シルヴァリオ・エンピレオ   作:ゆぐのーしす

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最後のタイトルは、神曲の英語名(神聖喜劇の意)です。
これにて、エンピレオ本編は完結です。


今まで至らぬところ多々ある拙策を慈悲深く作品を見守ってくださった方々に、深く感謝申し上げます。
本当にありがとうございました!


舞姫神譚 / Divine Comedy

 魔女の去った、崩れかけた特異点において四人は顔を突き合わせた。

 

 エリスとロダン。ポースポロスとジュリエット。

 対照的な二人の極晃奏者は特に笑うことなく仏頂面で、しかしその傍らに在る者達はどこか気まずそうな、共感のこもった笑顔を交え合っている。

 

「――ありがとう、星奏者。お前が居なければ、俺は聖戦の轍を踏んでいただろう」

「……シャレになってないぞポースポロス」

「自覚はある。洒落は不得手だ」

 ポースポロスは目を閉じながら、心からそうロダンに謝す。

 聖戦の余波でこの地上を焼き払う事など、絶対にポースポロスも――閃奏も望んでいなかった。だからこそ、ロダンが居なければ正真正銘聖戦の末路を遂げていただろう。

 間接的にロダンはポースポロスを救ったのだ。だからこそ、心から謝しているのだ。

 

「……ポースポロスは、素直じゃないから」

「ロダン様も大概、素直ではないと思います」

 少しだけ、苦笑する。

 

 それからポースポロスとジュリエットもまた光に包まれながら、地上に還っていく。

 

「ポースポロス。……俺の方こそ、ありがとう。お前が居なかったら俺は負けていた」

「謝すに及ばん、詩人。……そしてさらばだ、地上でな」

 月と太陽の女神に伴われながら、そうして二人もまた地上に戻っていく。

 ポースポロスの姿を少しだけロダンは心から格好いいと、そう思えた。 

 人間として彼と語らえる日がくればいいと、思った

 

 

 

 

「……来てもらうわ、ヴェル」

「撃たないのかしら、その銃は飾り?」

「撃って、どうするのよ」

 散っていく特異点を、ただウェルギリウスは見届けるしかできなかった。

 空しく吹く、荒涼たる風だけがオフィーリアの白衣をはためかせる。

 構えた銃も、力無く降ろされる。

 

「……先生。貴女の夢は、醒めた?」

「……えぇ。詩人と淑女の。そして貴女の勝利よクラウディア・ハーシェル」

「ならよかった。強かったでしょ、私の――私とエリスの、騎士様は」

 ウェルギリウスは、ただ項垂れて幽鬼のように立ち上がり、オフィーリアに両腕を差し出した。

 

 がちゃり、と乾いた鉄の音が響く。

 その腕に手錠がかけられた。

 そして、オフィーリアに伴われ彼女は捕らえられた。

 

 

 

 

 かくして、聖教皇国を震撼させた至高天の階達の――そして神祖から続く一連の大騒動は終息を迎えた。

 逮捕という結末を迎えたウェルギリウス・フィ―ゼは打って変わって聴取には極めて協力的な態度を取っていた。

 結果として惨劇の多くは彼女一人に帰結する事。

 ジュリエット・エオスライトの関与は設計理論・死体の取り扱いのみにとどまっていたことが明らかとなった。

 

 保護という名目で現状聖庁にいるクラウディア・ハーシェル――銀月天は多くの時間を疑似的な機能停止状態で過ごしてしまっていたが故に供述出来ることはほとんどなかった。

 

 ジュリエットは、ウェルギリウス・フィ―ゼの協力者として罪に問われることにはなったが、前述のウェルギリウスの供述により減刑の見通しが立つという事だった。

 特に、ジュリエットについてはオフィーリアの提言が大きかった。

 

「ドクター・オフィーリア。……罰は何でも受けるわ。私はそれだけの事をした。だから――」

「当たり前だけれど、罰は受けてもらうわ。そして罰は、何よりも苦しいモノでなくて――例え間接的であっても奪ったモノに見合うモノでなくてはならない」

 彼女達は面会する機会があった。奇しくも、同じ研究の道に通ずる者同士だった。

 

「だから――貴女には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。今もなお、貴女の手は必要とされている。例え貴女が死を望んでも、残念ながら今の聖教皇国の法体系ではそれを科すことは不可能。……だからそれが、聖教皇国が貴女に提示できる中での()()()よ。ジュリエット・エオスライト」

「――、なるほど。そう。たしかに、それは私に課せる中で最大の罰ね」

 そう、静かにジュリエットは涙を流した。

 ただ、けれど不思議とそこには悲壮さはなかった。彼女のソレは、納得の下に流れた涙だったから。

 かつて自分が目を背けた道へ再び向き合う事。それは耐え難い痛みを生むはずなのに、ジュリエットの顔は確かに安堵に満ちていた。理由は、語るまでもないだろう。

 

