ギリギリまで頑張って ギリギリまで踏ん張って   作:三柱 努

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環境利用闘法

伝説の自衛隊員。最強の軍人と呼び声高い『超軍人ガイア』を石化から復活させた。

ガイアは現状のこの国の問題をすぐに察してくれて、解決を約束してくれた。

だけどその表情はまるで獲物を狙う野生の獣。

 

僕は失念していた。都合よく認識を忘れていたのかもしれない。

自衛隊員だからといって精励潔白の聖人ばかりとは限らないのは自分でもよく知っている。

最高の自衛隊員ではない。最強の軍人なのだ。

下手をすれば司や氷月よりも厄介な存在を・・・呼び起こしてしまったのかも・・・

 

 

「ところで羽京。例の人類救世主、科学少年の千空というのはどういう男か、キミは知っているのか?」

「いいえ自分は一度も会っていません。その千空の元に寝返った男なら分かりますが」

かつて氷月よりも先に偵察に出向き、千空生存を隠匿した上でこの国を裏切った男がいた。

「あさぎりゲン。テレビでも有名だったメンタリストです」

「知らんな」

キョトンとした顔を見せるガイア。一般人に対しては高い知名度を誇るゲンであるが、さすがに戦場に届くような名前ではない。ガイアが僕らとは違いすぎる世界に住んでいた証拠だろう。

「息をするように口から嘘を吐く蝙蝠男。そういう評価があります。自分としても掴みどころのない利己的な人間だという認識です」

「そういう人間が惹かれるか・・・」

ガイアは思考をまとめるようにウームと唸りはじめた。利己的な男が裏切ったという事実から何を推理するのだろうか。

 

「そういえば、公言はできませんが千空の友人が2人この国にいます」

「ん? どういうことだ? 裏切り者と一緒に亡命していないのか?」

そう疑問を口にしたガイアに、僕は経緯を説明した。

千空の友人であり、彼が2番目と4番目に復活させた人類(3番目は司)。

 

大樹と杠。

 

およそ1年前、司は千空を殺害した。はずだった。

千空を埋葬した2人は失意のままに司の元に戻って、この国の礎を築くのに尽力し、現在に至るというのが定説であった。

詳細は不明だが結果を見るに殺害は未遂に終わり、2人は千空を匿いながら内通者としてこの国に残っているということだ。

 

「会って話を聞きたいところだが、それも叶わないのだろう?」

「2人は泳がされています。連絡手段の無い以上、このまま千空生存を知らせずに監視だけ続けるべきだと司が判断しています。ですので、今日目覚めたばかりのノムラさんが2人と接触することは、今後の自分たちの身の振り方にも影響が出るかと」

「その通りだ。成程ただの肉ダルマではないということか司という王は。これは面白い」

面白がられると怖いんだけど・・・と言いたくなる口を僕はギュッと閉じた。

 

「ちなみにこの2人はまさに善良な高校生という印象です。大樹は誠実で単純な体力馬鹿で、体力仕事担当として重宝されています。杠は明るい女の子で手先が器用で・・・復活者用の服を作る仕事を任されています」

羽京は迷った。

ガイアには伝えていないが、杠に関しては内通者確定の情報がある。

 

杠は服を作り終えた残りの時間を利用し、司が破壊した石像を繋ぎ合わせて修復作業を行っているのだ。

無意味な作業をするほど愚かな少女ではないはずだ。

つまり彼女は国の方針に反して、この窮地においてなお・・・

人類全てを救うつもりでいる。

そしてその信念はおそらく千空も・・・こればかりは確証は無いが。

 

 

「状況は把握した。今後の身の振り方であるが、私はキミの部下・ノムラとして振舞う。目立った行動は・・・」

ガイアが口を止めたその時、僕の耳にその“音”が届いた。

激しい獣の息づかい。荒く木枝を荒らしながら突き進む音。そこから判断できる大きさと速度、その進行方向・・・

集落近くにある葡萄の群生地に大型動物が迫っている音。今の時間、復活液の材料を採りに何人かが行っているはずだ。

 

