機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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ガンダム強奪

sideシャルロット

 

デブリベルトでの事件から一週間後、僕達はアーモリー・ワンの一角にあるパーティーホールにいた。

 

報道陣から軍関係者、それに加えて僕達みたいな招待客も大勢いる立食パーティー形式で行われる式典に参加してるんだ。

 

勿論、僕達も正装で出席しているけど、軍服じゃなくてドレスだったりタキシードだったりを着て来ている。

流石に空気読んでるよ、じゃないと所属がばれちゃうからね。

 

ジェスが巻き込まれた事件の首謀者と思われる人が乗っていた高速艇は、デブリベルトの一角で大破している様子がコートニーとセシリアが目撃して報告している。

 

僕達も撮られた映像と写真で見たから、見失ったという事じゃなかった。

 

それにしても、デブリに衝突して大破した様子だという事だけど、潜入して情報集めるスパイが、そんな間抜けな事で終わる様な物だろうか?

 

僕達アメノミハシラ幹部三人はブリッツタイプのMSの存在を疑ってたけど、周囲に機影や熱紋も見当たらなかった。

 

ミラージュ・コロイドを使用した機体が出てきて、ワイヤーを使った移動法を用いていたのかとも思ったけど、ミラージュ・コロイドディテクターに反応すら見当たらなかったから、事故として処理される事になってしまった。

 

色々と疑問点が多くって、何となく腑に落ちないけど、今のところ特に何もないから僕達も何も出来ないんだよね。

 

でもって、今日行われている披露会は、インパルス、カオス、ガイア、そしてアビスの四機のMSの正パイロットの発表も兼ねているんだよね。

 

「あ~あ・・・、ガイア、良い機体だったのになぁ・・・。」

 

でもって、その正規パイロットに選ばれなかったリーカは、少しだけ気落ちしているみたいにタメ息を吐いていた。

 

それなりに愛着があったんだろうね、僕もたまにテストパイロット紛いの事はするから気持ちは察する事が出来る。

 

ちなみに、シンとマーレはそのまま自分達が乗っていた機体の正パイロットに選ばれ、さっきまで壇上で紹介を受けていたんだよね、まぁ、それが終わった後はインタビュー攻めなんだろうけどさ。

 

「仕方ないさ、アフリカの砂漠地帯のエース、カシマ隊の隊長に受領されるみたいだ、リーカはどちらかといえば宇宙軍だしな、地形的な経験も加味された采配もあるんだろう。」

 

それに関係の無い技術職のコートニーは、仕方ないと言わんばかりに肩を竦めていたけど、それで彼女の気持ちが晴れる訳でもないんだよね。

 

「ミネルバはどう見ても遊撃部隊の配属になるだろ、選ばれていたらそれこそ、会える時間が減るんじゃないか?」

 

そんな彼女を可笑しく思ったのか、一夏は意地悪な笑顔を浮かべて問いかけていた。

なるほど、確かにその通りだ、ミネルバに配属されたら、それこそ会える時間が減っちゃうもんね。

 

誰、とは言わない、もう分かり切ってる事だもんね~♪

 

「ふぇっ!?そ、そそそ、そうねっ・・・!?」

 

わっかり易いな~・・・、でも、その方が見てて可愛いよね♪

 

「あっ!皆さん!」

 

リーカを微笑ましく思いながら見ていると、僕達五人に気付いたのか、インタビューから逃げ出してきたシンがこっちに駆け寄ってくる。

 

なんだか、子犬が駆け寄ってくるみたいで可愛いなぁ、彼も打ち解けたらトコトン懐くタイプの子だろうし、間違っては無いかな。

 

「よぉ、シン、正パイロットに選ばれるとはやるじゃないか、おめでとう。」

 

彼を見た一夏は、歳の離れた弟を見る様に優しい目をして賛辞を送った。

 

アーモリー・ワンにいる間、一番シンを気に掛けてたのは一夏だったね、そう言えば。

弟のように思っていた子が、華々しい機体に乗れるのは自分のように嬉しいんだろうね。

 