 それから金星天もまた、特に聖教皇国に被害を齎すことはなかったため特段咎め立てはされなかった。

 むしろその逆であり彼はその星を以って幻覚を紡ぎ、皇都周辺での混乱を最小限に抑えていたのだという。事実外はともかく、皇都周辺ではそもそも特異点が生じていたことさえ、知っている人間はいなかった。

 彼自身は今も、奇抜な脚本を練りエリスや他の団員を困らせつつも芸術活動に専念している。

 

 では水星天はと言えばその星の性質があまりにも特異かつ危険すぎたこともあり、現状は監察付きで管理されている。

 エリスの時にはその処遇で対立していた第一軍団団長とマリアンナもこれに関しては珍しく、意見が一致したという。

 

 

 そして、クラウディア自身はウェルギリウスの発明たる第四世代人造惑星の貴重なサンプルではあったのだが、それを下に技術研究を行うことは副長官オフィーリア、および第一軍団隊長が認めなかった。

 彼女はウェルギリウスの技術研究の犠牲者であり、決してその哀しみを継続させてはならないという判断もあった。

 

 それだけではない。ウェルギリウスの非人道的な研究の数々――第四世代人造惑星に関する技術資料の一切は焼却され、その詳細は永遠に歴史に葬られることとなった。

 故に正真正銘、今地上に存在する第四世代人造惑星はロダンとエリス、そしてクラウディアだけだであり、今後製造されることは永遠にない。

 

 今は奇縁あって、クラウディアはオフィーリアの下で働いている。それは聖教皇国として魔星を管理する目的もあったろうが、今となっては公的には身寄りのない彼女を憂いてオフィーリアが雇った形となる。

 

「オフィーリアさん。この前に取ってほしいって言われた実験データはこれでいい?」

「ええ、ありがとう。クラウディアさん。そこに置いておくといいわ、寝起きで疲れたでしょう。コーヒーを淹れてあげるわ」

「じゃあ、砂糖たくさん入れておいて。苦いは苦手なの」

 意外な事に、彼女達はそれなりにうまくやっていた。

 クラウディアはもとより魔星である以上、星辰体技術に通じていることは言うまでもない。

 公的にはクラウディアという人物は死んだことになっている以上、当然新しい名前と戸籍を用意する必要があった。

 結果として今の彼女の名前はクラウディア・ステラということになった。

 素性としては最も偽りやすいものとして「商国の暗闘から逃れるために苗字を変えた人物」というモノになり、これに関してクラウディアは若干複雑な表情を浮かべていた。

 

「それとこれから確かアドラーからさる方が来る、だったっけ。たしか一一時に訪問の予定だったはずだったと思う」

「えぇ、茶を用意しておいて。私の前ではそれでいいけれどくれぐれも失礼はないようにね」

「はいはい、オフィーリア副長官様」

 いそいそと、クラウディアは小走りで準備しながら応接卓を水拭きしながら準備する。

 オフィーリアは少しだけ、胸にぽっかりと穴の開いた気分にだった。

 

 失ったモノは、いくつかあった。

 なぜ、ルシファーは自分を殺さなかったのか。

 

『ルシファーは、多分ウェルギリウスの傍に真にいるべきなのは本来は自分じゃないと思っていたんだろう』

『だから、極晃を成した後、総ての仕事を終えた後に来るべき楽園に貴方を住まわせようとした』

『……ウェルギリウスの挙げた対等以上の四人、その最後の一人は恐らく貴女なんだ。そして、貴女が寄こしたある本をウェルギリウスはそれこそ何度も何度も、見返していたんだろう』

 ロダンは、後にそう語った。

 今となっては根拠も何もあったものではない。

 唯一物的証拠があったとすれば、地下空間での彼女の書斎にあるたった一冊の本には、何度も何度も読み返したかのような皺が刻まれていたことぐらいだ。

 

「――ィーリアさん? オフィーリアさーん?」

「あ、あぁ。ごめんなさいクラウディアさん。少しだけ、考え事をしていたわ」

「……先生の事?」

 少しだけ、クラウディアは表情を陰らせながらそう聞いた。

 それは、誰にとっても痛みを呼ぶ話題だった。

 オフィーリアは、あの日以来ウェルギリウスとは一切顔を合わせていない、

 

「……知らないわ、犯罪者の知り合いなんて私にはいないもの」

「……そっか。うん、ごめんね」

 ただ、少しだけ俯くだけだった。

 

 ウェルギリウスはその数々の罪状から聖教皇国の法の下、死刑が執行されることが決まった。

 それに際し異を唱える者はいなかった――オフィーリアは、その判決に異を唱えはしなかった。

 

 その頭脳故に司法取引によって星辰体運用技術の研究に復帰する事も考えられたが、ウェルギリウス本人がそれを拒絶し、また副長官であるオフィーリアも認めなかった。

 

