機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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最終章 終わらない明日へ編
マーシャン


noside

 

その日、太平洋赤道直下に浮かぶ島国、オーブに接近する艦影があった。

 

その船の名はアキダリア、火星圏に存在するコロニー群より、地球圏査察のために派遣された面々が乗る船であった。

 

地球圏で行われている政策やそこに住む人間を見るなど役割は多く、メンバーの士気も高かった。

 

「オーブに寄港する、これは決定事項だ。」

 

その艦橋の艦長席に陣取る銀髪の青年、アグニス・ブラーエは目の前に映し出された島、オノゴロ島を鋭い目で真っ直ぐ見据えていた。

 

どうやら、目的の人物がいる場所が、オノゴロ島だから接近しているのだろう。

 

「ですが!これを見て下さい!!数日前、ザフトの戦艦ミネルバが、連合軍の奇襲を受けたんですよ!しかも、オーブの側からも発砲されている!これがなにを意味するのか、貴方方にも分かる筈です!」

 

アグニスの決定が不服なのか、ザフトグリーンの制服を身に纏う青年、アイザック・マウは声を荒げて抗議した。

 

彼の言葉通り、彼等が訪れる数日前、ザフト軍戦艦のミネルバを、待ち伏せしていた連合軍の攻撃を受け、あわや撃沈という危機的状況に追い込まれていたのだ。

 

オーブ領海に逃げ込む算段もあっただろうが、オーブ側からも巡洋艦や護衛艦が数隻現れ、ミネルバに向けて艦砲射撃を撃ち掛けていたのだ。

 

それが意味するところは、オーブが地球連合軍に与したという、何よりの証左であった。

 

尤も、見る者が見れば分かるだろうが、オーブ側の艦砲射撃は一発も直撃していないどころか、動かなければギリギリ当たらないポイントに撃ち掛けられているのだ。

 

オーブの軍人にとって、国を焼いた軍と、直前に世界滅亡を未然に防いだ艦、どちらが重んじられるべきかなど、考えるまでも無かったのだろう。

 

だが、アイザックがオーブを素通りしろという理由はそれだけではない。

 

この数日前、アグニスら使節団は連合のとある基地へ寄港、その際に連合軍第81独立機動軍、通称ファントムペイン二番隊の襲撃を受けていたのだ。

 

その際は何とか切り抜けられたから良かったものの、今のオーブは連合に与しているため、連合の部隊が寄港する事も容易いのだ。

 

故に、オーブにいる間に連合軍部隊の接近、及び交戦となってしまっては堪った物では無いと言いたいのだろう。

 

「それがどうした、俺達の旅の目的は地球圏の査察だ、地球圏を構成する国家の一つを素通りなど、我慢ならん!!」

 

だが、それがどうしたというのか、オーブはオーブと言う国として今も存在している。

そこに在る仕組みや人の在り方を見ずして、どうして素通りできようか。

 

たとえ、厄介事が舞い込んで来ようとも、自らの手でそれを跳ね除け、道を開けばいい、それだけだ。

 

「それに、この国にはあのキラ・ヤマトがいる、俺は彼を知りたいのだ。」

 

「キラ・・・?あのキラ・ヤマト・・・?」

 

アグニスが発した言葉に、アイザックは合点が行った様に尋ねた。

 

キラ・ヤマト。

その名は裏世界の人間には名の知れた人物のものだった。

 

その人物は、ヤキン・ドゥーエ戦役で世界を滅びから救った英雄の名であり、三隻同盟の中心的な人物でもあった。

 

「でも、どうしてオーブにキラがいると?」

 

「聞けばキラ・ヤマトは、オーブの出身らしい、キラは世界を救った、その人物の働きは世界にとっても有用だ、故に、彼と会わずに俺達の目的は達成できん、だからオーブに行く。」

 

世界を救った英雄が考える事を知る事で、世界を導く力と言う物を知りたいのだろう。

 

「ですが・・・!!」

 

「まぁまぁ、アイザックさん、アグニスがこういう性格なのはもう分かっているでしょ?」

 

それでも止めようとするアイザックを宥める様に、褐色の肌を持つ金髪の青年が割って入った。

 

彼の名はナーエ・ハーシル。

アキダリアの副官である人物であった。

 

「ここはアグニスの言う通りに、ね?」

 

「・・・、分かりました、でも、僕は船に残りますよ!それで良いですね!!」

 

ナーエにまで言われてしまえば、もはや言い返せないのだろうか、アイザックは大きく溜め息を吐いて、勝手にしてくれと言わんばかりに言い放った。

 

ザフトから付けられたお目付け役らしく、彼は職務に忠実且つ、敵対組織への疑念を拭えなかったのだろう。

 

「好きにしろ。」

 

