シルヴァリオ・エンピレオ   作:ゆぐのーしす

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短ければ多分後7話、長ければ10話ぐらいで完結すると思います
多分次回は投稿遅れます。


悪魔の塔、星の愚者 / Despair

 焔の中に、その巨神はいた。

 人の形をした型に太陽を流し込んだようなような者だった。

 

 勇壮に進撃し、降りかかる悲劇を一刀の下に断ち、涙の雨を焼き尽くす絶対至高の太陽神。

 

 力無き者はその姿に聖性と嫌悪を覚えただろう。

 忌み嘆く者はその姿に忌避と憎悪を覚えただろう。

 輝き焦がれる者はその姿に憧憬と歓喜を覚えただろう。

 

 感想とは所詮、ヒトがある事物事象に対しそのヒトの感性体系と理論体系で感じるモノであり、禁じることは誰一人にとて出来はしない。

 感想とは、自由なものなのだ。

 

 

 ――であればこそ、怒れる者(太陽天)がその姿に親近感を覚えることは、必然だったろう。

 

 

 

 場所は移り、今は秘跡省のかつての神祖オウカの居室に彼らは一堂に会していた。

 面子は木星天、水星天、ロダン、エリス。

 それらだけだった。

 

 居室のソファに、マリアンナは今はその体を横たえ、休眠している。

 リヒターは手当を施すために場所を移された。

 

「……本当に聖教皇国の地下に奴らはいると考えていいのか?」

「堕天と魔女の工房、そこで至高天の階達は生まれた。概ね、奴らが腰を落ち着けるとすればそこ以外は無い。聖戦の開幕と共に至高天の階同士は、ある程度その星光反応から距離の感覚や方角は感じ取れる」

 窓際で、腕を組みながら木星天はそう答える。

 ……考えれば考えるほど、英雄そっくりの顔の男が聖教皇国の中枢で腕を組みながら立っているという光景は異なものだと思う。

 

「ウェルギリウスとルシファーが、何より貴方に敵意を向けられているのにそこに留まり続けるとなぜ言えますか」

「堕天と魔女の行動を思い出せ。アレは少なくとも聖戦の開幕以後は事と次第が露見する事をどうとも考えていない。そうでなければ魔星を放し飼いになどせん。何より、俺を設計しようとはしない」

「……彼らの動機としても、身を隠すことはそれほど重要ではない、ということですね」

「栽培者が自身の栽培物の様子を見るのに身を庇う必要がないのと同等だろう」

 むしろ、攻め込んでくることを彼らは望んでいるのだろうとエリスは思う。

 彼らに思考を巡らせることが、どうしようもなく忌々しい過去を思い出させてしまう。

 

「……木星天、頼みがある。俺達を、その地下の区画まで連れて行ってくれ」

「……」

 ひとしきり、木星天はロダンとエリス――それから水星天を見る。

 

 

「水星天ならともかく、行けば、恐らく詩人と淑女は死ぬ」

「覚悟の上だ」

「お前達の憤激は俺には分かる。だがお前達が死んで悲しむ者はいるか。……俺が堕天を討ち、至高天の眷星達を討つ――以って魔女の盤面は終焉する。それを是と出来ぬのなら、止めはせん」

「……」

 それは、と言いかけて言葉にロダンは詰まった。

 少なくとも、ロダンとエリスには自分が死んで悲しむ人間の心当たりはあったからだ。

 決して木星天はついてくるな、とは一言として言っていない。だがその上で死地に赴く覚悟を問うている。

 

 

「私は御姉様に従いますが?」

「お前は黙っていろ、これは淑女の問題だ水星天」

「貴女の方針は聞いていません、水星天」

 木星天とエリスはそう、息の合った返答を返した。

 木星天は済まなかったと目を閉じて、エリスは居心地の悪さを感じていた。

 

 皮肉だが、この重苦しい雰囲気を水星天はある程度緩和していた。

 

 

「……夜には発つ。考えが纏まったなら此処に来い、それまでは答えを待とう」

 

 

 

「……ん、ロ、ダン?」

「あぁ、俺だよ。グランドベル卿」

 次に、私が目を開けた時に視界に映っていたのはロダンだった。

 手が温かい、彼に握られている。

 

