機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
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ジャンク屋組合第17補給ステーションに、ロウ・ギュール一行の船、リ・ホームが停泊していた。
その傍らには、先程襲撃を受けた輸送船も補修作業の為に停泊している様が見受けられた。
リ・ホームの艦橋内では、輸送船の中で倒れていた、マルキオの代理人である少年を囲んでの集いが持たれていた。
「輸送船の人達、大丈夫だよね?」
「えぇ、大きな怪我もない様ですし、仕事中の事でしたので、組合からの保険も下りる事になっています。」
茶髪の少女、山吹樹里は、自身の斜め後方に立っていたリーアムに向けて尋ね、彼も頷きながら答えた。
その言葉に安堵したのか、彼女は一瞬だけ表情を緩めるが、今はそんな事よりも大事な事があると、視線を椅子に腰掛ける少年に向けた。
その少年は気落ちしているのだろう、何処か思い詰めた様な表情で俯いていた。
「大丈夫?何処か具合でも悪いの?」
そんな彼の様子を心配したのか、シャルロットは少年の肩に手を置きながらも、彼の表情を窺う様に覗き込んだ。
「大丈夫です・・・、それよりも、ドレッドノートの頭部を取り戻さないと・・・、あれは、導師に頼まれた大事な物なんです!!」
シャルロットに尋ねられた少年は、彼女に向けて微笑み返しながらも、全員に向けて自分がなすべき事と、奪われたパーツの重要性を語った。
彼の必死な声に、リ・ホームのメンバーは頷きながらも、何処か難しい表情を崩す事はなかった。
「しかしなぁ・・・、奪って行った相手が相手だ・・・、厄介な事この上ねぇ。」
特に、ロウはドレッドノートの頭部を奪って行った相手をよく知っている、
伝説の傭兵率いる最強の傭兵部隊〈サーペント・テール〉、その名を知られたエースパイロットですらも戦闘を渋る程の実力を備えている事は、深い関わりがある彼には身に染みて理解していた。
一筋縄で解決出来る様な問題では無い事も、彼は承知していた。
「で、でも、どうしてサーペント・テールがそんな海賊みたいな事をしたんだろう?」
「彼等も傭兵です、依頼人の頼みであれば、海賊紛いの行為も請け負う事でしょう。」
そんな事は考えたくもなかっただろう、樹里は自分もよく知る者達の所業に理解が追いついていない様だったが、冷静かつ的確なリーアムの言葉に、何処か悲しげな表情を浮かべていた。
「ロウ、サーペント・テールって、どんな人達なの?」
そんな中、サーペント・テールとの関わりが無く、話に付いて行けなかったシャルロットは、近くに立っていたロウにその意味を尋ねていた。
「そういや、シャルロットは会ったこと無かったっけな?
簡単に言えば、傭兵だよ、俺達と何度も何度も会ってる、最強のな。」
「傭兵・・・、なるほど・・・、厄介だね・・・。」
彼の言葉を聞いた彼女は納得の表情を浮かべつつも、何処か苦い表情をしていた。
『組合を通じてサーペント・テールとコンタクトを取ってはいるが、今だ返答は何も無い。』
「取り戻す前に依頼人に渡ってしまえば、探し出す確率はほぼ絶望的でしょう。」
「転売でもされたらそれこそ見つけられないわよぉ~!!」
ジョージとリーアムの言葉に、彼女は素っ頓狂な声を上げていた。
彼等の言葉通り、サーペント・テールに接触する前にパーツが依頼人の手に渡ってしまえば発見は更に難しくなるだけでなく、そこから転売される可能性すら出てくるため、発見は絶望的になる事は火を見るより明らかだった。
「なぁに、たとえどんだけ転売されても、組合の力で見つけ出して取り戻してみせるさ!」
彼等の言葉を聞きながらも、ロウはそんなマイナス思考を拭う様に力の籠った言葉を言い放ち、面々は彼の言葉に表情に希望を戻らせた。
「ロウさん・・・。」
「だから、それまではこの船にいればいいさ、なっ?」
縋る様な瞳で自分を見る少年に向け、ロウは勇気付ける様に笑いかけていた。
「はい!ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします!
