side上条
選別の帰り道、俺は動けなくなった炭治郎くんを背負って狭霧山への道を歩いていた。
「......すみません...上条さん...」
「気にすんな、頑張ってた歳下を労るのは歳上の役目だからな」
背中の上で申し訳なさそうに炭治郎くんが話す。
そう、気にしなくてもいい。炭治郎くんは頑張っていた。禰豆子ちゃんを人間に戻す方法を鬼たちから聞こうとしていたし、手鬼との戦いでは他の参加者を守ろうと奮戦もしていた。
そんな優しい子に、ボロボロの状態で歩けと言うほど俺は薄情じゃない。にしても...
「ちょっとだけ、甘かったか...」
「えっ...?」
俺の呟きに炭治郎くんが反応する。
「いや、結局あそこの鬼たちのからは何の収穫も得られなかっただろ? だから甘かったって......」
「はい...。八人の鬼たち全員...まともに話をできるような状態じゃありませんでした...」
「問答無用だったよな...。余程飢えてたらしい」
下手に問いかけようとしたら俺たちが喰われていた。
「少し休んでていいぞ? 着く頃にはまた教えるから」
「すみません...。少しだけ...休みます...」
それを最後に背中からは寝息が聞こえるだけになった......。
それを聞きながら俺は狭霧山へと歩を進めるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そうして暫く歩いて狭霧山の鱗滝さんの住む小屋付近までたどり着いた。
「と、炭治郎くん? そろそろ到着だぞ?」
「ん......」
起きないな...深い眠りに入っちまってるみたいだ
着いたら起こしてやるくらいでいいか......
そう思い歩みを進めていると、鱗滝さんの小屋が見えてきた。
やっと着いたな...。この時代は移動手段が歩きしかないから時間が掛かってしょうがない......
そんなことを思いながら小屋に向かって歩いていると、小屋の扉がいきなり蹴り飛ばされて吹っ飛んだ。
何事かと足を止めると、その中から禰豆子ちゃんがテテテ...と出てきたのだ。
「あ────っ!! 禰豆子ォ お前っ...起きたのかぁ!!」
「うおっ...!? 炭治郎くん起きたのか......」
急に耳元で大声を出すなよビックリするだろうが......
「あっ...すみません...」
あ、しょぼくれた......。
そんなやり取りをしていると、禰豆子ちゃんがこちらに気がついたのか、俺たちの方に駆け寄ってくる。
それに気がついて俺は炭治郎くんを降ろしてやる
すると禰豆子ちゃんは炭治郎くんに駆け寄り、その身体を抱きしめた。
炭治郎くんもそれに感極まったのか......
「わ────っ お前 なんで急に寝るんだよォ!! ずっと起きないでさぁ!! 死ぬかと思っただろうがぁ!!」
泣きながら叫んでいる。
良かったな...炭治郎くん。
そう思い二人を眺めていると、禰豆子ちゃんがヌッと腕を伸ばしてきて俺も抱きしめた。
「お、おい禰豆子ちゃん? 俺はいいだろ別に」
「むぅ...」
フルフルと首を横に振られたんだが......
「禰豆子はお前のことも心配していたのだ...当麻」
その声と共に更に上から腕が伸びてきて俺たちを抱きしめた。
「よく生きて戻った!!!!」
鱗滝さんの優しい手に抱かれ、そうしてようやく実感した。
やっと、帰ってこれたんだと......
俺たちは、無事に最終選別を突破した