機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY   作:ichika

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それぞれの思惑

sideセシリア

 

「あれは・・・、ラウラさんのハイぺリオン・・・!?」

 

戦闘宙域から遠ざかっていく輸送艦の傍に取り付きながらも、私は劾さんとイライジャさんと交戦している機体の事を思い出しました。

 

かつての世界において同志と呼べる方が操っていた機体、ハイぺリオンガンダム。

 

その特性と有効距離、そして弱点も熟知しています、当然、その厄介さも・・・。

 

「今のブルーフレームでは、勝てない・・・!!」

 

あの機体の特殊防御帯〈アルミューレ・リュミエール〉の前では、ライフル系の装備で身を固めている状態の機体に勝ち目は全くないに等しい、それを何とかしてお二人に伝えたいのですが、どういう訳か、通信が届きにくい状態になってしまいました。

 

「ロレッタさん!劾さん達との通信は繋がっていますか!?」

 

『ダメね!Nジャマーの影響で繋がらないわ!!」

 

やはり・・・!ご教授いただきました内容の中にNジャマーの事も含まれていましたが、まさかここまで酷いモノだとは思ってもみませんでした。

 

これではあのシールドを破る方法を伝える事が出来ません、それに、劾さんの指示を仰がなければ船の傍から離れることすら出来ません。

 

「こういう時に、私はどうすれば・・・!!」

 

不甲斐ない、かつての世界では最強の一角と自負しておりましたのに、結局何一つ自分で決める事も、動く事も出来ないではありませんか・・・!!

 

こういう時に、一夏様ならどう動かれたのでしょうか・・・、私はどうすれば良いのですか・・・!?

 

『セシリア!!貴女が想う様にやりなさい!!こっちは大丈夫よ!!』

 

迷い、悩む私を叱りつける様に、ロレッタさんの声が届きました。

 

迷うな、その間に為せる事があるのよと言わんばかりの声が、私の背を押してくれる様に思えました。

 

そうでしたわね、今も昔も戦場で信じていたのは私自身の判断でした、心の支えとなってくださっていた一夏様とシャルさんがいない事で、すっかり忘れてしまいそうでした。

 

そうと分かれば、私がやるべき事はただ一つですわね!!

 

「はいっ!!ロレッタさん、タクティカルアームズを!!あの機体に有効なのです!!」

 

『分かったわ!二人を助けてあげて!!』

 

『お願い!セシリア!!』

 

ロレッタさんと風花さんの声に頷きつつ、輸送艦のコンテナから射出されたタクティカルアームズの柄を掴み、スラスターを全開にして戦闘宙域に急ぎます。

 

遠目から見える光は、恐らくハイぺリオンがアルミューレ・リュミエールを展開した事で発生している光・・・!!

 

急がなければ劾さん達が危ない・・・!!

 

「デュエル、どうか急いでくださいな・・・!!」

 

こんな所で、私を救って下さった方を死なせるわけにはいかないのです!!

 

タクティカルアームズのスラスターも併用し、単体で出せる加速力の限界を突破しながらも突き進み、三機が目視できる距離に入りました。

 

その時、既にハイぺリオンはフォルファントリーの発射体勢に入っており、今にもブルーフレームを撃破しようという勢いでした。

 

このままでは劾さんが・・・!!

 

フォルファントリーの砲口から眩いばかりの光が発射され、ブルーフレームへと突き進んで行く。

 

「間に合えぇぇぇぇぇっ!!」

 

私はデュエルの出せる最大加速を以て、光弾が直撃する寸前にブルーフレームの前に割り込みながらもタクティカルアームズを掲げ、光弾とぶつけました。

 

激しい閃光が辺りを一瞬照らしますが、そんな事に気を向けずに、私はデュエルの腕を振りぬかせ、光弾の軌道を明後日の方角へと逸らしました。

 

ですが、その反動というべきか、デュエルの右腕は過負荷の為にモーターがオーバーロードし、スパークを散らしながらも稼働不可となってしまい、タクティカルアームズを手放してしまいました。

 

「劾さん!ご無事ですか!?」

 

『すまない、助かった!!』

 

背後に佇むブルーフレームに叫ぶ様に通信を入れますと、間髪入れずに劾さんからの通信が帰ってきました。

 

「間に合った様で何よりですわ!それよりもこれを!!」

 

残った左腕を振るい、ブルーフレームにタクティカルアームズを投げ渡します。

 

セカンドGの状態で使用できるのかは分かりませんが、今はそんな事を考えている暇はありません!

