敵はホワイマンだけじゃないかもしれない。
未確定の第三勢力、装置マン(ガイア命名)にも備える必要が出てきた。
といっても今の僕らにできることは1つだけ。確定している敵に備えること。
ホワイマンのいる月に攻め込むことだけだ。
じゃあ月にどうやって行くかとなれば、ロケット・宇宙船を作るしかない。
科学王国お馴染みのビックリ原始時代の発想クラフトだ。
日本で100億%採れない素材は世界中からかき集めなければならない。
そして必要なのは素材だけじゃない。マンパワー、人手が必要だ。
ついに人類70億人を叩き起こす時が来た。
まずはそのために必要な復活液の材料となる大量のアルコール。最初の目的地はアルコール抽出の効率が最も良いイエローデントコーンの産地・アメリカだ。
思えば僕とガイアが最初に千空たち科学王国と交渉した時、彼らはアメリカが復活したと嘘をついて司帝国を篭絡しようとしていた。
でも今、それが嘘じゃなくなる。
僕らの手で本当にアメリカを復活させる日が来るんだ。
と言って余裕こいている暇は無い。なんせ冬になったらコーンは枯れてしまう。VSホワイマンの貴重な日々を越冬のために無駄にしてしまうのは非効率的だ。
だから僕らは宝島からの凱旋もそこそこに大忙しだ。
ちなみにこの処女航海からの帰還で、科学王国にいくつか変化が起きていた。
まず大きいのがソユーズの離脱だ。宝島の石化王国を本格的に復興させて、過去に石化させられた人たちを全員復活させて、頭首としての責任を取るためだ。
(復活液の作り方は見て覚えたらしい。記憶力がすごすぎる)
そのソユーズからの派遣でキリサメが僕らに同行してくれることになった。投擲に長けているし、コハクと互角に戦えるくらい強い戦士だから頼もしい。
そして復活者の松風も僕らに同行してくれることになった。経緯が少し妙だけど、仕えるべき頭首の面影のある銀狼の護衛の形らしい。(銀狼は調子こきレベル2に上っていた)
そしてもう1人。戦力増強があった。
それは僕らの敵だったモズだ。
「問題あるまい。氷月と同様に徹底的に折っておいた」
ガイアの一存で復活液を浴びることになったモズは、復活して1秒でガイアの顔を見て「うわぁああああ」と情けない悲鳴を上げて後ずさりした。
「ね~ガイアちゃん、いくら心入れ替え下ごしらえしたからってジーマーで大丈夫なの?」
「次の出航までに矯正しておく。問題ない」
僕らはみんなゲンと同じ意見だったけど、ガイアが「問題ない」と言っているから折れるしかなかった。2回言ったから。
でも酔狂でモズを戦力としてカウントさせたわけじゃないのは、ガイアのどこか遠くを見るような眼からなんとなく理解できた。
そしていざ出航のメンバー発表の日。
今回は宝島のような近海じゃない。ガッツリ数か月から数年単位の大冒険になる。
本土に残るメンバーにも前回以上に重要な役割があるし、長い航海だからこそパワーチームだけじゃなくて心の栄養・気分転換を提供するエンタメチームも加わることになる。
正確に言えば、石神村のコクヨウや何人かは本土の皆をまとめ上げる役割のために今回は不参加になる。
逆に記者の南ちゃんや漫画家の基本さん、あとはスイカが正式に参加メンバーの一員になった。
そんな中、誰もが認める戦闘総司令官・ガイアが静かに口を開いた。
「残念ながら私は今回の航海、不参加だ。諸君らの健闘を祈る」
「え、えぇ!? ノムラが!?」
「ガイア!? 本当ですか!」
突然の参加辞退の意向に僕らは酷く驚いた。
千空にはその旨が先に伝えられていたらしいけど、一番身近な存在だと思っていた僕にもその事実は伝わっていなかった。
「当たり前であろう? 隻腕の私では戦闘に役立ったとしても、採掘や船上の作業には足手まといだ。地球上に我々と敵対する人類が残っていない以上、次の戦闘機会はVSホワイマン・装置マン戦だけ。それまでお役御免の私は冒険チームではなく人類復興チームに配属されるべきだ」
ガイアの言葉に僕は胃の奥が重く感じられた。
彼を隻腕にしたのは僕だから。
「羽京、たしかに私が目覚めずとも科学王国は石化王国に勝利していたかもしれない。だがそんな仮定は無意味。そしてキミはベストを尽くした。その決定を私は今でも尊重している」
ガイアはそう言って僕の肩にコツンと拳をついてくれた。
「ありがとうございます」
気持ちが自然と漏れていた。
それに心か実感した。ガイアを蘇らせてよかった。
そしていよいよその日が来た。
いざアメリカ大陸へ、ペルセウス号の太平洋横断の出航日。
銀狼が意欲を見せながらも急な腹痛に襲われて乗船できないハプニングがあったけど、そこは松風が運んでくれたから前回同様に間に合った。本当によかった。
「ではガイア、行ってまいります」
「ああ。羽京、必ず帰ってこい。私はゴジラやキングギドラだろうが迎え撃てる地球防衛軍を叩き起こして諸君らを待つ」
いよいよ船が出航する。これで次に会えるのは何年後か・・・
「羽京!」
離岸したペルセウス号にガイアの声が響いた。帆までビリビリと震える大声だ。
その直後、甲板の僕に向かって岸から何かが投げられた。
それはガイアがいつも身につけていたバンダナだった。
「私の代わりに連れて行ってやってくれ」
映画で見たことがある光景だ。それが今、僕の元に。
使い古されたシーンなのに胸が高鳴る。
最高の自衛官が僕に託してくれている。
僕が無意識にとっていたのは敬礼だった。
こうして、石の世界で出会った僕らとガイアの旅はここで一旦の別行動となった。
これは別れじゃない。
それぞれが役割を果たす時間にたどり着いただけだ。
そして再集結の日を待ち侘びるだけ。
この先にどんな困難が待ち構えていようとも。
= 完 =
貴方が推理するホワイマンの正体は?
-
宇宙人
-
機械生命体
-
某国の科学兵器
-
装置マンと同一人物
-
千空の双子
-
千空のドッペルゲンガー
-
タイムスリップしてきた千空
-
千空の実の親
-
ISSのレイ
-
厚切りジェイソン
-
その他