突如決まったジャンパーズの日。
言い渡された休暇を満喫するスカイジャンパーズ達のお話

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ホップステップジャンパーズ番外編 ~ジャンパーズの日~

「ふぁああああ。まだ朝七時だってのに呼び出し受けるなんて付いてないな」

「文句ばっかり言ってないでシャキッとしてよ。カケルのせいでボクまでだらしないって思われたらどうしてくれるのさ」

 

 ジャンパーとして駆け出しだったカケルとソラ。二人は入隊試験から鮮烈なデビューを飾り、次々と降りかかる事件を解決して、今では期待の新人と地域の者達から呼ばれるまでに至った。

 そんな二人だがジャンパーとしての成長はともかく、人間としての成長はまだまだこれからと言った様子であった。

 ソラは今回の早朝呼び出しもきっと先日片付けた事件の処理についてお小言を貰うのではと気が気ではなかったのだ。それなのに隣の幼馴染はあくびを隠そうともせず、呑気なものである。

 

「本当にしっかりしてよ。これから何言われるかわからないのに」

「そうは言っても心配するだけ無駄だろ。こういうのは予想外の事って相場が決まってるし、変に身構えても余計に精神すり減るだけだって」

 

 人が折角心配してるのにこっちの気も知らないでと零した愚痴は耳に届かなかった様だが、多少は気を使ったのか、カケルは再び出そうになったあくびは噛み潰していた。

 そんな話をしているうちに、二人はスカイジャンパーズの指令室まで辿り着いたのだが、予想外の光景がそこにはあった。

 

「おっはよう後輩諸君!今日も元気かな?」

「おはようございますルイカ先輩。それに他の皆までどうして?」

 

 なんとルイカだけではなく、スカジャン所属のほぼ全員が扉の前に待機していたのだ。

 

「ん~?なんかね、重大発表があるとかで呼ばれてさ。たまたまここでロウセンと鉢合わせてね、話してみたら皆呼ばれてるっぽいから、どうせなら全員集まるの待とうって」

「闇の帳を降ろした現世から不浄なる者を滅さんと陽光が照らし出す。集いし(ともがら)灰塵(かいじん)に帰するのを守らんが為、俺はここに居た」

「ロウセンそのウザい喋り方やめて、その仮面取るよ」

「やめろっ!仮面には触れるな!これが無いと闇に属するものは日の光の下では生きられないんだぞ!」

 

 あっそ、と雑に片付けられ肩を落とすロウセンを慰めるは信奉者であるガンマ。

 

「ロウセンさん!俺は闇に生きるロウセンさんメッチャカッコいいと思います!リスペクト止まんねえっス」

「そ、そうか。分かってくれるか。お前にもいつか闇と調和し、眷属に名を連ねる日が来るかもしれないな」

 

 掛けられた言葉に感激してテンション上げている者は放っておき、次に声を掛けて来るはカケルの妹であるリズだ。

 

「お兄ちゃんおはよう。寝癖付いてるよ、恥ずかしいからしっかりしてよね」

「おはようリズ。さっきソラにも同じようなこと言われたよ」

 

 全くもうと腰に手を当てながら注意してくる妹に頭が上がらない様子のカケル。そんな二人を見て皆落ち着いたのか、徐々に冷静さを取り戻す。

 

「結局これ何の集まりなんですか?私たち指令室になんて呼ばれたの初めてなんですけど」

「それは分かんないけど、とりあえず皆揃ったし中入ろうか。そうすればわかるっしょ」

 

 何処までも気楽な様子でノブに手を掛けるルイカ。それもそうかとソラも気を取り直し、後へと続く。

 

 ギイイイイイイイイっと重い音を立てながら開かれる扉。

 

 まず眼に飛び込んできたのは窓から差し込む眩い朝日。

 そのあまりの眩しさにソラは思わず手で(ひさし)を作ってしまう。

 すると幾分かマシになった明るさの中に、一つの影があることに気付く。

 その影はゆっくりと動き、こちらに近づいてきた。そして……

 

「ソラぁああああああっ!会いたかったぞぉおおおおお!!」

 

