目覚めたら相棒と最強装備と宇宙船持ちだったけど、やることもないし付き合ってやるかな   作:楠葉

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# 005 出会いは突然に!エルフナンデ?

「ほう・・・」

 

 

「なんか変な感じだな。」

 

 

俺達のいる貿易コロニー・ターメーンプライムはトーラス型の、いやタイヤ型と言ったほうがわかりやすいな。タイヤ型のコロニーだ。

 

コロニーは常に回転しており、それによって生み出される遠心力で擬似的に重力を生み出す。

遠心力で重力を生み出しているので、輪の外側が地面ということになる。

遠くを見ると上り坂のように地面が果てしなく続いているのが見える。

地球にいるときには考えられない光景だな。

空を見上げれば遥か彼方にガラスのような素材でできた天井と、

その先に見える宇宙やコロニーの中央部分に見えるハブが見える。

地上からは一定間隔で何本もハブに向かってエレベーターが伸びており、

その様はまんま自転車のタイヤのスポークのようだ。

 

映画の宇宙もので見たことのあるような光景で、

でも、見ていて違和感しかないな。

 

で、いつまで周りを見てるとおのぼりさんと思われる。

そんな状態だと、余計なのが集まってくる。

 

 

「なぁ、この世界って何処からが自己防衛なんだ?」

 

 

「は?いや、手を出すなよ。ストレス溜まってるのはわかるが、今度は軍にお世話になるぞ。」

 

 

ヒロは一瞬、キョトンした顔になるが、すぐに意味を理解して答えてくる。

 

 

「この前の軍人様なら、楽しくお話しできるな。」

 

 

「笑い事じゃない。」

 

 

このコロニーの治安の良さは『普通』だ。

日本の治安をこの世界の治安の基準に当てはめると『最良』である。

よそ者の俺達がレーザーガンによる武装を許される時点で治安の良さなんぞお察しというものだ。

 

 

「これ、俺1人で歩かない方がいいのか。

今のもだけど、お前がいてこれがあるから近寄ってこないだけでぜってぇ勘違いした馬鹿がいるよな。」

 

 

これといって、レーザーガンに視線を送る。

さっきから視線を送ってくる男達…チンピラ達が何人か居るが、

ヒロと、腰にぶら下げたレーザーガンを見て、つまらなさそうな顔をしながら路地裏へと消えていくのだ。

やはりこれ見よがしなレーザーガンは十分に効果を発揮してくれるようである。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ハイ、新人ニュービー。良い銃持ってるわね」

 

 

レーザーガンの威嚇効果を実感して内心で胸を撫で下ろしていると、後ろから声をかけられた。

振り返ってみると、そこに居たのは2人の銀髪の美女である。

2人とも目鼻立ちは異常なレベルで整っており、髪の毛は色素が非常に薄く、透き通るような銀髪。

1人はショートボブで、もう1人がセミロングだ。

身体つきは小柄だが、しっかりと肉はついていて華奢な印象はあまりない。

 

何より目立つのはその銀髪の間からぴょこんと横に飛び出した尖った耳だ。

エルフ? 宇宙にエルフ? SFかと思ったら唐突にファンタジーぶっこんでくるね? 

ステラオンラインにはこんな奴は居なかったように思うが……?

 いや、でもよく考えてみればSFっぽい世界に耳の尖った人間似の異星人、なんてのは定番と言えば定番か。別に騒ぐほどのものでもない。

 そして服装は……なんと言ったら良いのか。軍人っぽいようで少しラフな感じ。

 エルフなのに肌の露出が多いわけでも、ひらひらした服を着ているわけでもなく、俺と同じような丈夫そうなズボンに地味な色の無地のシャツ、丈夫そうなジャケット。ヒップホルスターには俺のものよりは小型のレーザーガンらしき銃。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ん、何か用か?綺麗な姉ちゃん達。」

 

 

振り返る、綺麗な姉ちゃんがいた。

自分以外で初めて見る銀髪。

 

 

「ふふふ、ありがと。用事ってわけじゃないけど、見てて面白かったから。

で、そっちのは人のことをジロジロと。」

 

 

「いや、いきなり知らない人に声をかけられたら警戒するでしょう。常識的に考えて。」

 

 

「そう言われればそうね? でも、私は怪しい者ではないわよ。見ればわかるでしょう? 

