機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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約4ヶ月ぶりでございます(白目)

長らくお待たせして申し訳ありません。

こちらは不定期になりそうですが、なるべく早期の完結をめざし、ぼちぼち書いて行きます。

それでは、ごゆるりとお楽しみ下さいませ~。


宙に戻りて

side一夏

 

「お帰りなさいませ一夏様、御荷物をお持ちいたします。」

 

約一週間ぶりに、我が家であるアメノミハシラへと戻った俺を、フォーソキウスとサーティーンソキウスが出迎えてくれた。

 

ホント、律儀な奴等だ、ソキウスって奴は・・・。

まぁ、その境遇自体には色々思う処はあるがな。

 

っと、今はそれどころじゃなかったか。

今は、俺の後ろにいる奴等の事を考えてやらねぇとな。

 

「あぁ、すまない、彼等の軍籍を作ってやりたい、悪いが管制室へこれをすぐに届けてくれ。」

 

軍服の懐より、俺はガルド達5人から預かったオーブの軍籍証をフォーソキウスに、仕入れて来た土産をシックスソキウスにそれぞれ手渡す。

 

オーブ沖での戦闘の後、俺に付いて来ることを選んだ5人を連れて戻った訳だが、やはりと言うべきか、周囲に控えているアメノミハシラのスタッフの表情には怪訝の色さえ浮かんでいる。

 

まぁ仕方あるまい。

俺とて、馴染んでいるとは言ってもここ数年で参じた新参者だ、高位にいるとは言っても、出過ぎた真似は古参のスタッフには反感を与えてしまう危険だってある事に変わりは無い。

 

だが、だからといって、俺は救える奴等をみすみす見捨てたくなんてない。

たとえ、それは俺の自己満足だったとしても・・・。

 

「ミナ様がお留守の間に、よろしいのですか?」

 

ソキウス達も、表情は崩さないまでも、何処か怪訝の色が窺える声色で尋ねてきた。

 

オーブを発つ前に、暫く地球に留まるミナから、アメノミハシラへ戻れという伝言を受け取っていたからこそ、俺はこうも早く宙に戻って来たという訳だ。

 

ミナが地球に残った理由はと言うと、南米やユーラシアなどの、連邦の圧政を受けている地域に赴き、自らの足で、想いで立ち上がらせるために、天空の宣言の理念を説くためだ。

 

ミナが不在の間、俺は総帥代理としてアメノミハシラを守護する役目を負ったという訳だ。

他の幹部も護衛と、そして、アメノミハシラが行う、支援と言う物に説得力を持たせるために同行している。

 

まぁ、それはさておき・・・。

 

兎角、ミナの命令を第一にしている彼等にとって、如何に主に近い立ち位置にいるとは言っても、俺の命令は度し難いものなのだろう。

 

「分かっている、咎ならいくらでも受けるさ。」

 

だ、そんな事ぐらい百も承知だ。

 

面倒は俺が全部背負い込めばいい。

軍籍さえ作ってしまえば、彼等の居場所を確保できる。

 

それに、ミナも俺が何かをしようとしていた事ぐらい勘付いていただろうし、今後の情勢を鑑みて、腕利きを揃えておきたいとも考えていただろう。

 

「それに、彼等はオーブで虐げられた者達だ、アメノミハシラとして救うのが道理だろう?」

 

「そうですか・・・、了解いたしました。」

 

理詰めで返したところで、ソキウスからはそれ以上の答えが返ってくる事は期待できなかった。

 

まぁ、コイツ等との付き合いもそれなりに長い付き合いだ、最早分かり切った事ではあるけどな。

 

俺に一礼し去って行くソキウス達を見送り、俺は改めて5人のパイロット達に向き直る。

 

地球から出たことが無いのか、それとも緊張のしすぎか、直立する5人の表情には疲れが見て取れた。

 

仕方あるまい、昨日まで地球で使い潰されるだけだったのが、今では天の城の一員、状況が動きすぎて困惑するのも無理は無かった。

 

