機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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天を往く者

noside

 

「おいおい・・・、冗談だろ・・・!?」

 

ジャンク船〈リ・ホーム〉の格納庫に置かれているドレッドノートのコックピットに乗り込み、機体の詳細を調べていたロウは、その表情を引き攣らせながらも叫んだ。

 

彼が見ていたのはドレッドノートのOSであり、モニターには、

Generation

Unsubdued

Nuclear

Drive

Assault

Module Complex

と言う単語が表示されていた。

 

「これでGUNDAM〈ガンダム〉だって・・・!?」

 

「どうしたんですか、ロウ?」

 

「何かあったの?」

 

その叫びに気付いたリーアムとシャルロットは、ドレッドノートのコックピットを覗き込んでいた。

 

「プレア!なんだよこのOSは!?」

 

「ロウ、これはっ・・・!?」

 

「何々?どうしたの?」

 

ロウはプレアに向けて叫び、リーアムはその表示に絶句、樹里はシャルロットと共にコックピットまでやって来ていた。

 

「はい、これがドレッドノートのOSです。」

 

ロウに問われたプレアは隠す事すらせず、肯定の言葉を返すが、ロウとリーアムの表情はそれによって更に険しいものとなっていった。

 

「ふざけてるとしか思えねぇぞ、これは・・・。」

 

「まさか、そんな・・・。」

 

「何?どうしたの・・・?」

 

そんな二人の様子を不審に思ったのか、樹里はおずおずと尋ね、シャルロットは事の成り行きを見極めんと敢えて尋ねなかった。

 

恐らくは、彼等から発せられる尋常ではない何かに反応した故であるだろうが・・・。

 

「核だよ・・・。」

 

「へっ・・・?」

 

そんな彼女達に答える様に、ロウは小さく呟いた。

 

その言葉の意味を理解できなかった樹里は、冗談よねと言いたげな表情をし、シャルロットはそれだけで何の事かを理解し、口元を押さえていた。

 

「このMSには・・・、核エンジンが積まれてやがるんだよ・・・。」

 

彼が再確認させる様に話した言葉の意味を理解した彼女は、困惑から驚愕へとその表情を変えた。

 

「核!?危ないんじゃないの!?」

 

そう叫びながらも、彼女はドレッドノートから少しでも離れようと身体をばたつかせていた。

 

彼女の反応は尤もであると言えるだろう、なにせ、爆発する確率は低くとも、放射能が漏れる確率は決してゼロと言う事はないのだから。

 

そう、このMS、ドレッドノートは核分裂炉を動力源としていたのだ。

 

ロウとリーアムがこの事に気づいたのにはOSに表示された文字にあった。

 

翻訳すれば、この機体のOSは抑制されない核動力を使用した強襲モジュール複合体である事を物語っている。

 

「十分にシールドされているので大丈夫ですよ。」

 

そんな彼女を安心させる様に、リーアムは少々苦笑しつつも核エンジンが厳重にプロテクトされている事を伝えていた。

 

その言葉に安心したのか、彼女はばたつくのをやめ、シャルロットに引っ張ってもらいつつもコックピット付近に戻って来た。

 

「これで勇敢なる者かよ、ザフトの開発陣には相当ふざけたネーミングセンス持ちがいるみたいだぜ・・・。」

 

ロウは呆れつつも、機体のネーミングについて盛大に溜め息を溢していた。

 

恐らくは、機体の名に籠められた意味を、こんな危険なMSに乗る人間はなんて勇敢な者だろう、というある意味皮肉めいた意味で捉えたためであろう。

 

「で、でも核エンジンって使えないんじゃ・・・?」

 

「えぇ、Nジャマー環境下では核エンジンは起動しません、なのに何故・・・?」

 

樹里の疑問に答えながらも、リーアムも核エンジンが積まれているのかを理解できなかった。

 

確かに、核エンジン自体は連合とザフトが開戦する以前から存在はしていたが、血のバレンタインにおいて、ザフトが連合に行った報復の一環として、地球にNジャマーと呼ばれる核分裂を抑制する特殊物質を大量に埋め込み、地球上において核による発電を停止させた。

 