取り合う気も無いのか、アグニスはあっさりと切り捨て、舟の進路の先にある島を睨んでいた。

 

そこで待っている、何かに想いを馳せる様に・・・。

 

sideout

 

noside

 

オーブに寄港してから数日の後、アグニスとナーエの二人はモルゲンレーテの施設にいた。

 

結果的に言えば、二人はオーブ首長であるカガリと面会する事ができた。

 

とは言え、その時間はごく限られた短い間だった。

何せ、カガリは国防省のトップであるユウナ・ロマ・セイランとの政略結婚が目前に迫っており、すぐにでも準備を行わなければならない状況だった。

 

それを推して尚、アグニス達との面会時間を設けてくれた事に感謝しつつも、彼等はカガリの国に尽くそうとする姿勢を感じ取っていた。

 

政略結婚を受け入れ、自らの幸せを捨ててでも国を護りたいと思う気持ちに、彼は強い感銘を受けていた。

 

だが、それと同時に思う処があったのも確かだ。

 

個人の幸せを無視して世界が成り立つというのなら、世界を回しているのは何か?という疑問だった。

 

キラ・ヤマトの様に、一人の人間が世界を動かした例もある。

 

それ故に、彼は悩んでいたのだろう、世界のあるべき、本当の姿と言う物に。

 

「アグニス?どうしました?」

 

「っ、ナーエか・・・、いや、何でもない、考え事をしていただけだ。」

 

モルゲンレーテの格納庫に通じる通路を歩いていた事を失念していたと言わんばかりに、アグニスは頭を振って先程までの考えを思考の外へ追い遣った。

 

その答えを見付けに来ているというのに、地球人と言う存在を知るために来ているのに、一々悩んでいても仕方ない、全てを見終えてから考えればいいと、彼は答えを下したようだ。

 

「貴方らしくないですね?気分でも悪いのですか?」

 

「慣れない地球の重力に、今更酔っているのかも知れん、情けない話だ。」

 

自分の身を案じてくれる副官兼友人の言葉に苦笑しつつ、彼は大丈夫だと言う様に呟いた。

 

なるほど、重力酔いか、それなら、変に思考を堂々巡りさせている事にも納得出来るやもしれない。

 

だが、今はそんな事を考えている場合では無いことは確かだ。

 

「しかし、本当にデルタを触れさせていいのか?」

 

気分を切り替える様に、アグニスはある疑問を口にした。

 

今現在、アグニスの持ってきた機体は、地上でのデータをインストールするためにモルゲンレーテの技術者に預けている。

 

とはいえ、アグニス等はマーシャンであり、機体もある地球人の手が加わっているとはいえ、ほぼ火星圏の技術で作り上げた機体だ。

 

その、技術体系の異なった場所に見せても良いのかと言う懸念を、募らせていた。

 

「アキダリアのスタッフをお目付け役で付けていますし、機体全てを見せている訳ではありませんから大丈夫では?それにここはアストレイの故郷でもありますから、アップデートには最適な場所では?」

 

心配いらないという風に話すナーエの言葉には、ある種の因縁めいたものを仄めかす様な色が窺えた。

 

それがなにを意味するのかは全く分からないが・・・。

 

「アストレイ、か・・・、それはデルタを改修したあの男が付けた名だろう、ここと直接的な繋がりは無いさ。」

 

「そうですかね?」

 

関係ないと言いつつも、アグニスが何処か感傷的な想いを抱いている事に気付いたナーエは、何処か柔らかい笑みを浮かべて彼の後に続いた。

 

暫く歩いて行くと、漸く格納庫に出たのか、多数のMSが置かれている区画に辿り着いた。

 

圧巻、その一言に尽きる様子を眺めながらも、更に奥へ進んでゆく。

 

「っ・・・!?」

 

だが、アグニスの脚は、とある二機の機体の前で止まった。

 

目を見開き見上げるは、漆黒の装甲に金色のフレームが映える機体と、PSダウンを示すダークグレーの装甲色を持った、特殊なバックパックを背負う機体だった。

 

「珍しい姿の機体ですね?」

 

「あぁ、この二機は明日の式典に出席される客人の機体です、こちらではバッテリーと推進剤の補給以外、何も触るなと仰せつかってますので、ここに置かせて頂いております。」

 

「そうなんですか?中々に用心深い方々なんですね?」

 

固まってしまったアグニスに変わり、ナーエが手近な整備士に尋ねていたが、そんな事はアグニスにとってどうでも良かった。

 

その機体から何かを、乗り手から滲み出て機体に染みついた想いを感じ取っていたのだ。

 

「アグニス?デルタの所に行くのでは?」

 

「あ、あぁ・・・、今行く。」

 

動かないアグニスを訝しむ様に話しかける副官の声に、漸く我に返ったアグニスは上擦った声で返しながらも動き出した。

 

