司・氷月に対抗する戦力。自衛隊最強の男、ガイア。
その石像を掘り起こすことに成功した時、僕は歓喜の声を押し殺すことができなかった。
はじめましてですね、Mrガイア。
遠くで一度見たことがあるだけだったけど、背丈はかなり小柄だ。幼い顔つき、小さな目、髪の毛が一本も無い丸坊主。
一抹の不安がよぎる。本当にこの人がガイアなのか?
自信が無い。
司が選定している他の復活候補者の石像のほうがたくましい体つきをしている。
正直言って、そこらの中学生を間違えて掘り起こしてしまった可能性もある。
だからと言って全ての自衛官の石像を掘り起こしていたら何十年もかかる話。
賭けるしかない。
もし中学生だったらそれはそれで、石化から救ってあげることは正しいことだと割り切って考えよう。
こうして僕は『頼りになる新人自衛官』として司にガイアを紹介した。
「うん。たしかに千空の先制攻撃に備える警備をキミ1人に押し付けるのはよくないね」
司には警備兵の増員を理由に、石化解除の優先を交渉してみた。
司は話の通じない人間じゃない。
カリスマ性もあるし物腰も穏やかで、周りの意見をしっかりと採用してくれる。
上に立つ人間としてはかなり理想的だ。殺人に目をつむれば、このまま彼が王として居続けてくれる道が人類にとって最適なのかもしれない。
「では羽京、彼に復活液を」
交渉はスムーズに成立した。
僕がガイアだと願っている石像に服が着せられ、貴重な復活液が注がれる。
バリバリと表面の石の膜が剥がれ、中から人間が姿を現した。
「・・・ここは」
目を覚ました小柄な男は、オドオドとした様子で周りを見回し始めた。
僕は心臓に冷たい水を流し込まれたような感覚に襲われた。
人違いだ。こんな怯えた少年が、最強の軍人なわけがない。
「心配しなくていい。うん。詳しいことはキミの“上官”から聞くといいよ。そういえばキミの名は?」
優しく語りかける司に、少年はすこしビクビクしながらも“上官”という言葉に一切の疑問も見せずに小さく返事をした。
「・・・ノムラ、です」
やってしまった。ガイアではなかった。
僕は落胆の色をどうにか押し込め、ノムラと名乗る少年の元に向かった。
いや、“少年兵”として接しなければならない彼の元に、だ。
「ありがとう司。あとは僕に任せてくれないか。ノムラもここに馴染むのは大変だと思うけど、これからよろしくね」
僕の呼びかけに彼は「あ、ハイ」と頼りなさげに答えながらついてきてくれた。
本陣からトボトボと歩いて離れていく僕らの背に、司や彼の側近たち、氷月の視線が刺さる。
「あんなヒョロいガキに貴重な復活液を使っちまってよかったんですか?」
「正直僕も、これは失敗だと思うよ。見るからにちゃんとしてない」
「そう言わないであげてくれ。俺たちは助け合って生きていかなきゃいけないんだ」
居たたまれない気持ちで、持ち場にしている森に入っていく僕と少年。
すると少年は周りをキョロキョロと見回して、あるところでピタリと足を止めた。
「あ、あの。羽京さん?」
「なんだいノムラくん」
振り返って彼を見ると、その真っ直ぐと前を見た顔はどこか遠くを見ているような近くを見ているような不思議な表情をしていた。
そしてその丸い目を、まるで獲物を狙う猛獣のように細くして僕を睨み・・・
「気をつけい!!!」
空気がビリビリと震えた。
僕は反射的に背筋を伸ばし、今までの人生で一番に気を使った「気をつけ」の姿勢に入り、遅れてようやく彼が叫んだということを認識できた。
そして気付いた。
彼がガイアだ。
臆病で大人しい少年に擬態していたのだ。
「状況報告ッ! 部隊生存者は何名だ!」
ガイアの威圧に僕はますます背筋をピンと真っ直ぐに伸ばし、口早に報告を開始した。
「ハッ! 自分の他、全隊員および全国民は3700年前に石化。現時刻、石化より復活した人間による自治組織が形成されております!」
脳が自衛隊の頃の張りつめた空気を思い起こしながらフル回転している。
口が開くスピードよりも速く脳を開かなければ無礼が生じる。
それだけは何としても避けなければと、体中の血管が開いて走る。
僕はそれから報告を続けた。
人類復活の経緯、この国の構成、詳細不明の外組織の存在を。
「報告御苦労。休んでくれ」
「ハッ!」
足を開く位置、手の位置に手の形も決まった姿勢をとり、僕はガイアの次の言葉を待った。
ガイアはしばらく天を見上げ、それから静かに口を開いた。
「羽京隊員・・・いや、今となっては隊も階級も関係ないな。楽にしてくれ」
楽にしろと言われても恐縮せずにはいられない。
そんな僕を見かねたようにガイアは「いやホントに楽にしろって」とボヤいた。
「報告から察するにこの人類再興の最前線。ここに来て日和見ができぬと、この私を牽制のために呼び寄せたといったところか。キミは氷月に謀反の恐れありと推理している。違うか?」
「その通りであります」
僕は報告の中で客観的な事実だけしか話しておらず、氷月についての推理には一切触れていなかった。
それなのに、復活から1時間も経っていないこの状況でここまで意識が回るとは。状況判断能力に恐れ入る。さすが疑いようのない最強の軍人だ。
「そうか・・・ともあれキミはベストを尽くした。よくやってくれた」
ガイアは首を横に振りながら、腰に手を当てて僕を真っ直ぐに見据えた。
「強制はしない。私の指揮下に入ってくれ。そうすれば約束しよう」
「約束、ですか?」
恐る恐る聞いた僕の言葉に、ガイアは猛獣を彷彿とさせる鋭い笑みをニヤリと浮かべた。
「この私がいる限り、人類は二度と滅びない」
力強さのある笑みだった。
だけど、安心感というものを抱かせてはくれない野生的な笑みを浮かべる軍人を前に、僕は笑顔で返事をすることができなかった。
僕は本当に、蘇らせる人を間違えていなかったのだろうか?
グラップラー刃牙を読んだことがありますか?
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どんな作品か知らない
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内容は知っているけど読んだことはない
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読んだことはあるけど、ガイアは印象にない
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ガイアのことはよく知っている