機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY 作:ichika
side一夏
「今日の訓練はここまでだ、全員、機体の調整を行った後休息に入れ。」
アメノミハシラに戻ってから1週間が経った頃、俺はリーカと共に、新しく入って来た元オーブの5人に訓練を着ける日々を送っていた。
元々パイロットとしての修練は積んできた軍人だったから、然程教えると言うほどの事をしている訳でも無かったが、やはり出力の高い可変機を扱うのは難しかった様で、操縦に四苦八苦していたな・・・。
まぁ仕方あるまい、ムラサメもまだ量産が始まったばかりの機体だ、名のあるパイロットや中級以上の氏族に優先的に配備されているのが現状だ。
何せ、旧式のM1がまだ現役を張っているからな、下級氏族の彼等は航空機にすら乗る事さえ稀だったに違いない。
尤も、アメノミハシラもM1Aを主戦力としている点では同じなんだが、オーブよりはマシな筈だ。
それはさて置き・・・。
「ハッ!御教授感謝します!織斑卿!!」
ガルドの敬礼に倣うように、他のメンバーも敬礼を返す。
ホント、生真面目な奴等だよ。
特にガルドとファンファルトは、アイツを思い出してしまうほど、俺を慕ってくれている。
だからかどうかなんて考えなくても分かる。
俺もついつい熱が入り、いつも以上の訓練をしてしまった。
まぁ、結局俺は何も出来ていないままで、何も変わってなんかいないんだがな・・・。
そんな俺の感傷なんて、今はどうでも良い、か・・・。
「大分動きが様になって来たな、変形もよどみなく出来る様になっているのは流石だよ、スカウト出来て何よりだ。」
「お褒めに預かり光栄であります、よろしければこの後もう一戦お願いできませんか?」
俺が褒めると、ファンファルトは何処か喜色を浮かべながらも俺に教導の続きを志願してくる。
面白い誘いだが、この後は予定があるからな。
「すまないが、次は俺とリーカが模擬戦をするんだ、同格同士でやり合うのも悪くない。」
「貴方程のパイロットと同格って、私そこまでじゃないよ・・・?」
何を言う。
リーカの腕はこの俺が良く知っているさ。
新型機のテストパイロットに成れるだけでなく、高性能可変機を手足のように操れるだけの実力は、アメノミハシラ幹部の中でも高位に在ると見て良い。
だからこそ、その腕を買っている事は、紛れもない俺の本心であった。
「そんな事は無い、君はセシリアとシャルと同格なんだ、俺達に近いパイロットってのは間違いないだろ。」
「もう、煽てるのが上手なんだから。」
俺の褒める言葉がまだむず痒いか、リーカは苦笑しながらも俺を小突き、さっさと愛機へと乗り込んでいく。
さてと、相方がやる気になったんだ、俺も行かないとな。
「ま、そういう訳だ、第二戦闘配備のまま、見学しておけ、ここは常に狙われているからな、機を抜くんじゃないぞ。」
部下たちに指示を下し、俺はヘルメットを被り直してストライクSへと乗り込むべく動く。
最近は10機ロールアウトしたヤタガラスの内、ソキウス用に調整されていた機体を拝借し、5人の新兵を鍛える事に重点を置いてMSに乗っていたからな、自分の機体に乗るのは実に10日ぶり、オーブでの戦闘以来だ。
「ハロ、システムチェック、今回は機体の調整を行いながら模擬戦を行う、付き合ってくれるよな?」
OSの調整を行いながら第2の相棒であるハロに機体のシステムをチェックするよう声を掛け、
『シ~ンパ~イナイサァ~!!』
少し電子音声の音程が高かったような・・・、プログラムが少しバグったか?
