金から渡された2枚のUSBメモリをまじまじと見ながら九十九は疑問符を浮かべる。

 白のUSBと黒のUSB。九十九の問いに待ってましたと言わんばかりの自信満々の笑みを城金は浮かべた。

 

「ゼロのパワーアップキットよ」

 

「え……っ」

 

 ただでさえ強力なゼロを更に強化出来るのか。というかそれよく承認が降りたものだ。

 心なしか城金がちょっとだけえっへんと胸を張っているように見えた。どうやら彼女も知らない所で頑張ってくれていたらしい。

 それからはいつもの淡々とした口調に戻っていく。ちょっと珍しい顔が見られたなと心なしかお得感を感じながら黙して彼女の説明に耳を傾けた。

 

「白いやつからまず説明するわ。白いやつはナビカスタマイザー。科学省が極秘で開発している簡易型プログラミングソフトよ」

 

「なんすかそれ初めて聴くんすけど……」

 

 最近オフィシャルセンターに置いてあるPET情報誌である週刊Plug-Inのバックナンバーにはそれらしきものは掲載されていなかった。

 

「それもそうよ。発表そのものは1週間後なのだから。今後戦力増強のため一般公開する前にオフィシャルネットバトラー全員に無料配布する形になるのだけれども、その一環で、ね」

 

 オフィシャルの戦力増強。

 そもそも前身が科学省の精鋭だったネットワーク保全部隊だったオフィシャルがその気になれば、科学省にバックアップさせるのはおかしな話ではないとはいえ、大きく出たものだ。

 

「ナビカスタマイザーってやつ、何が出来るんすか」

 

「パズル感覚でネットナビのステータスを向上させることが出来るの。HPメモリなしでナビのHPを強制的に上昇させたり。バトルチップのアンダーシャツ……知ってるかしら?」

 

 城金の質問に九十九の脳内辞書から即座に出てきた。

 バトルチップ、アンダーシャツ。

 致死量のダメージを食らった際に、バラバラになるはずのプログラム構成をギリギリで繋ぎ止めHP1でデリートを防ぐと言ういわゆる、即死回避用のチップだ。

 

 地味に一般流通がほとんどされておらず、知る人ぞ知ると言ったバトルチップだ。

 

 それがどうかしたのかと訊くと、城金は淡々と答えた。

 

「これはあくまで一例でしかないのだけどアレをチップを使わずにアクティブモードにさせることもできるようになるわね。他にはナビにプリセットされている装備……ゼロならゼットセイバーとゼットバスターのスペックを向上させたりとかとか」

 

 それが本当ならただでさえ性能の高いゼロが手のつけられない事になるのには違いなかった。

 今でもノーマルナビを引き離すほどのパワーとスピードを持つのに更に強くなるということは。

 

「ハハッ、そいつぁすげぇや。伊集院超え出来るんじゃないか?」

 

 ちょっとウッキウキ声で何故か洋画の吹き替えみたいな喋り方で九十九が言うと

 

『おそらく伊集院炎山とブルースにも同じものが配布されると思うぞ』

 

「デスヨネー」

 

 PETにいるゼロからごもっともとしか言いようがない返しが飛んできた。貧乏くじ(上層部視点)を引かされる木っ端のオフィシャルネットバトラーが手に入れられるのなら、オフィシャルの上位クラスが持ってるのは当然の話だ。

 ウラと犯罪者連中涙目だなぁ、としみじみ思いながらもう一つの黒いメモリに話題を変えた

 

「これは?」

 

「チェンジ.bat」

 

「あー、チェンジ.bat」

 

 気の抜けた声が思わず出てしまった。

 チェンジ.bat。

 アジーナの国宝とされるプログラムだというのは知っている。

 噂だとアジーナスクエア壊滅で連携が取れなくなり、承諾も取れずセキュリティが解除できない為、仕方なく強盗かましてゲットしたという曰く付きのアレだ。

 

 ゴスペル事件でロックマンの強化に役立ち、その力で対ゴスペルで猛威を振るったという。

 

 事件後、国宝という神秘性が失われたそれは喩え国宝だろうが何だろうが使われず、国を滅ぼされちゃ何の意味も無いということが露呈してしまった背景もあり、アジーナ政府と科学省の協議の末結果的に量産化に踏み切り基礎システムを国外に公表する運びとなった。

 

 今となっては有料かつナビの性質を選ぶとはいえナビにインストールすれば手軽にスタイルチェンジできるようになると科学省がテレビで発表していたのは記憶に新しい。

 

 チェンジ.bat

 これがあれば戦闘を重ねた先にネットナビにスタイルチェンジと呼ばれる現象を起こし、更なる力を与える事が出来るのだという。

 現在確認されているのは【ガッツ】【ブラザー】【シールド】【カスタム】

 

