機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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想い

noside

 

「全機散開!!」

 

宗吾の掛け声と共に、5機のアメノミハシラガンダムたちは黒い巨体を取り囲むように散開、それぞれの武器で攻撃を開始した。

 

「バスターイグニート!砲撃開始するよ!!」

 

シャルロットが駆るバスターイグニートが攻撃を開始する。

 

動きの鈍いMAは、広範囲大火力の武装を持つバスターイグニートにとっては良い的でしかない。

 

幾らご自慢の超火力を振りかざそうとも、それを制御できる自分の愛機こそ最強だと、彼女は信じていた。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

バスターイグニートに搭載されるすべての砲門を開き、黒き巨兵を攻撃する。

 

その圧力はまさに壁とも呼べるほどの物で、並のMSはおろか、エース級ですら回避が困難とさえ錯覚させる程だった。

 

だが、それらは全て、巨兵に届くよりも先に見えない壁の様なものにぶち当たり、無情にも霧散していった。

 

「な、に・・・!?」

 

「あれは陽電子リフレクター・・・!」

 

一切のダメージを与えることさえ出来ずに霧散した攻撃に、シャルロットは呆然と、宗吾はそれを防いだ光の壁の正体を探った。

 

その光の壁の正体は陽電子リフレクター。

連合軍が開発した拠点防衛用光波防御帯だった。

 

主に連合軍の新型MAに搭載され、過去にはミネルバが放ったタンホイザーを無力化したという実績を持つ、極めて強力な防御力を誇っていた。

 

「バカみてぇな火力にとんでもねぇ防御力・・・!まるで要塞だ・・・!」

 

その硬さに、そして掠めただけでMSを撃破せしめる火力。

それはまるで、移動要塞とでも呼ぶべき存在だった。

 

その黒い死神は、GFAS-X1 デストロイ

連合軍が開発した、巨大MAだった。

 

全身に多数の砲門を備え、主砲は艦隊すら一撃で沈める程の威力を持っている。

また、全身の装甲もVPS装甲に覆われ、その上から陽電子リフレクターやビームシールドを発生させる事で破格の防御力を有している。

 

並のMSの火力では装甲や陽電子リフレクターを突破する事は叶わず、また、並のパイロットでは回避しきれない程の面制圧を可能とする火力。

それは正に、怪物と言わざるを得ない程だった。

 

だが、その反面、火器管制は複雑化したため、特殊な調整を受けたパイロット、俗にいうブーステッドマンと呼ばれる強化人間にしか操れぬ機体となってしまった。

 

その巨体を四基の超大型スラスターで強引に浮遊させる様に動かしている為に、そこまで機敏に動いているという訳では無かった。

 

だが、今、彼等がいる戦場ではそんなハンデなどあって無い様なモノだった。

 

此処は宇宙空間、上下の感覚が失われる場所であり、それを縛る重力も無い。

 

故に、その巨体を縛る物は、地上程多くは無かった。

 

デストロイは機体を縦横無尽にロールさせつつ、全方位にビームやミサイルをばら撒く。

 

「皆避けろ!!」

 

その面制圧能力は凄まじく、回避すべく動いていた幹部達ですら全てを躱す事は困難だった。

 

「うわぁっ・・・!?」

 

「シャルロットッ・・・!!」

 

機動力が最も低いバスターイグニートが、ビームを躱し切れずに左脚部を焼かれ、大きく体勢を崩す。

 

なんとかフォローに入った宗吾は、向かってくるミサイルを撃ち落としつつ、ハービヒトネーゲルに搭載されるマガノイクタチを利用して大火力ビームのエネルギーを吸収、その効力を弱めつつトリケロスⅡで防いだ。

 

咄嗟の事とは言え、それを即座に実施できるのは彼が如何に優れたパイロットかと言う事を表していたが、それも今の状況の前では霞むモノだった。

 

「このっ・・・!」

 

「私達で・・・!!」

 

この状況を何とかしなければならない。

 

危機感に駆り立てられた玲奈とリーカの機体が、その巨体に突っ込んで行く。

 

航空機型可変機の強みを活かした高速機動で揺さぶりをかけ、相手が崩れた所を狙う心積もりだった。

 

それを実践すべく、イージスシエロとプロトセイバーの2機は乱れ飛ぶ燕の様にデストロイの周囲を駆け、的を絞らせない。

 

だが・・・。

 

それに抗すべく、デストロイは無差別に攻撃を開始、行く手を阻むかの如く嵐のようなビームが迫る。

 

「くっ・・・!」

 

「だめっ・・・!」

 