貴方達と同じ傭兵よ!こっちの娘と違って気が小さいわね。」

 

 

「な!?」

 

 

「姉さん、失礼よ。」

 

 

そう言って傭兵風銀髪の姉?エルフがドヤ顔で胸を張る。それを咎めるように言う妹?のエルフ。

まぁ、顔がニヤけてるからからかいも半分くらいは入ってんだろ。

 

 

「ちょっとアンタ、どこ見てんのよ?」

 

 

そんなに見てたかと思い首を傾げると、

 

 

「アンタじゃないわよ。」

 

 

横を見ると2人のことを凝視している馬鹿。

姉エルフが両手で自分の薄い胸を隠すようにして不機嫌そうな視線を向けてくる。

それに悪びれることなく、

 

 

「自慢げに反らされた貧相な胸を見ていますが、何か?」

 

 

「何か? じゃないわよ。なかなかイキの良い新人ね」

 

 

据わった目で馬鹿を睨みつけながら獰猛な笑みを浮かべる。

別にこの娘が小さいとは俺は思わないが、隣の娘が少し大きいとは思う。

ああ、ヒロはおっきい派だからしょうがない。

妹ちゃんはクスクス笑ってる。

 

 

「エレナ、アンタの方がデカいからって笑ってんじゃないわよ。」

 

 

「それにしても、よく俺達が新人だとわかりましたね?なにか目印でも?」

 

 

「まず、その歯の浮くようなわざとらしい言葉遣いをやめなさい。鳥肌が立ちそうだわ。」

 

 

「了解。それで?」

 

 

「まず、アンタ達のなりと脇のレーザーガンで傭兵だっていうのはひと目で分かるわ。」

 

 

「なるほど。」

 

 

そんなもんか。確かにもう一度周りをよく見ればヒロや彼女達のように妙に丈夫そうなズボンやジャケットを着ている住人はいないな。

皆さして厚くもない生地の身軽そうな服を着ている。改めて見てみると俺達の格好は周りから浮いているな。

 

 

「そして、妙にキョロキョロしたり、コロニーの風景を感心したように見たりしていたでしょう?

今まで一度も自分の居留地から出たことがないやつの特徴的な行動の一つね」

 

 

「なるほど、残念宇宙エルフさんは頭が良いな。」

 

 

「今なんつったお前?」

 

 

「ナンデモアリマセンヨー。」

 

 

いや、すぐに謝るくらいなら言うなよな。

それより、

 

 

「で、その頭の良い先輩傭兵さんは一体何の用で?いいカモ見っけってか?」

 

 

わざわざ話しかけてくる意味がわからん。他の人は俺達を避けてるくらいなのに。

 

 

「……ふん、まぁ良いわ。私達はね、「暇なのよ。」」

 

 

「ん?」

 

 

「星系警備隊がきな臭い動きをしているのはわかっているんだけど、何の通達もなくて暇なの。何かありそうだからコロニーを離れるとバカを見そうだし、だからってこのコロニーには面白いものもないしね。だから、暇なの。」

 

 

「そういや、あの軍人様も何か言ってたな。」

 

 

「ヘェ〜、それが本当なら出て行かなく正解ね。それでブラブラしてたらいかにも新人ニュービーって感じの坊やが歩いてるじゃない。だから、からかって遊ぼって思ったわけ。」

 

 

「特に理由はないと。」

 

 

わかるようなわからんような感じだ。遊ぶなら、ヒロで遊んでくれ。

まぁ、折角向こうから話しかけてきてくれたんだから利用するとしよう。さっきまでの会話でも情報を手に入ってるし、データにある情報だけじゃ、こういうことはわからんからな。向こうは時間と暇を潰せて、まさにWin‐Winな関係だな。

