機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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裏の思惑

noside

 

「・・・、以上が、地表に落ちたユニウス・セブンの残骸による被害の総計です、カーペンタリアとジブラルタルから救助部隊と救援部隊を被災地に向かわせ、混乱の鎮静化を図らせています。」

 

プラント、アプリリウス市にある評議会舎の一室、議長室にて、ジャーナリストのベルナデット・ルルーは寄せられた情報をデュランダルに報告していた。

 

破砕活動が妨害された事もあり、予想よりも多くの破片が地上へと落下、衝撃による都市部への被害に留まらず、沿岸部でも海に落ちた破片によって引き起こされた津波によって、甚大な被害が出ていた。

 

地球軍の施設も被害を被っており、すぐには救援も出せない状況になっていたのだ。

 

そのため、プラントは人道的支援の名目によって救援物資を持った部隊を地球の各地へと派遣、ジャンク屋とも協力して復興支援を進めていた。

 

だが、彼女の仕事はそれで終わりでは無かった。

 

「現在もテロリストに支援した組織があるとみて、現在軍が捜索活動を進めています。」

 

「そうか・・・、早く終わって欲しいモノだ、これ以上長引けば、それこそ世界は混沌に沈む、永遠に。」

 

軍の調査報告を聞いたデュランダルは鷹揚に頷きながらも、哀しみを湛えた声色で呟いた。

もっとも、本心から言っている言葉かどうかまでは判別できなかったが・・・。

 

「えぇ・・・、それと、ジャンク屋組合が所有するジェネシスαにも、ユニウス・セブンに現れたテロリストグループの機体が襲撃を行った事が確認されました。」

 

「なんだと?それで、その者達はどうなった?」

 

頷きながらも報告するベルナデットの言葉に、デュランダルは驚いた様に身を乗り出しながらも続きを問いただした。

 

「えっ?そ、その者達はジャンク屋組合が独自で排除した模様ですが・・・。」

 

常に冷静沈着で掴み所のない彼が僅かに焦りを見せた事に驚きを隠しきれないベルナデットは、少々上擦った声で報告を返した。

 

「そうか・・・、それは何よりだ、ジャンク屋組合には感謝せねばならないね。」

 

「・・・。」

 

その報告に安堵したか、デュランダルは一息吐いてシートに深く沈み込んだ。

まるで、予想が狂わなくて済んだチェスのプレイヤーの様に・・・。

 

だが、それの真意に触れかけてしまったベルナデットは、それを見過ごす事は出来なかった。

良くも悪くも彼女はジャーナリストであったのだから。

 

「(ユニウス・セブンが落下しても、ガンダムが盗まれても動じなかった議長が、ジェネシスαへの襲撃に焦っている・・・?まるで、イレギュラーが起こったみたいに?確かに、奪われて良いモノではないけど、どうして・・・?)」

 

動じないと言われれば聞こえはいい、だが、それは全てを予見していたとも取れるのだ。

 

ジェネシスαへの襲撃に動揺したというのは、それが予想外の出来事であった証左である。

つまりそれは、それ以外のすべてが予想通りである事を仄めかしているのだ。

 

「(議長は、私達の知らない何かを知っているんじゃ・・・?)」

 

疑問は、疑念へと代わるモノである。

しかし、ここでそれを表に出してはならない。

 

そう決めた彼女は、ここで別の話題を切り出す事にした。

 

「それで、議長、先日もお願いさせて頂きましたように、私も地上へ降りて、被害の状況の調査に加わりたいのですが・・・。」

 

「あぁ、あの件か?出来る事なら、君には本国に残って報道を続けて欲しいと思っている、地上はまだ、不安定だからね?」

 

ユニウス・セブンが落ちて間もない頃、彼女はデュランダルに地上の取材を申し込んでいたのだ。

特に被害が酷い地域に入り、その現状を見たいと・・・。

 

だが、彼はそれを引き留めようとするかのように、中々取材の許可を出さなかった。

普段は依頼してくる事も多い彼が何故渋るのか、それに合点が行かなかった為に、彼女はそれを確かめる為に切り出したのだ。

 

「ですが、私もジャーナリストの端くれ、現地の状況を自分の目で見たいのです、どうか許可をお願いします。」

 

「ふむ・・・。」

 

彼女の想いを受け止め、デュランダルは小さく嘆息しながらも執務椅子に深く座り込み、暫く何かを考える様に視線を彷徨わせた。

 

そして、暫くして首肯し、端末を操作し、許可証を発行する。

 

