機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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御無沙汰しています。

四か月以上もお待たせしてしまい申し訳ありません。

ウルトラマンの方で鬱展開が一区切りついたので、今度はこちらの番ですね(黒笑)


墜ちる白

noside

 

「何故・・・、何故なんだ・・・!?」

 

地球衛星軌道上、アメノミハシラがある宙域にて、ザフト軍と接触した白亜のMS、ストライクSのコックピットで、一夏は考えもしなかった展開に理解が追い付いていないのか、困惑の声を上げた。

 

その表情は、彼の部下が見れば愕然とするような、らしくも無いほどに取り乱したように冷静さを欠いている様にも見えた。

 

驚愕のあまり目は見開かれ、唇は小さく震えていた。

 

それだけ、彼は今の状況を受け入れる事が出来ていないのだろう。

 

「なぜお前がここにいる・・・!コートニーッ・・・!?」

 

「・・・。」

 

一夏の血を吐く様な問いにも、コートニーはただ押し黙るばかりだった。

 

応えたくとも応えられない。

雰囲気がそう物語っていた。

 

「もう一度警告する、アメノミハシラは即刻武装を解除、全面降伏を要求する、応じなければ、武力を以て対処させてもらう。」

 

張り詰めた空気の中、それ以上を問われたくなかったか、コートニーは警告文を読み上げるかのように、努めて機械質に告げた。

 

その様子に、一夏はデジャブを覚えた。

 

まるで一緒なのだ。

嘗て、自分自身がそうであったように、自分自身を器と、人形と仮定した時と、まるで同じだった。

 

痛みも何も感じない様に心を何処かへ追い遣った、あの虚ろな自分の姿と、今のコートニーがダブって見えたのだ。

 

「やめろ・・・!やめるんだ、コートニーっ・・・!!その先に行くんじゃない!!」

 

その先に、その果てに何が待つか、身を以て知っているからこそ、彼は無意識にフットペダルを強く踏み込み、目の前の機体に迫った。

 

止めなければならない、自分の友が、自分の犯した罪に近い事をしようとしている、それを成そうと心を捨てようとしている。

 

それだけは、何としてでも止めなければならなかった。

 

「要求が拒否されたとみなし、攻撃を開始する・・・。」

 

その行動を見て取ったコートニーは、自身の蒼き機体、デスティニーインパルス3号機を動かし、それを迎え撃つ。

 

「チッ・・・!リーカ!君は防衛部隊の指揮を執ってくれ!コイツは俺が説得する!!」

 

答えが帰って来なかった事に歯がみしつつ、一夏は相方へ指示を飛ばし、アメノミハシラを護る様に伝える。

 

「で、でも・・・!」

 

「今の君ではアイツには勝てない!!早く行け!!』

 

今のコートニーの危険性を理解しきれなかったリーカが声を上げるが、一夏はそれを制して一人でデスティニーインパルスへと向かって行く。

 

今の彼女に、恋人の変わり果てた姿を見せたくないと言う想いもあっただろうが、それでも、彼は一人で対処せねばならない問題だった。

 

デスティニーインパルス

型式番号はZGMF-X56S/θ

ザフトのセカンドステージ機であり、パック換装による万能性を持ったインパルスに、フォース、ソード、ブラストのシルエットを、ストライクのI.W.S.P.のように一纏めにして完成したデスティニーシルエットを装備させた機体である。

 

また、チェストフライヤーにも、肘部にビームブーメランが追加され、両腕部にはビームシールド発生基が新造されるなどの改修が施されており、機動力、火力、近接格闘能力の全てにおいて、インパルスの各シルエットのそれを上回っている。

 

更なる新型の開発の為に、セカンドステージ機の中でも特に性能が高かったインパルスがベースとなり、実験機として計4機が開発されている。

 

だがそれだけではない。

コートニーが駆るデスティニーインパルス3号機は、一夏のストライクやストライクSから得た戦闘データを余す事無く使用しており、単純な戦闘能力はそれこそ、ストライクSの完全上位互換と言っても過言ではない領域にあった。