 突如中年オッサンが少女を抱きしめたかと思うと、そのまま高い高いをするように持ち上げてクルクルと回り始めたのだ。

 

「はあっ!?お父さん!?」

「そうだよお父さんだよぉおおおおおおおおおおおお!」

 

 そう、何を隠そう彼こそがソラの父でありスカイジャンパーズの創設者『テンカイ』である。知り合いには子煩悩で知れ渡っているが、久しぶりの再会一発目から小さな子供にするような振る舞いと言動は年頃の女の子にはキツイものがある。その証拠に、

 

「おりゃあ!」

「ごっふぁっ!」

 

 持ち上げられて良い高さにあったソラの膝が、テンカイの顎に綺麗に決まった。多少グラつきはしたもののソラから手を放さずゆっくりと降ろしたのは流石としか言いようがない。

 

「酷いじゃねえかソラ。久しぶりの親子の感動の再会だっていうのに」

「だったらいきなりじゃなくて事前に連絡してくれればいいでしょ!お父さんはいっつもそう!突然居なくなって、かと思えば家でお茶飲んでたりするしもっとコミュニケーションが必要でしょ!」

「だからこうやって触れ合いを……」

「報連相しろって言ってんの!組織のトップなんでしょうが!」

「はい……」

 

 ソラが怒るのも無理はない。このテンカイという男は『ちょっと出かけてくる』とだけ書置きを残して半年音沙汰無い、そしてふらっと帰って来たと思えばこんな風に知らせもなく現れる癖があるのだ。それは幼馴染であるカケルだけではなく、スカジャンのメンバーにすら周知されている事なのだ。だが人知れず繁殖していたプリズミックの巣を壊滅させて帰って来たり、よく分からないガラクタを拾ってきたかと思えばプリズミックから生成された特殊な物体で、高値で売れて組織の運営資金として当てがわれる等、成果を上げて来るために余り正面から責めづらいのが実情であった。

 が、そんなことは娘であるソラには問題にならず、正座をさせられて反省の意を示すしかない情けない大人の姿がここにはあった。

 

「それくらいにしてやってくれソラ。おやっさんも長い事空けて申し訳ないとは思っているんだ」

 

 そんな言葉を掛けられて初めてこの場に他の者たちが居たことに気付く一同。シオン、ロージア、ソフィが居りスカイジャンパーズ勢ぞろいである。もっとも、遠征に出ているスズとアンジュは不在なのだが。

 

「シオンさん、そんな甘い事言うからお父さんは治らないんですよ。でも皆が集められてるって事は何か話があるんでしょうし、今日はこの辺で勘弁してあげます。ほら、お父さん、ごめんなさいは?」

「うぅ……すみませんでした」

 

 威厳もあったもんじゃない組織の長である。皆もソレに触れるのはなんだかアレだったので、知らない顔してスルーする事にした。

 やっと立つことを許されたテンカイはパンパンと裾をほろい、姿勢を正して何事もなかったかのように咳ばらいを入れてから口を開いた。

 

「おほん、新顔が何人か居るようだから改めて紹介する。俺がスカイジャンパーズの創設者でありリーダーのテンカイだ。よろしくな」

「俺もテンカイさん見たの久しぶりだな。ガンマは会ったことあるのか?」

「いや、街でプリズミック倒してる姿は昔見たことあるけど、目の前で会ったのは今日が初めてだな。正直思ってたのと違ってビビってる」

 

 そりゃ仕方がないとカケルは苦笑する。端から見ればテンカイも神龍事件の中心人物であり、ガンマの様に偶に見かけたケースでも強いリーダーシップと裏打ちされた実力を持って事件を解決するため周囲からの評価は非常に高かったりする。それが私生活はだらしなく、娘に頭が上がらないとなれば無理もない。

 

「二人とも、うちは固い組織ではないが仮にもトップが話をしているんだ。余り私語は褒められたものでは無いぞ」

「「す、すみません」」

 

 雑談をしていた二人を(たしな)めるシオン。恐縮する二人だったが、テンカイは気にした様子もなく寧ろ笑っている。

 

