ロックマンエグゼ:実績『見損なったぞカーネル!』『負けないアイ』開放ルートRTA 作:ヌオー来訪者
ショッキングな描写が少しあります。苦手な人は後々今回の出来事をある程度要約して作中でお伝え致しますのでご安心を
科学省エリアでのアイリスとナイトメアウイルスとの遭遇事件から少し時間を遡る。
星方九十九。
この男が一体何者なのか調べ始めたのはあのマリンハーバーの事件の後であった。
見てくれはただのハイティーンだ。ネットバトルに心得があり、伊集院炎山や光熱斗なる規格外と比較すれば見劣りするとはいえ下手な大人程度なら一捻りできる程度の力は持ち合わせている。
短い指導でオフィシャルスクエアを壊滅状態に追い込んだウイルスを撃破してみせるほどの力を得たのは特筆すべき点……であろう。
そこまでならまだいい。
まだ──戦争からは程遠い存在だ。ただいいセンスだと、それだけだと笑って済ませられただろう。
しかし、あの事件が彼への疑念が浮き彫りとなった。
常軌を逸した身体能力。まるで意識が身体を振り回しているような動きはその辺のニホンのハイティーンがしていい動きでは決してない。
化け物だと──あのチンピラは言った。
既にあの男はネオゴスペルにある程度マークされていると言ってもいいだろう。故に調べる必要があった。
星方九十九。否、灰川九十九の過去を。
表向きの経歴はこうだ。
才葉シティ*1にて役所勤めの若夫婦の家庭において生を受けた。ごく普通の家庭だったという。
その後、小学校卒業。
卒業というタイミングを境目に不幸に見舞われた。両親の死だ。幸い親戚の星方家がデンサンシティにいたので移動のために荷物を持って、才葉シティとデンサンシティをつなぐデンサイバスを利用。
そこで件の行方不明事件に巻き込まれたこととなっている。
その後エンドシティ付近の森林地帯を意識朦朧とした状態で彷徨っていたところをハイキングしていた民間人に見つけられて保護。奇跡的に生還した所で星方家に無事引き取られ、史隈管理官との交流をきっかけにオフィシャルネットバトラーを志す。
合格まで2年を要しているが当時中学生であるということを前提にするのであればまぁ驚異的だ。市民ネットバトラーになるのも一苦労であるという民間人が多いという現実を考えるならば大したものだ。
……もっとも、彼より幼いはずの伊集院炎山が比較に上がるせいで影が薄いが。
そしてWWW事件やゴスペル事件を経てゼロを受領して今に至る。
オフィシャルを志してからきっと苦労は絶えなかっただろう。なにぶん難易度は中学生が受ける内容では決してない。大人だろうが平気で落ちるものを真っ当な形で合格して見せている。しかし──
これはただの子供のサクセスストーリーでしかない。美談として消費されて終わり。ただそれだけだ。
バレルからすれば微塵も興味がなかった。
重要なのは行方不明事件の詳細だ。
デンサイバスはデンサンシティ*2と才葉シティを繋ぐ交通手段の一つである。
当時はデンサンシティのメトロライン*3や才葉シティのリニアバス*4の開発が途上にあったため移動手段が少しややこしくデンサイバスはそれを解決する手段の一つであった。
なにぶん、乗り換えなしで直で到着するのだ。
移動距離の兼ね合いで手動の運転とオートドライブシステムの併用で走るそれは才葉駅から出発。
間に位置するエンドシティ*5駅を経由してデンサンタウン駅に向かうルートとなっている。
事件が発生したのは才葉シティからエンドシティの間の山岳地帯。
この辺で連絡が途絶えた。オフィシャルの必死の捜索にも関わらず、発見されたのは1ヶ月後。もぬけの殻と化したバスと道中衰弱死、餓死、毒物を口にしたことによる多臓器不全などを引き起こした人間が数名が発見された。
搭乗していた13名程の乗客は遺体すら発見されず、必死の捜索も虚しく打ち切られた。
そして──その翌月。
バックパッカーにより行方不明者の1人。灰川九十九が保護される。
本人はショック状態にあり質疑応答が不可能な状態となっていた。
それと並行して
うち数名が死亡。
その生存者は……