 

それを、元から特務隊長レベルにあったコートニーが使えばどうなるか、その結果は想像に難くはない。

 

親友を止めようと必死で機体を動かしながらも、牽制としてビームピストルで撃ち掛けるストライクSの攻撃の悉くを、デスティニーインパルスは僅かに機体を動かすだけで回避、ビームライフルを連射しながらも一気に距離を詰めていく。

 

「こ、この動き・・・!まさか、俺のッ・・・!!」

 

自身の動きの幾つかがフィードバックされている事に気付いたのだろう、一夏はデスティニーインパルスの機動に歯がみする。

 

贔屓目抜きにしても、ストライクSは核動力機を除けば最高峰の性能を持つ機体だと断言でき機体である。

だが、それ故に、敵が戦闘で得るデータの質も必然的に良質な物になる。

 

それを与えたのは、コートニーのため良かれと思ってやった自分自身。

 

それが今、自身の首を真綿のように締め付けていると考えると、一夏はどうしようもなく歯がみしたい心持になった。

 

「なぜなんだコートニー!!何がお前をそうさせる!?」

 

周囲のザフトMSの動きと、守備隊に先じて戦線を開いたリーカの様子に気を配りながらも、一夏はデスティニーインパルスの動きに追い付くべく、ストライクSを操る。

 

一夏とコートニーの技術的な差はほとんど無く、寧ろ、得意とするスタイルも非常によく似ている。

 

だが、今のコートニーは、一夏がかつてそうであったように、心のリミッターが外れかけている事が窺える。

 

その証左に、一夏の動きの先の先を読み、無駄のない動きでフラッシュエッジによる投擲を行い、回避する先々へビームライフルによる攻撃を仕掛けていた。

 

無駄のない、あまりに冷たい攻撃に、一夏は一気に自身の最大レベルによる警戒を持ち、アスカロンを抜刀、機体の限界を無視した機動で射線を回避、一気にデスティニーインパルスとの間合いを詰めていく。

 

それを見て、小手先だけで落とせない事を元々知っているからか、エクスカリバーを抜刀し、接近に備える。

 

「答えろ!コートニーっ!!お前が何故この城を落とそうとする!?」

 

一夏はアスカロンの一閃でフラッシュエッジを切り裂いて無効化し、ビームをシールドで逸らす様に防いだ。

 

伊達にトップガンを名乗っている程彼も鈍らでは無い、持てる力を使い、何とか凌いでいた。

 

「俺はザフトの特務隊長、議長に命令されれば、こうするのも仕方がない。」

 

「答えになっていないぞ・・・!!お前の本音を聞かせろ!!お前の夢はどうした・・・!?俺達は親友じゃなかったのかッ!?」

 

血を吐く様な一夏の問いにも、コートニーは何も答えずに対艦刀、エクスカリバーでアスカロンを受け止めるだけで、冷然と答えていた。

 

まるで、自分が言う事全てが正しく、間違っていないと聞こえる様な感触のまま、コートニーは一夏に向かって行く。

 

「アメノミハシラの思想は理解はするが、共感しない、そういう事だ。」

 

「ッ・・・!」

 

自分の言葉が届いていない、そう気付いた一夏は唇を噛み締める。

 

本当に嘗ての自分と同じ、思考も全てかなぐり捨てた修羅、その存在が目の前には存在した。

 

「だったら・・・、俺はその思想を護るために戦ってやるよ・・・!コートニーッ・・・!!」

 

修羅が相手なら、自分も何かを護るために修羅にならざるを得ない。

そう判断したのだろう、一夏は覚悟した様に呻きながらも、操縦桿を握り直し、一気にスロットルを開いた。

 

拮抗状態だった二機が、徐々にストライクSがデスティニーインパルスを押して行くように対艦刀を押し込んで行く。

 

だが、それでも一夏は勝っていると言う気がしなかった。

 