また、第二のユニウス・セブンを生み出さないために、宇宙空間にも大量に散布され、実質上、地球圏では核分裂炉の使用は不可能になった、筈だった。

 

「奪われたのは・・・、Nジャマーキャンセラー・・・、Nジャマーを無効化する物です・・・。」

 

「なんだって!?」

 

プレアのカミングアウトに、一同は驚愕の表情を浮かべ、彼を注視した。

 

それと同時に、何処か納得がいった様に頷いたり、考え込む様な表情を見せる者もいた。

 

「なるほど、Nジャマーを無効化出来る物を使えば確かに地球のエネルギー問題は解決できますね。」

 

「マルキオのおっさんが欲しがる訳がやっとわかったぜ。」

 

リーアムとロウは彼が語ったNジャマーキャンセラーが持つ意味と、マルキオ導師が何故このドレッドノートを欲しがった理由を知った。

 

確かに、地球にこの技術が下りれば、深刻なエネルギー問題に苦しむ地上の人々を救う事が出来る、故にマルキオはこの技術を欲しがったのだろう。

 

「この戦争が生み出した忌むべき存在・・・、その結果、です・・・。」

 

あからさまに呼吸を荒くし、肩で息をしていたプレアはよろめき、コックピット内に落ちそうになった。

 

「プレア!!大丈夫!?」

 

しかし、彼の隣にいたシャルロットが落ちる寸前の彼を抱き上げ、自分に抱き寄せる事で落下を防いだ。

 

「大丈夫、です・・・、それよりも、早く取り戻さないと・・・。」

 

彼女に抱かれながらも、プレアは身を起こそうともがいていた。

 

しかし、どう見ても尋常ではない彼の様子を黙って見過ごすシャルロットではなかった。

 

「どう見ても大丈夫じゃない!医務室に連れて行くから休む!いいね!?」

 

「は、はい・・・!」

 

有無を言わせぬ勢いで首根っこを掴む彼女のあまりの剣幕に、プレアはある意味で顔を青ざめた。

 

何故だか逆らえない、そんな雰囲気が今のシャルロットにはあった。

 

「(お、お母さん・・・!?)」

 

「(母親だな・・・、まるっきり・・・。)」

 

プレアの首根っこを掴んだまま出入口に向かう彼女に、樹里やロウは子供を叱る母親の姿を見た様な気がした。

 

確かにシャルロットは女性らしさ、そして母性を兼ね備え、尚且つ気配りも良いために実年齢より少し大人びて見られがちだ。

 

本人は年相応に見られないのが少し思う所があれど、それによって気持ちが軽くなる人間も多くいた事だけは紛れもない事実であろう。

 

それはさておき、ロウはシャルロットにではなく、彼女に引っ張られて行ったプレアに、何か得体の知れぬ感覚を覚えた。

 

身体の具合が悪いのは詮索出来ないとしても、何に焦っているのか・・・?

 

Nジャマーキャンセラーが手元に無い事に焦っているのかもしれないが、ロウの目にはその焦り様がもっと別の何か、強いて挙げるとするならば、残り少なくなった時間に追われている焦りに見えて仕方がなかった。

 

「(でも、なんでだ・・・?)」

 

だからこそ彼には理解しえなかった、なぜ人生を歩み始めたばかりの少年が残り時間を気にするのだろう・・・?

 

「(なんなんだ・・・、この奇妙な感覚は・・・?)」

 

言い表せぬ感覚に戸惑う自分を自覚しながらも、彼はドレッドノートのコックピットから降り、艦橋に向けて移動を開始した。

 

その心に幾つかの疑問と気味の悪さを抱えたままに・・・。

 

sideout

 

noside

 

「劾!どうしたんだ!?」

 

リ・ホームが航行するポイントから遠く離れた宙域にて、ブルーフレームを駆る叢雲 劾は接近する所属不明機に対して先制攻撃を掛ける事が出来ずにいた。

 

一体どうしたんだ、そう思ったイライジャは彼に呼びかけるが、彼は押し黙ったままスコープを覗き込んでいる。

 

そこでイライジャは気付いた、こちらに向かって来ているのは只者ではないという事だ、だからこそ劾も彼の問いに答えるだけの余裕が無かったのだ。

 