「……ロダン。私は、生きていますか? この光景は、現実ですか?」

「あぁ。……現実だよ、グランドベル卿。……貴女は確かに、帰ってきてくれたんだ」

「なら、良かった。私は貴方を悲しませることはなかった」

 心底から、嬉しそうなロダンの顔。

 彼はなんて幸せそうなのだろうと思う。私に、そんな顔をされるだけの価値はないと思っていたのに、そんな彼の心底から幸せそうな顔を私は何より手放しがたいと思った。

 ……私が許せなかったのは、私だった。あの日の焔の中で死ねなかった報いを私は欲していた。

 なのに彼は、まるでこの世これ以上大切なものは無いのだとでも言いたげに、私を案じてくれていた。

 

 

「もう少しだけ、私は生きてみたいと思います。あの村の子達が生きることができなかった明日を、少しでもあの世であの子達に伝えられるように」

「是非、そうしてみてくれ。そうしてくれれば、俺はうれしい」

 もう少し、あちらに逝くのは後になるのだろう。

 私の胸にもう、焔は宿らない。星辰奏者としての私は死んでしまっただろう。

 

「……認めたくはありませんが、私は案外木星天と似ていたのかもしれません。それ故に閃奏を招来できた」

「確かに貴女は本来は光の資質を備えてはいたのだろう。けれど、その熱量は悲劇(てき)以上に何より貴女自身に向かっていた。だから、貴女は例えるのであれば光――ではなく焔。そう言うべきなのだろう。自分の骨肉を燃やしながら闇を晴らす灯だった」

 光、ではなく焔。言い得て妙であったと思う。

 思えば他者にとって、私はどう映っていたのかはあまり気にしたことが無かった。

 ……私が閃奏に賭けたのは自分の性質を何より自覚していたからでもあった。

 何かが異なればまだだ、と叫んでただ戦い続けるそんな人間に私はなっていたのかもしれない。

 

「ロダン。……貴方は、堕天と魔女の下へ行くのですか?」

「……聞いていたのか、グランドベル卿」

「えぇ。盗み聞きをするつもりはありませんでした」

 彼は、木星天の言葉に答えを返せはしなかった。

 

 

「……ロダン。貴方は私に死なないでほしいと言い、そして私は貴方に目の前に帰ってきました。私が貴方に死なないでほしいという願いは不当ですか?」

「……」

「そこで即答できない事こそ、貴方らしいともいえるでしょう。今こうして問答している間にも、貴方はこの場でのもっともらしい解答を考えている。違いますか?」

 苦々しい色がその顔にはありありと浮かんでいた。

 どこまでも表情が読みやすい人だと思う。

 

「敢えて、困らせる事を言いました。けれど私に対して貴方がそうであったように、貴方の喪失を恐れる人がいる事を忘れないでください」

「グランドベル卿も、その内の一人か」

「……それをわざわざ私の口から言わせる必要があるでしょうか」

 ……彼について、私はよく気を砕いていたと思う。

 彼を憐れんだから、というのは無論あるだろうし、彼が騎士として有望だからという事もある。

 けれど今私が彼に向ける感情を私は何と例えれば良いのだろう。

 今、私は彼について考えるとき、少しだけ心臓が温かく感じる気がした。だからこそ、今は私は彼が行ってほしくないと思っている。

 

「……もう私は星辰奏者ではなくなりました、ロダン」

「あぁ。木星天から聞いてる」

「ですから私にはもう貴方を止める力はありませんし、貴方の決断を尊重します。……貴方に私は決して多くは望みません。だからどうか、生きて帰る事を誓って頂けますか?」

 言葉だからこそ、彼には武力よりも響くだろう。けれど結局言葉は言葉で、彼の選択を止める物理的な力は宿らない。

 本当は止めたいと願っている私がいる。それが正しいし、最善は木星天が至高天と相打ちとなる事だ。

 

 彼はエリスの本体たる銀月天と面識があり、同時に彼女の仇を取りたいと考えている。

 今でも神祖を憎んでいる私が、復讐をするなとは決して言う事は出来なかったから。

 

「……誓おう、グランドベル卿。貴女は約束を護った。俺が護らない道理はない」

「言い忘れていました。それから、エリスも護って帰ってきてください。……彼女に、私は話したいことや詫びたい事が、たくさんあります」

「承知したよ、エリスにもそう伝えよう」

「それからロダン。……一つだけ、今ここで冗談を言っていいですか?」

 彼は、いいよと首肯する。

 だから少しだけ、私はその言葉に甘えようと思う 

 