『今、聖教皇国にはシュウ様と――かつての私の友人がいるわ。その二人さえいれば、私の出る幕はないでしょう』

 ただ、そう供述したという。

 

 そして、三日後には死刑は執行されるという。

 その報せを、ただ聞いた時のオフィーリアは、ただそう、とだけしか応えなかった。

 短いその嘆息に、どれだけの想いがこもっていたかは彼女以外の誰にも測りようがなかった。

 

 

 

 

 

 それから、ウェルギリウスは死刑執行の日を粛々と迎えた。

 牢から出て絞首台へと、彼女は歩いていく。

 

 けれど、絞首台に赴くその途上に人を見た

 

 ……それは己がよく知っていて、そしてかつて捨てた友だった。

 

「……そう。私の最期に、貴女が立ち会うのね」

「えぇ。久しぶりね、ヴェル」

「まだ、その名前で呼んでくれるのね」

 少しだけ、ウェルギリウスには感慨があった。

 よく聞いた声色と、よく聞いた抑揚。懐かしくて、懐かしくて、胸がうずいた。

 長い暗がりを抜けて、久方ぶりに光を浴びたような気分になった。

 

「……私、これから死ぬのね」

「それが貴女の報いよ。ハルさんの両親や、クラウディアさん。亡きエイリーク氏に鋼の戦士たち。彼らの死を弄んだ報いよ」

 旧友との会話――と言うには、あまりにもそれは残酷だった。

 かつての友人へその末路を告げることは、決してオフィーリアにとっては心の痛まない行為ではなかったからだ。

 

「……貴女からもらった本、面白さは分からなかったけど。もっと、もっと、読み返したかった」

「それは、なぜ?」

「なんでかしら、私にも分からない。……あぁ、けれどオフィーリアが初めて私にくれた本だから、だったのかもしれない。それをめくるたび、貴女の顔を思い出せたから」

「……嬉しい、とは言わないわ。そう口にしたら私は貴女を赦してしまいそうになる。私を置き去りにした貴女を」

 渋く作ってしまった紅茶を飲んだような顔で、オフィーリアはそう言って、ウェルギリウスの傍らをすれ違った。

 ウェルギリウスは刑場へ、オフィーリアは外へ。

 もう、二度と顔を合わせはしないだろう。

 

「――そうなのね。私の淑女(ベアトリーチェ)は、こんな近くにいたのね。……自分から導き手を捨てた女が天国を目指せるわけなんかなかった。……あぁ。つくづく、敵わないわオウカ様」

 ウェルギリウスは、生涯でただ一度その過ちに気が付いた。

 もう気が付いてからでは、遅かった。けれどその気づきだけがウェルギリウスにとっての最期の救済となっただろう。

 ただそこに在ったはずの理解者。

 誰にだって淑女はいる。それに気付くか気付かないかが、淑女と魔女を隔てたものだった。

 

「ルシファーの成長を見誤った。それもまた、私の失敗だった。……彼はとっくに、人間に成っていた。気づかなかったのは私だけ――私は母としても失格ね」

 ルシファーの献身にさえ、ついぞ気づきはしなかった。

 天使が己が務めを堕落すれば悪魔に転ずるのであれば、悪魔が己が務めを堕落すれば、何に転ずるのか。

 それは言うまでもなかった。……例え邪悪な形であっても、ルシファーは確かに己が母に救済を齎そうとしていたのだから。

 

 

「さようなら。貴女は、確かに私の友人だった」

「ありがとう、オフィーリア」

「……もし、あの世があったら地獄の旅に付き合ってあげる。いつか、本当に犯した罪の全てを償いきれるように」

「うん。本当に、ありがとう。……貴女がいつかの日に淹れてくれたコーヒーの味、私は嫌いじゃなかったと思う」

 そして、もう二度と語らう事もなかった。

 

 冷たい床にひたりと足を着ける。絞首縄に首を納める。

 それから、がちゃりと無機質が音が刑場に響いた。

 

 ――魔女は、最後に人として命を終えたのだ。

 

 

「よう、リヒター」

「ガンドルフか。久々だな」

 ある日の街中、その酒場でかつての上司と部下は顔を合わせる。

 ルシファーの激突から数か月を経ていた。

 

 

「随分、大変だったらしいなそっちは」

「まったくだ。俺とお前の馬鹿弟子がさんざんにやらかしてくれた。騎士を辞めるわ、騎士に剣を向けるわ、果てはまぁ――大体知っての通りだが」

 呆れるようにリヒターは両手を振るってそう言う。

 ガンドルフもまったくだと頷く。

 だが、彼らにはある意味において共通の知己があった。火星天――その素体。

 火星天を意図して匿っていたことに際し、ガンドルフも当初調査を受けた一人だったからであり。

 