「余り苛めてやるなシオン。お前も言ったろ?通りうちは固い事言いっこなしだ。余程切羽詰まった時でもない限りは咎めん。気軽にやろうぜ」

「そーよ、このオッサンが一番おちゃらけてるんだもの。直ぐに気を遣うのが馬鹿らしくなるわよ」

「ソフィさん程あからさまに言うつもりはありませんが、肩肘張って働くような現場ではない事は確かね。先輩後輩位の心構えだけ持てばそれで良いのではないかしら」

 

 これまで黙って聞いていたソフィとロージアからアドバイスを受け、改めて自分がどのような組織に所属しているかを認識するカケルとガンマだった。

 二人の顔色を見て話が片付いたと思ったテンカイがパンと手を鳴らし注目を集める。

 

「それじゃ本題に入らせてもらうぞ。朝早くから皆に集まって貰ったのは他でもない。今日が何の日か分かるか?そうだな、丁度いいからカケルとガンマ答えてみろ」

「ええっいきなり問題?うーん、成人式は過ぎたし、祝日でもないよな。ガンマはわかるか?」

「いや、俺も特にこれってのは思いつかないな。テンカイさん答え教えてください」

 

 一応考えたカケルとは違いガンマはあっさりと降参の意思を見せた。

 

「そうか、なら勿体ぶらずに教えよう。本日1月23日は1、2、3って事で『ホップステップジャンパーズの日』って昨日ジャンパー協会で決まってな。ちと難しかったか?」

「いやいや、昨日決まった事なんて知る訳ないじゃないですか」

「そうっすよ。そんなもん分かる訳ないっすよ」

 

 テンカイの意地悪な問題にそりゃないよと嘆く二人。そんな二人を楽しそうに見るテンカイはチラリと横へと目を向ける。

 

「ちなみにリズ、お前はどうだ?」

「私ですか?流石に昨日の時点では知りませんでしたけど、今朝のニュースで知りましたよ」

「という奴もいる。別にニュースを見ないのを悪いとは言わんが、情報は時に命を左右することもある。常にアンテナを張るのも大事なことだぞ」

 

 自分より年下の者に負けた男達は顔を赤らめて俯く。それを見るソラとリズは『恥ずかしいなもう』とため息をつくばかりだ。

 

「まあ細かいことは置いといて、今日はそんなめでたい日だ。ジャンパー達に日頃の感謝を表して協会でイベントが開催される。ってなわけで今日は全員休日、たっぷり遊ぶぞ!おー!」

「おー!ところでイベントって何があるの?」

 

 こういう場面で真っ先に浮かれるルイカだけ、テンカイの掛け声に合わせて手を振り上げている。そして早くも協会に乗り込む気満々のようだ。

 

「今回はいきなりの開催だからな、準備も考えるなら商店街の縁日レベルじゃないか?詳しいことは俺もわからん」

 

 行ってみればわかるだろうと笑うテンカイもウキウキが隠せなくなってきたようで、そろそろ向かうぞと皆を率いて先導するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「そういや俺ジャンパー協会来るの初めてだな」

 

 協会本部にたどり着いた一行、そんな中カケルがふと思い出したように言う。

 

「俺は親父に付き合って何回か来たことあるぞ」

「ガンマの親父さんって話聞いたこと無かったな。どんな人なんだ?やっぱりジャンパーか?」

 

 カケルの返事にしまったという顔をするガンマ。あれこれ考えた結果、『普通の会社員だよ』と顔を背ける。その反応が気にはなったものの、カケル自身両親を亡くしている身。ガンマにも彼なりの事情があるんだろうと深く突っ込むことはしなかった。

 二人が話しているうちに受付で手続きを終えたテンカイが戻ってきた。

 

「よーし、それじゃこれからこちらさんで遊ぶわけだが、うちに帰るまでが遠足です。皆引き締めて……」

「お父さんウザい、そういうの良いからさっさと進めて」

「そりゃないぜソラ。父さんはこの日の為に色々考えてきてだな」

「そんなくだらない事考えてる暇あったら連絡の一つでもして」

「はい」

 