 

 

「じゃあ暇潰しに食料の買えるとこに連れて行ってくれよ、先輩。」

 

 

「えー、どうしようかしら? ここのフードショップはお酒も置いてないし、面白くないのよね。」

 

 

「酒? 酒なら俺の船のをやるぞ?この前、宙賊やった時のでいいなら、コンテナ一つ分あるぞ。どうせ、俺達はそんなに酒は飲まないし。」

 

 

あんなにあっても困るし、別にいいだろ。ヒロは飲めないからな。

 

 

「それをやるから俺達を食料品店に連れてってくれよ。それと先輩としてのアドバイスをくれたりすると嬉しい。」

 

 

「姉さん。」

 

 

姉エルフは考えこむかのように小首を傾げ、少ししてから頷いた。

 

 

「良いでしょう。暇も潰せそうだし、それでお酒が飲めるようになるなら悪くないわ。貴方に教えてあげるわ、傭兵の常識ってやつをね。この『先輩』の私が!」

 

 

なんだか妙に先輩という部分を強調するな。

まぁ、見てかわいいから別にいいが、妹ちゃん笑ってるよ。

ヒロは何考えてるか分かりやすい顔してるが、こちらとしては先輩風を吹かされるくらいなんでもないので気にもならないけれど。

見た目は良いし、反応も面白そうな女の子だからな。

 

 

「それじゃあ商談は成立だな。確か取引は端末でできるんだよな。登録するからIDをくれよ。」

 

 

「良いわよ。悪用したらブロックするからね。」

 

 

みんなで互いに小型情報端末を取り出して通信用のIDを交換する。

どうやら彼女達の名前はエルマとエレナいう名前であるらしい。

IDを交換したので、これで端末を操作して船から船への物資トレードが可能になる。

 

 

「ふーん、ヒロね。随分とシンプルな名前じゃない。で、あんたはカオルね。」

 

 

「ほっとけ。そういうあんただってエルマってシンプルな名前じゃないか。」

 

 

「私のほうが一文字多いわ。」

 

 

「別にどうでもよくね。」

 

 

ヒロとエルマが何か言ってるが、その間に酒を送る操作をエレナに教わる。

 

 

「ありがとな、教えてくれて。」

 

 

「どういたしまして。でも、今までどうしてたんですか?」

 

 

「もう一人ネルってのがいって頼んでた。」

 

 

ちょっとやばいことを聞かれたが、深くは聞いてこないから助かった。

なんか知らんが、暗黙の了解的なものがあるんだろう。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

どうやら、荷の移動が終わったらしい。

 

 

「これ、どういう仕組みで物資が移動するんだろうな。」

 

 

「知らないの? 接続しているハンガーを通してコロニー内の物資輸送システムにアクセスできるようになってるのよ。物資輸送システム経由でお互いの船と物資をやり取りできるってわけ。」

 

 

「ほー、なるほど」

 

 

 どうやらこの宇宙時代では船からの荷の積み下ろしなどは全て自動化されているらしい。

人間が自らの手で荷の積み下ろしをしたりするのはとっくに廃れてしまった仕事であるようだ。

 

 

「エルマは傭兵歴はどれくらいなんだ?」

 

 

「五年よ。この世界で五年はベテラン扱いね。」

 

 

「ほーん、そうなのか。」

 

 

 傭兵歴五年ということは、テスラオンラインのサービスが開始されるよりも前から彼女は傭兵であったというわけだ。

そういう意味でも確かに彼女は俺よりも先達で、先輩なのだろう。

 

 

「なるほど、本当に先輩だな。よろしく頼むよ。」

 

 

「急に殊勝になったわね? まぁ、年長者を敬うのは良いことだわ。」

 

 

「年長者?」

 

 

「私、これでも五十三歳よ?」

 

 

「……若作りだな?」

 

 

 どう見ても二十歳にもなっていない少女にしか見えないのだが。

 

 