機動性はあっても、直線でしか動けないMA形態では回避しきれないと、2人は高速機動を中断、MS形態となってビームを回避し続ける。

 

取りつく島も無い。

正にそう形容すべき激しさを持った攻撃だった。

 

「ならば・・・!行きなさい、クリスタロス!!」

 

ならばと、セシリアはソードドラグーンを四基射出、ビームの間隙をすり抜けての攻撃を試みる。

 

如何に面制圧能力が高くとも、防御力が高くとも、それをすり抜ける兵装さえあればどうという事は無い。

 

セシリアの空間認識能力を駆使した、ソードドラグーンならばそれが為せる。

相手が何者であろうと、彼女は自身の愛機に絶対の自信を持っていた。

 

それを示すかのごとく、彼女の意思を受けたソードドラグーンは、その牙を突き立てるべく黒き巨躯へと迫った。

 

ビームの間隙をすり抜け、今にも討ち果たさんと肉薄する。

 

だが・・・。

デストロイもそうさせるほど甘くは無い。

 

機体の頭頂に装備される主砲を放ち、薙ぎ払う様にしてソードドラグーンを狙う。

 

「っ・・・!!」

 

途轍もなく太い光条に、セシリアは咄嗟にソードドラグーンを回避させる。

 

だが、間に合わなかった二基がその奔流に呑まれ、爆炎さえあげる事無く灰燼に帰した。

 

「取りつく島も無いっ・・・!!」

 

「こんなのどうやって相手しろてのよ・・・!!」

 

本体にも襲い掛かるビームの奔流を躱しながらも、セシリアとリーカは歯がみする。

 

MSの火力では装甲を貫く事は出来ず、その大火力の前に取りつく島も無い。

 

如何にエース級を揃えたとしても、圧倒されかねない程の圧力を持って存在している様だった。

 

勝てないかもしれない。

そんな絶望的な考えが、彼女達の頭に過ぎりかけていた。

 

「諦めるなっ!!」

 

その言葉と共に、宗吾は自分に注意を惹きつけるつもりか、ビームライフルを乱射し、デストロイを攻撃する、

 

その悉くは、陽電子リフレクターによって防がれるが、注意を惹きつける事だけは成功した様だ。

デストロイはブリッツスキアーに向けて、腕をドラグーンの様に飛ばし、攻撃を開始する。

 

それは手の甲にビームシールドの様なものを発生させながらも、ブリッツスキアーを狙う。

 

宗吾も墜とされる気など更々無いのか、巧みな機体制御で撃ち掛けられるビームの雨を躱しつつ、反撃を試みていた。

 

「俺達は必ず勝つんだ・・・!!必ず、生きて・・・!!」

 

その言葉には、その姿には、彼が追い駆けていた男の姿が重なっていた。

 

仲間の為に、友の為に、使命感に駆り立てられながらも、必死に戦い続けた彼の姿が、今の宗吾には重なって見えた。

 

「もう一度みんなで笑うんだっ・・・!!」

 

その言葉には、何よりも強い願いが込められていた。

 

「そうよ・・・!アタシも、諦めない・・・!」

 

その言葉に感化されたかのように、玲奈を始めとした幹部達も勇んで応じ、デストロイへと向かって行く。

 

大切なモノを護るために。

必ず生き残る為に。

 

歩みたい未来へと、その希望をつなげる為に・・・。

 

sideout

 

side一夏

 

俺は・・・、何がしたかったんだろう・・・?

 

何もわからない。

ただ、意識がどんどん薄れゆく中で、俺は自問自答する・・・。

 

ぼんやりと、霞がかった様ながらも、鮮明に、俺の嘗ての姿が脳裏を過ぎる。

 

与えられた使命と誤解し、与えられた力を殺戮の限りに使った、何処までも愚かな男の姿・・・。

 

そうだ・・・、それは紛れもない、俺自身の姿だった

 

鮮血を浴び、切り裂いた者の首を掲げ嗤うその顔は、狂っているとしか思えなかった。

 

いや、事実狂っていた、狂っていたんだ・・・。

 

血だまりを作って尚、死体の山を気付いて尚、それでも敵を求め、殺し続けてきた、何処までも愚かな男・・・。

 

その姿は、嘗ての俺自身・・・。

今へ続く、消し去る事の出来ない、罪の全て・・・。

 

―――もう諦めてしまえ―――

 

また、ヤツの声が聞こえる・・・。

 

嘗ての俺・・・、使命に踊らされ、それを受け入れた憐れな男の声・・・。

 

ヤツは受け入れているが故に、迷わない・・・。

迷う事が無いから強い・・・。

 

