ロックマンエグゼ:実績『見損なったぞカーネル!』『負けないアイ』開放ルートRTA 作:ヌオー来訪者
どうして勝手にレスキューくんあんな簡単に死んでいくんですか?(電話猫)
その現場は凄惨の一言であった。
目撃者の証言によると、友人とネットサーフィンをしていたらその友人のナビが突如苦しみだしてオペレーターのコントロールを離れ、暴走。
一定時間経過後ナビのソウルが抜け出して近くにいたナビを時には噛みつき、時には破壊。居合わせたガードナビやプログラムを全て迎撃仕切った所で、ゼロとカーネルが介入。
ナイトメア化したソウルが撃破されナビのもとに戻ったという。
当然ナビの異常がなくなった訳ではなくこのまま意識を取り戻してもまた同じ暴走をするだけだ。かつての少年のナビと同じように
史隅管理官直属の対策チームが現場検証を始めているのを遠巻きに見ていた所で
「いやぁ、お見事お見事。あのナイトメアウイルスをいとも簡単に撃退するとは」
パチパチと力のない拍手音に九十九とバレルが振り向いた。振り向いた先には黒く長い髪を伸ばした白衣の青年が手を叩いていた。
その叩き方は少し他人を小馬鹿にしているように思えたが、九十九は苛立たないよう自らの神経を宥める。
この場所で白衣とくれば、科学省スタッフだ。
「あんたは?」
「あぁ僕かい?
「どうも」
少しつっけんどんな言い返しになるのは少しばかり大人気ないと、返事してから後悔した。
「ふぅん。それが城金くんが管理しているゼロか。中々の曲者と聞く、ちょっと見せてくれないか?」
が、即それすら撤回したくなった。
言うや否や九十九の持っていたPETに手を取りまずはPETの外観を観察し始める。質問が最早質問になっていないその男の行動に少し不快感を覚えながら九十九は口を開いた。
「城金くんって……」
「おっと失礼。彼女とは旧知でね。まぁ関係ない話だ、忘れてくれたまえ」
「…………」
九十九のPETを取り上げ勝手に操作をしようとする彼に九十九はサッと取り返す。
相手が科学者とはいえ、勝手に触らせるほど間抜けでも愚かでもない。すると門戸はヘラヘラ笑いながら意外にも引き下がった。
「ははっ、随分と嫌われたようだ。まっ、当然か。今後とも活躍に期待しているよ」
好き放題やるだけやってそのまま喫茶店から出て行こうとする彼を九十九は頬を思いっきり引き攣らせながら見送り、近くで見ていたバレルも完全に呆気に取られてか「なんなんだ……あの男は」と溢す。
言い方が悪いが、変な人だ。そのまま去っていく彼を九十九はただただ見送ることしかできなかった。
「なんだったんだあの男は。まぁいい、星方、時間はあるか」
「なんです?」
あの先程現れた変な男のことはどうでもいいのだ。
今この瞬間重要なのはナイトメアウイルスのこと。そしてアイリスのことであった。
◆◆◆◆◆
バレルに連れられた先は地下の駐車場で待っていた車の中だった。
促されるがままに助手席に腰掛け、バレルは運転席に腰掛ける。
「ナイトメアチップばらまいて──連中何がしたかったんですかね」
PETを片手に九十九は誰も答えられない疑問を誰に向けたわけでもなく呟く。
単なる金儲けにしては効率がやたら悪い。そして眼前のゼロをほったらかしにしてカーネルを狙うという妙な行動に出たのも疑問だ。
隣でそれを聞いていたバレルが言葉を返す。
「細かいプログラム関係については俺は疎い。そしてこれはあくまで推測に過ぎんが──奴らが送信しているデータは対象のナビのデータの可能性がある」
「確かに噛みついた瞬間に送信ってなるとまずそう考えますよね」
自然な感想だ。
あの噛みつきがデータ蒐集のために機能していたのだとしたら、相当数のナビがやられていることになる。ガードナビ、オフィシャル、そして……最悪なパターンとしてブルースやロックマンがもし噛みつかれでもすれば何が起こるかわからない。
「あぁ。奴らの目的が単なる破壊活動だけではないとしたら……」
「戦闘データ盗って究極のナビでも作るって言うんです?」
九十九は半笑いで、旧ゴスペルの致命的なミスを思い返す。
あの事件のレポート(伊集院炎山が書いたらしい)によると連中はバグを集積、特別製のサーバーによる尋常ならざる演算力と電磁波を利用して作ろうとしたという──素人が聞いてもあまりにもお粗末なものだった。
それに比べればある程度は現実的とも言える。
「かのフォルテ製造計画とやらに比べれば現実的だ。バグの欠片を融合させるような真似に比べてまだプログラムとしてのていを成している」
「身も蓋もない……」
バレルの辛辣な評に九十九は苦笑いする。
WWWならきっと作れたであろうそれはゴスペルの新興組織としての限界なのだろう。
もしも究極のナビなる存在が作れたとするのならば。全てのネットナビのデータを手に入れたとしたら。……あまり想像したい光景ではなかった。
『すまない……』
淡々と九十九にツッコミを入れるゼロが珍しく落ち込んだ風であった。
ナイトメアウイルスがもしブルースのスピード、カーネルのパワー、ゼロの技、ロックマンの可能性を吸収したとしたら。
それぞれ一つ取っても脅威といえよう。そして今この瞬間ゼロが噛みつかれた事は恐らく失敗と言ってもいい。
だが、あそこでアイリスが噛みつかれることを是として良かったのか? それに──
「ゼロ。別に奴がデータ送信していると確定した訳じゃない。それに市民を守ったのはオフィシャルとして正しいことをした。だから……謝んな、胸を張れ。お前にはその権利と義務がある」
少なくとも今この瞬間においては正しいことだ。そう信じている。