「……火星天。より正しくは、リヒター。お前の双子の兄貴、パーシヴァル・リヒターか。隠していて、悪かった」

「まったくだ。……寄りにもよって、魔女の自供で俺の与り知らんところで俺の身内の名が出てくるとはな。……ロダンには図らずとも、酷な事をさせてしまったと思っている」

 パーシヴァル・リヒターは剣の道を志しながら、その薄命さ故に狂気に憑かれていたという。

 根拠にない民間療法、或いは薬物に手を出してまで永らえようとしたという。

 その名を出したからこそ、ガンドルフは火星天を捨ておくことはできなかった。

 剣を志しながら命半ばで道を終えた者、その在り方に哀しさを見出したからこそ彼は火星天を弟子にした。そこには、かつて道半ばで弟子を導けなかった後悔も少なからず含まれていたのかもしれない。

 

 

「……兄貴は、実際のところ俺は顔を合わせたことは病床に臥せってからはほとんどなかったし、公的には亡くなったと聞いている。実際、確かに俺は兄貴の葬式に出たからな。親も、兄貴に家を継がせたかったらしいからな。火星天――あいつは、俺に特に因縁をつけはしなかった」

「悲しいだろう、身内だったはずなんだからな」

「あぁ。そして、火星天はロダンに討たれ、ロダンがその業を継いだという。……兄貴は、自分の剣を継いでくれる人間を探していたのかもな。兄貴は当主になるより、剣を握る事が好きだった人間だっと記憶している」

 賭けた情熱を分子に置き人の一生涯を分母に置けば、短命な人間は時間当たりの情熱において、常人のそれを遥かに超えるだろう。

 故に火星天を突き動かした剣への衝動は、天之闇戸を基礎設計とし殺塵鬼を参考にしていながら世界ごと剣に変える星へ成った事が証明している通りだろう。

 

 本来であれば天之闇戸の事象改竄を主軸とした、万能性に富む星になるはずだった。

 素体によって多少その在り方に色はつくだろうが、それでも概ね天之闇戸のそれに準ずる在り方となるはずだった。

 それが剣という形態をとったのは、人としてのパーシヴァルの最期の矜持でもあったのだろう。

 

「実際のところ、火星天が兄貴だと言われてもびっくりするぐらい実感がわかなかった。何せ火星天は俺にはほとんど関心を示さなかったからな。俺も、火星天を兄貴だとはあの時露ほども思わなかった」

「分からなくて当然だろう。ガタイも、顔も何もかも違い過ぎるからな。それに、アイツはお前の事は双子の弟だということ以外に語らなかった」

「……俺が兄貴に寄り添っていれば何かが変わったとも思わん。その剣を俺なんか眼中になくて、ロダンに継がせたのも、まぁそれなりに複雑な気分さ」

 少しだけ、空を見上げる。

 リヒターは辛気臭い顔はしないようにしたかった。

 胸が痛みはしなかった。けれど、胸に空洞が開いたかのような、そこに在るべきモノが欠落したかのような感覚があった。

 

 今はただ喉を洗い流すように、胸を埋めるように酒を流し込んだ。

 酒はそこまで強くはないが今だけは酔う事を許してくれと、虚空に向かって祈りながら喉へ酒精を流し込むことにした。

 

 

 

 戦後処理、というものはいつだとてついて回ってくる問題だ。

 その最たる例が、ポースポロスだった。

 

 曙奏は確かに聖教皇国を救った上、彼の存在もジュリエットの減刑の最たる要因の一つであった。

 だが、ポースポロスが現状近隣諸国のどの国に帰属するのか、それは明確に定まってはいなかった。

 

 万が一にも、アンタルヤは有り得ないだろう。

 聖教皇国に帰属するのかと言えば素体の故郷はアドラーだが、ではアドラーに帰属するかとポースポロスの精神の故郷は聖教皇国にあった。

 加えてもしアドラーに帰属しようものならばそれこそ、彼の顔も極晃もアドラーにとって非常に大きい()()()()()()()を持ってしまう。

 

 故に、ポースポロスはただ誰にも与しない事を選んだ。

 誰にも与せずしかし調停者とも異なる、天頂に坐したる怒れる秩序の守護者として――世界の在り方が変革を迎えた時、その是非を問わんとする曙の剣として。

 

「さらばだ、閃奏。そして済まなかった。――末路を託すと言っておきながら、この有様だ。俺はこの世界に尚も在り続けている」

 今、ポースポロスが立っているのは聖教皇国の集合墓地だった。

 かつて超人大戦や神祖滅殺に際し亡くなった者達がそこに眠っている。

 

 静謐の中、ただ彼らは眠り続ける。

 けれど墓に還れなかった者達が今もなお、ポースポロスの裡にいる。その者達にこそポースポロスは何より心から謝している。 

 