「一夏さんの動き、勉強になりました!本当はもっと聞きたい事とかあったけど、明日からミネルバに移らないといけないんで・・・。」

 

シンも一夏に笑い返すけど、もうすぐ別れなければならない事を悟っているから、少し寂しそうな表情を浮かべていた。

 

「ふふっ♪生きてさえいれば、何時かは会えますわ、ですから、生きる事を諦めないでくださいませ。」

 

「そうだね、もっと腕を上げて、男を上げたら僕達に会いに来て、歓迎するよ。」

 

まぁ、僕達もプレア程じゃないけど関わって来た仲だ、別れを惜しむ気持ちはある。

とはいっても、若い子を取って食うみたいな節操無しじゃないからね?

 

そんなことしたら一夏が嫉妬で大変な事になるしね。

まぁ、セシリアと僕も、一夏が若い女の子に目を向けてたら嫉妬に狂うけどね。

 

それは兎も角・・・。

 

「シン、気を付けてな。」

 

「はいっ・・・!この三週間、ありがとうございました・・・!」

 

一夏の言葉に感極まった涙を滲ませて、シンは彼と抱擁を交わした。

 

一時の別れかもしれないし、永遠の別れかもしれない。

だけど、だからこそ今を大切にしたいという想いが垣間見えた。

 

暫くの抱擁の後、シンは僕達に敬礼して何処かへ走って行った。

 

「コートニー・・・、また機会があれば、シンの事を気に掛けてやってくれ。」

 

「分かっている、何処まで出来るか分からないが、出来るだけやってみよう。」

 

そんな中、一夏はコートニーにシンの後見を頼んでいた。

 

所属が違うから自分は助力は出来ないけど、所属が近いコートニーならばと、男同士の友情で感じ合っているんだろうか。

 

むぅ・・・、少し妬けちゃうよ、そういうの・・・。

 

「さて、こんな堅苦しい式典抜け出してバーで呑もう、肩が凝る。」

 

「それもそうだな、リーカも一緒に来るか?」

 

「もちろん!」

 

お酒好きだよね、僕達って・・・。

まぁ、こんな息苦しい所で呑むよりもずっと美味しいのは確かだよ。

 

セシリアは貴族出身だから社交界は慣れてるだろうけど、僕や一夏はまだまだ慣れない事の方が多いんだよね。

 

「まぁ、これが終わったらまたしばらくは会えないんだ、存分に楽しもうぜ。」

 

「そうだな・・・、同じ組織なら気にしないで呑めるのに・・・。」

 

まーた同じ事言ってる、ホント、お互いに好き合ってるんだね。

 

 

まぁ、リーカとも会えないし、機体の近くで呑んでおこうかな。

 

さぁて、夜は長い、今日も楽しませてもらおうかな。

 

sideout

 

noside

 

「ちっ!インパルスだけ先にミネルバに移されたか、特別扱いしやがって・・・!!」

 

パイロット決定式典の翌日、マーレはインパルス以外の三機が置かれている格納庫で悪態をついていた。

 

何もかも気に入らないという風に苛立っているのか、普段から神経質な表情も一段と険しかった。

 

現在、カオス、ガイア、そしてアビスの三機は、ミネルバへの移送を控えての最終調整が行われていた。

そこにはマーレを含めて、三名のパイロットが待機しており、他の二名は和気藹々とは言わないが、世間話でもしているのか、何処か楽しげに話をしていた。

 

だが、彼はその二名と言葉を交わす気にもなれなかった。

ガンダムパイロットに抜擢された事で満足している愚図共になど掛ける言葉など無い、何せ、自分は自分に与えられたモノに到底満足など出来ないのだから。

 

「(だが、俺は諦めん・・・、何時か俺の手にインパルスを・・・!!)」

 

故に、彼は手段を択ばない心積もりでいた。

作戦中の事故だろうが、休暇中の事故だろうと、シン・アスカを排する事は可能なのだ。

 

さぁ、どうしてやろうか・・・。

彼が下卑た笑みを浮かべた、まさにその時だった。

 

格納庫の入り口付近で銃声と悲鳴が上がった。

 

