鬼の王は世界最強   作:グラドラル

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ちなみに鬼になっても見た目の変化はほとんどありません。
ハジメは意図して姿を切り替えています。




後顧の憂いを断つ

「おはよう雫ちゃん」

 

 香織の声により雫の意識は即座に覚醒した。

 三日前に思い人を追いかけていった親友。

 その彼女が何食わぬ顔で己の寝室に入り込んでいるのだ。

 

「ごめんなさい、人間辞めちゃいました」

 

 色々ツッコミたい事があるのに、畳みかけるようにこの発言だ。

 

 生まれて初めて、この親友に対して途轍もない怒りを抱いた。

 

 

 

 

 

 

 香織は自分の種族が鬼になった経緯を雫に話した。

 

 

 私、愛した人と同じ化け物になったの(要約)

 

 

 寝起きにこんなこと聞かされて雫はどう返答すればいいのだろう。

 

 話を聞く限り、明確な弱点のないほぼ不死身の肉体。

 オマケに、詳細までは明かさなかったが奥の手も複数用意しているほどの徹底ぶり。

 せめてもの救いは親友たちが最も死の危険から遠ざかっていることか。

 

 

 色々やりたいことがあるから、ちょっと旅してくるね。

 

 

 これには思わず新婚旅行かよと内心毒づいたら、それは違うよと返事が来た。

 

 ナチュラルに思考読まれた。プライバシーどうなってんの。

 

 下手に情報を持ってると逆に危険だからと詳しいことは聞けなかった。

 宗教って敵に回すと厄介だからと言われて、問い詰める勇気はなかった。

 

 旅立つ前に用意したとのことで、香織から様々なものを渡された。

 軽さと頑強さを重視した刀を模した武器を皮切りに。

 あらゆる状況を想定したような、多種多様な道具や薬など。

 

 限定的な用途の物まで用意されているほどの病的な程の徹底ぶり。

 

 そして、それらを収めておけるブレスレット型の収納魔道具。

 オリジナルの宝物庫には程遠いと言っていたが、十分すごい。

 

 例えるなら回復道具を上限まで所持しているラスボスだろうか。なんだその無理ゲー。

 不死身の肉体を得て尚ここまでする相手は、絶対に敵に回してはいけないと再認識した。

 

 

 そして最後に渡されたのは、赤い液体が収められた容器。

 人を鬼に変える南雲ハジメの血。

 代償を支払い不死の肉体を得られる最終手段。

 

 

 化け物になるくらいなら死んだほうがまし。

 

 

 死を目前にしてそんな啖呵をきれるほど、雫は強い人間ではない。

 それを知っている香織はハジメの血を雫に託した。

 

 化け物になってでも生きていて欲しい。

 

 香織のその思いを雫は拒絶しなかった。

 それはきっと、雫が香織に抱いてもおかしくないものだったから。

 

 決して、老いることの無い肉体に魅力を感じたなどと、邪な思いを抱いたりはしなかったのだ。

 

 

 

「そういえば、南雲くんは今は何をしてるの?」

 

 用事を済ませこの場から去ろうかとしていた香織に問いかける。

 今更ハジメを信用できないというわけではなかったが。

 香織が行動している間、彼が唯おとなしく待っているとは思えなかったからだ。

 

「ちょっと後顧の憂いを断ちに……ね」

 

 香織は雫に背を向けて答えた。

 今の自分の顔は、親友に見せられるものではなかっただろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメは旅に出る前に後顧の憂いを断っておきたかった。

 

 あの男が一人になったのを確認出来た時点で行動に移した。

 

 

 気づいた時には、檜山は自分の見知らぬ場所で拘束されていた。

 拘束しているのはハジメの変形した腕だ。

 檜山は生殺与奪の権をハジメに握られていた。

 

 





ありふれコソコソ噂話

今作では鬼になっても太陽は弱点にならないし人食い衝動も存在しません。

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