機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
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「玲奈・・・、私達、これからどうなるの・・・?」
アメノミハシラに到着した玲奈は、シャトルに乗っていたベルナデットとエドワード、エグザスに乗っていたモーガン、そして自身の友であるリーカを案内する様に先じて歩みを進めていた。
玲奈はアメノミハシラの制服の上に紅のマントを羽織り、アメノミハシラの将軍としての地位を誇示していた。
他のメンバー、モーガンとリーカは自軍の制服に身を包み、ベルナデットとエドワードはアメノミハシラより貸し出された制服に身を包んでおり、今だ定まらない立場である事を表していた。
その最中、リーカは玲奈に向けて質問をしていた。
自分の進退も気になる事だろうが、それ以上に気になる思惑があるのだろう。
「俺達も気になる所だ、不可侵かつ不落の城であるアメノミハシラに、部外者の俺達をこうも容易く招き入れるんだ、何か思惑があるんだろ?」
「確かに助けてくれた事は感謝するわ、だけど、理由ぐらい聞かせて貰いたいものね。」
玲奈が自身より年下且つ、経験も浅い小娘と見たか、モーガンとベルナデットは彼女に問いかける。
さっさと理由を教えて欲しいという事もあるだろうが、それよりも不安の方が大きいのだ。
無理も無い、国の思惑に巻き込まれ、命を落とす瀬戸際まで追い込まれていたのだ、精神も疲弊していてもおかしくはない。
「ん、アタシに聞くより、もっと上の人間に聞いたら?中将って言っても、上には上がいる訳だし?」
恍ける様に、だが、それでも至って真面目に、玲奈はその問いに答えた。
自分よりも上の人間に聞くべき事は聞いてほしい、その一言が彼女の思惑を表している様にも取れた。
「上の、人間・・・?」
「ほら来た、アタシより上の男がね。」
ベルナデットがその言葉の真意を問おうとするが、それよりも早く出迎えが来たのか、玲奈は視線を通路の先に向ける。
その先には純白のマントに身を包んだ青年が立っており、一行の姿を認識したのか、その青年は彼等に向かって歩いてくる。
「任務ご苦労、だが、中将なら中将らしく振舞う事を覚えたらどうなんだ、玲奈。」
「あら、それは申し訳ないわね、元帥閣下。」
その青年、アメノミハシラの女帝に仕えるキング、織斑一夏は玲奈に苦笑しながらも問うが、もう慣れてしまったとでも言う様に、玲奈は彼の前に跪いた。
「い、一夏・・・!?それに・・・!?」
「元帥だと・・・!?この小僧が・・・!?」
一夏と面識はあったが正体を聞けずじまいだったベルナデットと、面識のないモーガンは驚いた様に彼を見た。
若干20代の前半の若者が、国のトップに近い立場に居るのだ、普通ならば考えられない事だろう。
「身内人事さ、気にする事ないよベル、それと、シュバリエ大尉、エド、無事でよかった。」
階級で呼ばれる事がむず痒いのか、彼は更に苦笑の度合いを濃くし、肩を竦めた。
「そして、リーカ、君が無事で何よりだ、君に何かあったら、俺はコートニーに顔向けできない所だった。」
「一夏・・・、貴方は・・・。」
一夏の柔らかい笑みを浮かべながら、リーカの身の無事を喜んでいた。
それを見た彼女は、どうしてそこまで肩入れしてくれるのかと困惑する様に尋ねた。
「君は俺達の友達だ、だから、命を懸けて護る、次にまた、笑って会う為に。」
「なーにキザな事言ってんの、ま、アタシもリーカの事友達だと思ってるし、死なれちゃ寝覚めが悪いのよ。」
一夏と玲奈の言葉に、リーカはまたしても涙が出そうになった。
ここまで自分の事を大切に思ってくれる人物が他にいただろうか?
