ロックマンエグゼ:実績『見損なったぞカーネル!』『負けないアイ』開放ルートRTA 作:ヌオー来訪者
すごいわね。
あとアドコレ発売まで残り半月なんですって。(2023年3/31現在)
はやいわね。
ウラインターネット*1。
この名前が出れば、インターネットの浅瀬にいるカタギであれば震え上がり、間抜けな半端者は訳知り顔で語り、筋の者であれば黙して語らない。
インターネットの深淵たるその世界は、本来市民ネットバトラーはおろかオフィシャルですら手出しは困難とされるならず者の巣窟とされる。
故にオフィシャルも責任が取れない上に、そもそも出入りをするなと公式に警告されているものだ。
「誰が馬鹿野郎だ。随分と失礼な小僧だな」
老人は憤慨するが、そんなことは重要ではない。
そんな所に踏み込めば、ナビがどうなるか分かるはずだ。ウイルスの狂暴性はオモテ世界のインターネットの比ではなく狂暴でかつ、無法故にナビ通り魔に遭う可能性も当然高く、時には犯罪の片棒を担がされる可能性だってある。それを理解して踏み込んだのか。
おそらくこの老人のこれまでの言動からしてNOだ。
故に九十九は頭を抱える。
オフィシャルや政府からのお知らせを見ないタイプだ。それでオフィシャルや政府が悪いと言われてはたまったものではない。
「まあいい。とはいえ使えない期間が数週間、これによる損害は計り知れん。……誠意くらいは見せて貰わんとな」
「直してもらってンのに金の要求かよ、がめつい野郎だなぁ……むぐっ」
これ以上ディンゴに喋らせるわけにはいかない。老人の遠回しな金銭の要求に対して一切容赦なくトマホークマンの必殺スイングが如き切れ味のツッコミに九十九は慌てて口を塞ぎ「いやぁすんません」と誤魔化した。
だがしかし、老人は激昂することもなく笑顔で受付嬢に言葉を続ける。
「金とは言っとらん、だが通すべき筋というものはあるのではないか? と言っているんだ。社会人として当然だろう」
「……そうは言いましても」
当然ながら受付嬢がそんなことを決定づける権限などありはしない。
加えて言うならこの文言でも場合によっては逮捕出来たりもする。……オフィシャル側はいい顔をしないだろうが。
「どういった……ことでしょうか?」
当然ここで金、と言わせればほぼ勝ちだ。金銭の要求をされたとして公式的にこの老人を排除することが出来るのだ。その受付嬢の考えを悟ったのか老人の表情は笑顔から鬼の形相に豹変した。
「そんなもん自分で考えろ若造が! 何でもかんでも他人やインターネットから教えを請おうとするその舐め腐った向上心のない姿勢が社会を堕落させるんだ! 分かっているのか!」
その大声は再び、この受付前の乾いた壁を反射し木霊する。いい加減にしろと言いたかったが九十九がここで怒鳴り返した所であの老人が引き下がるわけではない。
そしてひったくるように受付用用紙を引き抜き、ペンにデフォルト状態の長いメールアドレスと電話番号を書き込む。
「内容が出来次第連絡しろ! 名前は覚えたからな……!」
このまま帰れば恐らくこのウイルスとバグまみれのPETと使って、ナビを再インストールすることだろう。そして感染したメールやらなにやらを送り付ければ最早老人のみの問題ではない。
あのまま起動しなければ、PET買い替えだけを押し通して、古いPETはそのままスタンドアローンの屑鉄として一生を終えていたことだろうが、そうはいかなくなった。
台に置かれたPETを取り上げ、ポケットに仕舞おうとする老人に九十九は手で制した。
「ちょっと待って下さい。ウイルスチェック、させてくださいな」
流石にここまで明確に邪魔をされてはいい気分はしなかっただろう、老人が再び九十九を怒鳴り飛ばそうとする、その前に――九十九は手持ちのPETを開きライセンスを表示させた。
ここまで強行するにはオフィシャル権限が必要だ。
流石にオフィシャルのエンブレム自体は知っていたようで、老人の顔が次第に真っ青になっていく。
「今後このPETを使う上で他者のPETに悪影響を及ぼす危険性が無いか確認するだけです。いいですね?」
「……ぐっ……はい」
先ほどまで過剰に大きく見えたその姿がまるで消え入りそうなものになっていくその男の態度に九十九は舌打ちせずにはいられなかった。
「あと――もうデータは諦めた方が良いです。ほとんどウイルスに食い荒らされているようですから」
試しにデータファイルを開こうとすると、画面に酷くノイズが走りファイル名が激しく文字化けを起こす。起動するだけするが最早ご臨終一歩手前だ。
その画面を見せつけると奥歯をかみしめたような音が聞こえてくる。だがそこまでのアフターケアは出来る訳もない。バックアップさえとっていればまた違っていただろうがこの様子では取っていないのだろう。
「お気の毒ですが――」
ウイルスチェックをすると言ってもPETを直接つなぐというのは蛮行に等しい行いだ。