「……もし、何事もなく全てが終った時。その時は――そうですね、私の秘書になりませんか?」

 いつか彼に言った、冗談だった。

 少しだけ、今は本気だ。

 それから彼は少しだけ苦笑いの混じった迷った顔をして、答えてくれた。

 

「それは、その時に考えよう。魅力的だがエリスが拗ねる」

 

 

 

「……水星天」

「はい、なんでしょう神聖詩人」

 ……水星天は、特に興味もなさげに聖庁の外を眺めているばかりだった。 

 相も変わらず、少し調子が狂う。エリスと同じ顔をしているだけに、どうともやり辛い。

 根本的にこちらに特に興味がないのだろう、乾いた抑揚で応じる。

 

「俺は、堕天を討ちたい。エリスもそう望んでいる。そしてエリスを巻き込むことになるだろう」

「そうですね、こればかりは御姉様も愚かだと思います。木星天共々堕天が死ぬことがこの場における最善でしょう」

「でも、お前はエリスを護るんだろう」

「当たり前でしょう。私は御姉様を愛しています。愛する者を護ることと、愛する者が愚かである事は、何ら関係のない事でしょう?」

 水星天の性根は測りかねるところが大きい。

 今のところは、味方と捉えるべきなのだろう。

 

「……じゃあその愛する御姉様の付き人はどう思っている?」

「御姉様の付属物に特別の価値はないでしょう。それどころかさっさと死んでその立ち位置を私に寄こしてくだされば何よりなのですが」

「……エリスを大事に想っている一点においては、同じはずだと思ったんだがな」

「えぇ、そして貴方が死ねば御姉様は悲しむでしょうね。大変まことに不本意ですが、私が貴方に与する理由はその一点のみです」

 ……エリス、その存在がある限りは俺は水星天と目的を一つと出来る。

 薄氷の契約のようなものだが、それでも敵対するよりはましだ。

 

「神聖詩人。貴方が堕天と魔女と戦う理由は何ですか」

「……あの子から――或いは火星天からヒトである事を、ヒトとしての死を奪ったからだ」

「……でしょうね。そのように答えると思っていました」

 堕天と敵対する理由。

 要するに、水星天はそこまで命を賭ける動機は何かと聞いている。

 

「そして、だからこそ俺はルシファーとウェルギリウスを知らなければならない。恐らくルシファーもその起源となった人間がいる。……そいつが何を考えて、なぜ魔女に与しているのか。魔女が何を見ていたのか、それを知らなければならない」

「知って、どうするというのです。情状酌量の余地があれば赦すと?」

「別にそのつもりはないよ。……ただ、もう副長官は亡くなったが、それでも彼女を魔女ではなく人として裁くとエリスは副長官と約束したらしい」

「それもいいでしょうし、好きにするといいでしょう。私は貴方の方針には心底として興味がありません。せいぜい、御姉様を悲しませない決断をしてください」

 始めから言われるまでもない話だ。

 それから少しだけ、外に出る。

 故オウカ氏の居室、その外にはエリスが佇んでいた。

 

 

「エリス」

「はい、なんでしょう。ロダン様」

 エリスは少しだけ、曖昧な笑みをしている。

 今もなお、俺とのつながりを彼女は戻せていない。それを気に病んでいるのだろう。

 

「……ロダン様。私は、ロダン様の力になりたいと考えています。けれど今はそれを、成せません。……私は、私のあの姿を恐ろしいと思いました」

「……」

「ロダン様も連座となるところだった。あの光景をもう一度、繰り返しかねないと思った時私は、何もできなかったのです」

 心因性、と一言でいう事は簡単だろう。

 けれど問題の根が深い。エリスは良くも悪くも純粋で、そして何より引きずりやすい。

 俺がそれについてどうとも思っていない事を告げたとしても、彼女自身が彼女を許せないのだろう。

 

「私はどうしようもなく今、ロダン様に執着しています。……火星天の事も、マリアンナ様の事も、貴方は私とは違う方向性での理解者となった。……率直に打ち明けると、私は少しだけ疎外感を感じてしまうのです。……面倒な女だと、笑ってください」

「今更だな。……別に、面倒な女なのは最初から知ってる」

 少し、エリスはきょとんとした顔をしている。

 俺の言葉がそれほどに意外だったのか、当惑しているようだった。

 