 娘に頭が上がらないリーダーに受付嬢がとんでもない物を観たという顔をしているが誰もツッコミを入れる者は居なかった。

 

「とりあえず、今日は仕事を忘れて遊び倒せ。ここでは金が掛からないから食べ物も食べ放題だ。各員健闘を祈る!っしゃあああ酒飲むぞ」

「コラッお父さん!」

 

 先陣を切って建物に走っていくテンカイを叱ろうとしたソラだったが、それにちゃっかり着いて行くソフィを目撃して二の句が継げなくなった。数秒固まったのち、大きなため息をつく。

 

「やめた、今日はもう遊んで忘れるよ」

「おやっさんも普段大きなヤマ抱えてて心身共に疲労が溜まってるんだ。こういう時ぐらいは大目に見てやってほしい」

 

 悟りを開きかけたソラにシオンが労わる言葉を掛けるが、ソラは大丈夫ですと笑う。

 

「お父さんじゃないけどこんな日なんだから楽しまないと損ですよね。カケル!リズちゃん!今日は施設全制覇するよ!」

「おっしゃ!付き合ってやるぜ!」

「カケル、射的とかあったら勝負しようぜ」

「待ってくださいソラさん」

 

 走り去る若者達らしい姿に柔らかい表情を見せるシオン。

 

「何ジジ臭い顔してんのさ。ほらシオンも行くよ」

「おいおい、引っ張るな」

 

 ルイカに連れられ残る先輩組もビルの中へと進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カケル、そっち行ったよ!」

「オーライ」

 

 四人が今プレイしているのは、プリズミックテニスというものらしい。本来は協会が有する対プリズミック戦闘用のシミュレーターらしいのだが、今回はそれを改造してテニスコートを再現したようだ。

 元が戦闘用なだけにただのテニスとは違い、扱う玉はプリズミックの形をしていたり、事前に設定した技を組み込んで戦略性を高めているようだ。ちなみにソラは打球がミサイルとなって加速したり、カケルならラケットが巨大な拳の形となって返球しやすい等様々である。

 

「これで終わりだ!」

 

 球に追いついたカケルが気合を入れてラケットを振る。狙うはガンマとリズのちょうど真ん中、互いを意識して反応が遅れがちになるスポットだ。振り抜かれたラケットに押し出されてボールが勢いよく『後ろへ』飛んでいった。

 

「はい?」

「ちょっとカケル!何でそこですかぶるかなぁ!」

「いや、俺ちゃんと打ち返したぞ?」

 

 変に思ったカケルがラケットを見ると、大きな穴が空いていた。

 

「どーよ、俺様の銃撃スキルとリズちゃんの小剣スキルを重ねて銃弾の代わりに剣を撃ち込んだんだよ」

「私のアイデアですけどねー」

 

 本来ならガットの一本か二本を狙撃して打球を鈍らせる程度の能力である筈の銃撃スキル。それを他の能力と合わせてより強力なものにしたようだ。初めてプレイしたにも関わらずそんな事を思い付くリズのセンスは流石である。楽しそうにハイタッチを交わす二人に、悔しさが湧き上がってくるカケル。

 

「そんなんありかよ!もう一回だ!」

「はいはい、まだまだ周ってない場所沢山あるんだからまた後でね」

 

 そっけない態度で次の場所へと向かう3人の背中を見つめ、カケルはガックリとうなだれるのだった。

 

 

 

 

 

「こいつで俺が2つリードだな。降参しても良いんだぜ」

「なんの、ドミノ倒しさえできればまだ分からないぜ」

 

 お次は出店の定番射的である。こちらは至って普通のコルク銃を使った物だ。二人は景品の取った数で勝負しているが、堅実に1個ずつ倒していくガンマと連鎖によって大量獲得を狙うカケルとここでも個人差が現れた。互いに5発中4発を撃ったところで現在ガンマが3つ、カケルが1つだ。ガンマの言うようにここからの逆転はかなり厳しいのは誰の目にも明らかである。それでもまだカケルは諦めていないようだ。

 

「もうかなりずらしたからな。次の一発で決めれば大逆転ってな。これで……落ちろっ!」

 

