機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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告白

side宗吾

 

「報告します!月面及び周辺宙域にてザフト軍とクライン一派の戦闘が開始されたとの事です!」

 

アメノミハシラを発ったイズモの艦橋に、ザフトとクライン派の戦闘が始まったという報告が入った。

 

その報告を、俺達幹部は皆、表情を引き締めて目の前に迫る月面を睨む。

 

一夏を中心に、月面、ダイダロス基地を目指して進軍するは、アメノミハシラの旗艦、イズモ。

 

そこにある艦載機はガンダム級が6機、ヤタガラスが8機、M1Aが10機という編成になっている。

 

イズモ級一隻の戦艦に積めるMSの上限いっぱいの戦力を持ってこれたのも純粋に凄いが、それを可能としてしまうほどの信頼を得ている一夏を想うと、少しだが羨ましく思えてならない。

 

俺には彼ほどの求心力を持つ事なんて出来ないと、何処かで感じているからこその小さな嫉妬、なんだろうな・・・。

 

「遂に来たか・・・。」

 

いや、今はそんな事を考えている場合じゃないか。

 

気を取り直して、俺は改めてアメノミハシラに残った諜報部から送られてくる情報に目を通す。

 

現在、月のレクイエムから一番近い中継ステーションに、アークエンジェルとエターナルが攻撃を仕掛けており、ザフト軍の守備隊がそれを迎え撃っているという状況らしい。

 

奴さんの考えは、脚の速い二隻が中継ステーションを破壊、レクイエムを発射不能にしたのちに、オーブ宇宙軍を中心とする部隊がレクイエムを破壊する腹積もりなのだろう。

 

効率がいいと言えばそうだろうが、それはザフト側も読んでいる事だろう。

 

ルキーニの情報では、ダイダロスからアルザッヘルに向かっていた、ゴンドワナを中心とするザフト軍主力艦隊が中継ステーションに向けて進撃、アークエンジェルとエターナルから先に墜とす腹積もりを見せている様だ。

 

つまりこれは、どちらが早く目的を達成できるかにこの戦の勝敗は掛かっていると言う事になる。

物量や兵器の質などでは無く、時間がモノを言わせるだろう事が容易に想像できると言う事だ。

 

尤も、俺達が辿り着ける頃には、中継ステーションが墜ちるかどうかというあたりだろうか。

 

何事もなく進めば、という前提付きだけどな。

 

「目標宙域まではあとどれくらいだ?」

 

「現在ダイダロスまで残り30と言ったところです、御準備願えますか?」

 

そんな事を考えている内に、もう間もなく作戦行動を開始できる距離まで来ているようだ。

 

30と言う事は、大凡で30分以内には到達できると言う事。

つまり、発艦や攻撃はそれより早く行われる事を意味している。

 

要するに、ゆっくりしている暇は無いって事だな。

 

「了解しました、第二戦闘配備、お願いします。」

 

「ハッ!お気を付けて。」

 

艦長に敬礼を返して、俺達は艦橋を後に、格納庫への道を進んで行く。。

 

もうすぐ、俺達もその戦禍の中へと足を踏み入れる。

大義の為とか、思想の為なんて方便でしかない。

 

一夏の為に、コートニーを助ける為に俺達は戦うのだ。

無論、皆もそれに薄々は勘付いてはいるだろうけど、口には出さない。

 

何せ、一応の大義名分が、思想を強制し支配するデュランダルを挫く、という事になっている。

 

ま、口に出す事は野暮ってなもんだけどな。

 

「皆、すまないが、少しだけ聞いてほしい事がある・・・。」

 

そんな事を考えていた時だった、一夏が唐突に口を開いた。

 

「どう、されましたか・・・?」

 

そこから何かを感じ取ったのだろうか、セシリアが表情を硬くしながらも尋ねていた。

 

セシリアだけでは無い、シャルロットも、玲奈も、リーカも、そして俺も・・・。

彼が何かを、俺達にとっても重要な何かを話そうとしていると、察してしまったんだ。

 

「俺はこれからコートニーを救うために戦いに行く・・・、だが、今のコートニーのインパルスは強い、果たして今の俺とストライクで勝てるかどうか、分かったもんじゃない。」

 

「何が言いたい・・・?」

 

何となく、謂わんとしている事は解ってしまう、

 

一夏が眠っている間に、俺は一夏とコートニーの戦闘ログの解析を行っていた。

 

その中で見た、コートニーの駆るデスティニーインパルスの性能とその挙動を見たが、どれをとっても当時の一夏とストライクSを大きく上回っていた。

 

ストライクSⅡが完成した直後に、量子コンピュータでのシュミレーションしてみた結果、一夏の状態を考慮しなければ上回るとなってはいた。

 

だが、それでも何よりも怖いのはマシンでは無い、それを操る人間だった。

 

今のコートニーは恐らく、元の戦闘能力に錯乱状態によるブーストが上乗せされた状態、その力は計り知れないものが有るだろう。

 