特に旧式もいいところのPETに何の準備もなく接続しようならウイルスが流れ込む可能性だってある。ゼロの戦闘力で何とかなるだろうが、念には念を入れて――ウイルス研究室に持ち込むことにした。
その間には老人には応接室で待ってもらっている。
……予定通りなら30分後に事を済ませられるだろう。
「随分とふてぶてしいジジイだったな」
「力技で再起動させたお前の言う台詞でもないぞ」
実際このまま何もせずに放置しておけばここで対応することもなかっただろう。だが――
あの一瞬でも真っ青になったあの老人の反応が見られただけでもよしとする。そういうことにする。
「最初こそ避けたかったと思ったけど……話してて分かった、あのじーさんの頑固ぶりは筋金入りだ。ネットワーク社会に移行してから20年以上経ってもアレならこちらでどうこう言った所で環境変える気も欠片もない。多分、誰かからの話を今後も聞く気もないと思う」
それにこれは結果論……ではあるが。
あの言動では、もしもPET関係の解決が出来ず他の企業や個人にたらい回しにしたとしたら矛先がそちらに向かい、恫喝し遠回しに金銭の要求をしていた可能性が高い。ジョーモン電気やIPCいずれかに迷惑をかけていた可能性を思えば、ディンゴが無理やり再起動させたのは怪我の功名とも言える。
もちろんこの行為そのものは褒められたものではないので同じことはさせられないが。
最初の時点で既に大概駄目な気もするが、あの誠意の強要でラインは超えた。ウイルス掃除が終わったら然るべき対処をさせて貰う。
「ま、この際だ。ウイルス掃除、ちょっと手伝ってくれ」
「おう。腕が鳴るぜ」
指をパキパキと鳴らす下手な大人顔負けの技量を持つディンゴの力を借りる必要は無いかもしれないだろうが、ウラインターネットに接続したという話がひどく引っかかった。
このまま杞憂で済めばいい。そう願ってもきっと、現実は甘くはない。そんな予感が九十九にはあった。
第一ウイルス研究室。
新・科学省は主に比較的新しい部門に研究室を割り当てている傾向にある。特にウイルス研究については一種の生態系を作り上げており、もう一つの世界における生物学めいた様相を呈している。
その為予算は一際多く振られておりその成果の一つが1階にある第一ウイルス研究室*2の飼育マシンというが、この辺は九十九の専門外だ。
「やぁ星方くん。受付から話は聞いているよ」
第一ウイルス研究室に入ると、ロン毛の研究員が出迎える。
城金の姿を、忙しなくコンソールを叩いている白衣たちの後ろ姿から探しては見たもののそれらしき姿はない。
「城金くんなら今は探さない方がいい」
「なんでです?」
「どうもアドバンストリガーの開発が難航しているようで随分と機嫌が悪い」
「あー」
技術者だろうが科学者だろうが、はたまた現場の人間だろうがことがうまく進まないとナーバスになる時がある。そんな火に油を注ぎにいくような真似は九十九の選択肢にはなく、口から気の抜けた返事が吐き出されるだけだった。
「城金くん美人なのは分かるが……」
「下世話な話はさておいて、借りたい端末がありまして」
「ばっさり切るね……まぁ、呑気にベラベラ話してる暇はないか。ウイルスの巣になっている端末の掃除をするのだろう? そのための戦場が……PETを守るための絶対防衛ラインが欲しい、と」
直接PETに接続すれば九十九やディンゴのPETにウイルスが流れ込む可能性がある。巣に突っ込むということはそういう事だ。だからウイルス研究室が予め持つウイルス管理用の端末を挟んでそこを戦場とする。
「そういう事です」
「ならば、この端末のジャックポートに君たちのPETをプラグインをするんだ」
ロン毛の研究員が指し示したもの。それは、作業用デスクの上に鎮座した黒く横に細長い板のような機械だった。板、とは言ってもそれなりに分厚さはある
「さながら往年のプレイステーションだな……大体2くらいの」
「ぷれすて? なんじゃそりゃ?」
「いや、こっちの話だ」
プレイステーション2*3なるレトロマシンの話をしても仕方がない。今の時代はプレイステーション4か5だ。
九十九とディンゴは互いを一瞥、無言で頷いてから各々PETからケーブルを勢いよく引き出した。
「プラグイン! ゼロ.EXE!」
「プラグイン! トマホークマン.EXE!」
「「トランスミッション!!」」
接続されPETからゼロとトマホークマンが揃って、テスト用端末の電脳に送り込まれる。
見てくれはよくあるタイプの電脳世界だが、その強度は一般配布されているそれとは一線を画す。だからこそバトルフィールドやウイルスの管理には最適と言う訳だ。
『さぁて、腕が鳴るぜ!』
ごきっ、ごきっ、と首を鳴らしながらトマホークアームに力を込めている。対するゼロはいつも通り落ち着き払っており、直立不動で突き当たりの電脳の虚無を見据えている。