あっ、そういえば自己紹介がまだでした、僕はプレア・レヴェリーと言います、皆さん、よろしくお願いします!」
「おう、よろしくなプレア、そうだ、俺は良いとして、みんなも名乗っといたらどうだい?」
プレアと握手を交わしながらも、彼は樹里やシャルロットを見渡しながらも言い放った。
「あっ、そう言われたら、まだ僕達の自己紹介がまだだったね。」
ロウの意図に気付いたシャルロットが納得した表情を見せつつもプレアに近づき、グローブを外した右手を彼に差し出していた。
「シャルロット・デュノアだよ、これからよろしくねプレア。」
「はい、よろしくお願いします、シャルロットさん。」
その手を握りつつも、彼は彼女に微笑み返した。
基本的に人当たりの良いシャルロットの笑みは、見る者の心を癒す効果でもあるのだろうか?
彼女と接しただけでとは言えないが、彼女と相対するプレアの表情は年相応の少年そのものであり、先程までの代理人としての表情ではなかった。
『キャプテン・ジョージ・グレンだ、よろしく頼むぞ!』
「私の事はプロフェッサーと呼んでちょうだい、よろしくねプレア。」
「リーアム・ガーフィールドです、これから共に行動する仲です、よろしくお願いしますね。」
『よろしく頼むぞ!』
ジョージ、プロフェッサー、リーアム、そして『8』が、彼に向けて歓迎の意を表していた。
「はい!ここでお世話になる間、僕に出来る事があれば何でも言いつけて下さい!」
「貴方はお客様です、そこまで無理をする事はありませんよ、プレア。」
何でもやらせてほしいというプレアに対し、リーアムは気持ちだけ貰っておくと言う風に微笑んだ。
「ふふん、ジャンク屋の仕事はハードよ~?貴方みたいな子供に耐えられるかどうか・・・。」
樹里は何やら別の意味で嬉しそうな表情をしていた。
どうやら、後輩が、それも年下の少年がやって来た事で、先輩風を吹かせたくなったのだろう。
ちなみに、そういう面で見るならばシャルロットも彼女の後輩と言う事になるが、彼女が年上だった事と自分よりも明らかに頼りになりそうな事を感じ取っているために、彼女に対して先輩風を吹かす事はない。
それはさて置き・・・。
「でも頑張ります!僕、OSの設定がナチュラル向けになっていればMSの操縦も出来るので!」
「えっ・・・!?そ、そう、頑張ってね・・・。」
だが、その目論見はあっけなく砕かれた。
まさか自分よりもスペックが高いとは露程にも思っていなかったのだろう、
樹里は「私より使えそう!?」とかなんとか言いつつ、思いっきり動揺してしまっていた。
「(笑うな・・・、笑うな・・・!!)」
そんなコントの様なやり取りを見て、シャルロットは唇を噛み締めて必死に吹き出すのを堪えていた。
流石に笑ってしまえば樹里が傷付くだろうと判断した様だが、見た目麗しき美女がそんな表情をするのはいかがな物だろうか・・・。
「・・・で、プレア、その奪われた物ってなんなんだ?」
そんな空気を破るかの如く、至って真剣な表情をしたロウがプレアに尋ねていた。
恐らくは、何故ドレッドノートの頭部だけが盗まれたのか、その真相を知りたがっているのだろう。
「・・・、僕の口から話すよりも、ジャンク屋の皆さんなら見て頂いた方が早いかも知れません、
あのMSが持っている本当の意味は・・・。」
ロウの言葉の真意を感じ取った彼は、表情を引き締めながらも話した。
そんな彼等の間に漂う雰囲気を感じ、動揺していた樹里も、笑いを必死にこらえていたシャルロットも平静を取り戻し、ロウとプレア、二人の出方を窺う様に無言を貫いていた。
「分かった、とりあえず格納庫に行ってからだな、ドレッドノートを詳しく見せてもらう事になるけど、構わないか?」
「はい、是非知っておいて欲しいので、皆さんに見て貰えると助かります。」
ロウの言葉に、プレアは至極真剣な表情を浮かべながらも答え、誰よりも先に格納庫へと足を向けた。
その様子には、何処か焦りの色も見てとれるが、誰もそれを指摘しようとはしなかった。
「(大したもんだよ、もっと取り乱すなりするかと思っていたが、かなり落ち着いているな・・・。)」
そんな彼の様子に、ロウは感心すると共に、何故か言葉では言い表せない不可思議な感覚を覚えた。
何故歳不相応な落ち着きを持っているのか、何処か達観したようなプレアの立ち振る舞いに違和感でも覚えたのだろうか・・・?