 

ハイペリオンが撃ちかけてくるビームサブマシンガンの銃弾を回避しつつ、私は劾さんに向けて叫びます。

 

「あのシールドにはタクティカルアームズが有効です!」

 

『その根拠は何だ?』

 

私の言葉を疑問に思ったのか、劾さんは真意を尋ねて来られました。

 

それもそうですわね、危機的状況の中で憶測や確証の低い方法を採るなど自殺行為も良い所、確証を持ちたいのでしょう。

 

ならば、端的に御伝えするのが一番ですわね!!

 

「あのシールドは光波防御帯、つまりはビームで構成されています!前の世界で一度戦った事がありますので間違いありませんわ!!」

 

『分かった、お前の意見に従おう、イライジャ、セシリアと援護を!!』

 

そう仰いながらも、劾さんはブルーフレームの左腕に装備されていたハンドガンをこちらに投げ渡してくださいました。

 

タクティカルアームズは大型のバスターソードであり、片手では少々扱いきれない装備でもあります、だからこそ、ご自身が勝負を決める心積もりだからこそ、私達に牽制を任せて下さるのでしょう。

 

『了解だ!遅れるなよセシリア!!』

 

「承知しましたわ!!」

 

劾さんとイライジャさんの言葉に返答しつつ、私はデュエルのスラスターを吹かし、イライジャさんと共に牽制に専念致します。

 

当然の事ですが、アルミューレ・リュミエールの前ではハンドガン程度の射撃やマシンガン程度の威力の射撃は跳ね返されてしまう事がオチです。

 

しかし、今の私達には勝機があります、劾さんの攻撃が中ればこの戦闘は私達の勝利です!

 

ですが、ハイぺリオンから発射される弾幕は厚く、劾さんですら取り付く事が中々出来ないようです。

 

「(このままではこちらが不利ですわね・・・!せめて、せめて隙を作れれば・・・!)」

 

しかし、今のデュエルの状態と装備、そして私の腕では返り討ちが関の山、こうして援護するだけでも精一杯です。

 

何か囮に出来る様な物があれば・・・!!

 

そう思った矢先、ハイぺリオンが移動する先に、劾さんが排除したと思しきスナイパーパックの存在が見えました。

 

「・・・!!」

 

これは使えますわね、装備を壊す事になりますが、此処を切り抜けるには致し方ありません、怒れれたら素直に謝りましょう。

 

「劾さん!!」

 

ブルーフレームに向けて叫びながらも、タイミングを見計らって弾丸を発射、スナイパーパックに直撃させます。

 

劾さんほどの手練れならば、これがどんな意味を持つのかなど、直ぐに見抜いて下さる筈です。

 

直後にパックはエネルギータンクが誘爆したのか、盛大に爆ぜ、接近していたハイぺリオンを巻き込みます。

 

尤も、この程度の爆発ではあのシールドは破る事が出来ないと分かり切っています、本当の目的は・・・!

 

爆煙がハイぺリオンの視界を塞ぐ、これこそが私達の策ですわ!!

 

爆煙を突き破る様にして、タクティカルアームズを腰溜めにしたブルーフレームが飛び出し、完全に虚を突かれたハイぺリオンに横薙ぎの一閃を繰り出しました。

 

それは一瞬だけアルミューレ・リュミエールと拮抗するかの様に閃光を散らしましたが、すぐに突破し、本体に迫って行きます。

 

「やった!!」

 

劾さんの勝利を疑わなかった私は、次の瞬間に起こった事に我が目を疑いました。

 

ハイぺリオンは機体がひっくり返る事も厭わずスラスターを全開にし斬撃を回避しました。

 

とは言え、直前にまで迫っていたモノを完全に回避する事は出来なかった様で、シールドの発生基の一部を破壊されていました。

 

「劾さん!離れて下さい!!」

 

攻撃を、それも大剣の一撃を繰り出した後となると、そこに生じる隙はあまりにも大きい。

 

そこを狙われでもしたら流石の劾さんも避ける事は出来ないでしょう、だからこそ、そこをやらせない事が私の使命なのですがね。

 

体勢を崩しているハイぺリオン目掛けてハンドガンを撃ちかけますが、あちらもやられるつもりなど無いらしく、左腕に展開したシールドで防ぎきってしまいました。

 

くっ・・・、相当の手練れが乗っている様ですわね・・・!

