嵐の中、宝島に到着したペルセウス号。
偵察隊は少数精鋭の4人組。プラチナを判別できる千空、その護衛&視力のコハク、現地人との交渉役ゲン、唯一の現地人の名無しことソユーズだ。
僕やガイアも同行しておきたかったけど、島に近づいた時に1つ気になることがあった。
それは島の岩礁を避けて船を進めた時にソナーが捉えた妙な反応。
この島特有の地形なのかもしれないが、それにしては自然な潮の流れが作った反響とは異質な感じがした。
「どういう異質さだ?」
「はい。通常であれば岩礁は潮に削られて丸くなります。ですがこの反響は極端な凹凸のある波形です。それが岸の周りにびっしりと」
「防衛用の逆茂木か? いや、海中に設置する意味がない。現に海岸線は手つかずか・・・誰かに確認に向かわせよう」
ガイアの指示に真っ先に飛び出したのは銀狼だった。
「やる気十分」と褒めていたガイアだったけど、あれは嵐のせいで汚れた甲板掃除が嫌で逃げ出したんだと思う。
だけど、そんな銀狼がもたらした報せに僕は戦慄した。
海底にあったのは大量の石像。
時系列が合わない。百物語に伝わる千空の父親の話では、この島は人類石化時に無人島だったはずだ。
「いや、まさか・・・な」
ガイアは冷汗を流しながら、司の元へ走った。
「どうしたんだいノムラ」
「皆、警戒態勢を取れ。司、例の威嚇用の剣を持ち、私の後方を見張れ。奇襲に備えよ」
ガイアがテキパキと指示をしていく中、彼はふと海岸の方を振り返った。
龍水もまたその存在に気付き、そのおかげで僕も辛うじて反応ができた。
いや、反応は十分に間に合ったとは言えなかった。
おそらく現地人であろうその少女は、何かロープを投げ込んできた。
形状から判断するに投擲武器・・・手榴弾の類か。
その時、ガイアがマストを駆け上る音が聞こえた。
例の牽制用の剣を手に、その投擲武器を迎え撃つつもりだろう。
通常であれば爆撃に対して退避を選択するべきだが、甲板の仲間達が命令に反応できる可能性は低い。犠牲を最も少なくできる方法をガイアは選んだのだと僕は理解した。
だけど、その剣の切っ先が武器に届く直前、その異変は起こっていた。
“何か”から突如として光が放たれたのだ。
見たことのない光に包まれたガイアは急に失速した。
「ガイア!?」
その光はガイアを捉えたまま僕らのほうにも迫った。
早いとは言えないが、走って逃げられるような速度ではない。
龍水は咄嗟にスイカを遠くに蹴り飛ばして避難させていた。
司はこの投擲のあった岸の対岸を警戒していた反応が遅れた。
僕もまた、この光に成す術がなかった。
そして光は全てを通り越していき・・・
僕らの意識は闇の中に消えていった。
まるで遥か昔、3700年前の、あの時の、人類が石化した時のように・・・
それからどれだけの時間が経過したかわからない。
だけど心の中で信じていた。
千空たちが助けてくれると。
確信していた。
そしてその確信は突如として現実になる。
「いやぁ安定と信頼の光景だね」
目覚めた場所は夜の洞窟だった。
千空もいる。ゲンもいる。ソユーズもいる。クロムもスイカも龍水も杠も。
詳しい話は聞けていないけど、どうやら現地人は厄介な敵のようだ。実際、人類石化の手段を持っているんだから間違いなく。
「そういえばガイアは? 敵がいるなら、僕なんかより早く起こすべきじゃないのかい?」
僕の問いに、みんな苦い顔をして石像の山を指さした。
そこに並んでいるのは僕らの仲間達。バラバラだったみたいだけど、もちろん杠の手で修復済みだ。
そんな中に、司とガイアの石像もあった。
が・・・
「な、なるほどね」
2人の石像は共に右手が無い状態だった。
どうやら敵は戦利品として、例のド派手ソードを回収していった。
その時に武器をしっかりと握っていた2人の手は丸ごと装飾品の一部と認識されてしまったらしい。武器はどうでもいいが、手が敵本陣にある状態なのだ。
「これって、もしかしてだけどこの状態で復活液かけたら・・・」
「ああ。右手部欠損で、手首に綺麗な断端形成された状態で復活だろうな」
まさか派手な武器が威嚇どころか魅力になってしまったなんて・・・完璧に狙いが裏目に出てしまった。
アチャーと頭を抱えるしかないこの現状だけど、後悔したって何が変わるわけでもない。
司とガイア抜きで戦うしかないんだ。
その直後、誰かが洞窟に泳いでくる音が聞こえた。
それは島民の中で唯一の協力者・アマリリスだった。
彼女がもたらしてくれた情報は、僕らの心を酷く動揺させた。
敵陣に潜入していったコハクと銀狼が、石化させられてしまったというのだ。
さらに島の頭首もまた石化させられており、その顔がソユーズの顔に似ていたということ。
でも考えようによっては、これは決して悪い情報じゃない。
コハクと銀狼は石化している以上、復活液で元に戻すことができる。現状、無事が確保されていると言ってもいい。
それに頭首の黙殺という島の状況は、情勢の不安定さを物語っている。これもまた僕らにとって敵に付け入るチャンスになる。
そして朗報もある。敵の石化武器は1つしかないことだ。
さらに石化武器を投げる担当のキリサメという少女は、島の実権のすり替わりを知らないということ・・・・
「ん~そうなんだけどさ。良く分かったね。なんで?」
僕の耳にも捉えることができなかったその者の声に、僕は戦慄を覚えた。
速攻、その声の主・敵の最強戦士・モズの一撃が大樹を吹き飛ばした。あの司の一撃すらも耐えきったと聞いている大樹を、だ。
最悪の状況だった。今いるメンバーにバトル要員はいない。
だけど、計略と篭絡のプロはいる。
現人類最強の口先ペラペラ男、あさぎりゲンだ。
僕らを皆殺しにするつもりだったモズの思惑を、口八丁手八丁で「手を組む条件の話」にすり替えてくれた。
月の綺麗な夜の、永遠にも感じるほどの長い戦いだった。
本当にギリギリの綱渡りだった。
科学王国再集結直後の全滅は避けられたわけだけど、それでも依然として危機的な状況にあることには変わりない。
人類石化と同じ現象を起こす石化装置。
それを敵から奪うために僕らと一時的な協力関係を結ぶことができたモズだけど、その魂胆を推し量れば、用済みになった瞬間に僕らを皆殺しにするだろう。
モズに対抗する武力が必要なのは明白。
どうするべきか・・・
僕の視線は、復活には腕一本の犠牲という代償の伴う、司とガイアに向いていた。
もし復活者を選定できるなら、どういう人材を優先的に復活させたいですか?
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