ギリギリまで頑張って ギリギリまで踏ん張って   作:三柱 努

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戦況を決定づける共闘

石の世界で異常事態。英語の歌に呼ばれて来てみれば。

墓場には何人もの仲間たちと、大樹と杠の姿があった。

通常、唐突に新しい文化が芽生えることは無い。異文化との交流でも無い限りは。

 

つまりそれは科学王国。千空陣営との接触を意味する。

クロム以外に村の人間が訪れていない以上、考えられる可能性は通信手段。

電話が完成していたということだ。

クロムと共に潜入していた脳筋が持ってきたのだろう。そしてそれを大樹と杠が受け取った。

そして千空たちの村とのホットラインが完成し、すでに多くの仲間が向こう側に転がってしまっていたようだ。

悔しくないと言えば嘘になる。こちらから接触を計るものが、他事に気を取られているうちに出遅れていたのだから。

 

 

 

「みなさん楽しそうですね。僕らも混ぜて欲しいな。ですよね、羽京先輩」

「えっ? あ、ああ。是非とも聞かせて欲しいな、その電話」

僕とガイアの登場に、この裏切りの場に居合わせた仲間達に緊張が走る。

打ち合わせも無く唐突に割り込んだガイアの独断に、僕はとても緊張した。

 

[どちら様でしょうか? 私はリリアン・ワインバーグです]

電話口から聞こえてきたのは、元の世界での世界的有名女性歌手・リリアンの声。

に、聞こえるゲンの声だ。

なるほどさすがは嘘の達人。リリアンになりすまして、こちらの仲間を篭絡しようということか。

[なるほど、アメリカの復活を装い我らを篭絡しようとしているのか]

ガイアの推理に僕は頷いた。

だがそこで気付いた。仲間たちの前でガイアは“英語”でその推理を披露している。

千空とゲンにだけ伝わるように。

 

[クロムに電池差し入れたのはテメーか?]

向こうも英語で返してきた。周りの仲間たちはチンプンカンプンといった表情で僕とガイアの電話を見守っている。

これは好都合だ。

[勘違いしないでくれ。私たちはキミの味方というわけではない]

[あ゛―、だろうな。じゃなきゃ最初からクロムとっ捕まえねえよ。で、どうすんだ? 司先生に言いつけっか?]

千空という人間がどういう男か、今まで分からなかったが・・・なんとも冷静で頭の切れる男のようだ。

 

このままではガイアが彼らを見限り、司に報告してしまうだろう。その前に僕には確かめておきたいことがあった。彼らの、人類の希望を断つことにならないように。

ガイアに追及されるのを覚悟して、僕は急いで電話に口を挟んだ。

[聞いておきたいことがある。僕は見たんだ。杠が破壊された石像をパズルのように組み立てているのを。キミたちは救おうとしているのか、この状況において。科学の力で!]

僕の必死の問いかけに、ガイアの顔は確かに笑みを浮かべていた。素直な笑みだ。

[ククク。だったらどうする?]

千空は否定しなかった。けれどもそれは謙遜のような、肯定の意味に感じられた。互いの顔の見えない電話越しでありながら、僕の直感がそう告げていた。

千空を信じてもいいかもしれない、と。

 

[ならば条件次第だな。このことを司に内密にしてやる。もしくはキミたちに協力してやってもよい]

ガイアの提言に僕は安心した。ガイアもまた僕と同じ考えを持ってくれていると。

一つビックリしたのが、その交渉に千空が[探り合いは時間のムダだ。結論から言え。なんだ条件っつうのは]と下手すぎる手で即答してきたことだ。

これには僕もガイアも苦笑いするしかなかった。

なるほど千空は嘘つきというよりも効率厨なのだろう。

そして、その隣でゲンが頭を抱えている姿が目に浮かんだ。

 

[では言わせてもらおう。“これ以上、死者を出すな”だ]

ガイアの言葉に、僕は心の中でガッツポーズをした。彼を信じて正解だったと。

[何だテメェは超絶お優しい理想家か?]

[軍人だ。だからこそ“戦後処理”を見据えているだけだ。君らの言う司帝国を殲滅するつもりでない限り、この戦争が終わった後のことを考えれば死者が発生するような戦争であるべきではない。単純な話だ]

その通りだ。

司帝国と科学王国。人類最後の100余名の衝突に遺恨が残ってしまう形をとるつもりならば、僕らが千空に味方するわけにはいかない。

[なるほど問題ねえ。こちとら元から、あわよくば無血開城っつって目標にしてんだ。それが条件に代わっただけだろ]

千空の快諾に、僕は涙が出そうになった。

そして今わかった。『手下たちは千空の謀略で死んだ』という氷月の報告は嘘だ。

 

「ガイア、では我々は」

[そうだな。私が司と氷月を引きつけておく。その間に羽京、キミは千空の強襲に参加せよ]

強襲? 千空の狙いをガイアも僕も聞いていないが・・・

[奇跡の洞窟の奪取がキミたちの戦術目標なのは当然の話だ。復活液を押さえて司の戦力増強を防ぎ、同時に火薬の原料を手に入れることができるからな]

[ククク、さすが軍人様だ。そっちは任せたぜ]

 

 

 

こうして共闘の誓いは交わされた。

奇襲は20秒の勝負。人間が衝動的にパニックになって、抵抗ができなくなる間隙の電撃速攻。

それが最も、死者を出さずに作戦遂行できる可能性のある道だ。

 

 

それはあっという間の出来事であった。

千空が作った科学の戦車(ほとんどこけおどしだが)もさることながら、石神村の人々の戦闘力の高さも相まって、僕らは敵味方にほとんど血が流れることなく洞窟の奪取に成功した。

隠れて司に報告しようとした女性の足元を射て止めたりと、僕も貢献はしたけれど・・・他の仲間が結局は彼女を捕らえていたから、ほとんど不要だった。

うん、少しさみしい。僕いらなかった感が強い。

 

ともあれ奇跡の洞窟制圧をジャスト20秒で死者数ゼロにて達成。

僕らの大勝利だ。

「あ゛~、勝利のパーリーで楽しくウェーイしてえとこだがな、チンタラ遊んでるヒマもねえ。ソッコーで火薬作んぞ」

勝利の余韻に浸ることなく、千空は火薬づくりを開始。

それもそうだ。いくらガイアが足止めをしてくれるとはいえ、早く司や氷月を制する戦力を手に入れなければ・・・

 

「!!??」

その時、僕の耳に届いたその音は、僕の血を一気に凍り付かせた。

どうして―――

 

 

こちらに迫る司と氷月の足音と

もう1人の足音が聞こえてくる!?

 

 

「逃げろ! みんな!」

 

僕の叫びが千空たちに届くよりも早く、電光石火の一撃が僕に襲い掛かった。

その衝撃で、千空の持っていた化学薬品が全て飛散し、火薬を作ることもできなくなってしまった。

そしてその脅威の登場に、その場にいた全ての人間が理解した。

科学王国の勝機が完全に潰えた・・・

 

 

 

 

倒れた僕を見下ろして立つ、たった1人の人間の裏切りによって

 

 

「ど・・・どうしてあなたが“そちら側”に立っているのです・・・・ガイア」

 

 

 

 

グラップラー刃牙を読んだことがありますか?

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  • 読んだことはあるけど、ガイアは印象にない
  • ガイアのことはよく知っている
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