「なにっ・・・!?」

 

振り返ってみれば、三人の男女が格納庫の中に侵入しつつ、辺りにいるザフトの人間に手当たり次第銃を乱射して蹴散らして行く姿が見て取れる。

 

その手際は敵ながら見事と言うべきモノであり、マーレが自失から立ち直る一瞬の隙を突いて肉薄、彼の左胸に銃弾が撃ち込まれた。

 

「まさか・・・、連合軍が・・・、バカな・・・。」

 

身を抉る様な焼け付く痛みに呻きながらも、彼は床に倒れ伏した。

新型のガンダムを狙ってきた事は直ぐに理解した、だが、それに今の今まで気付かせぬ敵のやり方に強い怒りと憎悪を抱いていた。

 

「これだから・・・、ナチュラルは、嫌いなんだよ・・・。」

 

怨嗟の声で呟いた直後、彼の意識は闇に呑まれて消えて行った・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

「騒がしいな・・・、何だっ・・・!?」

 

アメノミハシラガンダム3機と、コートニーが調整中のプロトカオス、そしてリーカ専用のザクファントムが置かれた格納庫の周りがやけに騒がしくなったことに気付き、俺達は其々の機体から降りて辺りを見渡す。

 

少し離れた格納庫ブロックから黒煙が立ち上り、時折爆音まで聞こえてくる。

 

「何があった?」

 

コートニーは手近にいた警備兵を見付け、何があったのかを確かめる。

普段は置かれているだけだった機体も動いているという事は、何かデカい事が有ったな?

 

「し、新型MS三機が強奪されました!!」

 

「なんだとっ!?」

 

若い警備兵から齎された情報に、俺達は思わず我が耳を疑ってしまう。

一体どういう警備をしていたら盗まれるなんて間抜けな事をやらかすのやら・・・!

 

そんな時だった、リーカが持っていた通信機に通信が入る。

 

「こちらリーカ・シェダー!」

 

『リーカ、私よ!』

 

リーカがそれに出ると、通信機越しにベルの切羽詰まった様な声が聞こえてくる。

どうやら、相当マズイ状況らしい。

 

『一夏達と一緒にいるなら、彼等に伝えて欲しいの、来賓に危険が及ぶ可能性があるから、早くアーモリー・ワンから逃げなさいって!』

 

「了解した、ベル、警告感謝する!」

 

リーカから通信機を拝借し、向こう側にいるベルに了解の返事を返す。

さっさと逃げろという事は、俺達への様々な追及を和らげるという、彼女個人の思惑もあるんだろうから、今はありがたく貰っておこう。

 

『やっぱりね、貴方達は仲が良くて助かるわ!それじゃあ、無事を祈ってるわ!』

 

連絡が行き届くタイムラグが少なくて安心したのか、彼女は次の相手に通信を入れるべく俺達との通信を切った。

 

「どうやら、思ったより早くお別れみたいだな。」

 

「あぁ、だが、道中に敵がいないとも限らん、俺達も出る!」

 

「友達見送るのに、危険が一杯なんて寝覚めも悪いからね!」

 

ふっ、リーカもだいぶ、俺達寄りの思考になって来たな。

だが、良い女は気も強くなくちゃ、男のケツを叩けないしな。

 

「ありがたい!だが、嫌な予感がする、俺達よりもジェスとカイトの方へ回ってくれ、あの二人も俺の大事な友達だ、死なせたくない。」

 

しかし、問題は俺達以外にも来賓がいて、その中にはジェスやカイトもいる。

正直な話、俺達三人よりも情報を集める立場にあるジャーナリストのジェスの方が狙われやすい。

 

恐らく、ザフト側からの追撃や、来賓を逃がさないための部隊も展開している可能性がある、それを考えると、俺達のように戦力がある者にまで護衛の戦力を振り向けて貰う訳にはいかないのだ。

 

「外にも敵が待ち構えている、か・・・、分かった、彼等は俺とリーカで護る、気を付けてな。」

 

「あぁ、世話になった、また会おう。」

 