彼等の暖かい心意気が、彼女の胸を打った。
「到着して早々に悪いが、貴方方にはこの城の主、ロンド・ミナ・サハクの言葉を聞いて貰いたい、もう間もなく、我々が何年も温め続けた計画を、全世界に向けて発信する。」
「ロンド・ミナの・・・?それって・・・?」
一夏の言葉に、リーカは表情を強張らせる。
ロンド・ミナの計画とは一体どのような物なのか。
そしてそれは、今の世界にどのようにして作用するのか。
その全貌が見えない故に、恐怖心にも似た何かを感じているのだろう。
「案内しよう、世界へ投げかける波紋を、貴方方がどう受け取るかは、貴方方で決めて欲しい、我々は強制しない。」
踵を返す一夏に従う様に、玲奈もまたマントを翻してその先へと進んで行く。
そんな彼等の背中を、どうするべきかと悩んだ客人一行は、ここでじっとしていても仕方ないとばかりにアイコンタクトし、彼等の後を追った。
その先に待ち受ける、世界に投げかける問いを、自身達で受ける為に・・・。
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数時間後・・・。
地球、サー・マティアス邸にて・・・。
『我が名はロンド・ミナ・サハク、今はどの国家にも属さぬ自由の思想家だ、私はこれより、地球圏すべてに向けてある計画を発信する、それについてどのように考え、どの様に行動するかは個人の自由だ。』
「始まったわね、女王の宣言が。」
「はい、我らが二年間温め続けた計画です、これを見られて損はありません。」
画面の向こうで名を名乗り、宣言を開始したロンド・ミナ・サハクの様子を、屋敷の主であるマティアスと傍らに控える宗吾が眺めていた。
それぞれの思惑があるのだろう、二人の表情からは興味以外の何かが見て取れた。
「じゃあ、そろそろ動くわよ、この放送が終わり次第、宙に上がるわ。」
「かしこまりました、傭兵達にも伝えておきます。」
主の下を離れ、今はマティアスの駒として動く宗吾は恭しく一礼し、その場を辞した。
どうやら、この屋敷に来ている他の人物達にも任務開始を告げに行くのだろう。
『ユニウス・セブンの落下はまだ記憶に新しい、連合もザフトも互いを非難し、その矛先はジャンク屋組合にまで向けられた、だが、考えてみて欲しい、その非難は果たして正しい物なのだろうか?』
ここ最近に起こった大事件、ブレイク・ザ・ワールドを引き合いに出しながらも、今の世界の流れ、その怒りの矛先に疑問を投げかけたのだ。
「ふふっ・・・、差し詰め、天空の宣言とでもいうのかしら?ロンド・ミナ・・・、貴方達になら、この世界の行く末、任せられそうだわ。」
その映像に満足しているのか、彼は席を立ち、何処かへ歩いて行った。
その足取りは、まるで何かの覚悟を決めた様に・・・。
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同時刻、とある宙域に存在する、一族と呼ばれる組織が管轄する宇宙ステーションで、一族の長である女、マティスは、ロンド・ミナ・サハクが行っている演説を聞いていた。
「遂に動いたわね、イレギュラーK・・・、アメノミハシラ・・・!」
彼女の瞳には爛々とした怒りの炎が揺らめき、表情は忌々しい物を見る様に歪められていた。
彼女のいうイレギュラーとは、彼女の組織から見て、排除すべき存在であり、彼女の思惑通りに動かない人物達の事を指していた。
また、イレギュラーには世界に大きな影響を与える存在が多いのも、イレギュラーと呼ばれる所以となっていたのだ。
2~Aまでの数字には十三の人、若しくは組織が示されており、2にロウ・ギュール、4にプロフェッサー、6に叢雲 劾がその名を挙げられている。
しかし、言い換えてみればそれは、その者達を消し去れば、彼女の邪魔をする人間が軒並み排除できるに等しいのだ。
故に、動き始めたイレギュラーを止める手を持たない彼女には、その放送を恨めしく見る以外無かったのだ。
『この世に、闇が広がっている、人々は皆、何も見えぬ中で怯え、他者の悲鳴を頼りに逃げ惑うばかりだ、そして、その悲鳴を生み出す闇が奏でる伴奏によって、人々は踊らされているのだ。』
「そう、闇を操る、それが私の役目、不幸の上に幸福は成り立つ、故に限りる幸福を振り分けるためにね。」
ミナの言葉を聞きつつ、彼女は自分達の目的を改めて確認する様に呟いた。