 ポースポロスの隣に、一人の男が立つ。

 その男に、奇妙な事に見覚えが無いはずなのに、見覚えがあった。

 天衝く巨躯、鋼の手足。歴戦の貫禄を思わせる、凛冽とした意志力の眼光。装束を見なくてもそれが誰なのかは、もはや言うまでも無かったろう。

 

「――よう。そっちも墓参りかい?」

「あぁ。……墓に眠ることができなかった者達を弔うために、此処にいる」

「そりゃいいことだ。……ちなみに、ソイツらはどんな奴らだった?」

「誰よりも、勇敢な者達だった。俺など及びもしない――笑って他者のために命を賭し明日を託せる、誇るべき者達だった」

 間違いなくポースポロスの裡にいる者達は一人残らず、ポースポロスにとっては戦友にして勇者だった。

 その言葉に思うところがあったのだろう、少しだけ空を仰いでそれから男は呵々と笑った。

 

「そうだろう、そうだろうとも。笑顔を――温かい営みを護らんとする限り、人は果てなく無敵になれるのさ」

「同感だ」

 言葉短く、しかしほんの少しだけ笑いを浮かべながら。

 

「その者達を故郷に還してやれないことが今の心残りでな」

「いいんだよ。総統閣下みたいに生きる必要はねぇ、ただそいつらに恥じない生き方をしてやってくれ。きっと、それが何よりの弔いになる」

「……礼を言おう、名を知らぬ鋼の勇者。達者でな」

 言って二人は向き合い、鋼の手で握手を交わした。

 熱のこもらぬはずの鋼の腕にこそ、しかし確かな熱を互いに感じる。

 

「いつか亡き者達のためにも、故郷を見せてやりたい。その時があればよろしく頼む」

「おいおい、コールレインの旦那が泡吹くぞ」

 至って大真面目にポースポロスはそう述べる。その様に、苦笑いを浮かべつつ男は応と頷いた。

 それから、互いに背を向けて去っていく。

 

 その刹那、極晃(ほし)の彼方にポースポロスはかすかな声を聴く。

 かつて己の裁定を託した者の声が。

 

『往くがいい、昇天曙光(ポースポロス)。お前の翼の行く末は誰のものでもない――他ならぬお前のものなのだから』

 

 

 

 

 

 ジュリエットは今は、再び難病治療の研究者として再び研究に従事することとなった。

 医療における国策としての中核として、彼女は贖罪のために今は手を尽くしている。

 

「ジュリエット先生、本日の来客なのですが――」

「先生、はやめてアメーリア。……本来なら私は受刑者になるはずだったのは聞いている通りよ」

「それでも、かつても今も、先生は難病治療の研究に尽くしてくれたと聞いています。何より、私を救ってくれました」

 彼女は聖庁の監視役――兼助手と呼べる人間がつけられた。名をアメーリアという。

 聞くところによればかつて以前に研究者として在った時に提出した研究成果によって救われた元、患者なのだという。

 過去の自分が、巡り巡ってこうして人を救った結果。アメ―リアもまた医者を志すようになった、とオフィーリアからはジュリエットは聞いていた。

 その皮肉に、少しだけ彼女は苦笑いする。捨てたはずの自分の理想に、今の自分が救われているのだから。

 

「……先生が、何を思って犯罪に手を貸したのか。それは私には分からないです。尋ねたいとも思わないです。でも、先生は私を救ってくれましてた。だから私にとっては、先生の下で働くのは夢だったんです」

「元犯罪者の助手を進んで志願する人は貴女以外いないって聞いてたんだけども、本当に博士人生(キャリア)を棒に振るつもり? たしか貴女機関学校を首席で出てるんじゃなかった?」

「はい、博士人生潰すつもりで来ました。どうせ先生がいなかったらあの時死んでた命ですから私の命は先生のもの同然です!」

「……はい、じゃなくてね」

 半ば呆れつつ、ジュリエットはそう答える。淀みなくそう言い放つ助手に、ジュリエットははいはいと言って再び机に向かう。

 彼女になら、きっと将来を託してもいいのかもしれない。そう、思えなくもなかった。

 

 それから思い返したように聞く。

 

「……そう言えば来客が、と言っていたけど今日はそんな予定があった? オフィーリア副長官、シュウ様とは昨日面会は終わったけど」

「はい。その、ついさっき来た人で。先生を尋ねに来たそうです」

「一応聞くわ。どんな人?」

「……えーと、身長が高くて。顔が怖くて、金髪で碧眼。あぁそうだ。門前で大真面目に"俺は先生(ジュリエット)の患者だとだけ言えば分かる、まだ俺は病気は治っていない"、って言ってました」

「……とんでもない不審者ね、今出るから待っててと伝えておいて」

 そこまで聞くと、ジュリエットは少しだけ頭を抱える。

 非常に、それはもう、身に覚えしかない患者だったからだ。

 少しだけ遅れてジュリエットは助手のアメーリアを伴って外に出た。その顔は少しだけ嬉しそうに、怒っていた。

 