「もう良いぞ、楽にしろ。」

 

俺が待機指示を解くと、彼等は体勢を崩し、少し足を開いて楽な体勢を取った。

とはいえ、表情だけは硬いままだったが。

 

「遠路ご苦労、と言いたいところだが、休むより先に見て貰いたいものが有る、付いて来い。」

 

そう、俺はまだ約束の一端を果たしていない。

口だけの男と思われないためにも、まずはそれを果たしておかないとな。

 

俺が踵を返し、目的のMSがある方へ向かうと、彼等だけでなく近くで様子を窺っていた衛兵が2名、俺達を追ってくる。

 

まぁ、仕方ない事か。

俺はこの城の№2、そして彼等は俺が引き入れたとはいえ、所詮は部外者でしかない。

何時、俺に対して危害を加えるか分かった物ではないと言う危機感もあるのだろう。

 

ホント、この城の人間は忠に篤い方々がいて助かるよ。

俺も期待に応えたくなっちまうから、尚更だな。

 

ま、そんな俺個人の感傷よりも、今は新入りの教育をしないとな。

 

そう思いながらも辿り着いた格納庫の奥、そこには既には先客の姿があった。

 

「お帰りなさい、閣下、久し振りの地球はどうだった?」

 

粟色の髪をポニーテール風にまとめた眼鏡の美女、リーカ・シェダーの笑みが俺達を出迎えた。

 

作業服に着替えていると言う事は、かなり長い事此処に居るな?

なんせ、此処は新たに設けられた、リーカの機体と新型試作機の為のスペースだからな。

 

「良い収穫があった、君と玲奈の直属の部下候補を見付けて来れた。」

 

「そ、その話、本気だったのね・・・。」

 

冗談な訳あるかよ。

何せ、この城の可変機乗りは2人しかいないんだ、その二人の部隊を作らずしてどうするってんだ。

 

それに、足の速い部隊があれば色々と動かし易いんだわ。

 

「お、織斑卿、この方は・・・?」

 

俺達二人で話し込んでいると、ファンファルトがおずおずと尋ねてくる。

いけねぇいけねぇ、今はそれどころじゃなかったな。

 

「紹介が遅れたな、彼女はアメノミハシラ少将、リーカ・シェダーだ。」

 

「よろしくね、私も新参者だし、一緒に頑張ろ!」

 

一夏の紹介に、リーカはまだまだ慣れないアメノミハシラ式敬礼で5人に微笑みを向けた。

 

だが、それに驚いたか、5人は目を丸くして彼女を見た。

 

「し、少将・・・!?」

 

まぁ仕方あるまい、俺も若いと自覚してはいるが、彼女ほどの若さで少将はまずいないだろう。

 

俺が推したから人ごとじゃあ無いんだけどさ・・・。

 

「まぁ形式的なモンだ、君らも名乗りたまえ。」

 

それはさて置き、今は馴れ初めを優先させないとな。

そうでなけりゃ、ここに来た意味が無い。

 

「ガルド・デル・ホクハであります、オーブでの階級はニ尉でした。」

 

「ファンファルト・リア・リンゼイであります、元第八兵隊所属の三尉でした。」

 

「サース・セム・イーリアです、階級は准尉、でした・・・。」

 

「ホースキン・ジラ・サカトであります、元三尉です。」

 

「ワイド・ラビ・ナダガ元三尉であります、少将、良ければこの後お食事でも・・・。」

 

「鞍替え速いな、ワイド。」

 

お前はカガリの夫になりたかったんじゃないのか・・・?