「受け取りたまえ、これで地球でも取材が出来るだろう。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

かなり渋っていた件をあっさり許可してしまったのだ、ベルナデットの表情には拍子抜けした様な色が一瞬浮かんだ。

 

そして、彼女はそのまま一礼して議長室を退室、自宅に戻るべく駐車場に止めてある愛車の下へと向かう。

 

だが、その間にも思考を止める事は無かった。

 

「(ユニウス・セブンの・・・、いいえ、セカンド・ステージMSの件から薄々は考えていたけど、何かが、いえ・・・、誰かが陰で動いているとしか思えないわ・・・。)」

 

愛車に乗り込み、走らせながらも彼女はジャーナリスト特有の裏を読む事に意識を割く。

 

「(あの大戦から二年・・・、連合軍によるザフトMS強奪、ザフト脱走兵によるユニウス・セブン落下・・・、どちらも敵愾心を煽る様に引き起こされた・・・、まるで誰かに操られる様に・・・?)」

 

偶然と切り捨ててしまえばそれまでの事ではある。

だが、偶然にしては出来過ぎている。

 

まるで、チェスで動かされる駒の様に、世界が動いて行っている様にも感じられたのだ。

 

「(でも、誰が・・・?何の為に・・・?)」

 

だが分からない、何故世界を操ってまで戦争を引き起こそうとするのか、そのメリットは皆無に等しいのに・・・?

 

そう思った時だった、彼女の車の進行先に、一台の軍用車両が止まり、中から数名のザフト軍部隊員が降りてきて彼女に停車を命じる様に誘導灯を振っていた。

 

彼女は不審に思いながらも車を路肩に寄せ、近付いてくる隊員の一人に尋ねる。

 

「・・・、なんです・・・?」

 

「すみません、少し降りて頂けますか?」

 

自分が停車を求められる何かをしたわけでも無いのに、と思いながらも彼女はエンジンを止め、車から降りた。

 

「一体何事です?ザフトがこんな・・・。」

 

憮然とした表情を浮かべながらも、彼女は目の前にいる男に尋ねる。

一体何の用があって自分の前に現れたかと・・・。

 

「貴女には、南米の英雄、エドワード・ハレルソンを密入国させた疑いが掛けられています、事情聴取のため、我々と来て頂きます。」

 

「そんな・・・!?だって、あれは・・・!?」

 

男の口から発せられた言葉に、ベルナデットは愕然とした。

 

確かに、エドをプラントに入国させたのは彼女だ。

だが、それはプラントの上層部に話を通し、人道的立場からの保護も同然だった。

 

だが、それには裏の思惑も当然絡んでいる。

エドを密入国させることを見逃すという点は、明るみに出れば連合軍を敵に回すデメリットも存在する。

 

しかし、それを考慮して尚、彼女の行動を見逃したのは、一重に彼女の有用性があればこそ。

 

つまり、この事が意味する所は・・・。

 

「御同道願えないなら、その場での処分も任されています、どうぞ、賢明なご判断を。」

 

半ば脅しの様な言葉を掛けながらも、部隊員の男は携えていたライフルをわざとらしく音を立てて見せ付ける。

 

逃走すれば射殺も已む無し、上からそう命じられているのだろう。

 

最早話し合いが出来る状況ではないと判断し、彼女は歯噛みした後、彼女は大人しく連行される事となった。

 

後に、彼女は知る事になるのだが、同刻、ミハイル・コーストが勤務する病棟に匿われていた南米の英雄、エドワード・ハレルソンが、何者かの手により発見、拘束されたのだ・・・。

 

sideout

 

sideコートニー

 

『二年前に地球連合軍を脱走し、南米戦争に参戦していた南米の英雄、エドワード・ハレルソンが、先ほどプラント、ディセンベル市内の病院にて発見され、身柄を拘束されました、また、密入国を幇助した疑いで、PBSのキャスター、ベルナデット・ルルーも逮捕され、大西洋連邦に身柄を引き渡される模様となっています。』

 

「そんな・・・、ベル・・・。」

 

アプリリウス市のMSハンガーで緊急ニュースを見ていた俺とリーカは、そのニュースに歯噛みした。

 

俺の友人の一人、ベルが密入国の手引きを行ったとして逮捕された。

普通なら大きな問題ではない。

 

しかし、匿った人物が大物に過ぎ、また、時期も最悪過ぎた。

 

エドワード・ハレルソンは南米を率いる事の出来る大物、だが彼は連合を脱走し、南米独立の為に戦い続けた反逆者だ、連合側からすれば真っ先に消し去っておきたい人物だろう。

 

