機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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どうもお久しぶりです、作者のichikaです。

この話には前作のインフィニット・ストラトス・アストレイをご覧になっておいた方が分かり易い展開や場面がチラホラ出てきます。
この作品から読み始めても読み易い様に心掛けてはいますが、そういった場面が出てくるかもしれないという事だけを念頭に置いてくだされば私としても助かります。

それでは、お楽しみ下さいませ。


プロローグ
プロローグ


noside

 

それは、哀しき英雄が辿った物語であった・・・。

 

「この世界、任せたぜ・・・。」

 

「兄さん・・・!死ぬな・・・ッ!!」

 

世界を、友を、自身の弟すら欺き、

世界を一つの意思の基、統一へと導いた心優しきライアー(ウソつき)は、

何処か満足げな表情を浮かべながらもその生涯を閉じる。

 

「私はここまでですわ・・・、楯無と、お幸せに・・・。」

 

「逝くな、セシリア・・・!!」

 

「じゃあね・・・、秋良と、幸せにね・・・。」

 

「行かないで・・・、シャルロット・・・ッ!!」

 

彼を愛し、何処までも彼を信じた女達は、

彼を想いながらもその短くも燦然と輝く生涯に幕を閉じた。

 

役目を終え、満足そうに微笑みながらも、

彼等の魂は神の下へと召される、筈だった・・・。

 

―君達はまだ、こっちに来ちゃダメだよ―

 

しかし、彼らの魂は、ある場所へと流れていった・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

ここは、何処だ・・・?

 

意識が僅かに覚醒するが、

瞼を開け、周囲を確認する事すら出来ない。

 

何も感じない・・・、音も、気配も・・・。

 

形容するならば、無の世界といった方が正しい・・・。

 

俺はどうなった・・・、世界は、どうなった・・・。

 

セシリアは・・・、シャルは・・・。

 

考えようとしても思考が回らない・・・、

考える度に意識が覚醒から遠退いて行くのがハッキリ分かった・・・。

 

だが、それでも俺は虚空に向けて手を伸ばす、

誰かが掴んでくれる事を期待している訳じゃないけどな・・・。

 

「セシリア・・・、シャル・・・。」

 

お前達は、今、どこにいるんだ・・・?

頼むよ・・・、俺を・・・、俺を独りにしないでくれ・・・。

 

そこで、俺の意識は再び途絶えた・・・。

 

何かが近付いて来る様な感覚を感じながらも・・・。

 

sideout

 

noside

 

「おぉ・・・、なんという事だ・・・、天の力を過信し、単独で飛び出したばかりに・・・。」

 

オーブ軍艦、イズモ級一番艦イズモの格納庫内にて、

一人の女性が腰を屈め、

横たわる男性の遺体を撫でていた。

 

その声は悲しみに震え、瞳の端には涙の雫が滲んでいた。

 

「ロンド・ギナ・サハクよ・・・、これからという時に、私は自らの半身を喪ってしまうことになったのか・・・。」

 

自身の弟、ロンド・ギナ・サハクの遺体の顔を撫でながらも、女性、ロンド・ミナ・サハクは涙を溢す。

 

ロンド・ミナ及び、ロンド・ギナはオーブ五大氏族のひとつであるサハク家の出身であり、

現在は低軌道ステーション、アメノミハシラに居を構えている。

 

共に壮大なる野望を抱え、それに向けて動き出そうとした矢先に、彼女の弟であるロンド・ギナは、

赤きジャンク屋と青き傭兵に討たれ、命を落としてしまったのだ。

 

「だが、安心してくれ・・・、お前の野望は必ずや私が叶えてみせようぞ・・・。」

 

ギナの唇に着けられていた口紅を指で拭い、自身の唇に塗り付ける。

 

その身体は滅びようとも、お前の魂は常に自分と共に在るとでも言うう様に・・・。

 

その直後、カッと目を見開き、彼女は両腕を大きく広げる。

 

「これからは私を・・・!

私が創る世界を、天空から見守っていてくれ!!

イズモに指令を出せ、アメノミハシラへ帰還するとな!!」

 

ギナに向けて宣言し、

その後、自身の背後に控えていた、同じ顔を持った三人組へと指示を出した。

 

「了解しました、ロンド・ミナ・サハク様・・・。」

 

彼女の指示に淡々と、抑揚のない声で了解する彼らの名は、ソキウス。

 

ラテン語で戦友という意味を持った、戦闘用コーディネィターである。

 

彼等は地球連合軍、更に深い言い方をすれば、

連合軍を牛耳るブルーコスモスによって作られており、ナチュラルに害をなせない様に、服従遺伝子を弄られている。

 

本来ならば地球軍にいる筈の彼等が、

何故オーブ所属のロンド・ミナの下にいるのか?