まぁ、気にすることじゃないか・・・。
そんなくだらないことを考えている内に機体はカタパルトへと運ばれていく。
『閣下、お先にどうぞ。』
「ウチの空気にずいぶん染まった事で・・・、まぁ、いいだろう。」
リーカの軽口に、今はここを空けている玲奈の面影を見たが、そんなこともまた些末なことだ。
『進路クリアー、システムオールグリーン!AS-GAT-X105 ストライクS、発進どうぞ!』
「了解、織斑一夏、ストライクS、発進する!!」
いつもと同じように漆黒の宇宙へと飛び出し、いつものようにマニューバを確かめるように機体を操作する。
「相変わらず良い調子だ。」
ジャックを筆頭とする整備士たちの腕に感服しながらも、俺は相方が来るのを待った。
この、相手を待つ時間も精神統一の一つだと考えれば案外悪くもないものだ。
『リーカ・シェダー、プロトセイバー、GO!』
しかし、それもすぐに終わったようだ、薄桃色の装甲色に調整されたプロトセイバーがMS形態のまま飛び出してくる。
俺が乗っていた時、速度重視では無く、機体の安定を優先した調整を行ったための装甲色だが、奇しくも彼女のパーソナルカラーと合致していたのは出来過ぎだろうな。
まぁ、俺のストライクSも、俺の好みの出力に合わせたらパーソナルカラーである白になっただけだけどさ。
『お待たせ一夏、条件はいつもので良い?』
「あぁ、問題ないよ、いつでも始めてくれ。」
いかんいかん、模擬戦するんだっけな。
気を引き締めつつ、リーカが配置についたことを確認し、俺は両腰のホルスターからビームピストルを引き抜き、いつでも攻撃に移れるように構える。
それに反応し、リーカもライフルを構え、警戒するように表情を引き締めた。
「君と実際に戦うのは、そういえば初めてだったな。」
『そうだったね、何時もはセシリアたちと戦ってることの方が多かったわね。』
俺とリーカもそれなりに付き合いはあるが、俺はコートニーや宗吾と、リーカはセシリアやシャルと戦うことの方が多かった。
だが、共に戦線を張った事もある間柄だ、手の内は熟知している。
手練れを相手にする時は、いかに模擬戦でも気を抜けば死が隣り合わせにある事を忘れてはいけない。
まだ、死ぬわけにはいかない、からな・・・。
「では、セシリアとシャルが認める腕、俺にも披露願おうか!」
『望むところよ!!』
俺がピストルの銃口を向け、ビームを撃つよりも早くリーカは機体を動かし、俺の背後を取るべくプロトセイバーの機動力を動かす。
良い動きだ、無駄の少ない機動で相手の背後を取る、一騎打ちにおける先手を取るためのセオリーだ。
「さすがに速いな!」
だが、それはMS乗り、いや、戦人にとっては至極当然の事でしかない事は分かっている。
だからこそ俺も動き、背後を取り返そうと機体を動かす。
ストライクSの性能をフルに活かし、プロトセイバーに向かって行く。
あちらは速度の出る機体だ、ならば、こちらは小回りを優先させて攻めればいい、それで対抗できる。
それに、負けるのは気に喰わないんでな・・・!
フットペダルを踏み込み、プロトセイバーが向ける銃口を蹴り飛ばし、ビームピストルで牽制射撃を行う。
『くっ・・・!そっちもやるね・・・!!』
弾かれたプロトセイバーの体勢を立て直し、浴びせかけられるビームを躱しながらも、彼女は機体を縦横無尽に動かし、俺の死角を狙ってくる。
良い手だ、だが、その攻め方は俺が何度もやって来た事だ、対処法も、自分の死角も承知済みだ!!
「甘いっ!」
死角にプロトセイバーが入った瞬間に後方宙返りし、撃ち掛けられるビームを回避しながらも、その流れの中でレールガンを発射する。
『きゃぁっ・・・!?』
それは狙い違わずにプロトセイバーの右腕に直撃、握られていたビームライフルを弾き飛ばす。
「まずは一本!!小手有りだ!」
『くっ・・・!嘗めないでねっ!!』
リーカはビームサーベルを展開、こちらに接近戦を仕掛けてくる。
俺の得意な近接戦を挑む辺り、挑戦者の心持にいるんだろうな、だが、それを蹴る程俺は鬼じゃない!
「そう来なくちゃな!!」
『勝負よっ!!』
負けじとアスカロンを二本とも抜き放ち、プロトセイバーと切り結ぶ。
此方は旧式の改修型、あちらは最新鋭実験機、パワーの差はあまり無いらしいが、格闘戦のノウハウがあるのはこちらだ!!
一気にスラスターを吹かしつつ、プロトセイバーを押し込んで行く。
『こ、こっちが押し込まれてる・・・!何て腕なの・・・!?』
「それはこっちのセリフだ・・・!」
俺が本気出してるのに、少しずつしか押し込めないだと・・・!?
流石、元ザフトのエースだ、アメノミハシラ大幹部に比肩しているとは恐れ入る!!
「だが、格闘戦では負けんよ!!」
近接戦闘は俺の領域だ、そこで負けるなど、名折れも良いトコロだ!!
対艦刀を滑らせるように動かし、受け流す様にしてプロトセイバーの体勢を崩し、回し蹴りをその背に叩き込む、
『きゃぁっ・・・!?さ、流石に格闘戦じゃ勝てない・・・!!』
近接戦を挑むのは不利と即座に判断し、彼女は機体をMA形態へ変形させ、圧倒的な加速で俺を攪乱し始める。
「流石に速い・・・!これはマズイかな・・・!?」
如何に小回りが利くとは言え、MAの加速力は如何にストライクSでも追いつけない速度を叩きだす。
間合いに捉える、そのタイミングを計る事さえ、相手が超一流のパイロットでは難しいのだ。
良いぜ・・・!それでこそ俺が模擬戦の相手に選んだだけはある。
だからこそ、負けられん、彼女の腕に応える為にも、俺は見せなければならないんだ!!