「(いや、今はそんなことを考えてる場合じゃないよな・・・。)」
今はドレッドノートに隠されている秘密を知る事が先決と、彼は思考を切り替えて艦橋から出て行ったプレアの後を追った。
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同時刻、宇宙のとある宙域にて一隻の輸送船に近付く三機のMSの姿が在った。
先行する二機はコンテナを両サイドから持つ様にしながらも進み、少し遅れる様に追走する三機目の機体は、周囲に敵がいないかを確認している様な気配を漂わせていた。
輸送艦との距離が零に近づく直前に二機は制動をかけ、ゆっくりとコンテナを輸送艦の船体に置き、紛失しない様にとベルトでしっかりと固定していた。
「設置完了、戻るぞ。」
「了解だ、劾。」
「了解しましたわ。」
後方に待機していた青い機体、ブルーフレームセカンドGを駆る叢雲劾は、両機に通信を入れ機体を格納庫へと向けた。
それを確認した二機、イライジャ専用ジン改とデュエルはそれに追従する様に格納庫へと機体を進めた。
機体をハンガーに固定し、其々の機体から降りた劾、イライジャ、セシリアの三人は今後の指針を決める為に艦橋を目指した。
「あっ!劾!イライジャ!セシリア!お帰りなさい!」
艦橋に入った三人を出迎えたのはドリンクボトルを入れたクーラーボックスを携えた風花だった。
ロレッタは計器に付きっ切りであり、リードはといえば、相も変わらず酒が入ったボトルを傾けていた。
劾とイライジャにボトルを渡した後、彼女はセシリアの元に駆け寄った。
「お帰りなさい、セシリア!」
「ただいま戻りましたわ、風花さん。」
風花から手渡されたボトルを受け取りながらも、セシリアは慈しむ様な微笑みを彼女に向けていた。
この短い触れ合いの中で、彼女達の間にはある種の信頼関係が出来上がりつつあるのだろう。
「はぁ・・・。」
そんな中、渡されたドリンクに口を着けていたイライジャが大きく溜め息を吐いていた。
「どうしたイライジャ、疲れたのか?」
リードはそんな彼をからかう様に尋ねていたが、イライジャは複雑な表情を崩す事は無かった。
「いや・・・、本当にこれでよかったのかって思って・・・、あのままマルキオに渡しても良かったんじゃないか?」
「アタシもイライジャと同じだよ、このまま渡したらダメなの?」
イライジャの言葉に賛同するように、風花は劾に向けて尋ねた。
あれとは、先程ジャンク屋組合の輸送船から強奪してきたドレッドノートの頭部だという事は想像に容易かった。
「あれはまだマルキオには渡さない、それが最良だからだ。」
二人の意見を否定する様に、劾ははっきりと言葉に表した。
「なんでだよ・・・。」
自分の言葉を否定する様に語られた言葉に、彼は僅かに気落ちした様な表情を見せる。
「はっはっはっ、お前さんはまだまだ若いねぇ。」
「なんだよ?」
ちょっとは考えてみろと言わんばかりのリードに、イライジャは少しムッとしながらも問いただした。
「あれが地上へ降りれば、確かに救われる人も大勢いるでしょう、でも、それでもその力を悪用しようとする人間も出てくるわね、そうなったら、更に大勢の人が苦しむ結果になりかねないのよ。」
彼の言葉に補足する様に、ロレッタは今だ納得できないといった表情を浮かべるイライジャと風花に向けて言いながらも、少し離れたところにいるセシリアに目を向けた。
「セシリア、あなたは今回の事、どう考えているのかしら?」
セシリアに問いかけたのには二つの理由があった。
一つ目は新参者とはいえ、同じサーペント・テールのメンバーとなった彼女にも発言してほしいという思いと、もう一つは、傭兵ではなく、大局を見た上でどう思うのか、という意味が込められているのだ。
「そうですわね・・・、私は譲渡もせずに、このまま破壊した方が妥当かと思いますわ、今の情勢から考えて、導師を暗殺してでも手に入れようとする者が必ず現れる事でしょう。」
「おいおい・・・、流石に地球の連中もそこまで馬鹿じゃないだろ?」
猶予も無く破壊すべきだと答えたセシリアに、イライジャはその端正な表情を引き攣らせながらも答えた。