 

それには理由がある、

ロンド・ギナは生前、ブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルに協力を申し入れたのだ。

 

もっとも、この申し出もギナの野望の足掛かりのひとつにしか過ぎず、事が済めば解消するというモノではあったが・・・。

 

彼から同盟の証しとして、薬物により精神をかき消されたフォーソキウス、シックスソキウス、サーティーンソキウス、そして、ソードカラミティ、フォビドゥンブルー、レイダー制式採用機、そしてロングダガー二機を受け取っていたのだ。

 

その結果として、この三人のソキウス達はブルーコスモスの処分から逃れ、彼女達に従っているのだ。

 

もっとも、心が壊されたからといっても、

彼らの自我が壊されているのかというのかは分からないのではあるが・・・。

 

そんな彼等に、ロンド・ミナは背を向け、

格納庫から去ろうとした、その時だった。

 

『ミナ様、我が艦の付近にモビルスーツの反応があります。』

 

「なんだと?」

 

艦橋からの艦内放送に眉をひそめながらも、

彼女は手近に設置されていたモニターに寄る。

 

まさか、先程の傭兵が装備を整えて攻めてきたのか?

 

そんな思考がミナの脳裏を過るが、

彼女はその考えを直ぐ様否定する。

 

その傭兵は、イズモの反応を察知しただけで撤退していった。

 

つまりはエネルギー、もしくは装備の問題があったのだろう。

 

イズモがこの宙域に入ったのは、

かの傭兵が撤退した直後なのだ。

 

ギナの遺体と、天を回収するのには然程時間はかかっていない、

つまり、何れ程優秀なクルーを抱えていようとも、

この短時間で武器の換装等の整備はとてもでは無いが不可能だ。

 

ならば、何が来たというのか・・・?

 

艦長を務める男の顔がモニターに映し出され、

彼はミナに向けて敬礼しながらも言葉を紡ぐ。

 

『反応はあるのですが、あまりに動きが遅く、

まるでデブリと同じ様に漂っている様であります。』

 

「機影を確認できるか?

ただの残骸かも知れんが、警戒を続けろ。」

 

デブリと同じ、つまりは過去にこの宙域、

もしくは近くの宙域にて撃破された機体の残骸がレーダーにかかっただけなのかも知れない。

 

だが、それにも一つの疑問が残る。

 

戦艦に搭載されているレーダーは、基本的には対象の熱紋を捉える物であり、デブリ等、熱を発しない物体には反応しない。

 

つまり、イズモに接近して来たのはデブリではなく、

熱紋を発しているモビルスーツということになる。

 

何故稼働しているモビルスーツが、

デブリと同じ様に漂っているのか?

 

それもまた、彼女にとっては理解し難かったのだろう。

 

『機影確認が出来ました、モニターに表示します。』

 

モニターに表示されていたモノが切り替わり、

イズモの外側、つまりは真空の宇宙空間が映し出された。

 

周囲のデブリに紛れ、ダークグレーの機体が確認出来た。

 

特徴的なブレードアンテナにツインアイ、

そして、無駄なモノを省いたアスリートの様な体躯。

 

「ストライク・・・。」

 

ロンド・ミナの背後に控えていたフォーソキウスは、

その機体に合点が言ったのか、抑揚のない声で呟いていた。

 

GAT-X105 ストライク。

オーブ所有コロニー<ヘリオポリス>にて開発されていた連合軍の試作モビルスーツの一機だ。

 

唯一、ザフトのクルーゼ隊による襲撃、及び強奪より逃れた機体であり、

連合軍戦艦、アークエンジェルに所属し、

数々のザフト機を討った事で有名である。

 

そのデータは連合の量産機、ストライクダガー、105ダガー、そしてオーブのM1シリーズに使用されている。

 

だが、かの機体はオーブ近海での戦闘で中破、

モルゲンレーテ本社のファクトリーにて修繕されていた筈だ。

 

その事は、モルゲンレーテで実際に確認したギナから聞いていた。

 

その後、オーブに身を寄せたアークエンジェルに引き渡され、

連合のオーブ侵攻戦にて、オーブ側の機体として参戦したと、あるパイプからの情報で聞いている。

 

現在はアークエンジェル、そして、イズモ級二番艦クサナギと共に、壊滅したオーブから宇宙へと離脱し、

宇宙の何処かに身を隠しているらしい。

 

この宙域にアークエンジェル、及びクサナギが来たという情報は無い。

 

ならば、今イズモの付近を漂っているストライクは、

アークエンジェルのモノではないという事は容易に想像できる。

 

では、この機体は何処のものだ・・・?

