side上条
「.........いつから、気づいていた?」
木陰から出てきた男が問いかけてくる。
その素顔は天狗面に隠されており、素顔を伺うことは出来ない。
しかし、フードの下から覗く頭部を見る限り、その白さから歳を重ねており、俺たちよりも歳上だろう事は伺えた。
「外に出た時からですよ、炭治郎くん達とは別の気配を感じてた」
お堂を蹴破る前までは感じなかったから、その直後辺りに来たのだろう。
俺は右手を鬼に触れながらそう返す。
「......色々と聞きたいことはあるが、それより...」
そう言うと視線が俺の下の鬼に行く男。
「ソイツはどうするつもりだ?」
「あぁ、このまま朝まで待って陽の光で焼き殺してやろうかと。俺じゃ倒しようがないんで」
「......再生していないようだが」
「まあ、そうっすね...俺が触れてるんで」
今は詳しく話してる場合でもねえし手短に済ませる。
「......そうか」
男はそれきり黙ってしまった。
そうこうしてるうちに日が登り、辺りが白み始めてきた。
破裂した鬼は為す術なく陽の光に晒されその身体を塵のように吹き消えていった。
「上条さん...さっきいったい...なにを...」
近寄ってきた炭治郎くんが訝しげに問うてくる。
「アレか?アレは俺の使ってる拳法だよ」
「けん...ぽう...?」
分かってない炭治郎くんに簡単に説明してやる。
「文字通り、拳で戦う戦い方のことだよ」
ま、俺のは拳法っつうよりも暗殺拳だけど......。
「それより、貴方は誰なんですか?」
「......儂は鱗滝左近次、義勇の紹介はお前たちで間違いないな?」
鱗滝と名乗った男がそう聞いてくる。
そうか、アイツ...紹介していてくれてたのか......
その横で炭治郎くんが口を開いた。
「は、はい。竈門 炭治郎と言います。妹は禰豆子で...そっちの人が...」
「上条 当麻です。あなたが冨岡の言ってた育手の方ですね?」
「あぁ、炭治郎といったか...。妹が人を喰った時、お前はどうする」
なっ...!!この野郎、炭治郎くんになんてこと聞きやがる!!
「ぇっ...?」
(パアンッ!!)
答えられない炭治郎くんに鱗滝の手が飛ぶ。
「判断が遅い」
「なっ...!!」
俺が驚く横で鱗滝は続ける。
「お前はとにかく判断が遅い、今の質問に間髪入れずに答えられなかったのは何故か? 妹が人を喰った時にやることは二つ。 妹を殺す。お前は腹を切って死ぬ...。鬼になった妹を連れていくというのはそういうことだ」
「しかしこれはぜったいにあってはならない。儂の言っていることがわかるか」
しかし今度は炭治郎くんも間髪入れずに答える。
「はい!!」
「......お前も分かっているな?」
次は俺か...?
「わかってますよ、禰豆子ちゃんには誰一人手を出させねえし、俺がさせねえ」
「......では、これからお前たちを鬼殺の剣士として相応しいかどうかを試す。炭治郎、お前は妹を背負って着いてこい。上条、お前はそのまま着いてこい」
「あぁ、分かった」
そうして、背を向けた鱗滝...さんを追って俺たちは走り出すのだった