この美女はなんて物騒な考えを持っているんだ、そんな思いが彼の表情から筒抜けだった。
「バカは一人いれば賢者百人分の働きをするんだよ、セシリア、お前さんもまだ若いな、ちょっとは待つのも必要だぜ?」
「・・・、チッ・・・。」
リードに返された言葉に舌打ちし、彼はそこから先食い下がる事を諦めた様だ。
「・・・。」
「どうした?」
そんな中、風花はまだ何かに悩んでいる様な表情をしている事を不審に思い、劾は彼女に尋ねていた。
「うん・・・、今回襲った船、ロウ達の仲間なんだよね・・・、私達が係わってるって知ったらどう思うのかなって・・・。」
「・・・。」
風花の言葉に、劾は納得の表情を浮かべながらも、何かを思案するかの様に押し黙っていた。
「それも気になる所なんだよな・・・。」
イライジャも彼女に同意するかの様に言い、何処か複雑な表情を浮かべていた。
自分達と決して関わりの浅くない者達を思い浮かべ、彼等は少々複雑な心境に陥っているのだろうか、何処か迷いとも取れる表情を浮かべていた。
「あの・・・、何かあったのですか?」
彼等がそんな表情をする理由をイマイチ掴めなかったセシリアは、恐る恐る彼等に尋ねていた。
そんな彼女の様子に、劾達はまたしても失念していたという風な表情を浮かべた。
忘れがちだが、セシリアは二週間程前までは彼等と関わったことも無い、赤の他人同士だったのだ。
何故だかは分からないが、ずっと一緒にやって来たという感覚でいたため、彼女が知らない事も知っている前提で話を進めがちになっていたのだ。
「すまない、そういえばセシリアは会った事が無かったんだよな?」
何とかフォローをしようと、イライジャは少々焦りながらも言葉を発した。
「えぇ・・・、どの様な方かも存じておりませんわ・・・。」
彼の言葉に、セシリアは少し拗ねた様に小さく呟いていた。
そんな彼女の様子に、彼はまたしてもどうしたらよいものかと、気の利いた言葉を探し出そうとした。
「劾にブルーフレームをくれた人だよ、任務でよく会うんだ!」
「あら、そうでしたの、と言う事は、傭兵なのですか?」
風花の説明に、セシリアは一瞬で表情を緩ませ、彼女に尋ね返していた。
そんな切り替えの早さに唖然としながらも、俺の心労はなんだったんだと思わずにはいられなかったイライジャだった。
「ううん、ロウ達は傭兵じゃなくって、ジャンク屋って職業なの。」
「なるほど、大体把握いたしましたわ、曲がりなりにもお知り合いのお仲間を襲ってしまっていたのですね・・・。」
風花から聞かされた事を自身の脳内で整理し、彼女はロウと呼ばれる人物とサーペント・テールとの関係を察し、今回の件の複雑さを改めて思い知った様だった。
「そういう事だ、後ろめたい事がある訳ではないが、彼等にも説明をしておく必要があるな、風花、お前にその役目を任せたい。」
「うん!任せて!」
静観していた劾から、ロウ達の元に行ってくれと頼まれ、彼女はその表情を少しだけ明るくさせた。
彼女はサーペント・テールの他のメンバーに比べても比較的長い時間を彼等と共に過ごした事があり、彼等とまた会える事が喜ばしいのであろう。
いや、それだけではなく、サーペント・テールの一員として、非戦闘員である彼女が役に立てるという事も、彼女自身にとっては嬉しい事なのだろう。
「それと、セシリア、風花のボディーガードを頼めるか?下手をすれば戦闘にも巻き込まれる可能性もあるからな。」
劾は風花に微笑みかけた後、彼女を妹の様に見守るセシリアに尋ねていた。
彼の言う事は尤もだ、現にドレッドノートの頭部はプラントから持ち出されたパーツの一部であり、最も重要な物を積んでいるパーツでもあるのだ。
それをサーペント・テールが所持していると知られていれば、間違いなく何かしらの攻撃を行って来るだろう事は明確であった。
そんな中で風花を独り行かせればどうなるのかは想像するまでもなかった。
だからこそ、劾はMSを操縦できるセシリアに同行を頼んだのだ。
もっとも、それだけではなく、セシリアにも対外的な繋がりを持たせようという思惑も無いわけではない。
「お任せくださいませ、風花さんは私がお守り致しますわ。」