何せ、デスティニーインパルスは、ストライクSの力を受け流す様に動き、拮抗状態から離れては胸部CIWSでの牽制を行い、捌いて近付こうと動けばその先に大出力ビームが撃ち掛けられる。

 

「チィッ・・・!何ていやらしい戦い方だ・・・!」

 

実弾に強いとはいえ、PS装甲は対実弾防御力と引き換えにエネルギーを喰う代物である以上、バッテリー機であるストライクSにとってそう何度も受けたくない攻撃である事は事実だった。

 

それを知っていて、牽制として使い、本命を撃ってくるそのいやらしい戦い方に、彼は何とも言えぬ、込み上げてくる苦い何かを感じざるを得なかった。

 

そのいやらしさたるや、嘗ての自分とはベクトルの違う、相手を一撃で屠る事を目的としていた頃の自分とは違う、相手を嬲る様な戦い方だと思い知らされているようだったのだ。

 

だが、今の彼は一城の主に代わり、アメノミハシラの守護を任される身、たった一人と向き合っている訳にもいかない。

極僅かなゆとりを集中させ、アメノミハシラの動向を見やる。

 

漸く守備隊が全機発進したのだろう事が見て取れ、プロトセイバーも数機の敵MSを相手取っていたが、余裕がないのか、敵をアメノミハシラに近付けさせない事で精一杯の様子だった。

 

「コートニーッ!!人形になんかなるなっ!!」

 

その状況に歯がみしながらも、彼は叫ぶ。

その先に行ってしまえば、何時か必ず救いのない泥沼に陥る事となると、彼自身が身を以て知っている事だったから。

 

だが、コートニーは何も答えない。

 

その代りとでもいうのだろうか、次々に繰り出される剣戟に、一夏は徐々に押され始めた。

 

無理もない、彼は本気になれないのだ。

 

今のコートニーが、一番の親友が、嘗ての自分と同じく、誰かの操り人形になろうとしているのだから。

 

だが、その迷いが仇となっているのも事実だった。

 

競り負けた証拠に、右手に握られていたアスカロンが半ばから叩き折られた。

 

「くぅっ・・・!!」

 

「終わりだ・・・、一夏っ・・・!!」

 

「ッ・・・!コートニーッ・・・!?』

 

一瞬だけ揺らいだ声を聞き、一夏はまたも希望を持った。

 

まだ、彼は自分を殺す事に躊躇している、それが分かれば、自分の声は届くと。

 

だが、それよりも早く、エクスカリバーが連結され、そのまま横薙ぎの一閃が叩き込まれようとしていた。

 

「ッ・・・!!」

 

回避をする間もない。

終わる、一夏は目を見開きながらも、唇を噛み締めた。

 

死ねない、こんな所で、死ぬわけにはいかないと・・・。

 

「ダメェェェッ!!」

 

その刹那、漆黒の闇を切り裂く叫びと共に、一条のビームが二機の間を薙いだ。

 

「「ッ・・・!!」」

 

その瞬間、全く同時にストライクSとデスティニーインパルスは動き、互いに距離を取った。

 

「コートニーッ!!もうやめてっ・・・!一夏達と争う事なんてないじゃない・・・!!」

 

防衛隊が完全に出撃し、漸く加勢に動けるだけの余力が出来たのだろう、プロトセイバーが彼等の間に割り込み、リーカがコートニーに向けて叫ぶ。

 

その声は、恩人である友と恋人の間で揺れ、今にも泣きそうな程に霞んでいた。

 

「ッ・・・!?り、リーカッ・・・!?何故ここに・・・!?」

 

今になって漸くリーカの存在に気付いたのだろう、彼は信じられないと言わんばかりに目を見開いていた。

 

恋人が生きていたと言う喜びよりもまず先に、恐怖や困惑が入り乱れた、焦りに心を支配されているようだ。

 

「一夏達に助けて貰ったの・・・!だから、もうやめて・・・!私達が戦いう意味なんて・・・!議長に従う意味なんてないじゃない・・・!!」

 

自分が此処に居る経緯を簡潔に伝えながらも、剣を下ろしてくれと懇願する。

 