所属不明機のスラスター光が目視出来る距離になった瞬間、彼の考えを肯定するかの如く、劾からの叫びが耳を打つ。

 

「気を付けろイライジャ!只者じゃないぞ!!」

 

「お、おう!!」

 

その声に気を引き締める間にも、機体のシルエットも次第に見える様になり、彼はジンの右マニュピレーターに装備されているマシンガンを接近する機体に向けた。

 

そして、機体前方100m辺りに、灰色の機体が止まった。

 

彼にはそのMSがジンやシグーの様なザフトMSの外見ではなく、寧ろ劾や知り合いのジャンク屋が乗っている機体に似ている様にも見えた。

 

何せ、形状は異なっているが、連合やオーブのMSに見られるブレードアンテナとツインアイを持ち、より人間に近い姿に見えるからだ。

 

「ほう?偶々見つけた船からよもやガンダムが出てくるとは思ってもみなかったな。」

 

スピーカーから聞こえてきた声は、イライジャ自身と同年代の青年のものだったが、それよりもまず先に、彼は不明機のパイロットが語った、聞きなれない言葉に首を傾げた。

 

「ガンダム・・・?」

 

ガンダム、そんな言葉を彼は聞いた事は無かった。

 

何かの機体の名なのかとも考えたが、自分や劾、そしてここにはいないセシリアの乗る機体の名称にはその様な単語は付いていなかった筈だ。

 

では、ガンダムとは何か・・・?

 

その答えを詮索するよりも先に、不明機のパイロットは言葉を続けた。

 

「貴様ら、キラ・ヤマトを知っているか?」

 

キラ・ヤマトという単語の意味が彼には分らなかった。

 

人物の事か、若しくはその名を冠したシステムか、或いは全くの別物か・・・。

 

何れにせよ、彼が知る限り、キラという存在は聞き覚えの無いものだった。

 

「・・・。」

 

彼も、そして劾もその問いには沈黙を貫く事にした様だ。

 

「返答無しか・・・、ならば消えろ!!」

 

答えぬのなら用はないとでも言う様に、所属不明機は彼等に銃口を向け、ビームサブマシンガンを撃ちかけた。

 

「うわっ!?」

 

「クッ・・・!!」

 

イライジャは機体を射線から逸らす事で精いっぱいだったが、劾は回避しつつも狙いを定め、スナイパーライフルのトリガーを引いた。

 

銃口から吐き出された光条は勢いよく突き進み、不明機に回避すらさせずに直撃した。

 

「直撃だ!!」

 

「いや、駄目だ!!」

 

イライジャはその光景に歓喜の声をあげるが、劾はそうではないと言う風に声を張り上げた。

 

彼の言葉を裏付けるかのように爆煙が晴れていき、左腕に特殊なシールドを展開して健在だった。

 

無論、その装甲には一切の欠損は見受けられず、完全に防ぎ切ったという証明に他ならなかった。

 

「なんだあのシールドは!?」

 

目の当たりにした光景に、イライジャは驚愕の叫びをあげた。

 

MSの装備としては見た事がない、奇怪な装備に驚いたのだろう。

 

「面白い、だが、その強さ、生かしてはおけん!!」

 

「来るぞ!!」

 

所属不明機から聞こえた通信に被さる様に、劾は彼に向けて警告を発した。

 

その直後、所属不明機は彼等に向かって来ながらもビームサブマシンガンを撃ちかけていく。

 

それにやられる程イライジャも劾も甘くはなく、散開しつつ死角から攻撃を繰り出すも、避けられるか防がれるかしてやり過ごされてしまう。

 

しかも、敵機はイライジャではなく、装備の面で有利にあると見たのか、劾のブルーフレームに攻撃を集中し始めた。

 

劾も死角から狙撃を試みるも、全て防がれてしまう事で不利だと判断したのか、敵機がマシンガンの弾倉を交換すると同時にスナイパーパックを排除、ほぼ同じタイミングでハンドガンを撃ち、敵機のビームサブマシンガンを相殺した。

 

それだけでは済まさないつもりなのか、灰色の機体は左マニュピレーターにビームナイフを保持し、アーマーシュナイダーを構えたブルーフレームと速度に物を言わせた戦闘に突入した。