 気合と共に放たれた弾丸は、積み上げられたお菓子タワーの軸に命中。積み重ねてきたダメージが限界を超え、見事に崩壊を招いた。これにより5個の景品がカケルに加算され、6対3だ。

 

「馬鹿なっ!この俺様が逆転されただとっ」

「へへーん、どんなもんよ。降参しても良いんだぜ?」

「くっ」

 

 先程の言葉をそのまま返され悔しそうに顔を歪めるが、まだ勝負は終わっていない。スコアだけ見るとカケルの勝利は決まったかのようにも見えるが実はそうではない。

 

(カケルの崩した後のタワーの残骸、そこに残ってる無事な場所を更に崩せば──)

 

 狙いを極めて引き金を引く。スパンッと圧縮された空気が奏でる音と静寂。

 

「ちっ、無理だったか」

「よっしゃー!俺の勝ちぃいいいいい」

 

 ガッツポーズを決めて喜ぶカケルとは対照的に面白くなさそうなガンマ。この戦い、実はカケルの作戦勝ちだったのだ。

 普段からプリズミック討伐時にガンマが使う武器は銃だ。それを考えると、一発につき1つの景品を狙ったのでは自分の腕では敵わないと見越して、最初から大物狙いにしたのだ。実際に崩落を起こせるかは運しだいではあったものの、唯一の勝機を零さずつかみ取った。

 

「次だ次、次は俺様が勝つから覚悟しとけ」

「望むところだ、返り討ちにしてやる」

 

 

 

 

 

「よーし、3ついっぺんに取れたから私の勝ちだね」

「ソラお前ズルしてないか?紐一本でヨーヨー3つは普通切れるだろ」

「そーだそーだイカサマだ」

「しーてーまーせーん。二人が下手なんでしょ」

「「ぐぬぬぬぬぬ」」

 

 

 

 

「あんぐんぐんぐ、っぷはぁ!早食いは俺の勝ちだな」

「いいや、俺様の方がタッチの差で早かった!」

「なんだと?リズ、どっちの方が早かった!?」

「そんな事よりそんな食べ方したら作ってくれた人に失礼でしょ!」

「「すみません……」」

 

 

 

 

「いやぁ遊んだ遊んだ。準備に時間が無かったってテンカイさん言ってたけど、十分楽しめたよな」

「そうだね、最後の方は殆ど食べ歩きツアーみたいになってたけど」

 

 夜になり、施設を閉鎖する時間との事で4人は協会から出てきた。それぞれの手には焼きそばや綿あめなどがちゃっかり握られており、お土産にも余念が無い様だった。

 

「お兄ちゃん達はこれからどうするの?」

「どうって特に何もないし、部屋に戻ってゆっくりするかな」

「俺様も同じだな。ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れ気味だ」

「へー、じゃあアレには出ないんだね」

「「アレ?」」

 

 リズの含みのある発言に怪訝な顔を返す二人。これは分かってないなと即座に察したリズは、面白そうに踵を返す。

 

「おいリズ、アレってなんだよ」

「教えてあーげない」

 

 そのままリズは前方にシオン達先輩集団が居るのを発見し、駆けていってしまう。取り残された3人はよくわからないまま立ち尽くすのみ。

 

「何だってんだ一体」

「とりあえずボク達も向こうに行こうよ」

「そうだな。帰る前にロウセンさんにも挨拶しとかねえと」

 

 リズの様に走る必要性もないのでそのまま歩いて向かうと、シオンがこちらに気付いて珍しく声を上げる。

 

「お前たち!早くしないと始まるぞ!」

「えっ、始まるって何が?」

「よく分からないけどとりあえず急ごう」

「あっ待てよ。クソ、食べ物があるから走りづらい」

 

 はぁはぁと息を切らしながらようやくたどり着くと、ルイカが口を開いた。

 

「皆遅いから参加しないものかと思ったよ」

「いや、参加ってそもそも何があるのかよく分かってないんですけど」

「あれ?もしかして知らない感じ?そっかそっか、ならここで見てるといいよ」

 

 楽しそうに背を向けるルイカ。またしても同じような反応をされていい加減苛立ちを覚えてきた。不満をぶつけようと口を開きかけたが、カケルはそこで皆が空を見上げていることに気付いた。

 何を見ているのだろうと自身も見上げてみる。すると待っていたかのように、周囲の街灯やネオン等が消えていくではないか。

 うろたえるカケルだが、ある一点にだけ光が灯るのを見た。よく見ようとそこに注視した瞬間。

 

 ピカ──────────!