そして、彼が発見された場所がプラント、そして、匿った人物がプラント中枢を報道し続けてきた人気ジャーナリストとくれば・・・。

 

「最悪な事になったな・・・、連合との戦いは、避けられそうもない・・・。」

 

それは、プラントの思惑と受け取られても仕方がない。

寧ろ、その方が自然だ。

 

だが、それにしては状況があまりにも出来過ぎている気がする。

 

南米の英雄を匿ったのは二年前、そして、その時はこんな大事件が幾つも起こる様な気配は無かった。

 

火種はあった、だが、着火剤や燃え移る燃料足りうる事象は、火種からあえて切り離されていた筈だ。

誰かが、裏で世界を動かすなにかが、これら全てを仕組んでいる様にも感じられる。

 

・・・、いいや、所詮これは憶測でしかない・・・。

そんな程度の事で疑い続けたら、それこそ何も出来ない。

 

それよりも、今は考えなければならない事が有る。

 

「リーカ・・・、本当に行くのか・・・?」

 

このニュースが流れる数分前、リーカにある命令が言い渡された。

 

それは、連合軍へ引き渡されるエドワード・ハレルソンと、ベルの護送だ。

 

疑惑の渦中にいる人物達を護送するということは、それなりに厄介な思惑も絡んでくると想定して然るべしだ。

 

つまり、リーカにも身の危険が迫ると見て良いだろう。

 

「うん・・・、命令された以上は、行かなくちゃ・・・、それに、私が帰って来れたら、今起きてる事以外何も無かった、って事も分かる筈よ。」

 

「リーカ・・・!それはっ・・・!!」

 

自分を賭けるつもりか・・・!?

こんな、限りなくクロに近いグレーに・・・!?

 

「もし、私に何かあったら、コートニーはすぐにここから逃げて、貴方は軍人じゃない、脱走じゃないわ。」

 

「そうじゃない・・・!君も危ないんだぞ・・・!?悪い事は言わない、中立宙域で引き返してこい、たとえ何かあっても・・・!!」

 

喩え何かあったとしても、恐らく何かが起きるのはどの軍にも属さない中立の場所だ、そこに入って、連合の護送人に引き渡せば何も起こらない。

 

リーカが傷付かなくて済むんだ・・・!!

 

「ダメよ、コートニー・・・、私は軍人なの、命令された以上、従うしかないわ・・・、それに、信じたいの、きっと大丈夫だって。」

 

「リーカ・・・。」

 

決意を籠めた目で見つめ返されて、俺は何も言えなくなってしまう。

 

確かに、喩え疑惑があっても、まだ裏切られた訳じゃ無いから、従う以外に道は無いと・・・。

 

「・・・、分かった・・・、だけど、必ず生きて会おう、君が居なくなったら、俺は・・・。」

 

「うん、約束する、きっと貴方の所に帰って来るわ、折角一緒になれたんだから・・・。」

 

俺はリーカの身体に腕を回し、彼女の小さい身体を抱き締める。

 

永遠の別れなんて縁起でも無い事など思考から追い出し、顔を寄せて唇を重ねた。

 

数瞬の後、どちらからともなく身体を離し、俺は踵を返して機体の方へと歩いてゆくリーカの背中を見送る事しか出来なかった・・・。

 

胸の中で燻る、妙な胸騒ぎを否定しきれないままに・・・。

 

sideout

 

noside

 

「ふふふっ・・・、議長さんも御莫迦さんね、利用価値のある人気キャスターをみすみす手放すなんてね。」

 

とある場所で、その女はモニターに次々と表示される情報に目を通していた女、マティスは自分の手元に配られるカードの巡りの良さに口元を歪めた。

 

彼女は一族と呼ばれる組織の統領であり、連合やプラントだけでなく、地球圏に存在する勢力に裏から干渉する組織力を持っていた。

 

プラントに匿われていたエドを炙り出したのも、ジャンク屋組合本部、ジェネシスαをテロリストに襲撃させたのも、連合上層部やロゴスにテロリストグループが使用していた機体の映像を流したのも、全ては彼女の手引きによるものだったのだ。

 

だが、世界を思い通りに動かすには、まだ手は足りていない。

故に、相手が取りこぼした手札を取り、自分のモノにしていく、それが彼女のやり方であった。

 

「南米の英雄にはこのまま消えて貰っても構わないわね、でも、人気キャスターさんにはまだまだ働いて貰えるわね、私が新しい場所を与えてあげれば、ね・・・。」

 

一人呟きながらも、彼女はコンソールを操作、何処かに通信を繋げる。

 