 

 

 

 

 

「ハル嬢。……本当に、済まなかった」

「……イワト、おじさま」

 あの夜以来、奇跡的に意識を取り戻したイワトの傍らには、ハルがいた。

 彼はウェルギリウスとの通謀を自白し、そして今に至る。

 

「私は、魔女と通謀していた。……総ては、ハル嬢の父と母に復讐をしたいからだった。私はハル嬢を――」

「なんとなく、イワトおじさまが私を見るときの目は知っていました。……お母さんが、お父さんに奪われたのが憎かった。……だから私をお母さんに見立てて復讐したかった、と」

「そうだ。……ハル嬢があのような目にあったのは私の所為だ。私の醜い嫉妬が、ハル嬢を。だから――殺してくれ、糾弾してくれ」

 そう、病床で血が滲みそうになるぐらい拳をイワトは握りしめていた。

 自らの犯した罪に、耐えられないと。

 けれどハルは少しだけ哀れに想った。その気持ちを分からなかったわけではなかったから。

 

「おじさまのしたことは私は許せません。だから死んで楽になろうなんて考えないでください。ちゃんと、罪と向き合ってください。私は母ではありませんが、それを父も母も望んでいると思います」

「……そう、か」

「私は知らなくてもいい事や、知りたくなかった事だっていっぱい知りました。……それでも、父と母を友人として愛していた貴方を喪う事もまた私には耐えがたい事で――もう、身内が死ぬのはたくさんなんです。だからどうか生きてください、イワトおじさま。それだけが、ナオ・キリガクレとマシュー・ジットマンの娘である私の願いです」

 生気を失った有様のイワトにハルは最後にこくりと会釈して、そして去っていく。

 ただ、涙を流しながら。イワトは病床に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 それから聖教皇国はもとの活気を取り戻した。

 それは、さる名家の屋敷も同じことだった。

 

「――ほら、ロダン起きなさい。あまり遅起きだと紅茶を苦く淹れるわよ。エリスさんは先に起きてるのに」

「姉さん、もう少し慈悲をくれ慈悲を」

「私の慈悲は在庫があるの。ロダンがもう少し私を気にかけてくれると在庫が増えるわ」

 少しだけ、ハルの急かされながらロダンは屋敷の階段を下りていく。

 あの日以来、エリスもハルも元の屋敷に一緒に住むようになった。

 

 同じ想い人を巡って、少しだけ複雑な距離感はあるけれどそれでも仲は姉妹のように至って良好だった。

 

 朝の食卓に、ロダンとエリスとハルがつく。

 今日の朝食はサーモンの炒め物だったが、ほんの少しだけ形がいびつだ。

 

「……今日は、もしかしてエリスが料理をしたのか?」

「ロダン様。……今、料理の見た目が下手だから私が作ったんだろう、とお思いになりましたね?」

「待て、エリス。腕が千切れる、お前も役者なら間接の可動域を考え――ちょっと待て、腕の中身が冗談抜きで切れる。人間の可動域の限界を超えるぞ」

 相も変わらず、ロダンはエリスに対しては弱かった。

 腕があらぬ方向に曲げられかけている様を、少しだけくすくすとハルは笑う。

 

「えぇ。エリスさんが料理をちゃんと作れるようになりたい、って言ったの。私に弟子入りしたいって」

「はい、私が一番好きなのはお姉さまの手料理ですから」

 エリスは屈託のない笑みでそう答える。

 裏表というものがないのは、エリスの無垢ゆえの資質でもあるのだろう。だからこそハルとの関係を持ち直せたという側面も強い。

 かつてと何も変わらない、こうして団らんとしていてくれること。それがロダンにとっては何よりうれしかった。

 以前にもまして、ハルとエリスは本当の姉妹のように見える様だった。

 

「エリスさんは洗い物も手伝ってくれたのよ。比べて、ロダンはひどいわ。こんな人にエリスさんはもったいないと思うの」

「それは丁重にお断りいたします、お姉さま。私も、ロダン様をお慕いしていますから」

 例え家族として愛していても、そこだけは剣呑だった。

 エリスもハルも、互いにそこに関してだけは譲らなかった。

 

「俺はエリスが料理を覚えようとして、俺に振舞おうとしてくれたことが嬉しいと思ったんだ。だから、そんなことは思ってないよ」

「……なら、そういう事にしておきます」

 腕が解放されて、やっと食事をとる事にした。

 フォークで少しずつ、口に料理を運びながら、ゆっくりと朝は過ぎていく。

 

 それからロダンは買いだしに行くことになった。

 今日はエリスとハルは二人揃って、どこかに遊びに行くらしい。

 

 

 篭と、ハルの書いたメモを眺めながら市街へ赴くことにする。

 