 バトルによって得られるそのシステムはゼロのラーニングシステムとは似ているようで違う。

 ゼロのラーニングが外的要因で変わるものだとしたら、スタイルチェンジは自分自身が抱えている『クセ』という内的要因で変わる。

 

 ここでゼロがスタイルチェンジを手に入れればべらぼうに強くなること間違いナシだ。

 

 

「さてと。取り敢えずこれをインストール。さっそく試してみましょ」

 

 そういう城金の声もやたらとノリにノッていた。最強のナビでも造りたいのだろうか。

 九十九からPETを拝借しパソコンに接続。メモリをセッティングしてキーボードを流れるような手つきで叩いていく。

 それを九十九は黙して見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1時間後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁーっ!!!! なんでエラーコードが出んのよぉっ!」

 

 だん、と机をぶん殴る音がした。

 取り敢えず結論から言おう。──失敗した。

 城金はエラー画面が出ているモニターを前に悔しげに、キーボードを破壊しかねない勢いでらしからぬ言動でやたら荒ぶっている。

 その傍らインストールを行っていた城金のパソコンの電脳にてゼロは凄く困ったような目をしていた。

 

『すまない。もう一度試した方がいいだろうか』

 

「ン何度やっても同じなのよぉ! やっぱ普通のナビ用に作られたプログラムじゃあエラー吐くし、こっちで軽く調整入れても駄目……あぁぁぁ……光主任に頼るしか無いわね……」

 

 最初こそキーボード破壊しかねない程に荒ぶっていたが現実を直視し始めたかどんどん意気消沈していく城金に九十九は引き気味に口を開いた。

 

「なんでエラーが出るんです?」

 

「そもそもゼロは元々ウイルスだったのを無理矢理ネットナビにプログラム構成を書き換えたのよ。で、一応既存のプログラムは大体対応出来る様にされてたんだけど、流石に未来で開発されるナビカスタマイザーやチェンジ.batは想定してなかったみたいで……エラーが出た」

 

「……なんかどうにかなったりは」

 

「無理。この1時間色々試したけど無理。元々ゼロ自体のプログラム構成がウイルスにしてもネットナビにしても複雑怪奇で……まるでロックマン.EXEのプログラム構成もこんな感じだったわ本当に……」

 

 ロックマンってそんなに複雑だったのか。

 確かにそんなロックマンを作り出した光主任でなければゼロをネットナビに書き換えることなんて出来やしないのは確かだ。

 力なく机に突っ伏した白衣の金髪の女こと城金の姿少し切なく見えた。

 

「ナビカスもチェンジ.batも受け付けない。……当面はパワーアップも見送りね」

 

『問題はない。現状いまの状態で事足りている。──城金アリアが気を病むことはない』

 

 このゼロの発言は決して強がりではないのは九十九が一番よく知っている。

 確かにゼロのパワーならば、ウイルスを倒すこともネオゴスペルのナビを狩ることも容易だ。それにラーニングシステムという独自の能力がある以上慌てることはあるまい。が──

 

「そうはいかない。ナビカスタマイザーやチェンジ.batが一般公開された時、犯罪組織の手に渡る可能性は100%。貴方が後れを取ったらこの先苦戦は避けられないわよ」

 

 そう。この二つを手に入れるのはオフィシャルや市民だけではない。必ずしもウイルスバスティングや対犯罪行為にだけ使われるとは限らない。

 敵もまたそれを手に入れるチャンスだってあるのだ。それを考えれば先取ってゼロに使わせて慣らしておいたほうが合理的だ。

 まぁ、ご破算となった現状城金は荒れずにはいられなかった訳だが。

 

 九十九は大きく深呼吸をする。

 後れを取るのなら、こっちがその分をカバーするだけだ。幸いゼロの基礎性能は高い。あとはそのポテンシャルを100%以上に引き上げるだけのこと。

 

「ならば──俺がゼロを巧くオペレートするだけです」

 

「……前向きね」

 

 先程まで小一時間ゼロに二つのデータをインストールさせようと悪戦苦闘し続けて憔悴し切ったような城金の枯れた声に九十九は「馬鹿なだけですよ」と短く返した。

 

「どっちにしろハードであるネットナビが良くたって、ソフトであるオペレーターがポンコツじゃぁ意味がないんです。いまよりずっと強くなった所でナビカスやスタイルチェンジが使えるようになったのならばそれはそれで……悪くないって思うんですよ」

 

「まぁ……そうね。あなたがポンコツじゃあ折角のナビカスもスタイルチェンジも宝の持ち腐れ、豚に真珠ってヤツよ」

 