 

艦のクルー全員がそう思ったのも束の間、

突如としてロンド・ミナの指示が飛ぶ。

 

「すぐに機体を回収しろ!フォーソキウス、ソードで出撃しろ!」

 

『は、ハッ!』

 

「了解しました。」

 

あまりにも急な指示だった為、艦長は驚いた様な表情を見せるものの、直ぐ様イズモを寄せる様にクルーに指示を出す。

 

ソキウスはと言えば、いつも通りの無表情を崩さないまま、ソードカラミティに乗り込んでいった。

 

ロンド・ミナはといえば、表面上は落ち着いているかの様に見えるが、

よくよく見てみれば、何処か焦りの色が見てとれる。

 

何故そんなに焦る必要があるのか?

ストライクのデータは既にモルゲンレーテが取得している上に、デッドコピー機であるMBF-02 ストライクルージュも近々完成する予定である訳で、

別段、ストライクという機体は戦力として以外に価値は無い。

 

ならば、用があるのはパイロットの方か?

ストライクという極めて高価、そして高性能な機体に乗っているのだ、それなりに腕は立つパイロットである事は容易に想像できる。

 

しかし、どんな者が乗っているかも分からぬ筈なのだが、彼女は誰が乗っているのかを知っている様にも見える。

 

では、彼女はストライクのパイロットに会ったことがあるのか?

何時?何処で?どのタイミングで?

 

分からぬ事だらけな事この上無いが、

ミナがそう命じた以上、従う他無い。

 

程なくして、再度出撃したソードカラミティに抱えられたストライクがイズモに着艦し、

格納庫の床に寝かせられた。

 

その直後より、獲物に群がる蟻の如く、

ストライクのエマージェンシーシャッターを抉じ開け、パイロットを確保するべく、整備士達が動く。

 

特に破損した箇所も見受けられない為、

外側から手動入力により、ストライクのコックピットハッチが開いていく。

 

それを確認したロンド・ミナは、整備士達を押し退けるかの様な勢いでストライクのコックピットに入り込み、パイロットの男性を担ぐ。

 

ミナに担ぎ上げられたパイロットの頭部より、

ヘルメットが脱げ落ち、その顔が露になる。

 

癖のある黒髪を持ち、美形と呼んでも差し障りの無い容姿を持った二十前後の青年・・・。

 

「一夏・・・。」

 

ぐったりと衰弱したような様子ながらも、

何処か力強さを感じさせる彼に向けて、ミナは呟いた・・・。

 

彼の名は、かつて、別世界において、

何処までも愚直に自分の道を貫いた男、織斑一夏であった・・・。

 

sideout

 

sideセシリア

 

ここは・・・、何処なのでしょう・・・?

 

暗闇の中、私の意識はぼんやりとながらも覚醒しました。

 

もっとも、それは今にでも消えそうなぐらい、弱々しいものでしたが・・・。

 

何も見えない、何も聞こえない・・・、

これが、地獄という場所なのでしょうか・・・。

 

一夏様は・・・、シャルさんは・・・、

何処にいますの・・・?

 

私を・・・、セシリアを独りにしないでくださいませ・・・。

 

「一夏様・・・、シャルさん・・・。」

 

虚空に手を伸ばした所で、私の意識は再び途絶えました・・・。

 

何が近付いてくる気配を感じながらも・・・。

 

sideout

 

noside

 

時は少し遡る、

ゴールドフレーム天にトドメを刺し、

イズモの接近を感知した傭兵、叢雲 劾は、

己が愛機、ブルーフレームセカンドLを駆り、戦闘宙域を離脱していた。

 

敵は倒せる時に倒す、それが彼の、傭兵のやり方であったため、後々面倒な事になりそうなゴールドフレーム天、正確にはそのパイロットを殺し、彼は共闘していたジャンク屋の男に思いを馳せる。

 

(ロウ、想いだけでは生き残れない・・・、

だが、それでもお前は行くのか、王道じゃない道を・・・。)

 