一族とは、人類を永続的に存続させるために、世界に影から働きかけ、戦争や紛争による間引きや、息のかかっている企業に圧力をかけ、満足に時給が出来ない国家に支援を行っているのだ。
だが、それは正義や悪、正誤の概念を飛び越え、ただ当たり前の行為として提供しているに過ぎない。
たとえ、戦争でどれ程の人間が死のうと、支援でどれだけの人間が救われようとも、彼女には一切関係ないモノだった。
『だが、考えて欲しい、その闇に潜む、何者かの手によって踊らされているとすれば?それが今の国家であり、政治と言う物だ、自分達以外に敵を作ることで恐怖を生み出し、民をコントロールしているのだ。』
「何を今さら、それが国と言うものでしょう?そんな当たり前の事を言うためだけにこんな放送をしているのかしら?」
彼女の語りに、マティスは呆れた様に呟き、嘲笑う様にタメ息を吐いた。
天空の女王とも噂されるロンド・ミナ・サハクがよもやこのような低俗な次元の話をするなどとは思っても見なかったのだろう。
だが・・・。
『だが聞いてほしい、私はこれから、全く新しい国家のあり方を提示する。』
「なんですって・・・!?」
その発言に、マティスの表情が一気に強張った。
内心で馬鹿にしかけていた人物からの思わぬ宣言、それは彼女を慌てさせるに十分すぎる重さを持っていた。
『ある人物が私に、「国家とは人である」という思想を説いた、その人物だけでなく、自分達の真実を、信念を持つ者達がいる、故に、彼等はどれほど深い闇が世界を包もうとも、他者に踊らされる事なく世界を見通し、自分のリズムで踊るのだ、彼等の様に、世界中の人間が自分の中に在るメロディーで踊る事が出来れば、今の国家と言う物は必要なくなる、政治もその役割を大きく変えるだろう。』
「イレギュラーの事・・・!!でも、誰もが彼等の様になる事は不可能だわ!!」
彼女の言う事は確かに正しい、だが、全ての人間が、イレギュラーの様になれる事は不可能にも等しかった。
何せ、一般大衆とは、声の大きい方へ流される性質を持っている、それ故に、自分の意思を押し通す事は、非常に難しいのだ。
『無論、彼等は一部の特殊な存在であると言える、私もそう思っていた、だが、そうでは無い事を知った。』
「なにっ・・・!?」
誰もがイレギュラーになれるわけでは無いという言葉を肯定しつつ、彼女はそれを否定する言葉を続けた。
まるで、イレギュラーになる方法があるとでも言う様に・・・。
『ジェス・リブルと言うジャーナリストを知る者は少ないだろう、この者は平凡だ、だが、南米戦争やユーラシアの英雄事件、そしてユニウス条約の調印式、彼は時代の転換に立ち会い、影響を与えてきた。』
「ジェス・リブル・・・、マティアスが抱える平凡な男のはず・・・、でも、これは・・・。」
ミナが語る男を、マティスは嘗て、つまらない平凡な男と断じた事が有った。
だが、よくその足取りを見てみれば、彼はC.E.の歴史に刻まれるであろう事件の現場にいて、その中心的な人物達と関わりを持ち、その者達に影響を与えているのだ。
それは、イレギュラーにしかなしえないものだと考えていた。
しかし、自分が平凡だと断じた男がそれをやってのけている、それは、彼女ですらも認めざるをえなかった。
『何故平凡な男が大いなる影響を与えられたか、それは彼もまた、自らの信念に基づいて動く男だからだ、分かるだろう、特別な人間でなくとも、特別な存在でなくとも、己の信じるモノの為に進む事で、自分を変え、世界を変えて行けるのだ。』
「何を世迷言を・・・!青臭い理想論だわ!!」
その言葉を受け入れられないというかのように、マティスは表情を歪めながらも叫ぶ。
そう、理想論で片付ける事は出来る、だが、現実はそうでは無いのだ。
平凡と断じた男を目指せば、世界を変えれるなど、受け入れられない屈辱にも等しいだろう。
『一人一人の生き方が変われば、世界もその在り方を変えて行く、その新しい世界には国土も国家も無い、ただあるのは信念のみだ、他者の理念を妨げぬ限り、人は己が理念に従って生きるべし、その生き方が出来る者こそ、新しい世界の構成員である資格を持てる、そこにはナチュラル、コーディネィターの区別も無い。』
「何が資格よ・・・、結局は他人とのかかわりを拒絶している世界じゃない!世界と繋がらずに生きる事なんて、出来る筈がないわ!!」
ミナの言葉に返す彼女の言い分は尤もだ。
一部と全部と言う言葉があることからも分かるだろうが、個とは全を構成する物であり、全とは個の集合体でしかない。
