side炭治郎
『グオオオオオオオオォォォォッ!!!!!』
いきなり起き上がった禰豆子が獣のように吼え、俺と上条さんを睨みつけてくる。
「ね、禰豆子ちゃん...?どうしたんだよ...今動いたら...」
そういって上条さんが近づこうとした時だった。
「ッ...!!グアウッ...!!」
「なっ!? ぐうっ...!!」
突如、禰豆子が上条さんを蹴り飛ばし、俺の方へと飛びかかってきた。
「禰豆っ...くっ...!!」
持っていた斧を慌てて眼前に構え、飛びかかってくる禰豆子を辛うじて抑える。
しかし、勢いがついていた禰豆子に俺は押し倒される。
斧の柄を口から生えた牙で加え、俺の両腕を凄い力で掴む禰豆子の両腕......。
その様は、まるで鬼だ。
三郎爺さんが言っていた鬼そのものだった......。
禰豆子が...人喰い鬼...?
いや、違う。禰豆子は人間だ。生まれた時から
だけど匂いが、いつもの禰豆子じゃなくなってる!!
でもあれは禰豆子がやったんじゃない!!
禰豆子は六太を庇うように倒れていたし、口や手に血は着いていなかった。
それに、上条さんが言ってた男のこともある。
それが、家で感じたもう一つの匂いの...家族を殺した犯人!!
そこまで思い至ったところで、状況が動き出した。
禰豆子の身体が、ズンズンと大きくなり始めたのだ!!
身体が大人の女ほどに大きくなり、力も更に強くなった。
駄目だ、全然押し返せない!!
その時だった。
「はぁ、なんて言うか、不幸だ......」
そんな声が聞こえた直後、ふと、俺に掛かる重さが急激に軽くなった。
なんだ?いったい、なにが......。
よく見ると、禰豆子が上条さんに捕まっている。
まるで犬の散歩でもするように、簡単に片手で捕まっていた......。
「危ないとこだったな、大丈夫か?炭治郎くん」
「.........ムー」
後ろでその両手を抑えられ身動きの取れない禰豆子は、何故か暴れることなく落ち着いている。
「アイツに効いてたから、もしかしたらと思ったけど、やっぱり効いてくれたか......」
まるで何かを知っていたこのように左腕で胸を撫で下ろす上条さん。
「か、上条さん...ね、禰豆子は...」
「大丈夫、なんともねえよ」
抑えられ、大人しい禰豆子を見て上条さんが優しく見つめる。
その時だった。
上条さんの背後から
迫る人影が...!!
俺は咄嗟に叫んでいた。
◆◇◆◇◆sidechange◇◆◇◆◇
「上条さん!! 後ろ...!!」
炭治郎くんが青い顔をして俺に叫ぶ。
しかし俺は気がついていた。足音を消して近づいてくる奴がいることを......。
その人影が真後ろに迫って来たことを察知し、自然な動作で左腕を背後に迫り来る相手に手を伸ばす。
《ピタッ》
伸ばした手を指二本にして構え、突き出すと、その指へ吸い寄せられるように刃が受け止められていた。
「!! なっ...」
件の曲者は驚きの表情をしている。
「おい、いったいなんのつもりだ?いきなりこんな物騒なもん振り下ろしてきやがって......」
俺は下手人を睨みつける。
この男、今明らかに禰豆子ちゃんを狙っていた。
「なぜ、邪魔をする...」
「そりゃ、こっちのセリフだ...禰豆子ちゃんに手を出そうとしやがって...なにしに来やがった」
「えっ...!?」
男の言葉に俺は睨みを効かせながら問い掛ける。
その俺の言葉に炭治郎くんが驚いた声を上げる。
「そこの少女は鬼だ。俺は鬼を狩る仕事をしている」
「鬼...?」
言われてみれば昨日までなかった牙や爪があるな...確かに鬼にも見える......。
「だからって殺らせるわけないだろうが、炭治郎くんの妹をむざむざ殺させるかよ」
「......鬼が人を殺して食うと聞いてもか」
人を...喰う...?
「......なに?」
「放っておけば、その鬼は目の前の兄を食い殺す。確実に」
「待ってくれ!!禰豆子は誰も殺してない!!俺に傷だってつけてないんだ」
男の言葉に炭治郎くんが食らいつく。
「俺の家にはもう一つ、嗅いだことのない匂いがあった!! みんなを...殺したのは多分...そいつだ...!!」
「禰豆子は違うんだ!! どうして今そんなことになったのかは分からないけど、でも!!」
「簡単な話だ、傷口に鬼の血を浴びたから鬼になった」
鬼の...違う...?
「ちょっと待てよ。鬼...?鬼の血だって?どういうことだ」
「......鬼の祖に血を浴び、それが傷口から体内に入った事で鬼になる」
おい、まさかあのクソ野郎が鬼の祖だってのか...?
「そうか、アイツが禰豆子ちゃんを...!!」
「......どういうことだ」
「!! そうか、上条さんは犯人の顔を知ってる!! だから分かるんだ!!」
「なにっ...!?」
その言葉に男の態度がガラリと変わったのを、俺は感じていた。