「オフィシャルの方ですね。お話はお伺いしております」
デンサン埋立地にはビーチストリートと呼ばれる通りがあり、そこから少し歩いたところには湾岸病院がある。
デンサンシティの中で規模は最大級とされるその病院は、難病であるH.B.D.*7の患者などその入院者の病状は通常の病院とは一線を画す。
「
女性看護師の誘導に従い、エレベーターに乗り、果てしない通路を歩く。
薬品のような匂いと静けさが今いる場所がどこなのかを否が応でも認識させられる。かつ、かつと靴がリノリウムの床を叩く音がする。
この病院は四角に何か、大きなものを取り囲むように出来ている。その何かというものは右手に見える命の木と呼ばれる巨樹だ。樹齢はウン百年、このビーチストリートの湾岸病院のシンボルとされておりネットワーク管理により維持されているという。
命の木は健やかに生きているのに対し、その都頼なる人物は……
長くひんやりとした通路を歩く中で看護師は口を開いた。
「こうしてオフィシャルの方が来られるのも久しぶりです」
その感情の隠しきれなさは若さ故か。物言いがどこか嬉しそうに思えた。オフィシャルが来ることを普通嬉しがるものではないはずだ。少しばかり不可解だった。
付け加えるならバレル自身オフィシャルではないが、権限はそれなりのものは貰っている。今回のように面会に入ったのはオフィシャル権限によるものだ。
ここで否定しても生産性は何一つない。
「久しぶり?」
「えぇ。実際オフィシャルの方は一昨年からもう来ることはありませんでしたから。言い方、あんまり良くないかも知れませんけど忘れられちゃったのかなって」
記録通り、例の行方不明事件については進展はなく捜査は打ち切られたという。
概ねWWWあたりの犯行だろう、と大雑把に切ることが出来たのは幸か不幸か。時の世論もさしたる追求もしなかった。
ようやく312号室にたどり着いた所で、看護師がドアを引き開く。
部屋は小さかった。
奥にはベッドがあり、乱雑に剥がされた毛布がある。──誰もいない、トイレにでも行ったか。拍子抜けと言わんばかりにバレルは肩の力が抜けそうになる。
そんなバレルの意識を叩き起こすようにかたり、と足元で何かが落ちる渇いた音がした。
「……ん?」
「……ぁ?」
バレルと、
足元で、四角、三角、球体。赤、緑、青、黄色とカラフルな積み木が散乱している。視界をゆっくりと散乱したそれを目で辿っていくと、患者衣の裾と白い足が見えた。床には黒く長い髪が散らばっている。
手には積み木、木目がてらてらと光っていた。それが涎が光を反射していた事に気づいたのはすぐ後だった。
そして長く伸びっぱなしの髪の毛は枝毛を作っており細かい手入れはされていないと見る。
年不相応が服を着ていた。
ハイティーンの少女が、酷く長い髪を伸ばすだけ伸ばし積み木を舐りながら遊んでいる。
この手の光景には見覚えがない訳ではない。バレルの職業柄よく見る事だ。だが──
「おじしゃん、だぁれ?」
「…………」
その舌っ足らずの声にバレルは返す言葉もなかった。
すると看護師が、バレルの袖を軽く引っ張り、少し離れた所で声を潜ませて切り出した。
「事件後の検査によると過度なストレスもあったそうです」
人間という生き物は自身の許容範囲に触れかかると自己防衛を自覚の有無にも関わらず行うように出来ている。それは多種多様だ。例えば食欲・性欲・睡眠欲と人間の3大欲求に従った行為。果て酒やら趣味やら。自覚しないままに行われる。
誰だって何か経験があるはずだ。
それが限界点に達すると精神疾患という形で表出する。
だが今眼前にあるそれは常軌を逸していた。そして投薬という単語も見過ごせない。バレルはその少女の惨状を一瞥してから言葉を返す。
「脳に大きな負担をかけていたようで。現在でも介助無しにお手洗いに行くこともままなりません。おそらく事件当時の出来事も覚えていません」
「身体は無事でもこれではな」
廃人同然だ。本来送るべき日常も奪われている。
あの事件の後ろ暗さは知れば知るほど浮き彫りになっていく。あの事件の直後一体何が起こったのか。
