ギリギリまで頑張って ギリギリまで踏ん張って   作:三柱 努

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戦火の足音

人類石化から3700年、新たな人類史が始まってほんの1年目ではあるが。

この年、新世界最初の戦争が始まろうとしていた。

司陣営と千空陣営の戦い。後に司帝国と科学王国と呼ばれる2つの国の戦い。

その最初の捕虜となった科学王国の少年、クロムは今、帝国の牢屋に閉じ込められている。

閉じ込めたのは僕なんだけど。

 

 

この牢屋は特別で、遠くからでも見つかりやすい場所にある。

それは科学王国がクロムを助けに来るように。彼を撒き餌にして、その牢屋の手前に掘った落とし穴で一網打尽にするためだ。

司は王国の科学力を危惧していた。

おそらく千空は、蒸気機関の車両による突撃で先制攻撃を仕掛けてくるであろうと。

 

 

 

「・・・ですが、さすがに過大評価ですね。たしかにあれだけの落とし穴があれば車でも人でも突撃に対応できますが」

司は心配し過ぎだと苦笑いする僕に、ガイアは『それはどうかな』といった顔を見せた。

「銃に毒ガス。人類史の大量殺戮を合理的に進めてきた“兵器”と名乗れるものを千空は手にしている。たかだか戦火拡大に微々たる貢献しかしてこなかった車両への警戒なんてものは甘すぎると思え」

ガイアの叱咤に、僕の本能は直ちに姿勢を正すように命じた。

言われて見れば僕の考えは甘い。

これは戦争なのだ。冬が明ければ血で血を洗う惨状が始まる戦争。

 

「斥候が既にこちらの本陣に達している。となれば開戦は間近。であれば我々は何をするべきか」

そう言ってガイアが僕を連れだしたのは、クロムを捕らえた茂みのエリアだった。

「あの時、火を起こす時間も音も無く、彼は煙幕を発生させていた。その手段を知れば千空の戦力・科学力の最低限度を推測できる」

茂みの中に入っていったガイアは、焦げた草木の跡を念入りに観察して火元を探していった。

そして、その先にある小さな小物を発見し手に取って掲げた。

「何でしょうか、それは」

「・・・蓄電池だな。触ったらビリッと来た」

そう言うとガイアはニヤァと笑みを浮かべた。僕にはその顔が、小さな子供がイタズラを考えついた無邪気な、それでいて幼いがゆえに残虐性というものを理解できていない笑みに見えた。

そんな気がしたのは、僕の気のせいかもしれないが・・・

 

「司に報告しますか?」

「いいや。落とし物は持ち主に返してやるべきだ。これを手にした原始人のクロムくんがどう出るか。それを確かめたい」

どう出るか・・・ガイアが何を考えているのか僕には想像がつかなかった。

「嬉々として炎色反応を科学の面白さと豪語する純粋な少年が、電気というものをどう扱うかで、千空が彼らの村にどんな思想を浸透させているかが・・・」

「分かるんですか?」

まさか電池一つで千空の村の善悪を判断するというのか?

そんな僕の問いに、ガイアはケロッとした顔で「いや。分かればいいな」と願望程度の話だと語った。

 

 

 

そう言ってガイアが夜中の内にクロムの牢屋に忍び込み、電池を忍ばせた次の日。

事件が起きた。

 

クロムの脱走だ。

堂々と竹で編みこまれた牢を、編み込んだ縄を溶かすことで一気に脱出したのだ。

しかもそれを音も無く実行したことで、多くの看守がいたのにもかかわらず誰も察知することはできなかった。

それだけであれば何とも無いが、最悪な事に彼を追いかけた牢屋の責任者であり、元警官の復活者・陽が追跡中に滝つぼに転落し死亡したのだ。

 

「犠牲者が出るとは・・・」

その報告を聞いたガイアは表情こそ変えていなかったが、その声にはわずかな揺らぎがあった。

彼自身は隠しているつもりだろうが、耳の良い僕だけが彼の困惑の色に気付いた。

 

 

 

そしてそんな最中、僕の耳に信じられない声が聞こえてきた。

墓場のほうから、何人かの仲間たちが歌を歌っているのだ。しかも英語で。

彼らを侮蔑するわけではないが、司が起こしてきた復活者たちはどちらかと言えば体力自慢。ABCですらちゃんと歌いきれるかどうかの彼らが、日本語の歌ではなく英語で歌っている。

明らかに異常。

 

 

「ガイア・・・これは」

「気を付けろ。いよいよ戦争が動き始めるかもしれないぞ」

 

 

グラップラー刃牙を読んだことがありますか?

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  • 読んだことはあるけど、ガイアは印象にない
  • ガイアのことはよく知っている
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