まぁ、あの小娘の夫になった奴は、将来苦労するだろうな、色んな意味で。

 

「あはは、面白い子もいるんだね、でも、一応彼氏いるのよ。」

 

それを気にした様子もなく、リーカはからからと笑って切り返していた。

 

肝の強い女は嫌いじゃない、コートニーが選んだ女なのだから尚更だ。

 

だが、そんな事を考えていても話が進まない。

本題に入らせてもらおうか。

 

「そういう事だ、まぁ自己紹介はこの辺で良いだろう、リーカ、彼等の機体を見せてやってくれ。」

 

「了解です閣下♪」

 

リーカに依頼し、格納庫の機体にスポットライトを当てる。

 

そこにはプロトセイバーを含め、10機のMSが置かれていた。

 

「一番手前にあるMSは、リーカの乗るプロトセイバーだ、元々はザフトで造られた機体だが、裏取引で此処に在る。」

 

「これがザフトのMS・・・、なんと美しい・・・。」

 

PSダウンを起こしているその機体に釘付けになる5人に説明しながらも、俺はコンソールを操作してハンガーの位置を入れ替える。

 

そして、1機の機体を彼等の前に晒した。

 

「これは、ムラサメ・・・?」

 

その機体は、オーブでの制式量産体制に入った可変MS、ムラサメに良く似ていたためか、ファンファルトが驚いた様に呟いた。

 

だが、オーブと断交に近い状態のアメノミハシラが、オーブで配備されているモノをそのまま採用するはずもない。

 

「この機体は、正確にはムラサメでは無い、型式番号 AY-TMS30 ヤタガラス、プロトセイバーの完全量産を目指して製造された機体だ。」

 

そう、この機体は正確にはザフト製可変MS、セイバーの解析と量産を目的に製造されており、可変機構もムラサメでは無くセイバー寄りとなっている。

 

「ムラサメよりも加速力がある機体、いわばじゃじゃ馬だ、乗りこなすには骨が折れるぞ。」

 

そのためか、ムラサメよりも、旋回や加速力を含めた空戦能力は15%向上している。

また、武装面も低燃費且つ強力なビーム兵装を搭載し、更にはオプションとしてミサイルや長距離レールガンなどの装備も行えると言う、量産機としてはこれ以上ない性能に仕上がっている。

 

尤も、パイロットが受け持つ処理はそれ相応に高度な物を求められるようになるし、高い操縦技術も必要となってくる。

 

エース級が使うには申し分ない機体だが、やはりテスターは多いに越した事はない。

 

だからこそ、彼等にチャンスを与えるついでにアメノミハシラの役に立ってもらおうと言う訳だ。

我ながら嫌な事をするもんだ、進むしか道を残してないんだからな。

 

「だが、今は休め、明日より俺とリーカとの模擬戦で感覚を掴んでもらう、以上、解散!」

 

全員に向き直り、俺はこの場の解散を宣告し、自室に戻るべく彼等の前より去った。

 

さて、彼等がどうやって俺の期待に応えてくれるか、楽しみにしていようじゃないか。

 

アメノミハシラの為に、その力を活かしてもらうためにもな・・・。

 

sideout

 

noside

 

「織斑卿、少しお時間よろしいですか?」

 

格納庫でのやり取りから2時間後、一夏の自室に訪問者が現れた。

 

その者は、一夏がスカウトしたガルドとファンファルトだった。

 

「どうした?荷物の整理は終わったのか?」

 

尋ねてきた2人を無碍にするわけにはいかないと、一夏は彼等を自室に招く。

 

休もうとしていたのだろうか、シャワーを浴びた後のバスローブを羽織っており、テーブルの上にはワインボトルが1本とグラスが置かれていた。

 

元々大酒呑みである一夏だが、オーブに降りていた間は禁酒していたらしく、眠る前の1杯と洒落込むつもりだったのだろう。

 

「はい、上士官の部屋をいただけるとは思っても見ませんでしたが・・・。」

 

一夏の問いに、ファンファルトは苦笑しながらも頷いた。

まさか上士官、主に佐官クラスが使用する部屋を与えられるとは思っても見なかったのだろう、驚きと緊張がその表情からは窺い知れた。

 