ミナの今言っている事を要約すれば、全を個に分け、その個が繋がりを一切持たずに存在している様なものなのだ、今の世界では到底考えられぬだろう。
『無論、私はバラバラに生きろと言っているのではない、志を同じくする者と手を取り合い、この世界にたち向かう事も出来るだろう、嘗て、大戦を終結に導いた三隻同盟もまた、一つの志を共有していたのだ。』
だが、ミナは彼女の正論を否定する言葉を紡ぎながらも、虚空へと両手を伸ばす。
その手を取ったのは、伝説の傭兵、叢雲 劾と、アメノミハシラの最高幹部、織斑一夏だった。
それが、見る者にとって何を意味するのかは、分かる者にしか分かるまい。
だが、最強の傭兵と天空の守護者が女王の両脇に佇むという事が、どれ程のチカラを持っているか、推して測るべしだろう・・・。
『故に、私は私の理想に共鳴する者を、自らの理想の為に立ち上がり、新たな世界の一員となる者達の為に戦おう、もし同志と呼べる者に危機にあった時は躊躇う事なく私を呼べ、私と私の同志たち持てる力の全てを用い、その者を全力で護ろう。』
そして、そんな彼等が、新世界を望む民たちを支援すると高らかに表明した今、世界が欲する力が味方に着くも同然と言う意味だ。
力を持たぬ者達を助力し、真の意味での平和と共存を求める為に彼等は遂に立ち上がったのだ。
『この放送を聞いても俄には信じられまい、だが、それでも構わぬ、私は強制しない、我等を呼ぶ声あれば地球圏すべてに馳せ参じよう、最後に今一度宣言しよう、己の信念に従って生きよ!さすれば永遠と無限を持つ闇の恐怖に打ち勝てる!我々個々の力で、それは為せる!』
締めくくる様に宣言された言葉と共にミナは一礼し、彼女の周りに佇む者達もまた頭を垂れた。
そして、その放送は終わる事無く再放送に入った。
恐らく、ジャンク屋組合が持つ、地球圏全域に張り巡らされた回線ネットワークを用いてのエンドレス放送に入ったのだろう。
それは、これからもその放送が世界に波紋を投げかけ続けると同義だった。
「こんなふざけた事っ・・・!」
マティスはその美しく整った表情に憤怒の色を浮かべ、コンソールを殴りつける。
このままでは、自身の思惑通りに世界が動かなくなる。
それは、一族の長として許すまじ事態だった。
彼女は毟るように受話器をひったくり、部下に連絡を取る。
『ま、マティス様!?どうされました・・・!?』
「連合の艦隊を動かしなさい!!これ以上、あの城を野放しにはしない!!アメノミハシラを、叩き落とせ!!」
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「・・・、賽は投げられた、あとは、世界の動きを見よう。」
放送の収録を終えたミナは、小さく息を吐き、周囲の様子を窺う。
既に手筈は完璧に整えられており、地球圏全域に放送が開始されていた。
放送の影響がどれほどあるかは分からない。
だが、既に南米など、連合に圧政を強いられている地域からは協力や助力を乞う声も上がって来ている。
そして、彼女の下には南米の英雄、エドワード・ハレルソンがいる。
彼もこの宣言には賛同し、南米に戻って指揮を執ってくれる手はずだった。
無論、全ての人間が従った訳では無い。
「俺は賛同しない、俺は軍人だ、連合の指示に従って戦うだけだからな。」
「強制はせぬ、そなたの機体は損傷が多い、コペルニクスまでシャトルで送らせよう。」
踵を返し、アメノミハシラから去ろうとするモーガンに、ミナは小さく笑みつつも返した。
彼もこの放送の意味を理解し、尚且つ自分の生きる道を貫こうとしている。
形は違えど、それも確かに宣言通りの生き方であった。
「俺は次の依頼に向かう。」
「うむ、サーの依頼だ、完遂してくれ。」
そして、傭兵、叢雲 劾は仕事の為に一旦アメノミハシラを離れる事となった。
その依頼内容を知ってか知らずか、ミナは鷹揚に頷きながらも彼を見送った。
其々の思いを胸に、彼等は動き出していた。
「ミナ、恐らく連合軍が攻めてくるだろう、第二戦闘準備で全部隊を待機させる。」
「指揮は預ける、一夏、頼むぞ。」
「了解。」
一夏の言葉に頷き、全幅の信頼を寄せる腹心に返しつつ、ミナは世界の流れを見るべくコンソールへと目を向けた。
各国の動きは迅速で、デマに惑わされない様にとの勧告が幾つも出ていた。
だが、そんな中でも、オーブやスカンジナビアなどの一部国家では、何のリアクションも無かった。
一見すれば無視されているとも取れるが、今回に限っては違っていた。
