無惨と言ったらパワハラ会議ですよね
檜山を拘束するハジメは、あからさまに面倒だという表情で彼を見ている。
それに怒りを覚える余裕など、檜山にはなかった。
「勝手な都合でこのトータスに召喚され、戦争とは無縁だった僕たちを魔人族との戦いに巻き込んで、周りの人間も殆どの者が力を得られたことを喜び、自分の命が脅かされれば恐怖に震え立ち向かうことも出来ない、我ながら情けないと思ったよ」
いきなりこんな状況に追い込まれてそんな事を俺に言われても……。
「そんな事を俺に言われても、何だ、言ってみろ」
思考を読まれた? まずい!
「何がまずい、言ってみろ」
そう言われて口を開くことなど檜山にはできない。
「お前はあの時、南雲ハジメを殺そうとして火の魔法を放っていたな」
「いいえ、あの時の魔法は俺の物ではありません!」
「お前は僕が言うことを否定するのか」
肯定も否定も許されない状況に檜山は絶望する。
「申し訳ありません、私が愚かでした! もう今までのような無礼な真似はいたしません、これからは心を入れ替え、誠心誠意貴方のために力を尽くします!」
それでも死にたくない一心で檜山は言葉を尽くす。
思考を読まれる事を知ったからには半端な気持ちで口を開くことは出来ない。
檜山は本気でその言葉を口にした。
「誰がいつ、お前の力が必要だと口にした」
そんな檜山の言葉を、ハジメは容易く切り捨てる。
「くだらないことを事を考える暇があるなら大人しくしていろ」
「お前の勝手な判断を僕は望んでいない」
「僕に不利益をもたらす者を生かしておく理由などない」
「お前に求めることは何もしないでいる事だけだ」
「死にたくないなら自分の立場を弁えろ」
ハジメは檜山の行動を縛る手段として恐怖を刻み込むことを選んだ。
この男は追い込まれたときに他者を思いやる気概などない。
南雲ハジメという化け物と同じように、自分さえよければ他人がどうなろうと構わないのだ。
だからこそこの男の行動は容易く読める。
檜山は、ハジメが圧倒的な強者であり思考さえも容易く暴ける化け物だと認識した。
そんな化け物に命を握られ。
心の中の罵倒一つで命が摘み取られてもおかしくない状況で。
それでも命が保証される選択肢があるのなら。
抗う事など不可能だ。
不死身と言える肉体を持つ自分自身さえ不可能なことを、この男に出来るはずがない。
いや、そんな真似はさせない。
プライドなどという、生き残るために不要なものが理由ではない。
いずれ自分はこの世界の神と戦うことになるだろう。
檜山に出し抜かれるようなヘマをする者が、神に勝てるはずもない。
そんな者がこの先、生き残れるはずもない。
生き続ける事。それがハジメにとって最も優先される事。
そして理想は隣に香織という存在がいる事。
最優先されるのは自分自身だということに変わりはない。
それでも、既に香織は容易く切り捨てられる存在ではなくなっていた。
檜山から中村恵理の情報を得たハジメは、そちらにも脅しをかけておいた。
恵理は檜山を脅し手駒にしていた様だが、それ以降は明確な行動は起こしていなかった。
恵理にとって幸いだったのが、香織に危険が及ぶ前にハジメが現れた事だった。
そのため、ハジメからの敵意は檜山ほどの物ではなかった。
香織が鬼になった今、半端な力では彼女を害することが出来なくなったことも要因だろう。
恵理の目的が光輝であることが分かったことは、ハジメにとって大きな収穫であった。
ハジメと敵対さえしなければ恵理と光輝の命は保障される。彼女にはそう認識させておいた。
恵理の力は敵に回せば脅威となりえるもの。
逆に味方に引き込めるなら、光輝を守るために労力を費やすことも厭わない。
中村恵理は共に召喚された者たちの中で最も敵に回してはならぬ存在だ。
ありふれコソコソ噂話
今回のハジメの理不尽さはあくまでも演技である。