ひげを剃る。やはり社畜の俺が女子高生を拾うのはまちがっている。   作:ステ

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 4月からは『ひげひろ』アニメ放送、そして、4月後半には俺ガイル14.5巻発売ですね。私自身、原作を読み進めながら、執筆しております。あくまでパロディですので、原作準拠ではないことはご了承ください。


第2話 他己紹介

 

 

 3人のジムリーダーに勝利した、ポケモントレーナー ハチマン。

 

 ワイルドエリアには、まるでサファリパークのように、ポケモンがあちこちに野生で出現している。新たな街を目指していく。予想外にレベルが高いイワークも、道を塞ぐように出現しているカビゴンも、過去作を経験したハチマンにとって、敵ではない。

 

 といっても。

 

 リアルでは、会社帰りの社畜だ。

 マッ缶の甘さが、疲れた身体に染み渡る。

 

「比企谷さん」

 

 お布団の上でごろごろしている、いろはが声をかけてきた。

 

「んー、なんだ?」

 

 すでにお風呂も済ませており、もこもこでゆるふわなパーカーと、愛用の毛布で、ほてほてした顔のままだ。健康的な素足をお布団の上でパタパタとさせているのは、目のやり場に困るというか、あざとい。

 

 再び、マッ缶に口をつける。

 かすかな苦みが、アクセントである。

 

「なんかおもしろい話、してください」

「ボッチに、それは無茶ぶりなんだよなぁ」

 

 出会った頃は、お互いの距離感を測りかねていたが、最近はいろはのほうから話しかけてくることが多くなっている。そのほとんどが、たわいもない雑談であり、世代ギャップを感じることもよくある。

 

「いや、でも、あのとき……」

 

 何か言いたげなので、続く言葉を待つ。

 ていうか、高校時代でさえ、俺は話題に乗れなかったのに、今時の若者なら殊更にだろう。

 

「じゃあ、高校のとき、どんな感じだったんですか?」

 

 どうやら、人の体験談に興味があるらしい。俺からすれば、先輩の成功体験を聞いても次の日には忘れているし、先輩の失敗談を聞いても聞き流す。まして、恋バナなんて、蚊帳の外だった。

 

 ソースは、中学時代に受けたキャリア教育の一貫。

 大人になるほど、自分語りしたくなるものだろう。

 

「これでも、成績優秀な優等生でな。特に文系科目なんて」

「あっ、そういうのいいんで」

 

 もう出鼻をくじかれてしまった。葉山には1度だけ勝てて、国語について学年2位になれた自慢をさせてほしい。

 

「あれです、仲良さげな感じの女子とか、そういうのです」

 

 ははーん、どうやら俺の彼女いない歴を知りたいらしい。いや、まあ、SNSで拡散するようなやつではないだろうけど。

 

 なら、ただの興味本位なのだろうか。

 俺なんかに興味持ってもいいことないと思う。SNSの誰かや、生放送主と交流するのは、それはそれで今の一応保護者としては心配することだが。

 

 ゲームをスリープ状態にして、ソファに深く腰かける。

 

「仲良さげな感じ、ならば、いたにはいたな。ていうか、小町とはめっちゃ仲が良い」

「小町さんはわかってますよ。えっ、血がつながってないとか、ないですよね」

 

 義妹がヒロインとか、すぐには例が出てこないけど、よく聞く設定ではある。

 

「いや、どう見ても似てるでしょ。ああ見えて、結構ボッチ行動が好きだったりするしな」

「意外です」

 

 確かに、キラキラ女子大生も満喫しているのはある。女子高生からすれば、親近感のわく、憧れの対象なのかもしれない。俺からすれば、ちょっと抜けているところがかわいい妹である。

 

 だから、もし、仮に、お嫁にいってしまえば、俺と父ちゃんは立ち直れないだろう。

 

「そうじゃなくてですね、ホウシブって、のを。

 ていうか、なんなんですかね。部活なんです?」

 

「奉仕部は、お悩み相談とか、下請け部とか、そんな感じだな」

 

 そもそも、3人だと、同好会なのだろうが、そこは平塚先生がゴリ押したのだろうか。

 今思えば、あの若さで生徒指導を担当していたのは、周りから頼りにされていたと思う。その分、苦労してそうだが。

 

「俺の他に、女子2人だけ……、あれって部活か?」

「どんな人ですか?」

 

 雪ノ下と、由比ヶ浜か。

 

「頭脳明晰で才色兼備、だが毒舌でコミュ力に難あり。

 対して、コミュ力が高いギャルだが、かなりド天然」

 

 指で、1,2とそれぞれ説明した。

 

