鬼の王は世界最強   作:グラドラル

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書きたくなったので書きました。




鬼の王

 赤毛の魔人族の女、カトレアは目の前の光景が信じられなかった。

 

 オルクス大迷宮で人間族の勇者たちを追い詰め止めを刺そうとした瞬間、それは現れた。

 天上の岩盤を突き破りそこから降りてきたのは、人間族の男だった。

 何の前触れもなく突然現れた男に驚き、その場にいた者は呆然としてしまった。

 

 その隙を突くように男は動いた。

 

 背中から十二本の骨のような触手を生み出し、近くにいた魔物に突き刺す。

 

 直後に触手は魔物共々、膨れ上がった肉塊の様になり男の体に取り込まれる。

 それに対応する間もなく、魔人族の女が使役していた魔物たちは血の一滴すら残さず消え去った。後に残っていたのは大量の生物を取り込んでなお触手以外に外見に変化の見られない男と、その向こう側にいる人間の勇者たち、そして魔人族の女の姿だけ。

 

 女は即座に逃走を選ぼうとした。目の前の存在は危険すぎる。少しでも情報を得る、そんな欲を出せば即座に自分は魔物たちと同じ末路を辿るだろう。

 

 だが遅かった。気が付いた時には体は自由を失い、頭を鷲掴みにされていた。

 

 即座に殺されていないのは、自分から何らかの情報でも得ようとしているからだろうか。

 

「いや。情報ならもう読み取ったよ、カトレアさん」

 

 思考を読まれた。魔人族の女、カトレアはその事実に絶望した。

 

 男が見せた蹂躙劇は戦闘と呼べるものではなかった。

 圧倒的な暴力。それはまるで災害、生物が抗えるものではなかった。

 その上で一瞬で他者の記憶や思考を読み取る能力。化け物と思ったことさえすぐに後悔した。

 

 

 男にとって自分はもはや生かしておく価値はないだろう。

 死を目前にしたカトレアが思い浮かべたのは、己の婚約者の事であった。

 ミハイルが目の前の化け物に挑み殺される。自分が死ぬことより、そちらの方が余程怖かった。

 

「そうなるかはあなた次第ですよ」

 

 男はそう言ってカトレアを開放し勇者たちの方へ歩いていく。

 直後にカトレアはその意味を理解する。

 

 男は呪いを掛けた。

 

 許可のない男の情報の開示。一方的に他者を害する行為。男の不利益となる行動。

 それらを行えば即座に命を奪われる。

 

 だが、自衛のための行動や魔人族への説得など、カトレアに許された行為が皆無というわけではなかった。男は無慈悲なのか寛大なのか。カトレアには全く理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は人間族の勇者たちへと近づいていく。

 圧倒的な力を持った魔人族。それをまるで意に介さず蹂躙した男が近づいてくる。

 

 それは唯恐怖でしかなかった。魔人族に敗北するしかなかった自分達がどうして目の前の化け物に勝てるだろう。魔物や強敵相手なら戦いを挑めるだろう。だが災害に対しそんなことは不可能だ。地震や台風に勝つことなど不可能だ。

 

 

 

 

 それでも一人だけ動ける者がいた。

 

 白崎香織だけが動くことが出来た。彼女にとって男は唯恐怖するだけの存在ではなかった。

 

 香織は自ら男に近づいていく。

 彼女には予感があった。男が僅かに表情を動かし、それは確信に変わった。

 姿も声も違う。それでも香織には分かった。目の前の存在が、生きていてくれた彼なのだと。

 

 

「ハジメくん」

 

 

 その言葉の意味を即座に理解できたのは男、南雲ハジメだけだった。

 

「ハジメぐん……生きででくれで、ありがどうっ。あの時、守れなぐて……ゴメンねっ……」

 

 ハジメは生きたかった。そのためならば化け物になっても構わなかった。

 それを後悔したことはなかった。

 

 それでも。香織のその言葉を聞いて、あの時以来流すことのなかった涙が一筋流れた。

 自分が生きていることを望んでくれていた。それが途轍もなく嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありふれコソコソ噂話

ハジメの天職やステータス補正が低いのは無惨スペックを発揮する為の素質に全振りされたから。

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