 

 初めてエリスの舞台を見に行った時と、まるきり一緒の光景だった。

 

 出店にコインを渡して氷菓を買うと、その隣で全く同じ氷菓を頼む人がいた。 

 

「――貴女は」

「お久しぶりですね、ロダン」

 そこにいたのは、マリアンナだった。

 あの時とは違い、もう騎士姿ではない。暖かそうな私服を纏いながら、彼女は氷菓を受け取っていた。

 

「……騎士に、戻らないかとは聞かないんだな」

「私自身、もう騎士に戻れない身になりましたから」

 ……彼女はもう、星辰奏者にはなれない。

 けれど不思議な事に彼女は、それを悲しんでいるそぶりはなかった。むしろ、以前の彼女からロダンが感じていた陰は払しょくされていた。

 少なくとも、今このように氷菓を口に運ぶ彼女の姿は騎士時代には考えられなかった姿だったから。

 それから同じベンチにならんで腰掛ける。

 

「ロダン。貴方は、生きて帰ってくれました。だから私はそれがとても嬉しいと思います。……貴方の喪失は訪れなかったのですから」

「……貴女はそう言えば、今は騎士の身分は辞して教会に勤めているのだったか」

「えぇ。リチャード卿には大変お世話になりましたから、道半ばで騎士を辞すのは心苦しいものがあります」

「目に浮かぶよ、グランドベル卿は頑固だからな」

 自覚はあります、と粛々と彼女はそう答える。

 教会での修道女姿のマリアンナはの出で立ちは、想像はそれほど難しくはなかった。

 

「……騎士を辞めてからも、思うところは在りました。でも私はもう少しだけ、生きてみたいと思います。私に生きてほしいと願った人々の――そして何より、貴方のために」

「なら、よかった。貴女は、貴女自身を赦せるようになったんだな」

「師は私が聖女でなくなる時、私に救済が訪れると言いました。今ならその言葉は分かる気がします。……私が生きていることが――彼らを忘れないことが、村の皆が確かに生きていた証になるのですから」

「俺が類推したり知った顔で注釈をつけようとするのも無粋だろう。グランドベル卿が一番納得できる解釈が多分、正解だ」

 少しだけ、手が肌寒い。

 けれどマリアンナの手がロダンの手に添えられる。

 誰も彼も焼き尽くす焔のそれではなく、暖かく穏やかな日差しのような熱だった。

 奇しくもそれはロダンとエリスの行きついた答えと、同じだった。

 

「ロダン、今日は暖かい日ですね」

「貴女の手も、温かいだろう」

 言葉にせずとも少しだけ、感じる想いがある。

 長い暗がりを抜けて、光を浴びたような、そんな憑き物の落ちた彼女の笑顔は柔らかだった。

 

 

 

 

 

 それからマリアンナと別れ買い物を済ませると、帰路につく途中街中でユダと出会った。

 

「おぉ、ロダン。久しぶりだな」

「久しぶりというほどでもないだろユダ。……あの時、皇都周辺でパニックが起きなかったのはユダのおかげだって聞いてる。ありがとう」

「いや、別に。特に何かをしたわけでもない。俺とて皇国民さ、市民の――そして力を持つ者の義務は果たしただけだ」

 ユダはあの聖戦に際し、市民への動揺が広がるの自分の星を最大規模で駆動させて食い止めていた。

 そのために皇都周辺では動揺がさほどに広がることもなかったという経緯がある。加えて、聖教皇国に仇を成す存在でもなかったために、現状は市井としての暮らしと芸術活動を保証されているのだとも。

 

「ありがとうな。エリスと共にいてくれて。いつか、殻を破る日が来るという話を俺がしたことがあったろう」

「別に感謝されるような話でもないだろう。エリスが自分でちゃんと悩んで、自分で勝ち取っただけだ」

「……二日後の公演、身に来いよ。何せ俺とお前の脚本の合作で贈る、エリスの舞台だからな」

 そう言えばと、ロダンは思い出す。二日後にエリスの演目があるという事を。

 その公演は、聖教皇国の復興を記念した公演であるという。

 ――その脚本はユダとの合作という形でロダンはかかわっていた。

 

 

「本来なら聖庁のお咎めを受けた時点で俺はユダ座の存続の危機だったんだが、まぁそこは聖庁の混乱を納めた事を考慮に入れて、大目に見ていただいたというところだ」

「宮廷芸術家になればよかったんじゃないのか?」

「悪くはないかもしれんが、往々にして芸術とは時として権力に反逆するモノだ。俺は何でもできるが、お行儀よく脚本を創る事だけは唯一不可能だ」

「作風は人それぞれだろうが自己評価が著しく高いな」

 相も変わらず、うさん臭さと大言壮語は変わらないとロダンは思う。

 実際彼の作風は彼の在り方と言動を反映する鏡のようなものでもあった。

 