 まあ、雪ノ下はコミュ力を少しずつ身に着けているし、由比ヶ浜は勉強や料理も努力するようになった。奉仕部に所属させられる理由が、長期的な人間厚生というものであるのならば、平塚先生の依頼は成功しているのかもしれない。

 

「ギャルってなんか古いですね。てか、そのお二人って仲良かったんですか?」

「ああ。今でも仲が良いくらいだな」

 

 出会った頃の雪ノ下は余裕もなく、俺のガラスのハートが粉々になるくらいに毒舌だったが、むしろ由比ヶ浜はそこがいいと言った。

 

 まあ、俺も、嘘をつかないあの真面目さが、嫌いではない。

 だんだんと柔らかくなったし。

 

「ふむふむ。この前、他にも誰かいましたよね?」

「ああ、あの日な。部長だったほうのやつの姉ちゃんと、その魔王の配下だな」

 

 何度か、雪ノ下に絡んできた陽乃さんだが、あれもシスコンの干渉とも言えるのだから、雪ノ下家というものは普段から『ざわ……ざわ……』してそうな家族だ。そこに飛び込む男子が2人もいるのは、痺れる憧れるゥ!

 

 なんて考えつつ、空になったマッ缶の代わりに、冷蔵庫から緑茶をとってくる。

 

「ん-、他に仲の良い人って、いたんですか?」

 

 指で、何かを数えているらしいいろはが、話を促してくる。

 

「一応、友達と言えるやつは、2人はいるな」

 

 どうやら、いまだ俺の交友関係の話題に、満足していないらしい。根掘り葉掘り聞かれても、数えるくらいにしか、高校時代の知り合いというものはいないのだけれど。

 

「男子?」

「ああ。今も同僚で腐れ縁なやつと、東京のほうで教師やってる親友だな」

 

 俳優でもモデルでも声優でもやれそうな、相変わらずの容姿の戸塚だが、教師兼テニスの顧問としての道を選んだ。どうして千葉にいないのか、小1時間ほどホテルで語り合いたいのだが、大学時点ですでに交流もあった高校らしい。

 

 材木座は、まあ、いいか。

 

「それでそれでー?」

「他にもと言われてもな……あとは川崎くらいか?」

 

 海老名さんとはまあまあ気が合うけど、葉山や戸部のグループだったし、三浦は良いやつだけど怖いし。それに、めぐり先輩に至っては、連絡先を知らないままで、交流は少ないままだった。

 

 たしか、生徒会の後任として1度誘われたが、俺なんかが生徒の前に出たら、生徒会の風評被害待ったなしだし。

 

「んー、川崎、さん?」

「たまに口に出してるかもだが、川崎大志ってやつの、姉ちゃんだな」

 

 あの男前なところは、平塚先生に通ずるものがあるが、まさか教師になることを選ぶとは思わなかった。いや、俺も教員免許は取ったけれど、就活と並行しながらだったし。

 

 まあ、教育実習で、るみるみと再会できたおかげで、いろはのバイトのコネができたけれど。

 

「えっと、髪が長くて、美人の?」

「髪、たしかに長いな」

 

 成人式以来は会っていないが、いまもあのポニーテールなのかしら。

 

「そうですか……」

 

 小指が閉じられて、右手が握りこまれた。

 やがて、こちらに向けられたのは、不自然な笑顔。

 

「ていうか、全然ボッチじゃないじゃないですかー」

「あくまで仲良そうな感じのやつらだから、友達は少ないんだよな、これが」

 

 小学校も中学も、高校1年も、ボッチだったけれど、案外振り返ってみると、意外と交友関係があるらしい。まあ、友達なのだと思えるのは2人か4人であって、そもそも友達の定義ってなんだよって今でも思う。

 

 だが、奉仕部は、更生するきっかけにはなったのだろう。

 

「それで、高校生活、良かったんですか?」

「……まあな」

 

 自分語りというのも、たまには良いものだ。

 見知らぬ先輩たちの気持ちが少しわかった。

 

 しかし。

 未来志向な、願望の押しつけをしたところで、反発しそうなものだ。それに、誰かの成功談や失敗談を聞いて、それを参考にするのは、そんなものはただの欺瞞だ。姉の実績を追い続けた雪ノ下は、余裕をなくしていた。いろはの問題は、いろはが考えて解決すべきだ。

 

 ともかく。

 高校関連の話題は、また今度にしたほうがいいだろう。

 

「バイトの面接、明日なんだろ」

「ええ、まあ、そうですけど」

 

 いまだ、時間は23時なのだが。

 寝不足はお肌の天敵って、小町もよく言っていた。

 

「んじゃあ、おやすみ」

「……はい。おやすみなさい、です」

 

 自室へ向かう。

 早起きして、朝ごはん作ろうかなと思いつつ。

 

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