氷月とほむらは洗脳されながらも、科学王国にしっかり溶け込んでいた。
「スイカ。小麦粉のラーメンもいいけど、捕虜だったときに差し入れてくれた“ねこじゃらしラーメン”も食べたい。懐かしい」
「わかったんだよ!」
「金狼くん、足りない薬草があったら言ってください。あとで採取に行ってきます」
「そうか。感謝する」
もはやWHYだよ。それにHOW。何をどう洗脳したらこんなきれいな氷月とほむらになるんですかガイア?
クーデターを起こした2人が国民のみんなと何気ない会話もそつなくこなしている。確かに陽たちは「おっおう」と2人の変化に慣れていない反応を見せているけれど、起きているのはすごい変化だ。
そんな2人に見送られて、僕はいよいよ出発する。大海原へと!
と、言っても旅立ちじゃない。モーターボートを使ったオイルテストだ。僕らが採掘した石油が燃料として使い物になるかどうかの。
そしてもう1つの大実験がアナログGPSだ。電波の強弱と方向から現在地を計算で割り出す。ソナーマンの僕の耳頼みの手作り感満載GPSだ。
だがそこで事件が起きた。
何処からともなく大容量の電波が放出されて、僕らの周波数の電波が観測できなくなってしまった。しかもモールス信号の要領で一定のリズムを刻みながら・・・
WHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHY
と。
すぐさま戦略会議室が設けられ、その場にいた千空・クロム・僕・龍水・ゲン、そして司とガイアが集まった。
明らかに意図的に僕らの電波を妨害してきた人工的電波の発生。
こちらからの通信には応答も無く、信号が打ち切られたことから、少なくとも好意的な意図は感じられない、仮称:ホワイマンによる異常事態。
千空は人類石化の黒幕からのメッセージだと推理。
敵前提で考え、龍水はホワイマンは自身もまた石化させてこの石の時代に蘇ったのではないかと推測した。
「でだ。専門家先生のおありがてぇご意見を伺いたいわけだが・・・」
ホワイマンが何らかの敵対意思を以って人類を滅ぼし、今また僕らを滅ぼそうというのであればそれは明らかな戦争だ。
となれば唯一の実戦経験者、軍人ガイアの意見が重要になってくる。
だがガイアは苦い顔をしていた。
「一言で言えば、私にはわからん」
呆気ない完敗宣言に司やゲンは驚いた表情を見せた。
「プロから見て何も感じ取れないというのか?」
「その通りだ。自慢ではないが、私はかつて戦争において敵の策を読み取る術に長けていたと自負している。事実、イラク戦争においても部下を1人も失っていない」
「そんな自信マンでも分からねぇってのか?」
「ああ。定石から外れすぎているのだホワイマンという奴は。何故わざわざあからさまな攻撃を仕掛けてきた? 正体不明のアドバンテージをみすみす放棄するなど素人戦術にもほどがある」
吐き捨てるように語ったガイアに、司はウムと顎に手を置いて尋ねた。
「それでも強引にホワイマンの意図を読み取るとすれば。ノムラ、もしキミがホワイマンの立場であったらどうだい?」
「・・・3700年前、石化によって人類を滅ぼしたと満足して監視を怠った。それが今になって強い電波を発する文明を手にした人間が現れた。WHY、石化が通用しないのか。ならば今度こそ別の手段で滅ぼしてやろう」
ガイアの言葉に、ゲンが恐る恐る「別の手段?」と尋ねた。
「圧倒的火力だろうな。我々を侮りすぎて余りあるほどの圧倒的な威力だ。核兵器VS竹やりほどのレベル差で考えてみれくれ。我々でも油断くらいするだろう?」
不敵に笑うガイアに、僕は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
「っつうことは、次の攻撃に石化は使ってこねぇってことか?」
クロムの冷静な分析にガイアは「そういうことだな。良い読みだ」と平然とした様子で答えた。
「さすが軍人さん。こんだけ絶望的なのにジーマーで余裕だね~」
「私がホワイマンだったら“普通はこうする”の考察だ。そもそも普通じゃないと言っただろう? 前提が破綻しているから参考にはしないでくれ。だが1つだけ言えることは、しばらくはホワイマン侵攻の恐れは無いだろう。本当に石化を使うつもりなら、WHYも無しに発動しているはずだ。今こうして話し合いをする間も与えずに。私はそう思う」
「まぁ石化に準備がかかってますっつう可能性もあるが、どのみち俺らに手出しできねぇレベルなら諦めるしかねぇ。手出しできるレベルなら好都合。逆に考えりゃこちとら手がかりゼロだったとこに、向こうから絡んできてくださったんだ。少なくとも探す相手ができた。反撃猶予と石化の謎解明にジワ迫りできるチャンスだ」
「その通りだ」とガイアが合点した千空のポジティブな考え方に、僕は苦笑いしかできなかった。
窮地においても最後まであきらめない。細く残った勝機の意図を見逃さない。それこそが科学王国の強さであり、司帝国を破った最強の武器なんだろう。
ただそれでも戦況は大いにコチラ不利なのは変わらない。
「攻めて来ないにせよ最高にキツイですね。見えない敵が相手だと」
僕の呟きに千空は「それだ!」とテンションを上げたかと思うと、速攻でクラフトを開始した。
三角フラスコに閃亜鉛鉱をまぶしてブラウン管を作り、水晶の板を挟んで電波のアンテナと繋げれば・・・
「見えない敵が見える科学の眼。レーダーの爆誕だ」
しかもアンテナの代わりにマイクを取り付ければソナー化も可能の優れものだ。
いや、今までホワイマンという絶望的脅威の出現に戦々恐々とした雰囲気だったのに、我らがリーダーはわずかその日のうちに人類最大の武器である情報通信の新兵器を作ってしまった。
「とはいえホワイマンの火力っつうのが石化とは限らねぇ」
「うん。白兵戦の実力行使の可能性もあるってことだね」
その夜、ソナーで大量ゲットした魚の料理に舌鼓を打ちながら、僕らはたき火を囲んで作戦会議の再開をした。科学王国メンバー全員での話し合いだ。
(氷月やほむらは「囚人は檻に戻るべきです」と言って暗くなる前に牢にINだ)
「ハン。直接戦闘であるならば我々には司という霊長類最強の高校生がいるではないか。それに戦闘訓練を積めば私たちもまた軍隊と化すぞ」
腕まくりしてやる気を見せたコハクは、その横で「よっ。頼りにしてるぜゴリラチーム」と余計な一言を加えたクロムの頭にタンコブを増産していた。
「でもさ~、そもそもその時のホワイマンの戦力がどの程度か分からないよね~。いやジーマーで数の暴力で攻め込まれたら、戦闘員100人くらいしかいない俺らはバイヤーでしょ」
ゲンの言う通り。人=力は戦争においても言える話。
戦士が欲しい。司に並ぶくらいの強い男たちが。
「司先生にガイア先生。バトルチームの心当たりは無ぇのか?」
千空の問いに司やガイアだけでなく、復活者の多くを占める格闘技マニアがニヤリと笑みを浮かべた。
「みんなで選ぼう地球防衛軍というわけだな。話の肴に面白いじゃないか」
※次回、刃牙ネタ回になります。グラップラー刃牙シリーズ未履修の方は置いてけぼりになりますので、あらかじめご了承ください
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