彼は想いの強さで生き残っている、

対して自分はどうだ?気分というものもあるだろうが、

金次第で誰にでも力を貸し、その依頼を実行するだけの傭兵・・・。

 

自分はそれでも構わないとは思っているが、

何かが足りないと心では感じている。

 

(俺も、王道じゃない道を行けるのだろうか・・・、

ふっ、らしくない、な・・・。)

 

自分の胸中に沸き上がった迷いに苦笑しなからも、

彼は自身の愛機を駆った。

 

暫く飛び続けていると、何かの反応があった。

 

「ん?」

 

機体を停止させ、アーマーシュナイダーを引き抜きながらも、彼は周囲を警戒する。

 

しかし、周囲を見渡してもこちらに向かってくる機影らしいものは何一つ見受けられない。

 

代わりに、少し離れた虚空を漂う、灰色の物体を見付けた。

 

特徴的なブレードアンテナにツインアイ、

そして、ジンよりも更に人間の様なフォルムを持つ機体・・・。

 

「あれは・・・、デュエル・・・?」

 

GAT-X102 デュエル。

ヘリオポリスにて開発されていた初期GAT-Xナンバーの初号機である機体だ。

 

MSとしては初めてのPS装甲実装機であり、

その性能は高く、ザフトのクルーゼ隊によって運用されている。

 

また、アークエンジェルより連合にもたらされたデータを基に、ソキウス専用機、ロングダガーや、そのナチュラル仕様機、デュエルダガーが開発されている。

 

しかし、そんな機体が何故この様な所を漂っているのかが理解できない。

 

確かに、劾が先程までいた空域にはザフトが展開していた様だが、

クルーゼ隊が展開していたとは聞いていない。

 

では、この機体は何処の所属だ・・・?

 

そこまで考えた時だった、劾は突如として雷に打たれた様な感覚を覚える。

 

何故か、乗っている者の正体が分かる気がした。

 

自分でも気付かぬ内に、ブルーフレームを動かし、

デュエルを受け止め、そのまま自分の母艦へと帰投していった。

 

『お帰りなさい、劾!!』

 

ブルーフレームのコックピットに、母艦である、ザフトより買い取ったローラシア級戦艦より通信が入る。

 

モニターに映し出されたのは、

今だ十にも満たないであろう少女、風花・アジャーであった。

 

彼女は見習い生であるが故に、目立った活動はしないものの、劾の代理人として交渉などの任務に当たることもしばしば見受けられる。

 

『あれ?その機体、どうしたの?』

 

『劾!それって連合のXナンバーじゃないか!』

 

風花の背後から姿を現した銀髪の美青年、

イライジャ・キールはブルーフレームが連れていた機体に、驚きの声をあげた。

 

それもそうだろう、GAT-Xナンバーと言えば、

試験的に造られた実験機でもあるわけであり、一機ずつしか製造されていない。

 

『どうしたんだよそんなレアな機体?

まさか鹵獲したのか?』

 

「いや、正確には保護だ、そうしなければいけない。」

 

『どういうことだ?』

 

劾の言葉の真意が分からなかったのか、

イライジャは聞き返すが、ハッチが開く振動を感じたため口を閉ざした。

 

劾がここに来てからでも尋ねられる、

そう考えたのだろう。

 

「ロレッタ、次のミッションの前に、

スネイルに進路を採ってくれ、この設備では十分な治療が出来ない。」

 

『どうしたの?まさか怪我人が乗ってるの?』

 

「あぁ、恐らくは、だがな。」

 

恐らく、という彼の口調には、

僅かな焦りの色が滲み出ていた。

 

それを、長い付き合いの中で培った感覚で察したロレッタは、

直ぐ様艦橋から出ていき、医務室へと向かう。

 

その間にブルーフレームは格納庫に入り、

デュエルを床に横たえる。

 

電源を切る間も惜しいと言わんばかりに、

彼は瞬く間に機体を降り、デュエルに取り付く。

 

「どうしたんだよ劾、その機体には誰が乗ってるんだよ?」

 

劾の様子が気になったのか、

格納庫にイライジャがやって来た。

 

その表情には怪訝の色が濃く出ていた。

 

だが、そんな彼の言葉も聞かずに、

劾はデュエルのコックピットハッチを開く作業を続けていた。

 

劾がそこまで冷静さを失うとは思わなかったイライジャは、

驚きに目を見開きながらもパイロットを確認するためにデュエルのコックピット付近に近付く。

 

「下がっていろ、開くぞ。」

 