今の、迷いに囚われ、鈍っている俺とは違う、純粋悪とでもいうべきどす黒さと、そこにある強さがあった・・・。

 

ヤツは、確かに多くを失った。

だが、誰も護れず死なせたわけでは無い・・・。

 

俺の様に、護れないまま、救えないまま、彼女を死なせてしまう事など無い程の強さは、確かにそこにはあった・・・。

 

―――お前は何も護れない、このまま目覚めたとて、誰も救えない―――

 

そうだ・・・、俺は、救えなかったんだ・・・。

俺を慕い、突き従ってくれた彼女を、護れなかった・・・。

 

血にまみれたシート、彼女の身体に突き刺さる大量の破片、届かなかった手・・・。

 

それら全てが、フラッシュバックしては、掻き消えていく。

取り戻せないと、取り返せないと・・・。

 

―――眠れ・・・、何も失う事の無い、微睡の中へ―――

 

もう、何も失わない・・・。

 

誰も死なない・・・、俺の、望み・・・。

それが叶うのなら・・・、受け入れてしまった方がいっそ楽なんだろうな・・・。

 

このまま・・・、何も感じる事なく・・・。

 

死を、受け入れて・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諦めるな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僅かに残った意識の残滓さえ、手放そうとしたその時だった。

 

何時か聞いた声が、俺の意識を呼び戻した。

 

誰だ・・・?

 

言葉を発する事はまだできない。

だけど、その声の主に、俺は問うた。

 

『お前は、誰よりも前に立って戦ってくれた男だった。』

 

力強い男の声が聞こえる・・・。

この声は・・・

 

雅人・・・。

 

『貴方は強かった、誰よりも、何よりも。』

 

柔らかく、優しい声が聞こえる・・・。

これは・・・、簪・・・。

 

『敵になっちゃったけど、やり方は違ったけど、貴方は何時だって前を向いてた。』

 

何処か悪戯っ子の様な、聞いてて若干腹立つ声・・・。

これは、楯無の奴・・・。

 

『だから、私達は着いて行けた。』

 

『貴方を信じる事が出来た。』

 

箒・・・、ダリル・・・、皆・・・。

 

俺を呼ぶ声に、固く閉ざされていた瞼が漸く開く。

 

その目に飛び込んで来たのは、俺が置き去りにしてしまった嘗ての友の、柔らかい笑み・・・。

 

誰も、俺に敵意など向けてはいなかった。

ただ、純粋に俺を、織斑一夏と言う一人の男を、真っ直ぐに見詰めていた。

 

そこには責めも赦しも、憐憫も称賛も無く、ただ俺のあるがままを晒せと、そう言っている様に思えてならなかった。

 

『アンタは、俺達を置いて行った事を、ずっと悔やんでいた、だから、失う事を恐れた、手に入れる事を怯えていた。』

 

怯え・・・、恐怖・・・。

 

置いて行った後悔が失う恐れを呼び、その恐れが手に入れる事と進む事への怯えを生ませていた。

 

だから・・・、俺は何時まで経っても引き摺っているんだ。

彼女の事も、奴等の事も、そして、秋良達の事も・・・。

 

『忘れろ、なんて無責任な事は言わない、だけど、もう良いじゃないか。』

 

どういう意味だ・・・、秋良・・・?

 

如何しろと言うんだ・・・?

俺はまだ何も出来ていない・・・。

 

お前も、アイツの様に諦めろと、そう言うのか・・・?

 

『過去は取り戻せない、どれ程悔やんでも、罪は拭えない。』

 

そんな事ぐらい、分かってる・・・、だから、俺は・・・。

 

『アンタは何時だってそうだ、自分の命よりも、誰かの命を重く見てる、だから、生きる意味を見失ってる。』

 

生きる意味・・・。

俺に、そんな意味があるというのか・・・?

 

裏切って、殺して、置き去りにして、何も護れなかった俺に・・・?

 

『生きる意味なんて、いくらでも思いつくんじゃないか?だってアンタには、護りたい人がいるんだろ?』

 

その言葉は、これまでの事実を突きつけるような冷淡なものではなく、優しく諭すような声色だった。

 

護りたい者・・・、俺にはまだ、護れるものがある、のか・・・?

 

『アンタは生きなくちゃいけない、置いていった俺たちのためなんかじゃない、死んだ人たちのためでもない、今、アンタと共に生きたいと願う人たちのために。』

 

俺と共に、生きたいと願う・・・。

彼らのために、生きろと・・・。

 

『そして、アンタ自身のために生きるんだ、誰かのためなんて、結局は言い訳でしかないじゃないか。』

 

言い訳・・・。

あいつも言っていた、俺が死にたくないための言い訳・・・。

 

誰かのためなんて、結局は自分を縛る鎖でしかないと言いたいのか・・・?