ウラインターネットのウイルスか何かが入り込んでいた可能性を考えているのだろうか。
「よし、ゼロ、トマホークマン。今からポートに老人のPETを接続する。同時にウイルスが大量に流入するだろうから即時対応ができるように構えていてくれ」
『了解した』
『おう!』
返事は勇ましく、頼りになるが油断は大敵だ。
老人のPETは依然として動作がおかしく、いつまた再起不能になるかわかったものじゃない。老人のPETからケーブルを引き抜くと黄ばんだ線がずるずると顔を出し、ぬるりと脂のついた端子部分に九十九は顔を顰めた。
なんて汚いケーブルなんだ。よく断線しなかったものである。
「……じゃあ行くぞ皆。プラグイン」
かちゃり、と音を立ててポートに差し込まれたプラグ。
それから10秒のタイムラグからゼロから見た電脳世界にひずみが生まれた。
『来るぞ……!』
その時、九十九とディンゴはおろか、科学省の職員たちも知る由もなかった。
黒いまるで洞穴のような世界から湧き出るウイルスたち、並大抵の攻撃を防いでしまうバリアの一種オーラを発生させたエジプトの石像を思わせる生首。
メガリアだ。こんなウイルスはウラぐらいにしか生息しちゃいない。
他にもエビ型ウイルス、エビロンの上位クラスのウイルスことエビデルにエビサイド、鳥型ウイルスのキオルシンの上位クラスのバドラフト、果ては見たことのないアメーバのような不定形の赤い一つ目、エトセトラエトセトラ……
「なんじゃあこりゃあっ!?」
ウイルス博覧会かウイルス万博でも出来るんじゃないかと言わんばかりに繰り広げられる上位ウイルスの群れを前に九十九は完全に表情筋を思いっきりひきつらせた。
「食べたんでしょうねえ」
「何を!?」
職員の謎の切り出しに九十九がギョッとした目つきで疑問符を投げつける。職員はそれに何のおくびにも出さず神妙な顔で続けた。
「PETにたまりにたまったバグのかけらを――バグバグっと」
「バグのかけらを……バグバグ?」
「バグバグバグバグ」
まるで反芻するかのような職員の復唱に九十九の表情は徐々に真顔を超えた虚無の顔、チベットスナギツネめいたものへと変わった。
「顔が怖いよ、星方くん。ウイルスの進化や強化にはバグのかけらが餌代わりになるってことだ。バグのかけらそのものはネットワーク上どうしても発生するジャンクデータだ」
やっと真面目になった職員の話に九十九もディンゴも耳を傾けながら、先鋒のウイルスたちを片手間に処理していく。
「欠片の一つ二つ程度なら無害なゴミでしかないが大量に集まると悪影響を起こすような代物だ。この手のものはウイルスが持っていたり、ネットワークのどこかに落ちていたりする。この手のものは清掃プログラムくんやネットナビが回収、デリートなど然るべき処分をするのだが――」
これはネットワーク管轄の人間はおろか一般人の間でも常識の話だ。バグチェックは必ずやれと言う旨のメールが政府筋から流されているのをPETを持つ誰もが見たことがあるはずだ。
ちなみに条件が揃えば旧ゴスペルが作り出したバグ融合体なる化け物が出来上がるのでバグのかけらでも油断はできない。チリも積もればナントヤラ、だ。
「これをサボるとウイルスがその道端に落ちているものを食べてパワーアップするわけだ。ウラインターネットなぞ最早清掃する気のある善意のナビなぞろくすっぽいない訳だからな。最近になって拾う奴が現れたが最早手遅れに近いのが現状だ――つまり何が言いたいのかというと、あのPETは小さいウラインターネットだ。……しかし、あの一つ目は……」
拾う奴、というのは拾えばバグのかけらと有用なデータと引き換えてくれる業者ことバグのかけら交換屋が現れたという話だ。善意などでは決してない。もっとエゴイスティックな動機から始まっている。拾う側も引き換える側も。
職員の声を他所にゼロがセイバーで斬り捨て、トマホークマンがトマホークで薙ぎ払う中、立て続けに殺到するウイルスたちを横目に九十九は淡々とバトルチップを転送していく。
小さいウラインターネットとは言っても過去のPETだ。ウイルスが入り込むにしても限度があるし当然量なんてたかが知れているはずだ。
『おい、アレを見ろ』
その矢先、片手間にトマホークマンが得物の先端を指さすようにひずみの方を向ける。ブラックホールめいたそここからは、薄い膜でも突き破るかのように隆起する。ずぬぬ、と音を立てて現れるそれは、人のカタチをしている。
シルエットクイズの如く形を伴ってひずみから現れたそれは九十九にとって見覚えのあるものだった。
「クイックマンだと……!」
公式で配信してるアニメ版を見て気付かれた方や思い出した方もいらっしゃるかもしれませんがEXE呼称するのはアニメだとロックマンだけ。
その為アニメから入った人には、ゲーム版のカーネル.EXEとかトマホークマン.EXE呼称は違和感があるとかなんとか。