俺はコートニーと、セシリアとシャルはリーカと握手と抱擁を交わして自分たちの機体へと走る。

 

降ろしていたラダーに掴まり、コックピットに潜り込むと同時にすぐさま機体を立ち上げる。

 

「セシリア、シャル、コートニー達が出たハッチから出る、そのままアメノミハシラに帰るぞ。」

 

『かしこまりましたわ。』

 

『ミナさんに報告しとかないとね。』

 

そういえば、推進剤は足りるかな・・・。

まぁ、無駄遣いしなければ地球まで行ける位はある、何とかなるか。

 

そんな事を考えながらも機体が立ち上がると、コートニーのプロトカオスとリーカのザクファントムが解放されたハッチから先行する。

 

これで、当分はお別れ、か・・・。

もう少し彼等との時間が続いてほしかったが、今はそれどころじゃない。

 

それに、ジェスとカイトは彼等に任せればいい、俺達は俺達のやるべき事をやるんだ。

 

「よし、織斑一夏、ストライクS、発進する!!」

 

『セシリア・オルコット、デュエルグレイシア、参ります!!』

 

『シャルロット・デュノア、バスターイグニート、行きます!!』

 

決意と共に、開放されたハッチから漆黒の宇宙空間へと飛び出し、俺達は機体のスラスターを吹かして本拠の方へと奔る。

 

道中に何があるかは知らんが、それでも行くさ。

 

俺がやるべき事は、まだまだ残っているのだから・・・。

 

sideout

 

noside

 

「・・・、そう、分かったわ、ご苦労様。」

 

地球、マティアス邸にて、屋敷の主である男性、マティアスは部下からの報告を受けて表情を顰めた。

 

その報せとは、数刻前にザフトの新型G兵器が何者かによって強奪され、アーモリー・ワンが戦場になった事、そして、デュランダルとの会合の為にその場に居合わせたオーブ代表、カガリ・ユラ・アスハがそれを目撃していたという報せだった。

 

「まさかこんなに早く事が動くなんて・・・、やってくれるわね、マティス・・・。」

 

その強奪事件を、影で情報を流す事で引き起こした人物に合点が行ったのか、彼は表情を顰めた。

 

まさかこんなに早く仕掛けてくるとは思いもしなかったが、よくよく考えてみればこれほど無い絶好のチャンスだったのではないか?

 

新型の三機が連合に奪われる、しかもその場にはプラントの議長とオーブの代表がいた。

幸いにして両名とも無事だったが、最悪の場合は両国が大混乱に陥る恐れもあった。

 

そこに付け込めば世界を大きく動かし、組織の本懐を遂げる事も容易くなる、何とも気に喰わない状況だろうか。

 

だが、今ならばまだ取り返しがつかない所までは行っていない。

必ず何処かで手を打てる、そのための手札もこちらにはあるのだ。

 

その手札は、一枚では効力は薄いやもしれぬ、だが、掛けあわせる事で相乗効果を発揮してくれるモノだと、彼は知っているのだ。

 

「そろそろ、貴方達の力を借りるかもしれないわ、準備しておいてくれるかしら?」

 

「お任せください、隠密行動は、俺の任務ですから。」

 

その札の一つを握る青年に声を掛けながらも、マティアスは先日の事を思いだす。

 

自身をアメノミハシラの遣いと名乗り、事が済むまで彼の下で指示を仰ぐと協力を申し出た青年は、自身を影と称し、その時まで静かに身を潜めている。

 

彼の上官である織斑一夏やロンド・ミナ・サハクほどでは無いが、相当な人物が来ていると察したマティアスは、ミナの協力を素直に受け取る事にしたのだ。

 

それが、自分の願う事に繋がらるならばと・・・。

 

頭を垂れる青年に微笑みかけつつ、マティアスは彼に惜しみない期待を込めた声を掛けた。

 

「えぇ、期待しているわ、神谷卿?」

 

sideout

 




次回予告

動き出した歯車、狂い行く世界、墜ちる墓標、混迷する宙を切り裂く風が吹き荒ぶ。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAYXINFINITY

シエロ

お楽しみに
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