劾の言葉通り、ゆっくりとデュエルのコックピットハッチが開いていくのを確認し、イライジャは身体を宙に浮かせる。

 

コックピットハッチが完全に開ききったところで、

劾がコックピット内に入り、パイロットの女性を担ぎ上げる。

 

その際、脱げかけていたヘルメットが、

身体を持ち上げられた弾みで脱げ落ち、女性の顔が露になる。

 

宇宙空間では邪魔にこそなれど、

優雅に揺れる金髪を持った二十歳前後の女性・・・。

 

「が、劾!まさか・・・!!」

 

「あぁ、間違いない・・・。」

 

彼女の顔を確認したイライジャが驚きの声をあげ、

劾は彼の言葉に同意する様に首を縦に振る。

 

そう、二人とも彼女の正体を知っていたのだ。

 

「「セシリア・・・。」」

 

そう、彼女はかつて、別世界にて、

愛しき男の為に戦い続けた女、セシリア・オルコットだった・・・。

 

sideout

 

sideシャルロット

 

ここは・・・、どこなの・・・?

 

僕の意識はうっすらと覚醒した・・・。

 

だけど、それもぼんやりとしてて、

今にも消えてしまいそうなものなんだけど・・・。

 

瞼を開いて、辺りを確認しようとしても、

まるで自分の身体じゃないみたいに身体に力が入らなかった・・・。

 

僕はどうなったの・・・?

 

一夏は・・・?セシリアは・・・?

 

「一夏・・・、セシリア・・・。」

 

僕を独りにしないで・・・、

三人で一緒だって、約束したじゃないか・・・。

 

虚空に向けて手を伸ばすけど、

僕の意識はそこで再び途切れた・・・。

 

sideout

 

noside

 

ジャンク船、リ・ホームは、

ゴールドフレーム天戦を終えたレッドフレームとプロトラゴゥを回収し、

戦闘を行っていた戦域を離脱していた。

 

その格納庫内にて、

レッドフレームのパイロット、ロウ・ギュールは、

破損した愛機の修理に奔走していた。

 

とは言っても、壊れたパーツの取り外し、

予備のパーツに換装する作業など、彼にとっては最早手慣れたものであり、瞬く間にレッドフレームは新品同然に修理された。

 

「う~ん・・・、レッドの修理は出来てもガーベラストレートが折れたままじゃなぁ・・・。」

 

茶髪を逆立てた男、ロウ・ギュールは、

持ち帰ったレッドフレームの主装備、

ガーベラストレートの残骸を眺めながらも頭をかきむしる。

 

先程の戦いにおいて、ガーベラストレートはゴールドフレームの攻撃により、半ばから叩き折られてしまった。

 

これでは、レッドフレームはメインウェポンを失ったままの状態になってしまい、エネルギー消費が激しいビームサーベル等の武器を使用し続けなければならない。

 

しかし、それでは機体の稼働時間が大幅に短縮されてしまうため、作業や戦闘にも支障が出てしまうことは、火を見るよりも明らかである。

 

だが、今現在の設備ではガーベラストレートを打ち直す事は不可能であった。

 

「やっぱり、グレイブヤードに行くしかねぇな、

久々に爺さんの顔も見てぇし、ちょうど良いぜ。」

 

グレイブヤード、

かつては世界樹と呼ばれた最初期のコロニーであり、

現在は戦禍を被り、廃棄コロニーと化してしまった場所である。

 

かの場所には、今や喪われ、再現不可と言われているロストテクノロジーの宝庫、または墓場でもあるため、

略奪者や海賊が狙い続けている場所でもある。

 

そんな無法者達をただ一人で撃退している凄腕の剣豪がいるのだが、彼とてもう歳だ、どれ程先が有るかは分からない。

 

「樹里!リーアム!グレイブヤードに行くぜ!

ガーベラを直してやろう!」

 

思い立ったが即決断、それが彼の本質だ。

 

もっとも、それに振り回される仲間としては少々頭の痛いところではあるが。

 

「分かりました、早速船の航路を変えますね、

着くまでは暫く時間があります、休まれてはいかがですか、ロウ?」

 

「休んでる場合かよ!レッドの修理は終わっても、

プロトラゴゥが動かないんじゃ後々苦労するだろ!