これは、面倒ですわね・・・!!

 

ですが、その間に劾さんは体勢を立て直し、ハイぺリオンから距離を置いた様でした。

 

『イライジャ、セシリア、潮時だ、撤退するぞ。』

 

『わ、分かった・・・!!』

 

撤退と言う事は、もう戦う必要が無いという事ですわね、私も命は惜しい物ですので、潔く撤退させて頂きましょうか。

 

「分かりました!」

 

ブルーフレームとイライジャさんのジンに続いて、私はデュエルを駆り、輸送船へ向けて撤退いたします。

 

エネルギーが少なくなったのか、ハイぺリオンはアルミューレ・リュミエールを消し、私達とは別方向へと去って行くのが、機体のズーム機能を使用する事ではっきりと確認できました。

 

それを認めた後、私は大きく息を吐きながらも、ヘルメットを脱ぎ捨てました。

 

慣れているとは言えど、少々暑苦しいですしね。

 

『セシリア、お前のお陰で助かった、ありがとう。』

 

『助かったぜ、ありがとなセシリア。』

 

そんな時、劾さんとイライジャさんが通信を開き、私に礼を下さいました。

 

「いえいえ、御二人が御無事で何よりですわ、それに、少しは御役に立てまして光栄ですの。』

 

この命を救って頂いた方々を護れたのです、それ以上に喜ばしい事など今はありませんわね。

 

『お帰りなさい、こっちは無事よ。』

 

輸送船に近づいて行くと、ロレッタさんからの通信が私達の機体に届きます。

 

あの後、他の敵勢は来なかった様で、戦闘宙域から無事逃れられた様ですわね。

 

『しかし、お前さんらが苦戦するたぁ、相当厄介な相手だったんだな。』

 

『あぁ、セシリアがいなければ危なかった、乗っているパイロットも、俺の様なコーディネィターだろう。』

 

やはりコーディネィターがパイロットでしたか、ナチュラルがあそこまでの操縦を出来るとは思えませんでしたし、予想通りというわけですわね。

 

『黒幕は恐らく、ユーラシア連邦だろう。』

 

『そうか!あれはアルテミスの傘!!』

 

『あぁ、対処法は解った、次に戦う時は負けない。』

 

劾さんとイライジャさんが何かを思い出すように話していらっしゃるのを聞きながらも、私はパイロットスーツの胸元を開け、息苦しさを解消しました。

 

あぁ、汗が凄い事になってますわね・・・、シャワーを浴びたいものですわ。

 

『Nジャマーキャンセラーを狙っていなかったとはいえど、ザフト側も動き出す頃合いだ、事は一刻を争う、か・・・、風花、セシリア、お前達に動いてもらう時が来たようだ。』

 

どうやら一息吐く暇も無い様ですわね、劾さんの言葉通りならば、近い内にザフトだけではなく連合もNジャマ―キャンセラーの存在に気が付く事でしょう。

 

そうなれば事態は大きく揺れ動く、その前にジャンク屋の方々と接触しておきたいのでしょうか。

 

『分かった、準備するね。』

 

風花さんを護衛する事が私に課せられている任務である以上は、すぐにでも動く必要がありますわね。

 

とは言え、今の状態のデュエルでは戦闘もまともに出来ませんわね、そこはしっかりと整備しておかなければ・・・。

 

「劾さん、今のデュエルでは少しまずいのですは・・・?エネルギーの問題もありますし・・・。」

 

『そうだな、エネルギーはここで補給しておいた方が良いな、機体の整備はロウの方が優れている、あっちに行ってからでも遅くはないだろう。』

 

なるほど、修理はロウと呼ばれていらっしゃる方にお任せすれば良いという事ですか。

 