「……ユダの脚本は、あまりにも混沌とし過ぎている。大体なんで途中からエリスが自分の外套を盗まれたことにキレて河でおぼれてる悪党を木の棒でばしばし殴る話になってんだ。悪魔役のダグラスが可哀そうだし子供が多分泣くぞ」

「お前の脚本はあまりにも故事を準える描写が多すぎる。教養のある客層には需要はあるだろうしお前が作品に込めた宗教的な意図を感じ取れるだろうが、大体の観客は眠くなる。というか俺は眠くなった」

「なら、足して二で割った脚本ならちょうどいいだろうという事で合作になったんだろうに」

「その通り、そしてこれはいい、この上なくいい。俺達が本気でぶつかった末に、エリスの新たな門出を刻むに相応しい舞台になった」

「その気色の悪い例えはやめてくれないか」

 まさか、自分が脚本を合作する日が来るとは、とロダンは思った。

 文化や時代の考証、見る者の教養に訴えかける示唆に富む作風はロダンが得意とし、観客の心の動きを掴み退屈させない舞台を構築する作風についてはユダが得意としていた。

 結果として出来上がったモノに、ロダンも確かに納得した。

 

 エリスの舞うに相応しい舞台、という一点においてユダとロダンは確かにこの世で一番彼女をよく理解している人間であったと言えるから。

 

 

 

「騎士様、約束守ってくれたんだ」

「当たり前だろう、クラウディア。君が予定を開けておけと言ってくれたんじゃないか」

 クラウディアはその日――エリスの公演の日、オフィーリアへ無理を言ってでも予定を開けてもらおうとしたが思いのほかすんなりとオフィーリアは許可した。

 しかしそれは、オフィーリアもその事情をあらかじめ知っていたからでもあった。

 楽しんできなさい、とだけ言って彼女の休暇を許可したのだ。

 

 そのついでとしてロダンへとオフィーリアは子守を頼み結果として、クラウディアの保護者のような形でロダンは同伴していた。

 

「……さっき受付の人になんか子供扱いされた。私の享年はたしか数え間違ってなければ十五歳よ? 子供って年じゃないでしょう?」

「俺みたいに無駄に年だけ食った人間からしてみれば子供もいいところだ。そして人の一生を書物に例えるとすれば、若いという事は未だ綴られていない頁があるという事だ」

「その先を、自分で綴りなさいって? ……老人みたいな例えをするね騎士様」

「へこむぞ」

 クラウディアは若干むくれて不服そうだった。

 クラウディアは席につく。傍らに、たくさん入ったコーヒーを置いて。

 それから少し遅れてロダンも席につく。

 

「騎士様は紅茶が好きなの?」

「コーヒーは生憎とあまり好まない。それと一度、気に入っていていた書物にコーヒーをこぼしてしまったことがあってね。自分の小遣いで買った初めての書物なだけに、大層あの時は後悔したものだ」

「私は甘いコーヒーが好きだけど」

「それはとてもいい事だ。苦さを好むことを成人性と見なし、甘さを好むことを小児性として貶めるのは佳くない大人になる兆しだ。俺にも経験はあるからね」

 実感のこもった口ぶりにクラウディアは「こんな大人になりたくないなぁ」と、そう返した。

 少しだけ、ロダンは気落ちするがまったくもって同感だった。

 

 

「騎士様は悪い大人?」

「良い大人なら騎士を辞めないし聖書に文句を言わないからね、それは保証しよう」

「そうだね。それも売り出し中の将来有望な女優に手を出すぐらいだから、それはもう、とっても悪い大人だと思う」

「――危ないな、せっかくのエリスの舞台を紅茶を噴き出して汚すところだったじゃないか」

「安心して、私は騎士様とエリスについては公認よ」

 そうしているうちに、開演の刻限を迎えた。

 

 ――静謐の中、エリスが光を浴びながら舞台へ立つ。

 一瞬だけ、観客席へエリスは笑顔をむける。

 

 

 ただのほんの一瞬、ロダンとクラウディアにしか見せなかった笑顔。

 

 そしてエリスは舞う。

 誰もが、目が離せない。

 

 かつて、ロダンは一人でエリスの舞台を見た。

 今は、クラウディアと共に観る。エリスの演目を見に行こうという約束はちゃんと果たせた。

 

 ロダンは、クラウディアに導かれてこの舞台を目にしている。

 そして、エリスが辿り着いた舞台――地上の至高天は御伽噺でもなんでもなく、確かに今そこに在る。

 

 

 淑女は空想(インフェルノ)を飛び立ち、現実(プルガトリオ)をも越えて、永久(パラディーソ)に輝く物語(ステラ)となる。

 

 

 後の世に、それは舞姫エリスの最高の舞台と謳われることとなる。

 

 

 

 

 

 

 その演目の名を、舞姫神譚という。

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