「仰る通りです。元々ご家族様がお見舞いの為ご来院していたのですがやはり今の彼女を見ていられなかったのでしょう、来る頻度もかなり減り月に1回来ればまだ多い方です」
「………………他に通院している被害者は」
「居ますが、寝た切りで何も聞き出せません。退院された人もいますが今どうしているか……」
「入院者のリスト見せて貰えるかな? 改めて、事件のことを確認したい」
オフィシャルのデータベースにおいてバレルはアクセス権限がない以上外部から探っていくしかない。
今回の事件の被害者についてはSSS級のシークレット、オフィシャル権限を多少ちらつかせているとはいえ、ここで断られれば終わりだ。
「……ありがとうございます」
「?」
何故ここで礼を言われたのか。要領を得ずバレルの眉間に皺が寄った。
普通なら難色を示されてもおかしくはなかった。
「いえ、オフィシャルの人たちも忘れてなかったから。WWWやゴスペルのことで手一杯で仕方ないことなのは、わかってはいるんですけど……」
解決の糸口が見えない事件と、現在進行形で蝕んでいる組織犯罪。どっちを優先するかと言われたら言うまでもない。冷酷な話だが、人員も時間も有限だ。
「私も全てを引き出せるほどの権限がないので、名前と一部の情報にはなりますが」
「充分だ」
当然といえば当然だった。
それでもなお、一部だけでも情報開示して貰えているだけでも充分過ぎた。
リストが届いたのはそれから数日後。
そのリストはファイルとしてバレルのPETに送信された。ファイルを開くとそのリストはただただ無機質に現実を映し出す。
その名前の中には当然ながら幼児退行を起こした少女。都来の名前もありそして──
「五島エリヴ、発見時点で意識不明。植物状態で現在延命治療中」
「灰川九十九。記憶喪失以外の疾患なく退院。上記いずれも何者かによる小規模の
事件の闇の片鱗がそこにあった。
特に大怪我をしたという記載も無ければ、持病を持っている様子もない。
まるで人体実験か何かでもやったような形跡にバレルは己が目を疑い、ファイルを開き直して現実をもう一度直視した。
「……俺の見間違いでは、ないようだな」
当たり前といえば当たり前か。開き直した所で記述が変わるわけもなく。あの事件は思った以上に根が深いようだ。
アイリスのこともあるが、この犯人をなんとかしなければおそらくは──ある男にとって、最大の障害となりえる。そんな確信があった。
それから九十九に問い詰めたのはリストを手に入れてから数日後のことだ。
次回、真面目すぎたのでRTAパート再開。「何もしてないのに壊れたは信用するな」
都頼は男性キャラにしようと思っていたのですが思った以上にひでを思い出して気持ち悪くなったので性転換した裏事情があったりなかったり
アーカイブ
:灰川九十九(ZXA主人公+星河スバル 九十九→9)
星方九十九の旧姓。事件のショックによる記憶障害を起こしている。
諸事情で引き取り先の姓に合わせるようになったようだ。両親は既に他界している。
:都頼(とらい→トライアングル→三角形→3)
同じくデンサイバスの行方不明事件の生き残りの少女。
救出されたがショックの影響か記憶喪失と幼児退行を引き起こしており、家族の見舞いはかなり減ってしまったようだ。
:五島エリヴ(???)
デンサイバス行方不明事件の生き残りの少年。
こちらは救出時点で意識不明となっており、人となりは不明。
:バレル(出典・ロックマンエグゼ5)
エグゼ5から登場した謎の男。
現在オフィシャルの知人の頼みにより教官役を務めている。一応ライセンス持ちのため捜査権は与えられている。
とある目的のため、九十九を取り巻くデンサイバス行方不明事件を独自に調査を進めている。
:
デンサイバス行方不明事件後、九十九の面倒を見ていた。恩師に近い存在。
彼がいなければ九十九のオフィシャルへの道はなかったに等しい。最近血圧の上昇が悩みどころ。
:アイリス(出典・ロックマンエグゼ6)
謎の少女型ネットナビ。何故か九十九の前に現れており、バレルはある事件との関与を疑っている。