「マントはやれんが、せめてこれぐらいはしてやらんとな、まぁいい、掛けたまえ。」

 

上士官の待遇を与えねば、新型テスト機のパイロットには見合わないと言う一夏は、ガルドとファンファルトに笑みつつも着席を促し、客人用のグラスを2つ取り出して二人の前に置く。

 

上官に勧められては断る訳にもいかず、ガルドとファンファルトは顔を見合わせて席に着き、一夏のグラスと自分達のグラスにワインを注ぐ。

 

「悪いな、招いておいて酌をさせるなんてな。」

 

「上官に酌をさせるほど無礼な事なんて無いでしょうに。」

 

からかう様に話す一夏の言葉に、ファンファルトは苦笑しながらもガルドを見た。

 

ガルドもまた、その通りですと言わんばかりに苦笑しながらも頷く。

 

上下関係は弁えている辺り、彼等はそれだけ忠義に篤い人物で在ると窺える。

 

「まあいい、まずは乾杯といこうじゃないか。」

 

一夏が掲げたグラスに、二人も応じて自分達のグラスを掲げて乾杯する。

 

彼等はグラスに注がれた赤い液体を咽に流し込んで行く。

 

「ふぅ・・・、これで君達も俺の部下だ、契約の盃にしては洒落てるだろ?」

 

空になったグラスを置き、一夏は一息ついて新たな部下達に目配せする。

 

それは、今の状況を楽しめているかと探るようでもあった。

 

「えぇ、本国でもした事の無い事でしたから、新鮮です。」

 

問われたガルドは、どう答えればよいモノかと悩みながらも、自身の思う処を話す。

 

この様に上官と談笑しながら呑む酒など、本国では経験した事は無いし、親子の盃のような形など、これまでに見た事さえなかった。

 

その様な事を平然と行う、目の前にいる男の度量には目を見張るものが有るのもまた事実。

故に、彼は一夏に従う事を受け入れ、世界と戦う道を選んだのだ。

 

「ワイドやホースキンは如何思っているかは分かりませんが、俺とガルドは貴方に従うと決めました。」

 

ファンファルトもまた、ガルドと同じ想いを抱いていた。

 

大した武功を挙げる機会も与えられないオーブ軍の中で、出世を焦るばかりで結局は良いように使われるだけだった自分を見出したのは、他でもない一夏だった。

 

その真意がどこにあるかは分からないが、自分達に地位と機体を与えたのは紛れもない事実であり、それ以上に誰も死なせないと言う想いも信じるに値するモノだった。

 

ならば、その恩と想いに応える事こそ、今の自分に与えられた使命であるとも感じているのだろう。

 

「そりゃ嬉しい事を言ってくれる、なら、俺はお前達を死なせない様に頑張らないとな。」

 

その言葉に、一夏の表情が若干強張るも、それを悟らせないように笑みを浮かべた。

 

ファンファルトもガルドも知らぬ事だったが、一夏は嘗て、自分を慕った部下が、自分を庇って戦死したと言う過去がある。

 

既に2年も前の事になるが、その事件は今だ彼の心に影を落としていたのだ。

 

「(結局、俺は何一つ前に進めてない、か・・・、嫌になるよな全く・・・。)」

 

それを晴らせないのも、結局は自分が何も答えを見付けられていないからだと気付いているからこそ、彼は余計に自己嫌悪に陥るという悪循環に居た。

 

それを晴らせる者は、何処にもいないのだ。

 

そんな心境を目の前の部下達に気付かれないように小さく息を吐き、彼は自棄のように酒を咽に流し込む。

 

今だ振り切れぬ過去と、死なせてしまった者達への悔い、そして、自分自身への不甲斐無さ、怒りを全てのみ込むように・・・。

 

sideout

 




次回予告

答えの出ぬまま部下の指導を行う一夏の前に、彼は姿を現す。
それは、決して両者の望む形では無かった・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

迷える瞳

お楽しみに
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