「オフィシャルネットバトラーは、時として決断をしなくてはならない時がある、それがどんな結果を齎そうとも。……管理官の請け売りだけど」
史隅管理官はあの事件で何をすればいいのか分からなかった九十九に生き方の一つを教えてくれた。
管理官が居なければ多分違う未来を迎えていたか、こうして立ち直ってはいなかっただろう。
「どちらにしろいずれナイトメアウイルスの目的についての答えはいずれ出る……そして俺たちはあのナイトメアウイルスをデリートしなくてはならないのだ。奴がどんな力を持っていたとしても、だ」
「…………」
バレルの言う通り、人の生活を守り、ネットワーク社会の崩壊を防ぐ。それがオフィシャルネットバトラーの使命である。故に相手がどうであれ抵抗をするのは義務と言っても差し支え無い。バレルの一言で膝の上で固まった拳がぎり、と軋む。今のところナイトメアウイルス関係の捜査からは外れているが、管理官に頼み込んで編入してもらうことも選択肢に入るだろう。
もしくは管理官の手を煩わせず、独自に動くか。
「そして、お前の前に現れたナビのことについても少しばかりはっきりとさせねばならん」
「……」
もう一つはアイリスの件だ。
バレルがどういうスタンスなのか確認しておく必要がある。腹の探り合いといったところか。
「お前とあの少女……ナビと初めて会ったのはいつだ」
「少し前のメトロライン事件です。ほら、バレルさんが巻き込まれたあの事件です」
信号で車が止まり、目の前で引率の先生に従って子供たちが渡っていく。
バレルは横目で答えた九十九を見据えていた。その鋭い眼光はまるであらゆる嘘すらもあばきそうなナイフのようでもあった。何も嘘はついていないはずなのにまるで後ろめたいことをしている気分になるのは何故だ。
けれども無い袖は振れないし、もし仮に会っていたらあれだけ印象深いネットナビは覚えているはずだ。
「………………」
「………………」
双方無言の睨み合いが続き、信号が青になると同時にオートドライブシステムが作動し車が動き出す。
電気自動車特有の静けさは今この瞬間において、凶器として九十九の心に突き立てるのだ。
──疑うな、俺はマジで何も知らない。
こっちが知りたいぐらいだ。ヒントがあるとしたらあの事件だろうが思い出せないものをどうしようというのだ。九十九の必死の心の叫びが届いたのかバレルから先に口を開いた。
「……かつて、俺には父親が二人いた」
突然の切り出しだった。
父親が二人、と言う言葉であらぬ想像をしたが、現実そんなものではない。すぐさまその認識を改めることとなる。
「産みの親。そして育ての親。……軍人として多忙を極めていた実父の代わりに俺を育てたのは父の友人だった。父亡き後はオペレート技術や軍人としての基礎を叩き込み、その傍らアイリスを作ったのだ」
「……アイリスを?」
一体何を思ってあの少女の形をしたネットナビを作ったのか。意外とそのもう一人の父親の趣味が尖っていたのかもしれない。そうに違いない。
「彼女が何を思い、どこから現れ、どこへ消えていくのか。俺には見当がつかん。だが今、星方。お前の前に現れるのであれば……」
一呼吸を置く。
彼の中に溜め込まれた言葉はきっと重くのしかかって来るに違いない。察した九十九は助手席を座り直し耳の神経を研ぎ澄ませる。たとえどんな言葉が来ても驚かないように、戸惑わないように。
「彼女をどこにも渡すな。ネオゴスペルにも科学省にも、オフィシャルにも。いかなる組織にも国家にも、だ」
「……どこにも渡すなって……あのナビは一体なんなんです?」
たかがいちネットナビにすることではない。
こういう時野良ナビならオフィシャルや科学省に保護させるのが一番だろう。けれども現実はそれすらも拒否をしようとしている。
まるで世界一つ変えてしまいそうな──
九十九がバレルに問い詰めようとした矢先であった。
「ただのナビだ。それ以上でも、それ以下でもない」
低い声が、静かな車内の空気を支配する。問い詰めようとするための道標を無理矢理叩き壊すような勢いで投げつけられたその言葉で九十九に言葉を詰まらせさせた。
冗談や牽制で言っている台詞ではないのは、バレルの声色が全てを物語っていた。ここで反発したところでまともな結果が待っていないと認識するにはあまりにも充分なインパクトがそこにあった。──ならばこっちはこっちで勝手に詮索させてもらう。
「…………」
意外とあっさり引き下がったことにバレルも不思議に思っていたのだろう。横目で九十九を一瞥してから、再び運転に集中する。
標識は既にメトロラインのデンサンタウン駅前だった。
まず知りたいこと。
それはアイリスそのものについてだ。
アレがただのナビではないということはもう察しはついた。加えてネオゴスペルのカットマンが彼女を捕らえていたことも納得がいく。
「彼女にも彼女の事情がある。という事だ。……彼女の厚意を無駄にはするな」
「…………そうすか」
納得しろ、と言外に訴えているような物言いだ。それを実際にはいそうですかと引き下がるかは別として、九十九は一旦は文句を言わないでそのまま話を切り上げた。
話が終わったときには既に、事前に車に定した自宅のマンション前までたどり着いていた。
バレルのスタンスとしてはアイリスが本来どういう存在なのか知られたくない+ネオゴスペルに渡せないという思惑がある。どうやら他にも何かあるようですが
次回、本作の根幹であるバス行方不明事件に迫っていきますよ〜行く行く
後、最初に突然現れた謎の天王洲門戸とかいう男が何者なのってお話ですが。こちらは追々
これまで本作を読んできた兄貴やロックマンに自信ニキは察したかも知れない