「アンタ達ヒューマンよりも長生きなだけ。アンタたちってどんなに長生きしても一五〇歳くらいまでしか生きないじゃない。私達は少なくとも五〇〇は生きるんだからね」

 

 

「なるほど、種族差なんてものがあるわけか……傭兵歴五年ってことは、四十八歳から傭兵を始めたんだな。それまではどんな生活をしてたんだ?」

 

 

「べ、別にどうだって良いでしょ!? 傭兵の過去を詮索するのはマナー違反よ!」

 

 

 俺の質問にエルマは慌てながらそう言って、俺に人差し指を突きつけてまくしたててくる。

どうやら聞かれたくない話題であるようだ。俺はえらい剣幕で怒る彼女に降参の意を示すように両手を挙げた。

 

 

「わかった、それを聞くのはやめるよ。興味本位で聞いて悪かった。でも、そんなに慌てると聞かれると都合が悪いって言っているようなものだぞ?」

 

 

「むぐっ……わ、わかったなら良いのよ」

 

 

 よほど都合の悪い何かがあるらしい。

あまりつついてへそを曲げられたら困るので、迂闊に触れないようにしよう。

 気を取り直して歩き始めるエルマの横に並び、傭兵としての心得を聞き出すことにする。

残念宇宙エルフという印象があったのでどんな突飛なことを言ってくるのかと実は少し身構えていたのだが、話の内容そのものは実に堅実なものだった。

 

 

「依頼を受ける時は必ず傭兵ギルドを通すこと。トラブルが嫌なら尚更ね。」

 

 

「傭兵ギルドねぇ。そういや登録しないとなぁ。」

 

 

「そうだな。ここでやっといた方がいいな。」

 

 

「はぁ!? アンタ新人ニュービーの上にモグリなわけ!? 食料品なんかよりも先に傭兵登録をしなさいよ!」

 

 

「あ、はい。すみません。」

 

 

「まぁ、それが目的の一つではあったのは間違いないから、頼むよ。」

 

 

「あんたたちね〜。ほら、さっさと付いてきなさい。」

 

 

意外と強い力でジャケットの裾を掴まれ、引っ張られながら来た道を戻る。

どうやらハンガーベイに続くエレベーターのあった場所のすぐ近くに傭兵ギルドの事務所があったらしい。

2人はプリプリと怒りながらモグリの傭兵というものがいかに危険な立場なのかということを説明してくれる。

 曰く、傭兵ギルドに登録していないモグリの傭兵というのは下手をすると賞金がついてないだけの賊と同等の扱いをされることがあるらしい。

場合によっては入港を拒否されることすらあるということだ。

 

 

「世知辛いなぁ。」

 

 

「当たり前です! どこの組織にも属してない放浪者が一撃でコロニーやステーションに致命的な損傷を与えかねない船を乗り回してたら警戒されるに決まってます! 今までよく無事でしたね!?」

 

 

「いやー、そこは聞くも涙、語るも涙の複雑な事情があってなぁ。」

 

 

「そんなのあったか?」

 

 

「カオル!?そこでそんなこと言うか。」

 

 

そんなことを言っていると俺はエレナに引きずられて傭兵ギルドの事務所に辿り着いた。

事情の説明はまた今度だな。

それにしても、俺の頭の中で想像していた傭兵ギルドの事務所より百倍は綺麗な建物である。

 よくわからない光沢のある材質でできた床に、明るい照明。待合用のものか、背もたれのないクッション付きのスツールがいくつも並び、その奥にはカウンターがいくつか見える。

 各カウンターの案内板が天井からぶら下がっていて、施設内の人はまばらだ。あまり繁盛はしてないのかな?

 

 

「なんか傭兵ギルドの事務所ってよりはお役所みたいだな?」

 

 

「似たようなものです。ほら、受付に行きますよ。」

 

 

「へい、姐御。」

 

 

 俺はエレナ先輩に引きずられて受付へと向かうのだった。

 

 

「思ったより、綺麗だな。」

 

 

「そう?何処も大概こんな感じよ。」

 

 

カオル達も後ろから声がするからついては来てるようだ。

 

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