「えらくボロカスに言うなぁ……」

 

 とは言いつつもいつもの調子に戻りつつあることに気付くと九十九は少し安心した。

 しおらしい城金は違和感しかない。若干難物っぽい方がらしいというものだ。

 

「どんなに強力なシステムがあった所で結局は使う者の──」

 

「知恵と勇気ってヤツですか」

 

 それは決して揺るがぬお約束。

 ヒトがヒトでいて、道具を使う限り向き合い続けなければならない命題というものだ。

 

「でもまぁ──」

 

「でもまぁ?」

 

「何でもないわ。ほら、さっさとトレーニングなりお仕事なりしていきなさい」

 

 城金はPETをパソコンから引き抜き、九十九に渡してから追いだすように九十九の背中を押した。

 困惑しながらされるがままに研究室を追い出されてしまったところで、九十九はどうしたものかと頭を掻いた。

 

「怒らせたか?」

 

『怒ってはいない。──きっと同じなのだろう。城金アリアも、お前も』

 

「同じ? どこが?」

 

『まだまだ、ということだ』

 

「……はぁ」

 

 ゼロだけ納得しているのがちょっと面白くなかったが、別に怒っていないのならば別に気にするほどでもないのだろう。それに──

 

「もっと気になることがある」

 

『なんだ?』

 

 

 

 

 

 

 

「気の所為だと思うけど。カーネルとお前……心なしか何処か似ているような気がするんだ」

 

 最初こそ他人の空似じゃないかと思ってはいた。けれどもカーネルの動きなどを見ていると妙にただのそっくりさんのようには思えなかった。

 性格も出自も恐らく違うだろうに何故こんな風に思えるのか。九十九自身理路整然とした説明ができなかった。

 

『オレも分からない。確かに初めて会ったような感覚ではないのだが……オレの記憶には会った記憶はない。オレがウイルスとして様々な情報収集を行なっていた際の記憶が混ざり混乱してそんな風に思えているのかもしれない』

 

「そっか……」

 

 まぁ知っていたらゼロもちゃんとした反応をもっと先にしていただろう。

 当然としか言いようのない返答に九十九は一旦その疑問を外に放り投げて……

 

 

「考えてもしょうがないか。まだ陽は明るいし、仕事──すっか」

 

 軽くのびをする。馬鹿馬鹿しい疑問だったと自省しつつ、科学省に設置されたという依頼掲示板に向かって歩き出した。

 




 その封印をーー解くな。
 次回、EXE3篇開幕。



 アーカイブ


・Eメール
from:城金アリア
to:星方九十九
subject:ゼロのラーニングアビリティについて

 忘備録としてこのメールを送ります。
 今回の交戦ではVAVAやカットマンの交戦データをもとにゼロが新しい技をラーニングしました。
 その名も【バーストショット】
 この技はゼロのバスターチャージ時に発動できる火属性のチャージ攻撃。バスターとしては3マスまでしか飛ばないというデメリットを背負う代わりに火属性のダメージが連続ヒットするようになっています。

 特に木属性のナビやウイルスには強力無比な一撃なので状況に応じてゼットセイバーの技と使い分けるように。
 以上。





 会得技(ラーニングアビリティ):バーストショット
 バスターチャージ後発動。
 3マス前まで飛ぶ火属性の榴弾を発射する。命中せず飛び切った場合空中で爆発する。
 命中時、着弾点から連続で小爆発を起こし連続ヒットする。
 貫通も誘爆もしないため障害物には弱く射程が短いのが弱点だが、木属性相手には有効だ。 

 初期威力20。小爆発5×3
 チャージ速度:中 
 命中時:のけぞり(小爆発3段目のみのけぞり無敵になる)
 □□□|□□□
 □◯◼︎|◼︎◼︎□
 □□□|□□□



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 週刊Plug-In(しゅうかんぷらぐいん)
出典:オリジナル
カテゴリ:アイテム(書籍)
 IPC並びに数々のPETメーカーや科学省が協力、情報提供している大手情報誌。
 PETの機種情報のみならずネット犯罪などの記事もある。オフィシャルセンターにあるものは雑誌版だが、電子版もほとんどのスクエアで販売している。
 比較的オフィシャルや市民ネットバトラーや科学省職員が主な購入層であり、オフィシャルセンター勤務の69%は「読んでいる」とアンケートで解答している(200×年4月調べ)

 掲載コラムは
『名人NEWS』『ウィンターズ流生存戦略』『タケシのソウル・トゥ・ソウル』『ナビマスターのネットナビカスタマイズ講座(不定期掲載)』など。

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