今の内に動いとかないとな!!」

 

黒髪長髪の男性、リーアム・ガーフィールドの提案を退け、

ロウはレッドフレームが牽引してきたプロトラゴゥを修理すべく動く。

 

その時だった・・・。

 

『ロウ、聞こえているか?』

 

ホログラム体であるキャプテンG・Gこと、

ジョージが姿を現す。

 

「どうしたんだジョージ?まさかさっきのヤツの追撃か?」

 

それだけは勘弁して欲しいとは思いながらも、

彼はジョージに向けて尋ねた。

 

可能性としては十分すぎる程に有り得た為、

彼は直ぐ様レッドフレームに搭乗しようと動き出した。

 

『いや、敵じゃない、近くに漂っているモビルスーツがいるのだよ。』

 

「漂っている?まさか人が乗っているのか?」

 

『その可能性も捨てきれない、直ぐに回収したいが、どうするかね?』

 

艦の制御を全て握っているジョージとは言えど、

この艦の舵を実質的に握っているのはロウ・ギュールであり、彼に一応の確認は取っている。

 

「分かった、直ぐに回収してくれ、

プロフェッサー、直ぐに医務室で準備してくれ。」

 

『分かってるわ、回収準備も始めるわね、

早く格納庫から出て頂戴。』

 

「頼むぜ。」

 

プロフェッサーに返答し、ロウとリーアムは直ぐ様隔壁を隔てたコントロールルームに退避する。

 

直後、格納庫の上部隔壁が開き、

鈍い振動と共に外部に設置されているアームが動き、漂う機体に向けて伸ばされる様がモニターに写し出される。

 

「コイツは・・・、まさか・・・!?」

 

モニターに写し出された機体に対し、

ロウは驚愕の表情を浮かべる。

 

『連合のモビルスーツだな、データは無いが。』

 

ロウの手に持たれている箱形のマシン『8』が、

機体の解析を瞬時に行う。

 

しかし、あまりそういう方面のデータは知らないらしく、

NO DATEとだけ表示されていた。

 

「これはGAT-X103、バスターですね、

連合が造った最初のMSの一機だとか・・・。」

 

その機体について、ほんの少しだけ記憶に在ったリーアムは、説明する様な口調で話す。

 

GAT-X103 バスター、ザフトに強奪された連合軍初期型GAT-Xナンバーの一機であり、ザフトのクルーゼ隊によって運用された機体だ。

 

その性能は極めて高く、地球連合第八艦隊の壊滅の一翼を担った。

 

後にアークエンジェルに収容され、

オーブのモルゲンレーテ社で修復され、そのままアークエンジェルの戦力となっている。

 

また、そのデータを基に、小数量産機、バスターダガーが開発され、戦線に投入されている。

 

「そんなことは良い!早く回収してやってくれ!」

 

「ロウ?」

 

自身の説明をどうでも良いと言われた事への怒り、驚愕よりも、

ロウが焦る理由に見当がつかないリーアムは、

怪訝の表情を浮かべながらも彼を見る。

 

ロウの手に持たれている『8』ですら、

『らしくないぞ?』と表示する程だ、よっぽどの事なのだろう。

 

そんな一人と一つの様子を他所に、

彼は焦燥に駆り立てられていた。

 

暫くして、フェイズシフトダウンを起こし、

ダークグレーの機体色になっていたバスターがリ・ホームの格納庫に着艦し、直ぐ様格納庫内にエアーが充填される。

 

しかし、そんな間すら惜しいと言うように、

ロウは隔壁が閉じると同時に工具を手に持ち、

コントロールルームから飛び出す。

 

「エネルギーが切れてるだけか・・・!?

これならなんとか手動で開けれそうだ・・・!!」

 

バスターの外部装甲に設けられていたコントロールパネルを操作し、

彼はバスターのコックピットハッチを開いた。

 

ハッチが開ききると同時にコックピット内に滑り込み、

パイロットの女性を担ぎ上げた。

 

それを見ていたリーアムは酸素マスクを用意し、

ロウに近付いていく。

 

それを確認した彼は、パイロットの女性からヘルメットを脱がせた。

 

ヘルメットの中より、鮮やかな金髪と、その顔が露になる。

 

「やっぱり、お前だったんだな・・・、シャルロット・・・。」

 

ため息混じりの声で、彼は彼女の名を呟いた。

 

彼女は、かつてとある世界にて、

愛しき男に付き従い、全てを捧げた女、シャルロット・デュノアであった・・・。

 

sideout

 

 




次回予告

傷付いた三人の魂に降り掛かる残酷な現実、
愛しき者と散り散りになった彼等に待ち受ける運命とは・・・?

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
謎めく記憶

お楽しみに~。
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