 

生きるための理由を、他人に求めている事は、いけないのか・・・?

 

『この声が聞こえるか?アンタを呼ぶ声だ。』

 

その言葉に、俺は顔を上げた。

 

その途端に、外の世界、現実の世界からの言葉が木霊した。

 

『信じるんだ、一夏は強い、必ず、もう一度笑ってくれる。』

 

宗吾・・・。

いや、宗吾だけじゃない。

 

玲奈、リーカ、ミナやジャック・・・、皆の声が俺を揺さぶる。

 

戻って来いと、俺を呼んでくれた。

 

皆大切な、俺の友・・・。

 

―――一夏様―――

 

―――一夏―――

 

セシリア・・・、シャル・・・。

愛しい二人の妻の声・・・。

 

優しく、だけど、祈るような声で、俺の名を呼んでくれていた。

 

そうだ・・・、俺にはまだ、大切な人達がいる。

愛すべき人が、仲間がいる・・・!!

 

『生きるんだ、アンタは、人間に戻るんだ。』

 

その言葉に、俺の意識は目覚めへと向かっていく。

闇に包まれていた景色は色を取り戻していく。

 

まるで、俺を導くように、それでいて、送り出すように。

 

『立ち上がれ。』

 

『進め。』

 

『織斑一夏!!』

 

彼らの、過去の残滓が遠退いていく。

立てと、進めと背を押して。

 

彼らはもう、俺との事なんて過去にしている。

今を、必死に生きている。

 

俺は、過去にばっかり目を向けて、それを言い訳にして今を、受け入れがたい現実から目を背けていた。

 

そうだ・・・。

俺にはまだ、やらなくちゃいけないことがある。

 

今こそ、本当に人間として生きる時だ。

 

秋良・・・、俺は進むよ。

 

我武者羅に進んで、今度こそ抗ってやる。

 

あの時の、運命を甘んじて受け入れた、弱い俺とは、本当の意味でサヨナラするためにも!!

 

「俺にはまだ、護りたい者がいる・・・!!こんなところで、終わって堪るか・・・!!」

 

握りしめた拳を、俺は空間に向けて叩き付けた。

 

その瞬間、ステンドグラスが割れるように俺を覆っていた空間がひび割れ、四散していった・・・。

 

sideout

 

noside

 

「うぉぉぉ・・・!!」

 

雨あられと撃ち掛けられる致死の光条を躱し、宗吾はブリッツスキアーをデストロイに肉薄させんと迫る。

 

アメノミハシラ幹部5人を持ってしても、デストロイの猛烈な攻撃と堅牢な防壁の前には決定打を与えることはできず、徐々に戦線を押されつつあった。

 

「なんて厄介な・・・!」

 

「近付けない・・・!このままじゃ・・・!!」

 

戦線が押し戻されているという事は、アメノミハシラに被害が及ぶ可能性が上がる事に等しい。

 

故に、彼らは焦りの表情を隠すことが出来ずに、それでも必死に抑え込もうと愛機を駆った。

 

だが、それを嘲笑うかの如く、デストロイの火線はより一層の激しさを増し、彼らを墜とさんとしていた。

 

「諦めるな・・・!俺達が弱音吐いてどうすんだ・・・!!」

 

「そうよ・・・!!諦めない・・・!諦めたくないッ!!」

 

戦況が悪化するにつれて弱気になって行く味方を鼓舞するように、宗吾と玲奈は諦めるなと叫び、黒き巨兵へと向かって行く。

 

自分達の家を護るためにも、此処で自分達が退く訳にはいかないのだ。

 

彼等の後ろに聳える城の中で眠る、彼を護るためにも。

 

だが、その意思とは裏腹に、城とその巨体との距離はどんどん縮まって行く一方だった。

 

別方面の部隊もまた、彼等の援護に回りたい所だったが、只でさえ数が多い連合軍MS部隊を相手に、一進一退の攻防を展開していた。

 

故に、少しでも気を他にやってしまえば、自分が墜とされかねない状況に繋がるために、全ての者が自分の持ち場を離れる事が出来なかった。

 

それを知ってか知らずか、デストロイはアメノミハシラへの進撃の勢いを緩める事は無かった。

 

「これ以上は・・・!やらせるかっ・・・!!」

 

決死の覚悟で火線を掻い潜った宗吾は、懐にコガラスの刃を突き立てんと迫った。

 

間合いに入ればこちらのもの。

勝機を見出した彼は、機体を奔らせる。

 

