Fate/type Redline 〜もう一人の新撰組〜 作:十六夜翔矢
今回はタイトル通りです。
「開戦じゃ!!」
銃を展開した英霊が戦いの始まりを告げると、濃密な殺気と魔力が辺り一帯に広がる。
「…これは、やばい」
「急ぐわよ。」
「えっ」
「鈍い貴方でも分かるでしょ流石に。もう一人は分かってるみたいだけど。」
「そうね…早く後退しましょうか。」
「…聖杯から魔力を注がれ蘇った傑物達。あれこそが英霊…サーヴァント。人間がどうこう出来る次元にいない。ほら、何ボケっとしてんの!」
「ま、待ってくれ、これだけ教えてくれ!」
「俺は赤城奏丈。ここは何処で今は何年なんだ!?」
「…私は藤宮奏津。落ち目の魔術師家系の分家。」
「何年って…ねぇ、貴方達ホントに頭打ったんじゃないの?」
いやまぁ私は頭ぶつけたましたよ。
それで目が覚めた訳だし。
「昭和20年、大戦真っ只中の帝都よ」
しょ、昭和…20年…?
75年前、第二次世界大戦の真っ只中ですって…?
って事は…
「「タイム…スリップ…」」
現実として受け止められる自信はある。
だけど今この場を現実とは認めたくない…!
なんだってこんな事になってんのよ!?
「ほれほれどうした、セイバー。手も足も出ぬか?」
「こいつぁ…とびっきりヤバそうだせ…!」
「この程度で最優とは片腹痛いぞ!」
「三人ともドアの陰に!」
「流れ弾貰っても知らねぇぞ!」
敵サーヴァントの銃撃が始まる。
セイバー達が時間を稼いでいる間に…
「…後で情報を吐かせようと生かしとったが、拾った命を無駄にするか。」
敵の攻勢が止む。ふと振り返ると英霊兵のマスターが発砲していた。
「くそっ!!こんな筈では…!!猿共め、精々今の内に粋がってろ…!」
仲間割れ?だとすれば守勢から攻勢に移るチャンス…!
「最後に世界を手に入れるのは我々第三帝国だっ!!」
男がそう叫ぶと、乾いた発砲音が4発。
そこに残ったのは、首から下の身体のみ。
「ひ…人を…」
「なんじゃ貴様、この程度世界の今何処でも起きとることよ。」
やっぱり世界大戦中ね…
人殺しに戸惑いが無い。
「腑抜けよの。それが貴様のマスターか?貴様には荷が重かろう。」
不味い、奏丈が狙われて…!
刀は無い、武器になりそうな物もない、どうやって…!
「ボケっとしてんじゃないって!」
「…間一髪、だな。」
「マスター!」
「沖田ちゃん、後ろだ!」
背中を見せたタイミングで奇襲…
武人の誇りも無いのかしら…?あの英霊…
「人殺しは得意でも、守るのは不得手か。」
「「…黙れ。(弓兵が)」」
今の内に後退…!
モタモタしてると殺られる…!
「くそっ、何なんだよ…昨日まで普通に家族と飯食って奏津と学校行ってダチと遊んでて…それがいきなりこんな所に飛ばされて…」
心情察するわ、奏丈。
私だって正直同意見だもの。
けれど…この世界は諸行無常の真っ只中、愚痴は言ってられないわ。
「「ねぇ。」」
「これが聖杯戦争よ!巻き込まれたとはいえこうなった以上、アンタにも戦ってもらうからね!」
「現実を見なさい奏丈!ここは令和の世界じゃない、昭和の、殺し殺され合う世界よ!」
「聖杯戦争って何…?」
「だぁもう面倒くさいなぁっ!!」
「「要はサーヴァント(英霊)を使って最後の一人になるまで争う、魔術師同士の殺し合いよ!」」
やれやれ、手の掛かるマスター達だ。
さて、沖田ちゃんと迎撃を迎え撃つとしますか!
「斎藤さん!零れ弾お願いします!」
「任された!」
クッソ、あの沖田ちゃんが取り零すとかどんだけ展開出来るんだあの銃…!
あれだと沖田ちゃんも長くはもたなくなる…!
(斎藤さん、聞こえますか!?)
(勿論だ!というか念話してる場合じゃないよね沖田ちゃん!)
(…一発一発が恐ろしく重いです。ですが…)
(…敵さんもそれを分かっててわざと弾を散らしてくるってか。)
(ええ。これでは距離が縮まらないです。)
(沖田ちゃん、俺が見る限りあの火縄銃、寸毫だが射撃後から再展開までに隙が生じる。)
(それは私も思ってました。ですのでそこを突き、一気に懐へ入り込みます。ついてきてください!)
(てめぇの剣に合わせられる奴がどこにいるってんだ!まァ合わせるがな!)
「獲った!」
「沖田ちゃん!右だ!」
直感が告げる。
隠蔽されてた火縄銃で狙撃されると。
袈裟斬りに入る前だったのが功を奏したか、身体を捻ってすり抜ける。
結果的に背後に回ったが、沖田ちゃんは数発直撃したみたいだな。
「がっ…」
「うはは!咄嗟に身を捻ったか!しかしまぁ、あんな小細工に頼るようでは貴様らの剣技も底が知れるわ。」
このサーヴァント…強い。
自在に火縄銃を展開出来るとあっちゃあな…
「鉄砲隊構えい。ーー放て。」
やべぇ、これじゃあ後ろのマスター達に直撃だーー!
後ろへ来て3両目だろうか。
息を切らしながら走ってると後ろから物凄い衝撃波が飛んできた。
咄嗟に遮蔽物となりそうな場所に身を隠し、回避する。
それと同時に、セイバーが吹っ飛んできた。
「「だ、大丈夫!?」」
「マスター!危険です!頭を下げて!」
「僕は直撃も貰ってないし何とか。」
「私は平気です。霊体なので魔力で回復します。」
「セイバー!何か打つ手は無いの?」
「一つありますが…結構な博打になります。」
「…ここは沖田ちゃんに任せよう。それが一番だ。」
「いいからやりなさい!このままじゃ列車ごとやられちゃうわ!」
「…失礼ですが貴方は私のマスターではありません。私は私のマスターに従うのみです。」
「…え、えっ!?俺!?」
「「他に誰かいるってのよ!」」
「出てこいセイバー!隠れても無駄じゃ!なんなら列車ごと吹き飛ばしてもよいのだぞ!」
「マスター、時間がありません。ここは私にお任せいただけますか」
「…っ、はっ…はい!とにかく頼みます!」
「はい。マスター」
次回、決着です。
お楽しみに!