復活初日にして熊殺し。
曰く、拾った枝で鼻先を切り裂いて怯ませ、拾った蔓で足を絡めて、膝を蹴り折って後ろ向きに体勢を崩し、倒れ込む前に(太い)細木を蹴り、尖らせた切り株(蹴り株)に突き刺したらしい。
その手柄は全て僕が弓矢でやってのけたと口裏を合わせるよう命じられた。司や氷月に目を付けられないために。
そんな超軍人ガイアは今、僕の部下としてこの国の一員となった。
僕だけが知っているこの人の顔。
自衛隊の厳しい上官としての顔
的確な判断を下す戦略家の顔
そして、熊を瞬殺する最強の軍人の顔
「いやアレは小柄なツキノワグマだ。北海道のヒグマであればさすがに」
そう言って苦笑いしていたガイアに、僕も思わず釣られて笑った、が。
「ナイフが欲しくなっただろうな」
『必要だったと言わないんだ・・・無くても勝てるんだ・・・』
僕は開いた口が塞がらなかった。
司と氷月への対抗策として蘇らせた張本人が今更何を言っているのだという話だが、この人がもし万が一、敵に回ったとしたら・・・考えるだけ恐ろしい。
そもそも彼は掴みどころのない人だ。もちろん嘘つき男のゲンとは違う意味で。
何故なら超軍人ガイアは今、この国にしっかりと馴染んでいるからだ。
「ノムラくん、こっちを手伝ってくれるかい?」
「はい、わかりました」
気弱だけれど人当たりの良い少年。それがこの国のみんながガイアに抱いている印象だ。
積極的に手伝う彼を、その小柄な体格を心配してみんなが手を差し伸べる。その優しさにガイアも遠慮しながらも甘える。みんなに愛されるマスコット的な存在になっていた。
僕の推理だけれど、これは戦場で活動するときに彼が培った仮の姿なんじゃないか。
このくらいの愛想の良さが、例えば敵の陣地に潜入して情報収集をしたり、同じ軍の中で立ち回りやすいのだろう、と。
だけれど、そんなガイアと一緒に行動する僕としては気が休まらない。いつ元の上官モードに戻るかと思うと・・・
「それにしても3700年か」
ポツリとつぶやいたガイア。郷愁の想いに果てているのだろうか?
「ガイアさんもホームシックですか?」
「いや。私は元からジャングルでの活動も多かったからな。今のこの景色はむしろホームだ」
聞いた僕が馬鹿だった。そりゃ今いる人類の中で、この生活に一番適応できているのはガイアを除いたら、千空が潜伏しているという例の原始生活人類の集団くらいだろう。
「・・・いやはや改めて考えると、な」
そう言ったっきりガイアはそれ以上何も語らなかった。
そんなある日の夜、ガイアが一人で茂みの中に姿を消していくのが見えた。
だが僕は耳で聞いていた。その茂みに先に入っていった足音があるのを。
その独特な足運びは、氷月のものだ。
ガイアは前に、こちらからトップ2人に接近するつもりはないと言っていた。
氷月のほうから呼びつけたのか?
不穏な気配を覚えた僕は、息を殺しながら茂みに向けて聞き耳を立てた。
「こんばんはノムラくん」
氷月の声だ。森のざわめきの中に紛れているが、いつ聞いてもどこか冷たさを覚えるあの声は氷月のものに間違いない。
「あ、あの・・・どうしたんですか氷月さん。こんなところに呼び出して」
『司や氷月の前ではオドオドしている気弱なノムラ』を演じているガイアの声もしっかりと聞こえる。
「私の前でそんな“お芝居”は結構ですよ。あの熊の件。羽京くんが目を射抜いたところ、蔦に絡まって倒れたと皆が信じているようですが、私は工作の跡を見逃していません。熊を殺したのはキミですね」
!!??
バレていた!?
まずい。そう直感した。
ガイアの強さを偽ったことが露呈したのが悪いのではない。
それを隠していたことが、僕らに企みがあるのではと勘付かれることが何より悪い。
「何を言っているんですか? たしかに僕も蔦で援護しようとしたけど、うまくいかなくて。うまく足に絡まってくれたのは運が良かっただけです」
ガイアは嘘で押し通そうとしていた。
でも、その応対ではダメなのではないか?
嘘だという前提で指摘してきている相手に、躱そうとする答えは悪手。
氷月の疑念が余計に膨らんで、下手をすれば今後の僕らの立場が危ぶまれる。
「まぁそんなことはどうでもでしょう。それよりキミに話しておきたいことがあります」
氷月はガイアの無言を咎めることなく話を続けた。どういうつもりだ?
「私はですね、この人類石化現象は人類の選別。間引きだったと考えているんです。それをキミにも知ってもらいたい」
氷月はそれだけ言い残し、茂みから去っていった。
間引き・・・それは前に僕も聞いている。司と氷月の共通認識だと。
氷月の意図が掴めない。
何故そんな話をガイアに? そして実力を偽ったことを不問に去っていった?
「羽京、聞こえているな?」
氷月が完全に去った頃、ガイアに呼ばれた僕は急いで彼の元に走った。
「ガイア・・・あなたは・・・僕たちは氷月に疑われているのでしょうか」
月明かりの下で尋ねた僕の方をガイアは向いてくれず、ただ闇夜の中で笑みを浮かべていた。
「何ということはない。我々はこのまま“何事もなかった”ように振舞い続けて問題ない」
ガイアはそれ以上、何も言ってくれなかった。
闇夜の中に消えていく彼の背を、僕は信じていいのだろうか?
そんな不安が僕の心臓に、まるで蛇が絡みついたような気持ち悪さを残したまま日々が過ぎていき・・・
ある月の綺麗な夜
墓の方から何かを叩く音が鳴り響いた
グラップラー刃牙を読んだことがありますか?
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どんな作品か知らない
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内容は知っているけど読んだことはない
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読んだことはあるけど、ガイアは印象にない
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ガイアのことはよく知っている