だが・・・。

 

「なっ・・・!?」

 

迫る彼の目の前で、黒い巨兵が動きを見せた。

 

下半身が突如として捻る様に反転、同時に甲羅の様な頭部が起き上がる様にして動く。

 

それは正に、変身、そう呼ぶべき動きだった。

 

そう、可変機と呼ばれる機体が持つ、MAからMSへのトランスフォーム、まさにそれだった。

 

「モビル・・・スーツ・・・!?」

 

目の前でそれが起きてしまえば、いや、圧倒的な火力と防御力を持ったMAが、更に奥の手を出して来たとあれば、如何に彼であっても愕然と竦んでしまうのも無理は無かった。

 

だが、彼が今、身を置く場所は戦場。

一秒、いや、コンマ一秒の硬直も赦されない、命のやり取りを行う場所だった。

 

MS形態となったデストロイの右腕の払いが、ブリッツスキアーに襲い掛かった。

 

「しまっ・・・!?」

 

なんとか反応し、トリケロスⅡを翳して防御態勢を取るが、相手のパワーはそのガードの上からでもブリッツを吹っ飛ばすには十分すぎた。

 

「うぉぉぁぁぁぁ・・・!!」

 

あまりの衝撃にトリケロスⅡは粉々に砕け、それでも殺せなかった勢いそのままに、ブリッツは錐揉み状態で吹っ飛んでいく。

 

「「「宗吾・・・!!」」」

 

「宗吾さんッ・・・!!」

 

幹部達がカバーに移ろうとするよりも早く、デストロイは胸部に装備されている砲門を開き、ブリッツスキアーへと向けた。

 

それはチャージを開始し、今にも迸らんとその輝きを増していく。

 

「(くそっ・・・!結局俺は・・・!誰も、自分自身さえ守れないって言うのか・・・!!)」

 

体勢を立て直そうともがきながらも、宗吾は自身に降り掛かる運命の業火を、食い入る様に睨みつける以外なかった。

 

間も無く放たれる光が自身を焼き尽くすと解っていながらも、彼が抱くのは只一つ、悔しさ、ただそれだけだった。

 

一夏の代わりを務めあげると息巻いても、結局自分は何も出来なかった。

 

仲間を護る事も、生き残る事も・・・。

 

その悔しさを胸に、彼は唇を噛み締める。

自身の命が祟れる事よりも、果たせなかった想いを・・・。

 

臨界に達した光が放たれ、彼の視界を白く染めあげた。

 

自分を呼ぶ仲間達の声が一際ハッキリと聞こえてくる。

セシリア、シャルロット、玲奈、リーカ・・・、そして・・・。

 

「諦めるな!!」

 

彼が背を追いかけていた、一夏の・・・。

 

「えっ・・・?」

 

その声に、彼は目を開け、前を向く。

 

自分を焼き尽くさんとしていた光はその進みを、何かに遮られる様にして止まっていた。

 

「ッ・・・!!」

 

その光景に、いや、その中心に見えた影に、彼は息を呑んだ。

 

「あれは・・・!!」

 

大出力ビームの奔流に抗い燃え盛る光の揺らめきを背負うシルエット。

その姿は、彼が良く知った機体のモノだった。

 

「宗吾、諦めるな。」

 

打って変わった穏やかな声に、宗吾の背筋に電流が奔った。

 

耳に馴染んだ、何処か影のある声では無い。

今は自信と使命に燃える情熱に満ち満ちた力強い声で、彼の名を呼ぶ。

 

「まだ、終わりじゃないだろ。」

 

「ッ・・・!!」

 

その光はデストロイの放った主砲を完全に掻き消し、光を背に彼と向き合った。

 

見慣れた機体、眠り続ける主を待っていたその機体は、今や白銀に煌めき、大いなる意志の下にその翼を宙に瞬かせた。

 

「俺の仲間は・・・、俺達で護るぞ。」

 

「戻って・・・、来たんだな・・・!」

 

その力強い声に、宗吾は感極まったかの様に震え、涙を零していた。

 

待ちに待った男の復活、それがこうも嬉しいのか。

彼は、歓喜に打ち震えていた。

 

「織斑一夏、ここに復活だッ!!」

 

最強の男の復活と共に、その宣言が響き渡る。

 

それは、彼の苦悩を一瞬にして打ち払う、福音の如し力強さを持って・・・。

 

sideout

 

 




次回予告

運命に抗い、挑み続ける先に待つは破滅か、それとも福音か。
目覚めた彼の目に映るは、友の姿・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

シクザール

お楽しみに
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