「(黙認か・・・、獅子の娘よ、今は感謝しておこう。)」
敵対関係に在れど、世界を憂う気持ちは同じ。
今、彼女は若き獅子の娘が置かれている状況と、自分のこれからを見据えつつも思った。
世界は変わって行く。
大きく、それでいて異なった形を伴って・・・。
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「リーカ・・・、そんな・・・。」
プラント、アプリリウス市内にある、議長室に招かれていたコートニー・ヒエロニムスは、恋人であるリーカ・シェダーがMIA認定を受けた事を、プラント最高評議会議長であるギルバート・デュランダルによって知らされた。
「残念でならない、彼女は良いパイロットだった、君とも、関わりが深かっただろうに・・・。」
死者を悼む様に沈鬱な表情を浮かべるデュランダルに、コートニーは強い怒りを覚えた。
自分が、そして彼女自身が予見していた最悪の事態が現実に起こってしまった。
リーカが何事も無く帰って来れたなら白、そうでなければ黒という賭けは、リーカが戦死したかもしれないという最悪のリターンで証明されてしまった。
そして、それはプラント政府が、ひいては目の前にいる男が仕組んだ策略なのだ。
それに巻き込まれ、自分の恋人は死んだかもしれない。
そう考える度に、コートニーは拳を握り締め、怒りが表情に出ない様に努めながらも俯いた。
出来る事なら、今すぐ殺してやりたいとも思った。
だが、それをすれば自分の未来はない。
故に、彼は冷静になるように言い聞かせながらも、懐に仕舞っていた辞表届を出そうとした。
今回の一見、最悪の目が出た場合はすぐにプラントから逃げるという形を取るという約束だった。
本当ならば、そうなってほしくなかったのだろうが・・・。
「コートニー・ヒエロニムス君、彼女の死を無駄にしてはならない、今ここで逃げれば、彼女を死なせた世界を変えられない。」
「っ・・・!?」
自分の思惑を見透かしたように放たれた言葉に、彼は絶句する。
まるで、あの時の会話を盗聴されていた様に、先手を打たれてしまっていた。
「そのためにも、君にはこれまで以上にザフトの力になって貰いたい、君の力に見合う地位も用意させてもらった。」
「なっ・・・!?」
しかし、それは序の口だったようだ。
ザフトでの地位を与えるという事は、軍人として正式に戦いに参加しなければならないという事を示していた。
「議長、私は・・・!」
「君が戦いを好んでいない事は私も充分分かっている、私だってそうだ、このまま争い続けても、どうにもならないのだよ。」
辞退しようと声を上げようとするが、それを遮る様にデュランダルは言葉を続けた。
その表情には、物憂げな表情しかうかがえなかったが、コートニーにはそれが作り物のように映っていた。
まるで、人間の命を駒の一つとしか見ていない様な、そんな雰囲気がかすかに感じ取れたようだ。
「君にはぜひ知ってもらいたい、私が目指す本当の世界を、そして、その役割をね・・・?君が目指す、戦争をさせない兵器の在り方を、私は示せるつもりだよ。」
「っ・・・!!」
柔らかい、だが、人間が浮かべる者では無い笑みに、コートニーは心臓を鷲掴みにされたかのような感覚に陥った。
嫌な汗が全身から吹き出し、今にも倒れそうなほどに震えが止まらなかった。
だが、それと同じくらい、自身の夢で在る、戦争をさせない兵器を実現させる道術を知っている様な口ぶりにも惹かれたのは事実だった。
友の、恋人の想いを裏切りたくはない。
だが、ここで辞退しても真相に近付きすぎた自分に未来は無い事も分かっている。
そしてそれ以上に、夢を捨てるか、捨てないかという選択肢も、彼には突きつけられていた。
「どうする?コートニー君?」
最終通告の様な一言に、彼は歯を食いしばり、怒りを押し殺しながらも首肯する。
逃げられない事は十分分かっていた。
故に、せめて残された夢だけでも叶うならと、彼は受け入れてしまったのだ。
「ありがとう、期待しているよ、コートニー君。」
「・・・っ、はい・・・。」
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次回予告
天空の宣言に対抗すべく動こうとする一族、だが、終焉の時は訪れる。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAYXINFINITY
第四章最終話 真実の先へ
お楽しみに