「面倒ごとを持ち込んできて、俺の足を踏み、姉さんを騙し、野郎にさえ嫉妬するような奴を面倒じゃないと誰が思う?」

「……確かに客観的に見て、言い逃れの余地なく面倒な女だと思います」

「そんな自他ともに認める面倒な女を、俺以外の誰が付き合いきれると思う? そもそも、お前と極晃を描いたのは誰だ?」

「……ロダン様です」

「そうだろう、その通りだ。だからエリスが心配することなんか何もない。……ルシファーとウェルギリウスが事態の根源だ。あいつらを討てば総てが丸く収まるとは限らないが、それでも聖教皇国に迫った危機は終わるだろう。……その後でいくらでもエリスに付き合ってやるさ。だから気に病むな」

 少しだけ、エリスの表情は晴れた。

 その笑顔でいいし、その笑顔がいいと思う。

 

 

「討とう、ルシファーとウェルギリウスを」

「えぇ、私達のために」

 

 

「決断は、決まったか」

「あぁ」

 木星天は、そう俺に問う。

 太陽は沈み、もう夜を回ろうとしていた。エリスと、俺、そして木星天が一堂に会していた。

 

「よく悩み、考えた末の判断と見た」

「そう解釈してくれると助かる」

 事態は刻一刻と進展を遂げていく、恐らく残された時間はそう多くはないだろう。

 

「事態は一刻を争う。もはや皇国の指揮を待つべきではない――少し離れろ、往くぞ」

 ただ、そう言って木星天は、居合を放つ。

 幾筋かの剣閃が部屋の床を走ると、そのまま床は陥没して崩落した。

 

 

 その空洞を覗き込むと、手で「こちらに来い」と木星天は合図をしていた。

 

「……行こう、エリス。水星天」

「えぇ、行きましょうか」

 そのまま地下に一直線。

 着地すれば見渡す限りの果ての無い闇一色。こんな世界が聖教皇国を住む者たちのすぐ足の下にあったのかと思うと現実味がわかなかった。

 

 理路整然と柱が一定の間隔で並びながら、地下空間の天蓋を支えている。

 なるほど、と感心せずにはいられない。確かにここは何かを隠すのならうってつけだ。

 

 話でしか聞いていないが、神祖の国家建設の過程で生まれたモノだという。

 

 

「概ねの方角は分かる。……いや違う、敢えて知らせている。恐らく堕天と魔女もこちらの動きは既に察知している」

「……大体、分かる。かすかに遠くから、星を使ってる気配がある」

「来い、とでも言っているのだろうよ。アレは収穫とやらを待ちきれんらしい」

 忌々しい。

 ただその一点において、俺達の意志は一致していただろう。

 

 ルシファーの座標――悪魔の工房(コキュートス)に、俺達は一気に駆け抜けた。

 

 

 風景は一気に残像を描き、無明の地下空間を駆けていく。

 どこまでも、果てもなく。

 

 怒りと共に早鐘を打つ心臓を少しだけ、風が冷却してくれる。

 

 

 そしてこの地下空間の果てに、隔壁が見えた。

 増改築を繰り返したようなつぎはぎだらけの構造物だが、ソコだけが明らかに周囲の空間から切り取られたかのような異様さを持っていた。

 

 木星天と、俺の剣はその隔壁を切り抜き打ち破った。

 

 崩れていく瓦礫の中に――視線は交錯する。

 

 

「待っていたし待ちくたびれていた。よく来た、詩人。木星天」

「えぇ、ずっと。私は貴方達を待っていた」

 ルシファーとウェルギリウスは、そこにいた。

 

 

「剣――か。ならば俺は公正を重んじよう」

 

 

 ルシファーはその両手を虚空に翳すと、輝く結晶がやがて剣となり、両手に双剣が握られていた。

 

 右手の剣で俺の剣を、左手の剣で木星天の剣を受けると、それを同時に押し返した。

 

 

 

 ついに、魔女の中枢、そこに俺達は辿り着いた。

 そこにはただ、ルシファーとウェルギリウスが坐しているのみだった。

 

 

「苦しみ悶えて死ね、堕天。天国(ヒカリ)煉獄(きょうかい)も、地獄(ヤミ)にすらももはや貴様の安息はないと知れ」

「いい殺意だ、木星天。俺が求める熱量に達している」

 極限の赫怒をその身に浴びながら、尚もルシファーは笑っている。

 