「私よ、スカウト0646と、RGX-04の出撃準備をさせて頂戴、出撃先は追って指示するわ。」

 

『了解しました、マティス様。』

 

通信先の相手は彼女に了解を返し、通信は途切れた。

 

「ふふふっ・・・!見ていなさいマティアス!私の勝ちよ!!」

 

そこにいない仇敵に対し、彼女は勝ち誇ったように高笑いをあげた。

 

それはまるで、現世に現れし、魔女の笑い声のような不気味さを漂わせていたのだ・・・。

 

sideout

 

noside

 

同じ頃、アメノミハシラにて・・・。

 

「ジャンク屋組合到着まで時間が無い、機材のセッティングと地上と回線接続を急げ!MS隊はスクランブル待機、放送終了まで敵の接近が無いか、警戒を厳とせよ!」

 

アメノミハシラ軍部元帥、織斑一夏は部下達に指示を飛ばし、これから始動する計画への準備を進めていた。

 

二年かけて熟考し、下準備も進めてきた計画が遂に実行に移されようとしているのだ、彼の感慨もひとしおなのだろう。

 

そんな中だった、ルキーニが亡命してきたから新たに設けられた情報部の部員が、息を切らせて彼の下へ走ってくる。

 

「織斑卿!!た、大変です!!」

 

「どうした!?敵襲か!?」

 

予想していた敵の襲撃があると予想した一夏は、すぐに自分が迎撃に向かうために動こうとした。

 

「い、いいえ!これをご覧ください!!」

 

「なんだ・・・?」

 

手渡された情報に目を通していた彼のめが驚愕に見開かれる。

 

そこには、数分前に彼の友人の一人、ベルナデット・ルルーが南米の英雄、エドワード・ハレルソンを密入国させた疑いで連合に引き渡されるという情報が記されていた。

 

「ベルが・・・、連合に・・・!?」

 

「は、ハイ!で、ですが、これは間違いなく・・・!!」

 

一夏の驚愕に答えながらも、情報部員はこの件の裏について言及していた。

 

彼も気付いたのだろう、間違いなく、連合にエドとベルナデットを引き渡すつもりが無い事に。

 

「マズイな・・・、間違いなく、中立宙域でドカンだ・・・、しかも、護衛にリーカが就くだと・・・!?」

 

更に悪い情報が追加されていく。

護送任務に就くのは、ラビット小隊所属のリーカ・シェダーだ。

 

彼女は、彼の親友であるコートニー・ヒエロニムスの恋人であり、彼にとっても友人と呼ぶべき者だ。

 

彼女もこの件に関わっているという事は、裏を知ればすぐさま消される事は間違いなかった。

 

「くそっ・・・!こんな時に・・・!」

 

出来る事なら、すぐに自分が駆けつけて救いたい。

大切な人達を護るために、自分はこの力を持ったのだから。

 

だが、それ以上に、彼にはアメノミハシラを背負う義務がある、更に言えば、この計画は彼も一翼を担っているため、今アメノミハシラを空ける事など許されない。

 

「なら、アタシが行ってこようじゃない。」

 

そんな時だった、機材の設営を手伝っていた玲奈が彼に近付き、挑発的な笑みを浮かべながら尋ねた。

 

「玲奈・・・。」

 

「リーカはアタシにとっても友達だし、護りたいって気持ちはアンタに負けちゃいないわ、それに、イージスシエロの速さなら、十分間に合う。」

 

彼女にもやるべき事は当然ある、しかし、一夏に比べればフットワークは軽い。

更に、イージスシエロは航行能力も非常に高く、直線加速速度はアメノミハシラ随一でもあった。

 

「シャルロットにはだいぶ前に言った気もするけど、アタシを信じなさいよ、誰一人死なせず帰って来るわ。」

 

「・・・、迷っている暇は無いか・・・、分かった、オプションVの使用を許可する、救出作戦を急行せよ。」

 

真っ直ぐな目で見られるのは弱いのか、彼は苦笑しながらも出撃の許可を出した。

 

救える手段があるならば、実行しなければ気持ちが嘘になる。

故に、彼は信頼できる友に、この件を任せる事にしたようだ。

 

「あいよ、任せときな、その後はここに連れてくる手筈で良いわよね。」

 

「勿論だ、彼女達にも聞いて貰おう、俺達の想いを、その先に待つ、未来への福音を。」

 

sideout




次回予告

友の危機に、彼女は風を纏って駆けつける。
友を護るために、未来を築くために・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAYXINFINITY

紅の烈風

お楽しみに
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