目覚めたら相棒と最強装備と宇宙船持ちだったけど、やることもないし付き合ってやるかな   作:楠葉

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# 002 ほんとうのはじまり

寒さで目を覚ます。布団を被ろうと手を動かすが、手に触れるものは硬い何か。

・・・・ベッドの中に硬いものなんて入れてないはずだ。

触れたものを確認するため、目を開ける星の海が目に入ってくる。

こんな星空を目にするのは生まれて初めてだ。

明るい星に暗い星、壮大な極彩色の星雲に、意外と近い位置に見える小惑星群。

 

 

「・・・クリシュナ。」

 

 

昨日も寝る前まで遊んでヒロの船だ。

数ヶ月前にゲーム内イベントで手に入れたばかりの最新鋭の内の一隻で、

正式な型番は【ASX-08 Krishna】だ。

俺達はそのままクリシュナと呼んでいる。

 

意識が覚醒して、自分が横になっているのではなくシートベルトのようなもので席に固定されていることに気がつく。

状況を理解ができずに焦るが、大きく息を吸ってゆっくり吐きだす。

気持ちを落ち着かせるとりあえず大丈夫。

次第に暗闇に目が慣れてきた。見えてきたのは見慣れた計器類。改めて周りを見渡す。

 

 

「ミネルバのコックピット?とりあえず灯りw」

 

 

灯りを点けないと、言い切る前にメインジェネレーターが起動して灯りが点き、

生命維持装置をオンラインになる。すぐにコックピット内に温かい空気が流れてきた。

この船の音声認識装置はメインジェネレーターとは違う場所から電源を引いてようだ。

 

 

「マスター、おはようございます。」

 

 

コックピット内に俺以外の声が聞こえてくる。

ゲーム内でよく聞いたこの船のサポートAIの声だ。

 

クリシュナと同じ最新鋭の一隻である俺の愛機ミネルバ。

正式な型番は【LHM -BB01 Minerva】。

ゲーム内での設定は試験艦で、はじめての音声認識装置によるパイロットの支援を可能としたAIを搭載した船である。

そして、サポートAIのネル。単純に船の名前から取ったものだが、呼びやすいので自分では気に入っている。

 

 

「マスター?どうかしましたか?」

 

 

どうやら、長考して反応しなかったので再度声掛けてくる。

ん、おかしい。簡単な挨拶くらいはできたがこちらの様子を伺う様なことはなかった。

基本的には登録してあるセリフを言うだけだったはずだ。

 

 

「ネル。」

 

 

「はい、なんでしょう?」

 

 

間違いない。会話をしている。ゲーム内ではこんなこと出来なかった。

ゲームの中に入ったのか、ゲームと同じような世界なのかは後で考える。

すぐに次の確認を行う。

 

 

「クリシュナに連絡を。」

 

 

見えている船が本当にクリシュナなのかと。彼なのか。

 

 

「わかりました。こちらコールサイン、ミネルバ。クリシュナ応答をお願いします。」

 

 

すぐにクリシュナに連絡をさせて、再度違いを確認する。

オペレーターの様なことは前は出来なかった。

そんなことを思っていると、回線が通じて映像がでる。

 

 

「カオル!?やっぱりミネルバなのか。これはどういうことなんだ?」

 

 

知った顔、やはりヒロが映し出される。


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