いち早く反応したのはガイアだった。

僕が駆け出すよりも早く、その身が木々の中へと飛び込んでいた。さすが反応が早い。

その背に感心してはいられないと、遅れながら僕も音の方へと走った。

 

 

「く、熊!」「まずい、逃げろ!」

人々の怯え惑う声が聞こえる。

間に合うか・・・

 

 

 

木々を払い、葉をかき分け、僕が見た光景は凄惨たるものであった。

 

熊は仰向けに倒れていた。その首の後ろに根本から折れた木の鋭利な先が突き刺さっている。

脚には植物の蔓が巻き付いていた。

鼻先には鋭利な切り傷が真一文字につけられ、近くには血の付いた尖った枝が落ちている。

「早かったじゃないか、羽京」

熊の死体の傍らに立つガイアには汗一つ、返り血一つ無い。

だが、その立ち姿が全てを物語っていた。

 

熊は彼に殺されたのだ。

僕の視界から外れたわずか数十秒の間に、使われたすべての凶器は用意されたのだろう。

土地勘も無い場所で、全て自然に自生する道具で。

 

 

「そして丁度良いところに来てくれた。貸してくれ」

そう言うとガイアは僕の背に手を伸ばし、背負った矢を1本取っておもむろに熊の右目に突き刺した。

「なっ何を!?」

熊の死体をいたぶる行為に、僕は血の気が引けた。

「決まっているだろう。私の上官であるキミがこの熊を射殺した。その事実を作っているのだ」

ガイアが平然と言ってのけている間に、僕らの背後から叫び声に気付いた仲間の増援の足音が聞こえてきた。

 

 

「羽京、もう来ていたのか。熊は何処だ!? 大丈夫か!」

物々しく粗い石武器を手に駆け付けてくれた仲間たちが、口々に僕らを心配してくれている。

そして誰もが熊の死体を見て大いに驚いた。

「羽京さん、怪我はない? ごめんなさい私たち、怖くて・・・羽京さんが熊をやっつけてくれたの?」

助けを呼びに逃げて行った子たちが僕の無事な姿に半泣きになっている。(この国は誰もが助け合い、人と人とが互いに親身だ。こういう所は旧世界と比べて圧倒的に良い所だと思う)

「ええその通りです。さすが羽京“先輩”です」

「マジか、すげぇぜさすが俺らの3トップ」

ガイアがわざとらしく(聞こえるのは僕だけ)僕を褒める。有無を言わさずに作られた既成事実に流されるしかないと僕は覚悟を決るしかなかった。

 

「で、ところでお前は誰だ?」

ふとガイアの存在に気づいた仲間の声に、ガイアはビシッと足を揃えて敬礼した。

「はい! 先ほど復活させていただき、本日より入隊させていただきますノムラです。よろしくお願いします!」

いかにも入隊したばかりの初々しさあふれる新人を演じるガイアに、仲間達は「ああ、これからよろしくな」と握手で応じた。

これが数秒前に熊を素手スタートで殺した男だとは誰も思うまい。

 

 

 

「大丈夫だったかい?」「見る限りはそのようですね」

大急ぎで駆け付けた司と氷月が、熊の死体を囲んだこの和やかな空気に足を止める。

「ハッハイ! 羽京先輩のおかげで。あとは運が良かっただけですけどね」

恐縮するように背筋を伸ばして報告するガイアに、僕は苦笑いしながら司に全員の無事を報告した。

 

 

 

 

この時、僕は気付いていなかった。

報告の間、氷月が熊の死体に近寄り、その傷痕を眺めていたことを・・・

 

『なんだ、ちゃんとしているじゃないですか・・・ノムラくんは』

 

グラップラー刃牙を読んだことがありますか?

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  • 読んだことはあるけど、ガイアは印象にない
  • ガイアのことはよく知っている
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