 

「くそっ・・・!早すぎて追い切れない・・・!!援護する事も出来ないなんて・・・ッ!!」

 

その目まぐるしく動き回る二機の軌跡を捉える事、そして助太刀に入る事すらもイライジャには出来なかった。

 

機体性能だけではない、あの速度領域に着いていけるだけの技量が無い事を彼は自覚していたのだ。

 

故に、そんな自分の弱さを恨めしくも思っているが、無いものを強請っても無駄だという事は既に分っている。

 

そんな彼の目の前では、幾らかマシになったとは言えども、装備の不利によって劣勢を強いられているブルーフレームに灰色の敵機がビームナイフを突き立てようと猛攻を仕掛けていた。

 

「チクショウ!!俺にだって!!」

 

このまま見ている事は出来ない、そんな衝動に突き動かされたイライジャは敵機に突進しつつもマシンガンを連射した。

 

「てぇぇい!!」

 

「雑魚が、大人しくしていろ!!」

 

敵機は銃弾を回避しつつ振り返り、ビームサブマシンガン銃口上部からビームナイフを発射した。

 

「イライジャ!!」

 

劾が警告を発したが、彼には反応が間に合わなかった様だ、コックピットへの直撃は何とか回避したものの、右腕部の付け根に突き刺さった。

 

「うわぁっ!!くそっ・・・!なんて無様なんだ俺は・・・!」

 

操縦桿を前後に動かし機体が動く事を確認しながらも、彼は自分の不甲斐無さを恨んでいた。

 

「イライジャ、コンビネーションアタックを仕掛けるぞ!」

 

「あ、あぁ、了解だ!」

 

止まっている暇は無いと言わんばかりの劾の言葉に、イライジャはハッと顔を上げながらも敵機をブルーフレームと挟み込むようにして機体を動かす。

 

彼等が採った戦法は、一対一で倒せぬ敵が現れた際に使うコンビネーションの内の一つであり、今回のパターンは二機が別方向から波状攻撃を仕掛ける事で、相手に反撃、及び回避の先を封じる事の出来るモノなのだ。

 

初見でその意図を見抜ける者はそう多くない、だからこそ、身の危険を感じた際には出し惜しみを一切しないのがサーペント・テールという組織だ。

 

だが、相手がそれを見抜き、切り札を隠し持っている場合には裏目に出てしまう可能性も秘めた博打である事は否めなかった。

 

彼等の戦法の意図を見抜いたのか、灰色の機体は背面のバインダーを前方に展開し、その先端や腕部側面等から何やら基部の様なモノを展開した直後、眩き光で機体を包み込んだ。

 

「何の光だ!?」

 

「この光は・・・!」

 

目の前の光景に驚きながらも、彼等は別方向から同時攻撃を仕掛けるも、すべて光の壁に阻まれてしまう。

 

「馬鹿な!攻撃が効いてないのか!?」

 

その様に驚愕したのか、イライジャは声を張り上げながらも機体を動かした。

 

次の瞬間、光の壁の内側よりビームサブマシンガンが撃ち出されてきた。

 

「なっ!?内側からは撃てるのか!!」

 

驚愕しながらも、彼は自身達が置かれた状況に歯噛みした。

 

相手は鉄壁の盾を展開し、その内側から攻撃する事が出来る。

 

それに対して、彼等はそれを打ち破る術を持っていない、まさに追い詰められたという表現が当て嵌まるだろう。

 

灰色の機体はブルーフレームを追い込む様に銃弾を撃ち掛け、動きを見切ったのか、バインダー下部から大火力ビームを撃ち出した。

 

それは一直線にブルーフレームめがけて突き進んでいく。

 

劾も必死に避けようと機体を動かすが、イライジャの目から見れば到底間に合わない。

 

「逃げろ!劾ぃぃぃぃっ!!」

 

叫べども意味の無い事とは理解している、だが、それでも彼は叫ばずにはいられなかった。

 

彼の叫びも虚しく、光条はブルーフレームと交錯したかに思えた・・・。

 

sideout




次回予告

襲撃者を退けるサーペント・テールであったが、激動の波は彼等に傍観させる余地を与えなかった。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

それぞれの思惑

お楽しみに。
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