自分を殺そうとし、今も望まぬ戦いを強いている議長に忠を立てる必要が何処にあると。

 

「違う・・・!議長は俺に争いをさせない兵器の在り方を教えてくれた・・・!この城を攻略し、それを成す・・・!!」

 

コートニーは頭を振り、自分に与えられた命令が正しいと叫ぶ。

 

その瞳に正気は無く、盲信するしかないと言わんばかりに苦しみだけがあった。

 

「ふざけるな・・・!この城に住む奴等の生活はどうなんだよ・・・!結局、お前が使っている兵器は争いを生んでるじゃねぇか!!」

 

だが、一夏も既に冷静を欠いていた。

その言葉に、この城の主代理としての責任を刺激され、激昂した様に言葉を上げる。

 

「ッ・・・!だまれぇぇっ!!」

 

自分が行っている事が侵略に他ならないと指摘され、コートニーは絶叫に近い声を上げ、光の翼を広げて一夏に迫って行く。

 

「コォォトニィィィッ!!」

 

残ったアスカロンと自身の持てる全てを使って対抗しようと試みるが、機体の地力の差か、それとも組み込まれたシステムの差か、劣勢に立たされる。

 

「くっ・・・!これは、俺が求めた・・・!!」

 

「終わりだッ・・・!墜ちろぉぉぉッ!!」

 

そのシステムの正体に気付くが、それは状況を打開するモノには成り得なかった。

 

体勢を崩され、今度こそトドメを刺すと言わんばかりに振り下ろされるエクスカリバーの一閃が迫った。

 

だが、一夏は何とかアスカロンを犠牲にする事でエクスカリバーを弾き飛ばす。

 

「このッ・・・!!」

 

だが、デスティニーインパルスの武装はそれだけではない。

 

すぐさまテレスコピックバレル延伸式ビーム砲を展開し、隙が出来たストライクSに砲口を向ける。

 

「やめてぇぇぇ!!」

 

しかし、それ以上はしてはいけないとプロトセイバーが二機の間に再び割り込む。

 

これ以上二人が争う必要は無いと、もうやめてくれと・・・。

 

「「ッ・・・!!」」

 

一夏とコートニーは同時にそれに気付くが、既にトリガーに掛けられていた指を外す事には間に合わなかった様だ。

 

「リーカっ・・・!!」

 

撃たれるという感覚が伝わって来たからか、一夏は無意識にストライクSを動かし、プロトセイバーを強引に退かすと同時に自身の機体も射線上から退避しようと動かす。

 

だが、それよりも早く、砲口から閃光が迸り、ストライクSに殺到、機体の右腕を捥ぎ、コックピットのすぐ脇を掠め、装甲を熱量で消し飛ばした。

 

「ぐアァァァァッ・・・!!」

 

その誘爆がコックピット内で起き、一夏は咽が張り裂けんばかりに絶叫する。

 

「あぁっ・・・!い、一夏アァァっ・・・!!」

 

自分が助けられた事に、一夏が叫んでから機体が一切の動きを止めた事で、最悪の事態が起こったと理解したリーカは、半狂乱になりながらも彼の名を呼んだ。

 

だが、彼女よりも絶望していた者がいた。

 

「い、一夏・・・?そんな・・・?うそだろ・・・?」

 

コートニーは、信じられない、信じたくないと言う思いで自身の手を、親友を撃ったその手を愕然と見る。

 

自分が撃った、自分がやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が殺した・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その過ちに気付いた時、彼は恐怖した。

 

酒を酌み交わし、笑い合った友を、この手に掛けてしまった恐怖に呑まれてしまった・・・。

 

「うそだ・・・、嘘だ・・・!ウソだぁァァァァッ!!」

 

受け入れられなかった感情が悲鳴となり、混沌の宙に溶けていくばかりだった。

 

sideout




次回予告

破れた一夏と、友を撃ってしまったコートニー。
過去と今に、二人は苦しむ。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

悪夢

お楽しみに
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