 

「ぐわぁああああ、眼がああああ、眼がああああああああ!」

「カケルうるさい!」

「ごふっ」

 

 ソラから肘打ちを喰らって悶えてしまう。カケルの事などお構いなしに、夜空には先程の光が移動を始め、その軌跡が何かの形を描いていく。描かれし図形は射手座。光は最後に取り囲むように円を描くとそこからなんと大きなプリズミックが現れたではないか!

 しかもそれをもてなすかのように、パーン!と盛大な花火が上がり、ファンファーレも流れ出した。

 

「一体なんだってんだ」

 

 そんなカケルの疑問に答えるかのように、周囲に設置されたスピーカーから声がした。

 

『レディース・エン・ジェントルメン!今宵はジャンパーズフェスタ、一夜限りの祭典だ!思う存分力を発揮していってくれよ!』

「ジャンパーズフェスタ?」

 

 今尚何が起きているのか理解できずにいるカケルに、シオンが説明をしてくれる。

 

「ジャンパーズフェスタ、つまりはジャンパー達のお祭。今日のメインイベントで全ジャンパーの頂点を決める闘いだ」

「闘うって俺達で殴りあったりするんですか?」

「いや、あの空に浮かぶプリズミックを倒すんだ。そしてもっとも戦いに貢献した者に、『覇者』の称号と伝説のアークウェポンが与えられる」

「伝説の武器……」

 

 伝説と聞いてエクスカリバーだとかデュランダル等が頭に浮かぶカケル。そしてそれを手に取ってプリズミックをなぎ倒す姿を夢想する。

 

「シオンさん!俺出たいです!出させてください!」

 

 眼を輝かせて90度に腰を曲げて頼み込むカケル。それを笑いながら起こしてやる。

 

「安心しろ。これはこの場にいるジャンパーなら誰でも参加できる。それに一人で戦うのもチームを組むのもありだ。好きにすると良い」

「ありがとうございます!ソラっ、一緒にアイツ倒そうぜ!」

 

 現金なもので、先程まで狼狽えていたのにもう倒しに行く算段を付けている。だが若い世代なのだから血気逸るのは仕方が無いだろう。寧ろこれからの者達にこそ頑張ってほしいともシオンは願う。

 

「後輩君達、ジャンフェスは初めてだろうから頼れる先輩が付いていてあげるよ」

「ありがとうございます!」

 

 ルイカもここぞとばかりに自分を売り込むのが上手い。そうこうしているうちに周りにいる者達もそれぞれ纏まっているようだ。

 よく見ると動物の格好をした者たちや眼の周りに赤いマスクの様な物を付けている者、謎のメカを背負った者など見慣れない者達も多くいる。恐らくお祭りという事でコスプレをして楽しんでいるのだろう。

 

「そんなお遊び気分じゃ俺達には勝てないぜ」

「初参加でなに馬鹿みたいなこと言ってるの。それにソレって負ける奴の常套句でしょ」

「テンション上げてるんだから、一々突っ込まないでくれよ。それともソラは優勝目指す気ないのかよ」

「そんなのやるからには一番に決まってるでしょ」

「ならもっとこう、わかってくれよ」

 

 はいはいと流され落ちこむカケル。まあ興奮はしていてもいつもと変わらないのは二人の良い所と思うべきか。

 

 

 

 

 

『さあ、皆準備は良いか?今回のターゲット『キューボイドサジタリウス』を倒して栄光を手にするのは一体誰なのか?試合開始ぃいいいいい!』

 

 合図と共に夜空から舞い降りてきたキューボイドサジタリウス、それに群がるジャンパー達。

 それぞれの思いを胸に秘め、一夜限りの祭典は幕を開けた──────


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