「無論、俺も負ける気は無い・・・、だが、俺とアイツが生死関係なくやり合えば、その結果は、4つだ。」

 

「4つ・・・。」

 

確かに、一夏ならどんな敵にも負ける事は無いだろう。

 

だがそれでも、最善から最悪まで事態は何通りにも予想して然るべきものだ。

 

今回の戦における最善と最悪とは・・・。

 

「1つ目は、俺がコートニーを無事に連れ帰る事、2つ目は俺もコートニーも帰って来れない相打ちになる事、まぁこの辺は考えるまでも無いわな。」

 

最善は一夏もコートニーも無傷で帰還する事、最悪は一夏もコートニーも帰って来れないと言う事。

 

最悪は考えたくも無いが、それを覚悟しておかねばならないのが、今の俺達のいる状況だと言う事を、忘れてはならない。

 

だが、二人とも帰って来れないと言うのは、まだマシかも知れない。

何せ、残りの二つは・・・。

 

「三つ目は、俺がコートニーを殺してしまう事・・・、そして4つ目はコートニーが生き残って俺が帰って来れない事、だな・・・。」

 

『ッ・・・!!』

 

その言葉に、俺達は何もいう事が出来なかった。

 

どちらかだけが生き残り、どちらかが死ぬ。

親友同士にはあまりにも酷な現実ではないか。

 

それに、一夏が生き残ったとしても、俺達は果たして前の様に彼を見ていられるのだろうか?

リーカは間違いなく彼を恨むだろうし、一夏も自分の罪の意識に耐えられるかどうか・・・。

 

無論、その逆ならば最悪だ。

一夏を失ったアメノミハシラは、いや、俺達は再び立ち上がることさえ出来なくなるだろう。

 

セシリアもシャルロットは言わずもがな、俺や玲奈も本当に絶望してしまうだろう。

コートニー自身も、自らの手で親友を殺した事に押し潰される事は想像に容易い、リーカもまた、受け入れられる事じゃない。

 

それに直面してしまった時、俺達はどうするべきなのか、何も考えが浮かばなかった。

 

「出撃前にいう事じゃないのは分かっている、だが、これだけは憶えていてほしい。」

 

そんな俺達に、一夏は元から決めていた事があると言わんばかりに、ジッと俺達を見据えた。

 

その目には、濁りの無い光と強い意志が宿ていて、俺達は何も言う事が出来なかった。

 

「もし、俺がコートニーに負けて帰って来れなくても、コートニーを恨まないでやって欲しい。」

 

「そ、そん、な・・・。」

 

一夏の言葉に、シャルロットは何を言うんだと言わんばかりに、弱弱しく首を振った。

 

セシリアも、分かってはいたが面と向かって言われるのは辛いのだろう、僅かに俯いて唇を噛んでいた。

 

仕方あるまい。

最愛の夫を殺した人物が夫の親友で、その相手を恨むなと釘を刺されたのだから。

 

出来る訳がない。

いや、出来た所で受け入れたくはあるまい。

そんな未来が訪れてしまった時、果たして彼女達が一夏の後を追わない保証があるだろうか。

 

嘗て、死の果てまで添い遂げると誓い合った者の死ならば、尚更だ・・・。

 

「だがもし、俺だけが帰って来てしまった場合は、リーカ、俺は君に謝り続ける、無論、憎んでくれても、殺してくれても構わない。」

 

だが、一夏の考えは、俺達の考えよりもよっぽど酷かった。

何せ、自分が死なずに帰って来て、親友が死んだら、その親友の恋人であるリーカに恨まれ殺される事さえ受け入れると言ってのけたのだから・・・。

 

「恨むって、そんな・・・!」

 

そんな事出来る筈も無い。

優しいリーカには出来る筈も無い事だ。

 

だというのに、それを押し付けてしまいたくなる程に、彼にとっても辛い事なのは間違いない。

 

「自分でも都合の良い事を言っている自覚はある、だけど、やっぱ保険は掛けとかないとな。」

 

「保険にしちゃ、何とも嫌な感じね・・・、アンタまさか・・・、コートニー連れ戻せなかったら生きる意味無いって思ってんじゃないわよね?」

 

無いに越した事は無いと笑う一夏を窘めるように呆れる玲奈だったが、何かに気付いたか、その表情は硬かった。

 

俺もそれは察している所だ。

一夏は、親友を殺してしまった場合、その先に生きる気など無いのではないかと。

 

保険と言ったのも、そう言う意味なのだろうか・・・。

 

「ちょっと前までなら、Yesと答えてただろうな・・・、だが、今はそうじゃない。」

 

その問いに、一夏は頼もしい笑みを俺達に向ける。

迷いは無い、そして、惑わせるつもりも無い、そんな笑み。

 

「俺は生きる為に戦う、死ねない理由になる夢も出来た事だしな。」

 