そんな思惑を知ってか知らずか、彼女は微笑みながらも快諾していた。
どうやら彼女も危険を回避させるべく、無理を言ってでも風花に同行するつもりでいた様だ。
「どうやら、それは後にしなきゃいけないみたいよ!」
そんな時だった、警告音を発した計器を確認したロレッタが声を張り上げた。
どうやら、所属不明のMSが一機、彼等の母艦へ向かって来ている様だ。
「追手か!」
「そうとも限らんが、なんにせよ、厄介な物には厄介が舞い込むモノさ。」
イライジャの声に、リードは何時もの軽薄さを潜めさせながらも答えていた。
彼の言葉通り、彼等が持っている物は非常に扱いに困る代物であり、万が一にでも第三者の手に渡れば、この世界を崩壊させる要因にすらなりかねないのだ。
「今あれを第三者に渡す訳にはいかない、迎撃するぞ。」
そんな緊迫した状況の中でも、劾は動揺する事無く格納庫へと急いだ。
「分かった!俺も出る!」
彼に追随する様に、イライジャも艦橋から飛び出し、己の愛機の下へと急いだ。
「私も参りますわ!」
彼等に続き、セシリアも自分の機体へと急ごうと動いた。
それを見た風花は、声をかけずにはいられなかった。
「セシリア!いってらっしゃい!!」
「えぇ、また後で!」
彼女の声に振り向き、微笑みと共に返しながらも、セシリアは艦橋から出て行った。
自分に為せる事をしよう、彼女の姿を見た風花は、ロレッタの隣のコンソールの前に腰掛け、自分にできる事、オペレートをしようとした・・・。
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誰よりも真っ先に出撃した劾は、ブルーフレームセカンドGスナイパーパック装備を操縦し、狙撃体勢に入っていた。
スナイパーの名称から理解できると思うが、本装備は狙撃戦に特化している。
主に、長距離からの狙撃、及び被害をなるべく少なくするための部位破壊に適しており、先の輸送船強襲事件も本装備を用いている。
右背面に大型スナイパーライフルを、左腕にはハンドガンを装備している。
なお、スナイパーライフルはミラージュコロイドより発展させたゲシュマイディッヒ・パンツァーの技術を応用し、僅かながらもビームの軌道を変更する事が出来る。
しかし、射撃に特化した分、接近された場合や高機動を要される場面では機動力の低下で不利になるというデメリットももちろん存在していた。
だが、この機体に乗るパイロットは生ける伝説とまで言わしめる最強の傭兵、叢雲 劾、
MS操縦のテクニックは超一流、状況判断の速さも並のパイロットを大きく上回っている、装備の不利があったとしても、賊が相手ならば歯牙にもかけぬ程の実力だ。
そんな驕りを見せず、彼は洗練された動きでスナイパーライフルを展開、所属不明機が接近してくる方に向けた。
「俺とイライジャで迎撃を行う、セシリアは輸送船の護衛を頼む。」
「わかりましたわ、お気を付けて。」
劾の指示を聞き、セシリアはデュエルを駆り、輸送船に張り付く様に護衛に回った。
狙撃用スコープを覗き、彼は接近してくる敵機の姿を捕え様としていた。
彼の目に、徐々に接近する機影が映り始めるが、そのシルエットは今まで見た事のない物だった。
「あの機体は・・・、なんだ・・・?」
「どうしたんだ、劾!?」
彼の呟きに反応したイライジャが声をかけてくるが、今の彼にはそれに答えている暇はなかった。
「(なんだ・・・、この奇妙な感覚は・・・?)」
今まで感じた事の無かった感覚に、彼は一気に警戒の度合いを強めた。
彼はトリガーに掛けた指が、グローブの中で嫌な汗で湿って行くのを感じていた。
それは、彼がこれまで数える程しか感じることの無かった、不気味さからくるものであった事も、彼は気づいていたのだ・・・。
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次回予告
ドレッドノートに隠された秘密を知るロウ達、その頃、サーペント・テールは窮地に立たされていた。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
天を往く者
お楽しみに。