嘗ての世界で面識があったかは憶えておりませんが、劾さんが信頼なされている方ならば問題はないのでしょう。

 

「畏まりました、風花さんの準備が出来次第、護衛ミッションに当たりますわ。」

 

輸送船の格納庫に機体を入れ、機体バッテリーの充電と推進剤の補給を行います。

 

あまり派手に動いてはいないものの、PS装甲機はエネルギーの消費が大きい訳ですし、こういった補給はとても大切ですからね。

 

出撃も近い事ですし、このまま備えると致しましょうか。

 

あぁ、でも、やはり汗ばんだままはレディとして少しあれですわね・・・・。

 

sideout

 

noside

 

「くそっ・・・!この俺のハイぺリオンによくもこんな傷をっ・・・!!」

 

サーペント・テールを襲撃した機体、ハイぺリオンのコックピットで、この機体のメインパイロットであるカナード・パルス特務兵は苛立たしげにヘルメットを脱ぎ捨てた。

 

先程の戦闘、彼は機体の性能と自身の技量を以て、先に出てきたガンダムタイプとジンのカスタム機を終始圧倒していた。

 

彼の見立てでは、アルミューレ・リュミエールを完全展開していれば、相手は攻撃の手立てが無く、なぶり殺しにするなりなんなり出来た筈だった。

 

ところが、蓋を開けてみればどうした、敵に損失らしきものは見当たらず、こちらはアルミューレ・リュミエール発生基部の一部を破壊され、エネルギーも殆ど枯渇させてしまった、実質上の敗走ではないか。

 

「あの機体はザフトに奪われたガンダム・・・!それが何故あんな所にいた・・・!?」

 

彼は自身の記憶から、途中より介入してきたMSの名称を探り当てた。

 

デュエル、連合が最初期に開発した試作型MSの内の一機であり、ザフトに鹵獲された機体でもある。

 

しかし、彼が襲撃した輸送船は民間、若しくは傭兵のものだった、軍用の物では勿論ない。

 

だが、そんな事は彼にとっては至極どうでも良い事だった。

 

自分の機体に、そして彼自身のプライドに傷を付けた二機の青いガンダム、それだけが重要だった。

 

「青いガンダム共め・・・、次こそは必ず墜としてやる!!」

 

初めて討ち漏らした敵に歯噛みし、彼は次回の必殺を誓いながらも、特務隊Ⅹの母艦オルテュギアへの帰還ルートを急いだ。

 

『カナード特務兵、こちらオルテュギア。』

 

そんな彼に母艦にいる副官、メリオル・ピスティスからの通信が届く。

 

「なんだ!?今そっちに戻る途中だ、話なら後にしろ!!」

 

敗走中の彼はナーバスになっており、彼女からの通信に若干の苛立ちを見せながらも叫んだ。

 

妙なとばっちりを食らった形になったメリオルだが、少しの動揺も見せずに言葉を続けた。

 

『了解しました、戻られてから詳しくお話し致しますが、ガンダムに関する情報が入りました。』

 

「なんだと?キラ・ヤマトのガンダムか!?」

 

彼女が発した単語に彼の眼は大きく見開かれた。

 

長年探し求め、今に至るまで発見する事が叶っていない標的が見つかったかもしれない事に、ある種の高揚を隠せないのだろう。

 

『詳細は後程、御早い帰還をお待ちしています。』

 

答えをはぐらかす様に通信が切られるが、カナードは口元を三日月形に吊り上げていた。

 

漸くこの機会が訪れた、自分の存在意義を確立するための絶好の機会が。

 

「遂に・・・、遂にキラと・・・、本物のスーパーコーディネィターに会える・・・!クックックッ・・・、待っていろキラ・ヤマト・・・、お前は俺がこの手で・・・ッ!!」

 

狂喜に満ち溢れた禍々しい哄笑が、ハイぺリオンのコックピットに木霊する。

 

執念、否、ある種の怨念を抱えながらも、ハイぺリオンは大宇宙の闇を突き進む。

 

暗闇が待ち受ける未来へと・・・。

 

sideout

 




時代が激しく唸りをあげる中でも、彼等は今だ動こうとはしなかった。

次回機動戦士ガンダムSEEDASTRAY X INFINITY

PAST

お楽しみに。
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