 そして、声すら残さず木星天はその二刀を翻しルシファーに踏み込んだ。

 光を思わせる神速の踏み込みは――しかし次の瞬間には俺達の眼前には目を突き刺すような鋭い閃光と共に、焔が広がった。

 

 赤色、青色――などではない。

 晴天の太陽を目前にした時、その色を何色だと問われれば辛うじて白としか答えられないほどにその熱量は常軌を逸していた。

 

 視界から光が晴れたその先に、天井から降りるように一人の女性がいた。

 俺には、面識などまるでないが至高天の階、その一人であることは明らかであり――同時に、木星天の顔に初めて困惑が刻まれていた。

 

 

「……驚いた、その躯体はもうとっくの昔に限界を迎えてるはずでしょうに。えぇ、貴方達は初めましてになるけれど――ポースポロス。貴方は久しぶり、かしら。私の名前はジュリエット・エオスライト――それともこう言ったほうがいいかしら。太陽天(ソル)、と」

「……なぜ、お前がここにいる」

 静かに、しかしその吐息に怒気が宿る。

 木星天は間違いなく、今この場で誰よりも激している。

 

 

「ジュリエット、なぜだとは問わん。――魔女、貴様らは超えてはならない一線を超えたな」

「人聞きが悪いわね、木星天。何を勘違いしているのかは知らないけれど元から彼女は至高天の階だし、私達の協力者よ。彼女は望んで私達に手を貸した――まぁ、身分を隠して貴方の手当をしたのは彼女の職業病でしょう、責めないで上げるといいわ」

 ……今この太陽天という女は堕天と魔女に与している。それだけが明然たる事実だった。

 文脈から察するに、恐らくこの眼前のジュリエットという女性は人であった頃の木星天の知己なのだろうか。

 

「私が魔星で驚いた? 別に私は驚いてないよポースポロス。貴方がここまで生き延びてくるのも、ルシファーとの決戦で幕を引こうとしている事も、総て私は()()()()()()もの」

「……お前が魔女を討つ障害となるのなら、是非はない」

 困惑も一瞬で、次の瞬間には何の変わりもない憤怒と殺意が、紫電となって刀身を走っていた。

 

 

 だが、驚愕はその一つだけではない。

 

「死になさい――ウェルギリウスウウゥゥゥ!!!」

 ルシファーとウェルギリウスの背後から、襲い掛かる一人の魔星がいた。

 どす黒い、瘴気のようなモノを纏いながら、それは全霊で星を叩きつける。

 その声に俺は、よく聞き覚えがあった。

 

 

「――目覚めたか、恒星天(ステラート)

「えぇ、()()()()()()()()ね、ルシファー」

 何事もないように、その襲撃の余波をルシファーたちは背に生じた羽のような光る構造物で防いだ。

 恒星天――その星の担い手に、今度は俺達が驚愕する番だった。

 

 

「嘘……、でしょう。そんな――ウェルギリウス、まさか貴女は……!!」

 エリスもまた、青ざめた顔をして恒星天――ハル姉さんを見つめていた。

 黒い天衣を纏い、緋色の眼光を宿している。綺麗だったその黒髪は、まるでエリスのソレを連想させるかのように、銀色に染まっていた。

 それから、少しだけ俺達に微笑む。もう、その瞳からは正気が喪失していたことは明らかだった。

 

「あぁ、エリスさんとロダンじゃない。……ちょうどよかった、ねぇロダン。一緒にウェルギリウスとルシファーを、殺そうよ。エリスさんも、もう戦わなくていいの。だから安心してロダンの事、()()()()?」

 その笑みが、あまりにもちぐはぐで寒気と怖気が走った。

 べっとりと張り付いた笑顔、その下に渦巻くモノが絶対零度の憎悪である事が分かってしまったから。

 

 

「どうしてだよ、姉さん――なんで、姉さんが魔星になってんだよ!?」

 

 




■■■■■■■■■、顕現するは太陽天
AVERAGE: AA
発動値DRIVE: AAA
集束性:C
拡散性:AA
操縦性:AA
付属性:A
維持性:B
干渉性:AAA
太陽天。
その輝きは、天昇せし鋼の恒星が如く。


■■■■■■■■■、顕現するは恒星天
AVERAGE: A
発動値DRIVE: AA
集束性:D
拡散性:AAA
操縦性:A
付属性:C
維持性:E
干渉性:AA
恒星天。
その嘆きは、万象呑み込む空虚が如く。


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