後ろ髪を引かれる様な感覚を抱いたままに・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

「へぇ・・・、アイツ等がマーシャン、火星からの使者か・・・?」

 

「うむ、遠路はるばる、このような時期にご苦労な事だ。」

 

俺達の機体の前にいたマーシャンの使節団と思しき銀髪の男と金髪の男を、俺とミナは格納庫を一望するVIP室から見ていた。

 

俺達の機体に興味を持ち、あまつさえ何かを感じ取った様な表情をしていたな・・・。

 

だが、それとこれとは話は別だな。

 

「しかし、彼等が我々の想いに賛同してくれるか、それとも反発して敵となるか・・・。」

 

今回ここに来たのはオーブ首長の結婚式に参列する為だったが、ハッキリ言って出ようが出まいが別にどうでも良いって言うのが本音だった。

 

俺が、いや、アメノミハシラとして気になっているのは、カガリ自身よりもオーブに訪れているマーシャンの動向や、その思想に傾いている。

 

アメノミハシラが現在推し進める天空の宣言は、人々に対して個人の思想を尊重し、干渉しあわず、尚且つ手を取り合うという、ある意味で矛盾している様な声明だった。

 

まだまだ浸透には時間が掛かるだろうが、それでも確かに進行している計画なんだ。

 

それを、地球圏の外から来た彼等が何を思って、何をしてくるか。

アメノミハシラとしては知っておいて損は無いんだ。

 

「さぁな、こっちからちょっかいは掛けられんだろうさ、だが、明日辺り、なんかありそうだよなぁ。」

 

だから、接触するチャンスが欲しいわけだが、ただでは食いつくまい。

 

そこで、まずは何か起きるまで大人しく身を潜めて、何かあれば横槍入れて関心を向けさせる。

 

それで話を聞き、話を聞いて貰おうという魂胆だ。

 

俺が考案したんだが、我ながら中々にアクドい手だこった。

 

ある程度、この国で最近起こった、表沙汰にならない事件の概要は耳に入れてる。

 

それが、世界にとっても非常に大きな意味を持った人間がらみと言う事も、勿論知っている。

 

「ほう、ルキーニからか?」

 

「あら?やっぱりバレちまうよなぁ・・・?」

 

俺の考えを見透かしたのか、ミナは意地悪く尋ねてくる。

 

「何年そなたの主を務めていると思っておるのだ、それに、私も知らぬわけではないからな。」

 

「流石だなぁ、やっぱすげぇよミナは。」

 

っと、今はそんな事言ってる場合じゃなかったな。

 

「三日ほど前か、アカツキ島にあったアスハの別荘が何者かの襲撃を受けて壊滅、偶然その場に居合わせたマルキオ導師の話から推察するに、歌姫を狙った襲撃である事は間違いない。」

 

「ふむ・・・、という事は、旧三隻同盟のメンバーが集まっていた所を襲撃したのか・・・、下手人は恐らく、ザフト・・・。」

 

俺が事件の大まかな概要を話すと、ミナはその裏に隠された真相を一瞬で見抜いていた。

 

流石、天空の女王だこって、俺なんかより圧倒的な存在だよ、ほんと。

 

「あぁ、連中はプラントへの移住も計画していたそうだが、それも難しくなったという訳だ、で、現在アカツキ島の秘密ドックに、モルゲンレーテの技術者が何人もシフトを割かれてる、まるで、戦いに出る前の準備みたいだな。」

 

あそこに隠されているのがなにかはおおよそ合点がいく。

 

もっとも、今更動いた処で世界にイイ影響はないだろうけどな。

 

「なるほど、なんとも都合の良いタイミングだな、良かろう、明日は私が出る、その後はそなたに任せるとしよう。」

 

とは言え、俺達は自分の意思で動こうとする者達を止めるほど無粋では無いし、宣言がそれを許さない。

 

だから、それを見守り、邪魔をしようとする者を排する、それだけだ。

 

「分かった、こっちでも準備はしておくよ。」

 

「頼むぞ。」

 

「了解。」

 

ミナに敬礼し、俺はVIPルームを後にした。

 

火星からの客人に見付からないよう格納庫に入って、機体の調整でもするか?

 

いや、前にコートニーと入ったバーで飲んでるのも悪かないな。

 

って、そんなことはどうでも良いな。

 

あのマーシャン達がなにを見せてくれるのかは分からない。

だが、きっと有益で、有意義な何かを齎してくれるだろう。

 

だから、俺は見てみたい。

 

俺達が投げかけた波紋の、その答えを・・・。

 

sideout

 




次回予告

攫われるカガリを追うべく駆けるアグニスの前に、天空の女王が立ち塞がる。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAYXINFINITY

宣言の下に

お楽しみに
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