「夢・・・、まさかあの時の・・・?」

 

あの日、オーブの浜辺で語ってくれた夢、それを本当にもう一度実現しようとしているのか・・・。

 

だとすれば・・・。

 

「ならば、私達も撃たれる訳には参りませんわね、貴方様の夢の中に私達がいると言うのならば、意地でも生き残らねばなりませんわね。」

 

「うん、一夏が信じてくれるなら、私も生きる、だから、死ぬなんて謂わないで。」

 

セシリアもリーカも、彼の想いを酌んだ様だ。

最悪の状況を考慮しない訳じゃ無い。

 

だがそれでも、誰も死なせない、その中に自分もいる。

 

今迄の一夏の言葉に無かった熱に、俺達はついつい絆されてしまうようだ。

それを心地良く思う自分がいる。

 

ホント、ズルい男だ。

 

「あぁ、ありがとう。」

 

俺達にそう言い、彼は格納庫へ向けて歩みを再開した。

 

その背には、俺に付いて来いと言わんばかりの風格が自然と漂い、思わず見惚れてしまうものが有った。

 

そう思わせる男に、仲間と、家族同然と信をもらえる事は、これほどに無い誉ではないだろうか。

 

なら、俺も命張らせてもらうとしようじゃないか。

俺が一生ついて行くと誓った男の背を、何者も傷付けられぬように。

 

sideout

 

noside

 

「各員最終チェックに移れ、間も無く戦闘宙域に入るぞ。」

 

格納庫に辿り着くや否や、一夏から全員に号令が飛ぶ。

 

それまでも戦闘に向けて喧騒に包まれていた格納庫内が、更なる緊張感を帯びていく。

 

「よっしゃ!オメェ等準備できてんだろうなぁ!?」

 

ジャックの張り上げた声に、整備士達は皆、オールクリアと声を張り上げて返した。

 

やるべき事はすべてやった、後は戦士である一夏達に託す。

彼等の言葉以上の姿勢がそこにはあった。

 

「お待ちしておりました、閣下!!」

 

彼等を出迎えたのは、今回一夏達に付き従ったガルド達だった。

 

皆、綺麗に整列し、何時でも指示を出してくれと言わんばかりだった。

 

その前に、一夏達幹部6人も綺麗に整列し、彼等と面と向き合った。

 

「皆、これより俺達はレクイエム攻略を開始する、その前に、一つだけ言っておきたい事がある。」

 

出撃を目前に、一夏は部下達に向けて言葉を託す。

 

自分が唯一望む願い。

失いたくないと言う願いを籠めて・・・。

 

一夏の言葉から強い想いを感じ取ったか、彼等は背筋を正し、その言葉を待った。

 

「誰一人、欠ける事なく俺達の家へ帰ろう、俺からのこの戦闘での唯一の命令だ。」

 

誰一人死ぬな。

それが、一夏が下す最後の命令。

 

『了解!!』

 

それを受け、ガルド達新兵、ソキウス達も一斉に一夏に向けて敬礼を返した。

 

死ぬつもりなど毛頭ない。

その命令を死んでも守る。

 

皆、想いは一つだった。

 

『第一戦闘配備!総員合戦用意!!』

 

その時、格納庫、いや、艦内全てに戦闘準備を告げるアナウンスが響き渡る。

 

それを受け、皆自分の機体へと走り、コックピットへと滑り込んだ。

 

「各機順次発進!M1A隊はイズモを護れ、ソキウス達はその近接援護を、ヤタガラス隊はオーブ軍を援護しろ、その指揮は近くにいる幹部に仰げ!幹部勢は分かってるよな?」

 

『了解しました!!』

 

各機に指示を出しつつ、自身の機体を立ち上げていく。

 

指示に穴は無く、拠点防衛とオーブ軍の援護、そして戦場の攪乱を命じた。

 

兵達全員の戦闘能力を考慮し、振り分ける手腕も見事なモノだった。

 

戦闘能力が高くなる幹部は、敵の目を惹きつける役目を担わせる事で味方全体の負担を減らす役目も担っていたのだ。

 

それは彼等も承知するところであり、誰も皆、そこに異を唱える事は無かった。

 

「待っていろ・・・、コートニー・・・、今行くからな・・・。」

 

小さく、だが決然たる意志を以て、胸元で拳を握った。

 

大切な誰かを失わない。

今の彼を突き動かす原動力、それを燃やして・・・。

 

「行くぞ!」

 

強い意志と共に、彼は機体をカタパルトへと進ませる。

 

壊すための戦いでは無く、救うための戦いへと、その身を投じる為に・・・。

 

『進路クリアー、ストライクSⅡ、発進どうぞ!!』

 

「了解!織斑一夏、ストライクシクザール、行くぜ!!」

 

sideout




次回予告

混沌を極める戦場に舞い降りる光。
それは彼に何を齎すと言うのだろうか・・・。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

交錯する光

お楽しみに
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