小回りに劣る対艦刀を戻し、ビームナイフを展開、MAでは追い切れない程に縦横無尽に動き回り、的を絞らせない様にする。
その分身体に掛かる負担は増えるし、並のパイロットならレッドアウトしかける勢いで動く。
だがこれで、この方法でMAの欠点である、直線機動しか出来ないと言う弱点をあぶり出し、こちらから攻めやすいように誘導する。
『嘘でしょ・・・!?あんな無茶な機動、身体が堪え切れる訳・・・!?』
「生憎、俺の身体は無駄に頑丈でね・・・!この程度の機動で、潰れる訳がねぇ!!」
完全に動きを乱したプロトセイバーの死角に回り込み、一気に決着を着けるべく機体を操った。
『し、しまった・・・!?」
「これで、チェックメイト・・・!!」
終わらせようとした、まさにその時だった。
ストライクSのコックピットに緊急通信が入る。
「なんだ・・・!?こんな良い時に・・・!!」
折角の勝負に水を刺された心持になったが、通信の内容的に考えて重要な事に他ならない。
苛立ちを内心に抑え込み、俺はその通信を開く。
『御大将!!まずい事になった!!』
「何があったルキーニ!?」
ルキーニがこうも焦って俺に連絡してくるなんて・・・!
まさか、ミナ達の身に何か・・・!?
『ザフトの特務隊がアメノミハシラを狙って接近中だ!!もうすぐ近くまで来ている!!』
「何だと・・・!?」
ルキーニの情報網を掻い潜ってこの城に攻め込むだと・・・!?
しかも特務隊だと・・・!?
なんてこった・・・!特務隊クラスの敵なんて、幹部の大多数が出払っている今、追い払う事すら出来ないかも知れんな・・・!!
「ちっ・・・!管制室」
『はい、閣下!!』
だが、このまま何もしない訳にもいかん。
急遽開いた回線にも、オペレーターは慌てる事無く応じる。
「全隊にスクランブルを掛けろ!!ザフトの艦隊が接近している!」
『了解しました!こちらも広域センサーで感知!残り3分で有効射程に入ります!!』
3分か・・・!一体そんな近くに来るまで何故気付かなかったのか・・・!
その方角へ目を向けると、MSのスラスター光らしき光も向けられ、向こうもこちらを捕捉している事が窺えた。
「まさか、ミラージュ・コロイドでの慣性航行で近くまで来ていた・・・!?」
なんて古典的でめんどくさいやり方で来たんだ・・・!
一杯喰わされたぜ・・・!!
しかも、総帥以下幹部の大半が掛けている時に来るとは、デュランダルは相当嫌な手を知ってやがるぜ・・・!
「リーカ!俺達で先行して敵を食い止める!」
『う、うん・・・!!」
だが、嘆いてばかりいられない・・・!
俺達の家は、俺の手で護ってみせる!!
ストライクSのフットペダルを踏み込み、MA形態のプロトセイバーを追ってザフト軍が迫る方へと機体を急がせた。
数はざっと一個中隊規模、か・・・!
ちょいと厳しいかもな・・・!
「リーカ、死ぬなよ・・・!コートニーに顔向けできんからな・・・!」
『なにそれ・・・!閣下を死なせる方が、皆に顔向けできないよっ!!』
良く言うぜ・・・!
その返しに苦笑しながらも、俺は機体の速度を上げて突っ込んで行く。
会敵まで残りわずかとなった時だった、それは唐突に訪れた。
『聞こえるか、アメノミハシラ元帥、織斑一夏・・・。』
「『ッ・・・!!』」
その声は、俺とリーカに衝撃を与えるには十分すぎる程だった。
「なんで・・・!?」
『どうして・・・!?』
その声は、俺達にとっても大切な男の声・・・!
俺の・・・、俺の・・・!
『こちらはザフト特務隊≪ミスティルティン≫隊長、コートニー・ヒエロニムスだ・・・、即刻、アメノミハシラは武装解除しろ・・・!』
その声と共に、青い装甲色を持ったガンダム、インパルスタイプのMSが急速に迫り、俺達の目の前で停止する。
「『コートニー・・・!!』」
俺の親友であり、リーカの大切な人、コートニーだった・・・。
sideout
次回予告
予期せぬ友との望まぬ再会に、一夏の銃口は精彩を欠く。
しかし、それが彼の甘さでもあった・・・。
次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY
墜ちる白
お楽しみに~